<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.31399の一覧
[0] 西部戦線異常しか無し! 【オリジナル架空戦記・微ファンタジーモノ】[甘露](2012/02/05 18:47)
[1] 戦記1[甘露](2012/04/06 17:11)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[31399] 西部戦線異常しか無し! 【オリジナル架空戦記・微ファンタジーモノ】
Name: 甘露◆0560a800 ID:7e29cfb0 次を表示する
Date: 2012/02/05 18:47
 魔法は科学に駆逐された。それは過去の事実。
 
 魔女は狩られた。錬金術は化学へ姿を変えた。
 呪術の原理は心理学で証明され、万物の現象は数式で表記された。

 そして、科学が全ての頂点にして原点になった。
 等式で証明できない事柄は否定され、質量保存の法則に当てはまらない事象はファンタジーへ。
 進化論に当てはまらない生物は空想に、神霊は幻想に。 

 それが、科学の世界。


 
 科学は魔法に駆逐された。それは過去の事実。
 
 科学者は狩られた。数学論は魔法演算に姿を変えた。
 肉体疲労は魔力の残量との関係性が証明され、万物の現象は魔方陣で召還された。

 そして、魔法が全ての頂点にして原点となった。
 魔方陣と魔法演算で召還できない現象は否定され、魔量保存の法則に従わない現象は絵物語へ。
 フラメルの魔量変形論に当てはまらない生物は空想に、等式と化学式は幻想に。

 それが、魔法の世界。

 
 ならば、と[意志]は思った。

 では、こんなIFはどうだろうか?
 どちらも存在し、どちらも等しく発達した世界があるとしたら。

 そこでは、科学医療で人体が再構成され、プーリストの祈祷で御霊が肉体に戻る世界だとしたら。
 それは、とても平和な世界になるのではないか?
 誰も死なず、皆魔法と科学の恩恵に与ることが出来るのではないか?

 答えは否だった。

 肉体が再構成できるならチリも残さなければいい。
 魂がコントロールできるならその力で奪えばいい。

 人間はひたすらに殲滅だけを考え、闘争の本能が益々苛烈になっただけであった。
 そうして、人の力はやがて神さえも従えようとせんばかりになった。

 
 [意志]は嘆いた。


 なぜ、彼ら【意志の御子たち】は殺すことしかせぬのか。
 なぜ、彼らは虐げずに生きることが出来ないのか。

 結局、世界は何も変わらなかった。
 そして、失敗作となったその世界は[意志]に見放された。

 ──それは、そんな世界の物語。




**






「制圧射撃だ! 左翼! 弾幕薄いぞ!!」
 
シリャシス少尉が最近支給されたばかりの新品マシンガンを振り回しながら声を張り上げた。
瞬間、頭がトマトよろしく弾け飛んだ。
MG22に向かい走っていた二等兵がそれにあっけに取られぽかんと口を開ける。
瞬間、彼の喉にデカイ風穴が開いた。
そこで、俺は漸く何が起きているのか気付いた。
魔導狙撃手だ。しかもとびっきりの。慌てて皆が塹壕に伏せる。するとその所為で制圧射撃は止む。
弾幕に隙が出来ればどうなるか? 答えは明快。敵がここぞとばかりに侵攻してくる。
100m向こうに掘られた通商連合の塹壕から、ライフルと銃剣を構えた兵士が迫るのを度脳の隙間から見えた。
ああ、こりゃ俺達死んだなー。頭をあげりゃ魔法とやらでうちぬかれ、頭を上げなきゃゼロ距離で白兵戦だ。

 さてはて、投降の準備でもするべきか。
 それとも、自決の用意でもするべきか。
 あるいは、最後の抵抗でもするべきか。

どれもまともな発想じゃない。捕虜をそのまま兵士に組み込む時代は200年前に終わってる。
自爆したところで何になるってんだ。二階級特進? あーありがたやありがたや。
抵抗して何なるってンだよ。剣でめった刺しになるか狙撃されてミンチになるかの違いしかねーよ。
ちぇっ、俺の人生もこれで終わりかなー。
拷問されたくないし、敵さん寄せつけて派手に散るか。
  
ピン、とパイナップル手榴弾のピンを抜いた。さて、来るなら──
『こちらHQ、シャリシス少尉応答せよ』
少尉の腰に下げてあった魔道結晶から声が聞こえた。一番近いのは……俺かよっ。
慌てて炸裂する寸前のそれを塹壕の外へ投げ、結晶に話しかける。
「こちら西部戦線Kポイント第二中隊。戦線は既に崩壊、中隊長は戦死しました」
『なんだとっ。貴官は?』
「はっ、シリュエ・ハーブーン軍曹であります。残存兵力は……見たところ私を含め5名と機関銃1丁、ライフル数丁に数発の手榴弾のみであります。
 右翼、左翼共に抑えられ残すは私の居る中央のみとなっております」
『そうか。喜べシュリエ軍曹。あと5分で魔道中隊がそこへ投入される。それまで中央を死守せよ。その戦線を失う訳にはいかん』
どう考えても無茶振りです本当に有難うござます。 
「了解しました、命令復唱。5分間この地点を死守します」
『頼んだぞ』
そこで結晶からの反応が無くなった。これで撤退も自決も選べなくなった訳だが。
なんて悩んでいても仕方が無い。俺はさっさと泥だまりの中でがたがた震えている二等兵どもに声をかけた。
「HQから命令だ。喜べ餓鬼共、5分死守すればありがたい魔法使い様がいらっしゃるそうだ」
「ご、5分でありますか?」
真っ先に反応したのは先日配属されたばかりの女性二等兵だったか。
ジャンヌなんて聖女様も真っ青な名前だった割には今手に持ってるのは地獄への片道切符と来た。
いや、火あぶり喰らってっからおんなじようなもんか。
「5分だ。持てるもん持って一番近いトーチカまで撤退。そこで籠って敵さん引きつけるぞ」
『ッサー、イエッサー!』
がたがた震えてた二等兵共はさっと起き上がると、銃器を担いでトーチカに向かいだし──。
早速一人脳味噌をぶちまけた。頭がどうやら出過ぎたらしい。一体どんなんだよ、狙撃魔導師って。
「愚図愚図すんなダボ共! 二階級特進してえなら構わんが夕飯食いたい奴ぁサッサと動け! 
 こんな無茶振りしてきたんだ、上手くやりゃあベーコンくらいは夕飯に足して貰えるかもしれんぞ」
どうせならこんな糞みたいな職場から後方での育成士官にでもなりたいがね。まあ士官学校卒でも無い俺にゃ関係の無い話だ。
大体現場の餓鬼共で手いっぱいな俺に教官の素養があるとも思えん。
「いいか、命令は一つだけ、この場所、Kポイントの死守だ。他の選択肢は無い」
「し、しかし四人で三方からの攻撃を凌げるのでしょうか?」
「凌げるか? じゃねえ。凌ぐんだよボケ。おっと、投降なんて考えるんじゃねーぞ。
 通商連合はラグルグラード条約を破棄してんだ、捕虜への待遇は折紙付きで最悪だぞ。分かったか、ニキア二等兵」
「っ!? っサー、イエッサー!」
「そう言う訳だ。なんて会話してる内にもう一分経ったな。残り四分だ、生き残るぞ手前ら」
無事に戻れたら飯くらいは奢ってやる、なんて言えば現金な部下共の顔に少し生気が戻った。
「さあて、あと三分三〇秒。精々死ぬなよ」
辿り着いたトーチカの中に入り鉄扉を閉めた。
正面にMG22を設置し、制圧から殲滅に切り替わりつつある向こうさんに向かって、俺はマシンガンのトリガーを引いた。

銃弾サマや、どうか俺にゃ当らねーでくれよ。

 
**    
 

※指摘された誤字、修正しました。 (私を含め4人→私を含め5人)

  


次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.032858848571777