初投稿 2012/07/16
※未来日記・HELLSING【CROSS FIRE】・BLACKLAGOON のクロス作品です。
※BLACKLAGOON×CANAAN ~二挺拳銃×闘争代行人~ の外伝的ストーリーです。
20XX年 中東
私は、その日、家族で市場にと訪れていた。多くのテントが張り巡らされ、暑い日差しを遮りながら、青い空の下、窮屈そうに並ぶ店同士の間を縫うように、多くの人々が所狭しと流れ込んでいく。中東諸国の市場は日本よりも活気があり、その日に採れた野菜や魚などを店にと広げ、そこを多くの人が行き交いしていた。私も父親、母親と共に、その珍しい色をした魚や、野菜を目を輝かせながら見回っていた。父親の転勤で、訪れたこの異国の地で。私は、日本では知り得なかった新しい経験を小さな身で感じていた。
「みねね、勝手に走っていったら危ないわよ」
「そうだぞ、みねね」
母親の声が聞こえる。
私は笑顔で振り返り母親と父親に向かって手を振る。
二人は笑顔で私を見つめていた。
大きな音と共に、私の視界が揺れる。
爆音とともに舞い上がった、目の前の人影。私の前で、炎と煙が舞い上がり、私を笑顔で見ていた両親の体は、そのまま宙にと舞い上がって、地面にと突き刺さる。爆発は、周りのテントを燃やし、建物を吹き飛ばす。人がコンクリートに顔を突っ込み、手足を吹き飛ばされ、血が吹き上がり、悲鳴があがる。私は、小さな体を両手で支えながら、ゆっくりと体を起こす。私は、周りから聞こえる悲鳴と、うめき声を聞いた。私は両足で立ち上がり、先程までいた自分の両親を探す。
「ママ?パパ?」
私は、ふらつきながら、歩いていく。
そこで、私は見つけた。
全身を血まみれにし、体の一部を欠損している両親を。
何が起きたのかわからなかった私は、倒れている両親をゆすり、起こそうとした。だが、もう両親は動くことはなかった。わずか数分の出来事で市場は地獄とかし、多くの命が容易く奪われた。
『……昨日、イスラエルの市場で起こった自爆テロの死傷者12名とイスラエル政府は発表。今回の爆破テロに関して、イスラム過激派組織から犯行声明が出ており、依然として、中東諸国のテロの連鎖が止まっていないことを、世界に伝える結果となりました。イスラエルは報復を宣言。これに関して米国、ホワイトハウスは声明を発表し……』
皆が神を信仰している。
だが、その神を信仰しているものたちは、互いの神を嫌悪し殺し合いをしている。そんなものが世界を、作り上げたというのか?
「……私は神を信じない」
そして、それは、あれから数年経った今も変わりはしない。世界は混沌に満ち、そして、経済大国はそれを見て見ぬ振りを続けている。これが、神の所業というのか?これが神が人間に与えたものだというのか。ならお前は神などではない。それでも尚、神を語るというのなら……。
「……寝ちまったか」
ゆっくりと身を起こす女は、揺れるトラックの上、目的地である街並みが見えてきたことを知る。それは、その手の人間なら知らないものはいないだろう場所。天国に一番近い街、ヨハネスブルク、アングロタウン等にならぶ街の一つ…。
悪徳の街、ロアナプラ……。
東南アジアに位置する港町であるそこは、ロシア・イタリア・中国マフィア、様々な国の諜報員などなどが混在する場所である。様々な組織は、その場所で幾度ともなく、血で血を洗う抗争を繰り返し、今は相互協力を行いながら、その街を牛耳りながら微妙なバランスの上で成り立っている。
だからこそ、問題が絶えない場所とも言えるし、様々な裏の顔を持つ連中が出入りできる場所ともいえる。双子の殺し屋・メイド姿の元S級のテロリスト【狂犬】なんていうのもいた。……最近でいえば、【鉄の闘争代行人】に、ウイルスをばら撒く国際テロ組織【蛇】なんていう輩もやってきた。
ようは、この街は、まったくもって眠ることが出来ない町なのだ。
どいつもこいつも、まるで光に集まる虫のように集まってくる。その光が青白い光を放つ、電流であることをその虫は死ぬ寸前まで知ることはないのだろう。だが、鉄の闘争代行人や、蛇みたいに、その電流を掻い潜りながら、人の耳元を飛び続ける輩もこの街には多く現れる。ようはそういった部外者でもここは居心地がいい場所である。自分のような輩にはもってこいだ。
「……此処が、ロアナプラか。……どんな街かと思えば」
ため息を吐いた私を強い日差しが頭から浴びせてくる。街の出入り口に掲げられた吊るされた白骨化した骨を額に手を当てて眩しい日差しを遮って眺める。長い髪の毛を靡かせた女は、そのまま街の中にと足を踏み入れた。そんな彼女の隣に止まっている窓があいた車からラジオの音が漏れている。
『……21日、X国カトリック教会での爆破事件および、そのほか数十件のテロに関与しているとされる、国際テロリスト、雨流みねねは現在も逃亡を続けており、インターポールは彼女の捜査に全力をあげてはいますが、教会爆破事件から三カ月が経過しようとしていますが、犯人逮捕には至ってはいません、またカトリック教会では声明を発表し……』
未来日記×HELLSING【CROSS FIRE】
逃亡日記×十三課
第1話 雨流みねね
「……」
フードを被りながら、雨流みねねは、古びた酒屋にと足を踏み入れる。酒屋内は、昼間にもかかわらず、客足は多く、皆、腰に鉛玉を装填させた大きな鉄をぶら下げている。みねねは、この街の状況を把握しながら、カウンターにと座る。
「ビールを……」
マスターはこちらを一目見て、答えることなく、こちらにとジョッキを渡す。みねねは、グラスを手で掴みながら、一口、その冷たい水を喉にととおす。この亜熱帯の気候の中、喉が渇いていたみねねにとっては、生き返る飲みものであった。喉を鳴らしながら、ジョッキの水の量を半分ほどまでに減らしたみねねは、ジョッキを口から離す。大きく息を吐きながら、肩で息をするみねね。そんなみねねが、ふと先ほどまで騒がしかった部屋が、今は少し静かになっていることに気がついた。
「……」
みねねは、ジョッキのグラスに映った自分の背後の様子を伺いながら、テーブルに座っている数人のものたちが、こちらにと興味の視線を注いでいるのを知る。どうやら、自分は、此処では珍しい。まあ、こんな街に日本人がいるというのも変な話だ。
「おいおい、こんなところで……あの通訳日本人以外で、日本人を見るとは思わなかったなぁ?みんな。しかも、これはなかなか美人な日本人じゃないか?はじめまして」
そんなみねねの背後で、髭面の男が声を高らかにあげ、まるでどこかのテレビのクイズ司会者のように周りを見渡しながら寒い台本を読みあげている。彼は、みねねのカウンター席の隣にと腰かけ肩にと腕をかけて、こちらを見る。
「街案内が必要なら、通訳も含めて、俺たちがつき添ってやるぜ?この街は危ないからな~色々と」
「あいにくだが、自分の身は自分のみで守る趣味だ。それに、お前が私を守れるほどのケヴィン・コスナーのようには見えないんだが?」
「ふ、ふははは。俺は、そんな映画の世界の俳優ではなく、本物の戦場を知っているつもりだぜ?」
そういうと、男は、腰から銃を抜きみねねにと向ける。
「此奴がなきゃ、ここでは生きてはいけない。そして、俺は今こうしてここで生きて行けている……ってことはだ。俺はジョン・マクレーンのように、悪運で物事をこなせる力を持っているということだ」
みねねは、ポケットから何かを取り出す。一瞬、警戒した隣に座る男は、その銃とは思えない装置を眺める。何かのコントローラーのようなものだ。黒くマッチ入れのような大きさのもので、いくつかのボタンが取り付けられている。みねねは、それを銃のように、男にと向ける。
「ん?なんだこれは?」
「これが私の身を守るものだ」
「プッ……あはははははは」
男は、ゲラゲラと笑いながら、周りにいるほかの仲間にと顔を向ける。男たちは、同じように笑いながら、みねねのその玩具のような物体を眺める。みねねは、そんな男たちの笑いを見ながら、白い歯を見せた。
「こいつは驚いたぜ、おたくは、マジシャンか何かかい?武器っていうのはいつだって筒丈のものだ。女を責める武器だってそうだ」
「そうかい?たしかに、そういうのは多いかもしれないな」
みねねは周りの男たちの笑顔を見ながら、そのコントローラーのスイッチを入れる。すると、コントローラーが赤く輝く。
「コイツはな、時限爆弾だ。さっきお前の体のどこかに忍び込ませてもらった」
「!?」
そのみねねの言葉に、周りで笑っていた男たちの声が消える。
隣にいた男が、額に汗を流しながらみねねを見る。
「あ?な、なにいってるんだ?お前」
「さっき、スイッチを押した。お前は後数分でお星様になる。なんだ?そのしけた顔は?ここは笑うところだ、笑えよ、ほら」
みねねは、ビールを飲み干すと、白い歯を見せる。たまらないのは男の方だ。男は、立ち上がると、銃をみねねにと向ける。その手は震えている。
「は、はっ、ハッタリだ!!爆弾がそんな簡単に取り付けられるものかよ!!」
「そうかい?」
みねねは、そういうと、咄嗟にカウンターのイスからカウンターを飛び越え、前にいた店主を押し倒す。瞬間、男の体が光り輝いた。それは、昼間の明るさに負けない輝きを、店内につくりだした。店内の窓・出入口をすべて光で満たしながら、それは爆発した。
閃光爆弾。
敵対象に対するめくらましに使用するたぐいのものだ。みねねは、ゆっくりと立ち上がり、カウンターを乗り越える。店内は皆、視界を失ったものたちが、その場にと倒れ、四つん這いになっている。みねねは、その場で呆然とする店主を見て、ビールの代金を支払う。
「じゃあ、ビールうまかったぜ」
「待ちやがれ!!」
そういって立ち去ろうとするみねねに、まったく別方向を見ている先程の男が銃を握りながら、声を荒らげる。みねねは、ため息をつきながら。
「視界ゼロの中で夕陽のガンマンをやりたいのならかまわないが?」
「くそっ!!くそったれ!!」
みねねは、笑いながら、店を後にとする。
あんまり、問題は起こしたくはなかったが、まあ、これくらいなら問題はないだろう。みねねは、そう思いながら、その手にある車のキーを取り出す。先程の男からくすねたものだ。みねねは乗り込みながら、車のエンジンをかけ、発進させた。
今回の爆破テロは、X国のカトリックの教会。
偉そうに説教垂れるジジイにもっと多くの人々に御高説をお願いするために、天高く飛んでいってもらった。みねねとしては、その後の逃亡のために、この街にと訪れていた。爆破・暗殺は、テロリストとしては最初の準備段階がもっとも大変である。逃亡に関しては、常日頃からいくつかのパターンがあり、自分はそれを淡々と行なっているだけである。逃亡の際、みねねは日記をつけている。その日記をもとに、自分の逃走経路を導いていることも多々あるわけだ。
「さてと、これからどうするか……まずは寝床を確保しとかないといけねぇーな」
みねねは、そう思うが、まったくもってこの場所の地理に詳しくないことを知る。先程の酒屋の奴に素直にガイドを頼むべきだったか……、みねねは、大きくため息をつきながら、路肩にと車をとめて、誰かに道を聞こうとする。
「ん?あれ?日本人か……もしかして」
路肩の売店にて、この暑い中なぜかスーツ姿の男を見つけたみねね。
「ちょっと?」
「わああ!!!」
あえて日本語で声をかけた直後、突然声をかけられたことに、そのスーツ姿の男が驚いて声を上げ、こちらにと振り返った。その驚いた声に逆に、みねねが驚いてしまう。目を見開いて、振り返ったスーツの男を見る。
「どうしたロック!?敵か!?」
慌てて店内から出てきた黒髪の女が腰から二梃拳銃を抜き、みねねにと向ける。思わずみねねは、両手を上げる。
「ちょ、ちょっと待て!!私はなにもしてねぇーぞ!!」
「あ、ああ……大丈夫だ、レヴィ。急に日本語で話しかけられてびっくりしただけだ」
そのスーツ姿の日本人、ロックは、苦笑いを浮かべて、みねねに銃を向ける隣にいる米系華人のレヴィにと告げる。レヴィは、ため息をつきながら、銃をしまう。
「ったくびびらせんじゃねぇ!蛇女がまた現れたかと思ったじゃねぇか」
「あはは……」
レヴィは黒い髪を掻き毟り告げる。
みねねは、相手が銃を下ろしたことで、ほっと胸をなでおろす。
「どうなってんだ!この街は!?どいつもこいつも、人を見れば撃とうしやがる」
「ところで、貴方は……観光客っていうわけでもないと思うんだけど」
ロックは、冷や汗を拭くみねねにと声をかけた。
みねねは、改めてロックにと向き直る。
「すまない、宿屋を探してるんだ」
みねねは、ロックにと問いかけた。
ロックは振り返り、レヴィがいる店内にと声をかける。
「レヴィ、ここらへんで安全なホテルってどこかな?」
店内では、大声と銃声が一発響きわたり、レヴィが商品をもって出てくる。レヴィは機嫌がかなり悪い。ロックはそんな湯気だっているヤカンに触れないように、丁寧に声をかけていた。
「知るか、この街のどこにだって安全な場所なんかねぇよ、そんなに安全を求めたきゃ、ドラム缶にはいって死体の振りでもしてればいい」
みねねは、そのレヴィの言葉に拳を握りながら、ロックにと視線を移す。
「いつもこんななのか?」
日本語での問いかけに、ロックは、また苦笑いを浮かべる。
「いや……勝負に負けて苛立っている、それだけさ」
レヴィはふてくされた表情で車にと乗り込む。食べ物をぼったくろうとしていた店主に対してカトラスを一発ぶち込み、しっかりと原価で売買契約を成立させた、こういった荒い方法であっても彼女の機嫌がもどるわけではない。
話は1ヶ月ほど前にと遡る。
この街に訪れた二人の女がいた。ひとりは、世界を相手に幾度ともなくテロを行う『蛇』の名を持つ女。もう一人は、その女を追う『鉄の闘争代行人』、この街はその二人の戦いに巻き込まれた。戦いは、レヴィの協力をもあり鉄の闘争代行人の勝利でおわりを告げたものの、犠牲を払った。鉄の闘争代行人は、教会に墓を立て、その管理をかけてレヴィと勝負をした。
「あ~~~!!あの女、いつか必ずリベンジしてやる!!」
と、まあ、こんな調子なわけだ。
「ふん、なるほど、此処は火薬庫ってわけだな」
後部座席に座るみねねの言葉に、レヴィは助手席で、窓の外を眺めながらタバコの煙を吐きながら口を開けた。
「神から見捨てられた場所だよ」
「……神から見捨てられた……」
三人を載せた車は、そのままオレンジ色の日差しに照らされる中、海沿いを走っていく。
ロアナプラの街から少し外れた小高い場所……そこに教会がある。
ロアナプラに存在する唯一の場所であるそこは通称『暴力教会』。一般人は、その存在は知ってはいるものの、まともな人間はほとんど来ない。来るとすれば、様々な組織が武器調達にと訪れるぐらいだろう。ロアナプラでは、武器売買は基本的には認められていない。この場所が唯一の場所である。教会が武器売買、それこそが悪徳の街ロアナプラを象徴している。この場所には様々なものが置かれている。それこそ、ミサイル、核兵器も以前は置かれていた。それをきっかけにして、一度は壊滅まで追いやられたこともあるわけだが。
ステンドガラスの光に照らされた室内にて、教会のイスに寝転びながら寝ていた教会のシスターである金髪の髪の毛、そしてサングラスをかけた女……エダがいた。先のロアナプラを震撼させた、恐怖のウイルス事件にて裏の顔での仕事に忙殺されていた彼女にとって久方振りにゆっくりとできる時間であった。
そんな真下、扉を叩くノックの音。
「今日は店閉めだよ、他をあたんな」
次の瞬間、扉に放たれる銃弾。
その銃声に慌てて起き上がったエダは、その手に銃を握り、撃ち返す。
折角の休暇を邪魔された、エダの怒りはでかい、相手の開けた穴にと的確に銃を撃ち込みながら、相手が再度扉を突き破るような攻撃を想定しながら、距離を詰めていく。そして、その銃声に気がついた、シスター見習いのリカルドも慌ててやってくる。その手にはひときわ大きなM60機関銃を握って
「姐さん!また敵ですか?」
「姐さんじゃないっていってんだろうが!ったく、教会に銃をぶち込む奴なんて、神様なんかまったくもって信じていない愚か者だね!」
そう叫ぶエダの前、扉が切られる。
そして、その中から姿を表すのはシスター服を着た女。その女は刀を握りながら、一気にリカルドに目掛け距離を詰める。まずいと思ったエダ。機関銃を寝そべりながら撃っていたリカルドには、突如距離を詰めるその相手に、反応できない。
「そこまでだ!!」
その声に、リカルド、そしてそのリカルドに切りかかろうとする黒髪のシスター、その黒髪のシスターに銃口を向けるエダ。そんな三人の視線が向けられているのは、壊れた扉の奥、サングラスをかけた金髪の女の頭に銃を突きつけるシスター・ヨランダ。
「まったく、同じシスター同士で撃ち合いだなんて神もへったくれもないだろう?そうは思わないか?十三課」
その言葉に、メガネをかけた金髪の女は、銃を握っていた腕を下ろす。
「……由美江。刀を下ろせ」
由美江と呼ばれた女は渋々、刀を鞘にと戻す。眼鏡をかけた金髪の女は、ヨランダの方にと向き直る。
「十三課、ハインケル・ウーフー、高木由美江……制裁を下すために、この地にと参りました」