これは人類が『もうそろそろ火星に移住できるんじゃない?』と思わせる位には技術が発展している、そんな未来のお話。
2087年四月十四日午前零時。
世界各地で人類による魔法使いに対しての大規模反抗作戦が展開された。
彼ら魔法使いは認識阻害の結界等により、自らの存在を永く秘匿させ、人類を裏から操り続けてきた。
しかし、その数千年にも及ぶ実績によって積み重ねられてきた彼らの自信は、いとも容易く進歩した科学技術によって破られる。
個としては優れる魔法使いですら数の暴力の前には為すすべも無く、約六カ月にも及ぶ激しい戦闘の中、人類は勝利した。
1994年、ヒマラヤ山脈 山頂
日独米合同演習用仮設基地
表向きには軍事演習と発表されていたが実際は、日独米合同で開発した新技術の試作運用テストを行う研究施設である。
アメリカが資材・資金を用意し、ドイツが基礎概念を検証し、日本が技術を提供した。
開発を始め十七年、物質の素粒子レベルでの解析を成功し、十三年で解析した組成データを任意の場所での再構成を成功。
つまり擬似的なテレポーテーション技術だ。
判り易く言えば物体のコピーアンドペースト
判り難く言えば物質の亜光速転送。
『試作九十四式 双対性高次元時空加速装置』
誤差は千キロメートル0.6%
三時間の冷却処理と二時間のメンテナンスを行えば連続使用可能
九十四式はテレポートを行うと内部の圧力が8800気圧に達する事が判っていたが、これまでの実験により約50~70回の使用で壊れてしまう事が判った。
今回の実験内容は生命体のテレポーテーション
実験に使用する生物はネズミと犬と猿、過去の実験は全て無機物を使用していた為、これが成功すれば画期的な成果に成ると期待されていたが――実験は失敗した。
各国の首脳は研究員に実験結果の詳細を報告させ、驚愕する事になる。
転送された生物は問題なく再構成されていた。
素体との誤差は僅か0.00000000000000000001%
数学的にそれは零と言っても過言ではない。
しかしネズミも犬も猿も、人形のようにピクリとも動くことなく、生命維持を行わなければ一日と掛らずに衰弱して死亡した。
99.9999999999999999999%コピーは成功している、にも拘らず実験は失敗。
各国の研究員は悩み、思考し、そして一つの結論を出した。
10の-20乗 虚
0.00000000000000000001%――――それは魂の重み
未発見のその粒子は、Zero particle『Z粒子』と名づけられ、実験から三ヶ月後、研究は一部を残し凍結された。
あとがき
前書きみたいなもの。
一応0話って事でよろしくお願いします。
新しい魔法使い物をやりたくて………
早めに一話を上げたいです