////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////今から、どれくらい昔の事だろう?両親が死んで突然一人になり、生きる方法を見失っていたそして私はある親戚を名乗る男に引き取られた他人同然の親類だ、勿論私が歓迎される筈がなかった男は、料理店を経営していたそして私はそこで下働きをする事によって、寝床と食事を得ていたそしてその頃から、私は一人で生きていく方法を考えていた今のままで行っても、未来なんか見えなかったからだだから、私は料理を覚える事にした親類の男の腕は決して悪くはなかったら、私はその男の調理風景を盗み見て、客の残した料理をこっそり味見して、仕事が終わった後、疲れた体に鞭打って・・・自分の技術にしていったやがて、私の調理技術を認めた親類の男も、私に厨房を任せる様になった「この料理、嬢ちゃんが作ったのかい? 美味かったよ。」「小さいくせにやるなぁ!」「ごちそうさん、またお嬢ちゃんのメシ食いにくるから。」辛さと貧しさの中を生きていて、欲しい物なんて特になかったけどいつしか、お客の「美味しい」という言葉が、私の生きがいとなっていたある日、私はある光景を見たそれは、自分と同年代の少女が綺麗な服を着て歩いている所だ「何だお前、あーいうのに憧れてるのか? 無理だな、お前なんかじゃなれねーよ。」そんな事は無いと思った自分とあの子達に、差なんてあるものかいつか、絶対あそこにいく・・・私は強く決意したそして私は、今まで以上に料理に没頭する事になった自分が唯一認められる道だと思って、今まで以上に、本当に死ぬ気で努力したお客さんにふられた話についていけない時があった私は教養も必要だと思って、睡眠時間を削って本を読んだ時が流れ、私はそこそこまともな人間になっていた職もあり、教養もあり、金もある周りの同年代の私と同じ境遇な女の中には、体を売って生計を立てている者も決して少なくなかっただから、私の選択は間違っていなかったそう思っていた矢先、親類の男の店は潰れてしまった何かがあった訳ではない、どこにでもある経営難だ親類の男は、私を置いて海外に逃げた働こうと思って地元の料理店を訪ねても、私を見た目で判断して、すぐに門前払いされたまた、雇ってくれる所もあったけど・・・大抵私の体が目当てで、すぐに私は店から抜け出した手持ちの金なんて、すぐに無くなったやがてお腹が空き・・・本当に耐えられなくなって、限界が来て・・・私は、金を盗もうと思ったただ盗むのでは難しいから、ターゲットは観光客それも、スケベそうな身形のいいオヤジがいい私はある東洋人に声を掛けた「ねえオジさん、私を買わない? 200でいいわよ。」男はホイホイついてきて、私の言うままにシャワーを浴びた案外チョロイと思い、私は男の服を探って・・・財布を見つけたやった、これでゴハンにありつけるそう思った矢先、私は男に取り押さえられた「ふむ、やはりそういう事か。」男はシャワーなど浴びていなかった罠に掛かった振りをして、私が尻尾を出すのを待っていたのだ犯される私は、本能的な恐怖を感じたが・・・男は、私に事情を聞いたきた――どうしてこんな事をした?――私は答える――職場が潰れて、働き先も見つからず、お腹がへって我慢できなくなった――男は言う――どんな職場で働いていた?――私は言う――しがない料理店で厨房に立ってた――そして、男は言う――なら、なんでも良いから料理を作ってみろ――――ほら、材料費だ――そう言って、男は財布から札を数枚取り出して、私に渡した私は、その出来事が信じられなかったこの男は、私が律儀に料理を作ると思っているのか?私が、この金をもってトンズラすると思っていないのか?私は、金を持って外に飛び出し・・・食材を買い込んで、男の下に戻った自分でも、なんでこんな事をしたのかが分からないだけど、この日本人は信じられる私の本能がそう言っていた私は、男に料理を作り食べさせた男は言った――わしと一緒に日本に来ないか?――思いがけない言葉聞くところによると、男は日本のある大きな屋敷に仕える使用人で、丁度料理が作れる人間を探していたとの事どうせ、今のままでは何も変わらない私は、男の提案を受け入れたそして、日本に来て、久遠寺家に来て、――ほう、美味いじゃないか。お前の料理、今まで食べた料理の中でも一番美味いぞ――森羅様に出会って私はこの家で、自分が生涯を掛けて仕える主に出会った私に料理の腕が無ければ、私が久遠寺家に雇われる事は無かったかもしれないひょっとしたら・・・今頃イタリアの路地裏で見知らぬ男に媚を売り、股を開いて生活していたかもしれないだから、私にとって料理とは誇りだそして、私の全てだ////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////「おい、今何つった?」私は、思わずイタチを睨むこいつが作った料理は、明らかに私が作り上げた味だそこいらの主婦がレトルトで作るものとは訳が違うイタリアでの下積み時代で得た知識と技術、そして日本で得た知識と技術日本でも評判の高い料理店にわざわざ赴いて、味わって、少しずつ、自分の技術の糧にしてそれらを試行錯誤させて、自分なりにアレンジし、時間を掛けて改良に改良を重ねて作り上げたもの私が、何年という長い時間を掛けて培ってきたものを・・・私の、誇りを私の、全てをほんの数時間程度で、あっさり作り上げて挙句の果てに――お前の料理なら出来そうだったから、作っただけだ――「・・・フザケンナ・・・」「・・・なに?」「ふざけんなあああああぁぁぁぁ!!! もういっぺん言ってみやがれええええぇぇぇぇ!!!」第七話「誇りと敬意」「・・・で、その後どうなった?」森羅の部屋に久遠寺三姉妹が揃い、先程起きた一件について話し合っていた「そのままイタチに殴り掛かろうとしたベニを美鳩が止めて、私がイタチに退出を促して・・・後は、ベニの頭が冷えるのを待つだけね。」「そうか・・・しかし、こうなるとイタチの採用は難しいな。」森羅が考える様にして言うイタチに問題がある訳ではない。寧ろ自分としてはイタチに高い評価をつけているこの数日間、イタチの働きは目を見張るモノがあるし未有や夢、使用人とも打ち解け始めているしそして、今回のイタチの模倣技術単純に考えて、朱子と美鳩の負担が減るのは好ましい事だったしかし、それが今回仇となったこのタイミングでイタチを正式に久遠寺家の使用人として採用したら、イタチと朱子の軋轢は更に大きなものになるそうなっては、結局元も子もない少なくとも、イタチと朱子の仲が改善されるまではイタチを正採用できないであろう「ほとんど正採用が決まってるのにね~。」「・・・ま、ベニの気持ちも分からんでもないがな・・・」森羅は少し疲れた様に呟く森羅は一楽団の指揮を任されている者だ自分の仕事には遣り甲斐を感じているし、誇りを持っているもしもタクトも碌に持った事の無い人間に、「自分でも出来そうだ」等と言われたら流石に良い気分はしないだろうしかも朱子の場合は、ご丁寧に実演までされてしまったのだ実際、イタチの作った料理の完成度は高かったもしも、あの料理を作ったのがイタチだと知らされていなければ・・・自分はいつもの様に朱子が作ったと思い込んでいたかもしれない朱子からすれば、心中穏やかではいられないだろう「まあ、イタチに悪気は無かったんだろうが・・・相手が悪かったな。」「なにもイタチに非がある訳ではないわ。先に手を上げようとしたベニにも非はあるわ、それにあくまでイタチは、使用人としての仕事を全うしただけなんだから。」「う~む、難しい問題だね。」三人は、思い思いに口にするが結局は、これは個人の感情の問題だしかも単純なものさしでは計れない話ときている。「私としては、イタチは是非採用したいわ。彼の模倣技術は正直言って大したものだわ、一度しか食べてないベニの料理を、あれほど完璧に再現できるんですもの。来るべき私の起業に備えてイタチの技術があれば、正に万夫不当・・・大いに期待できるわ。」未有は夢として、外食産業の企業を目指している朱子の料理をあれほど完璧に再現できるイタチなら、他店の「味」のデータ収集及び研究に十二分の力を発揮してくれるだろう「それは分かっている、時期が悪いと私は言っているんだ。」「そう言えばさー、何でイタチさんはベニスさんの料理を作ったんだろう?」何気なく夢が尋ねるそれに対して、未有が答える「言ったでしょう?ベニの料理なら再現できそうだったからって。」「でもさ、うちには美鳩さんもいるじゃない? 美鳩さんだって朱子さんと同じくらい料理が上手なんだよ?それなら、別に美鳩さんの料理でも良かったはずじゃない?」そこまで聞いて、未有は「確かに」と思う「・・・言われてみればそうね。」「単純に、好みの問題じゃないか?」「どういう事、姉さん?」森羅の言葉に、未有が尋ねる「どういう事って、簡単じゃないか」森羅は不思議そうな顔をして「どうせ作るのなら、美味い物を作りたいじゃないか。」と言った次の日から、イタチと朱子の間に決定的な溝が出来ていた表面化での争いこそはないが、空気が険悪なのだこれはなまじ表立って争われるものよりも、くるものがある森羅や大佐がそれとなく嗜めるが、それも一時的にしか効果がなかったそして、朱子は目に見えて無理をするようになった「あいつの料理は所詮猿真似の二番煎じ、それならあいつの技術程度じゃあ猿真似にもならない程・・・あたしが料理の腕を上げればいい。」知識と技術に貪欲な朱子らしい発想だった、そしてすぐに行動を起こしたまず、夜は深夜まで起きて台所で料理を研究し早朝は、いつもより二時間早く起きて朝食兼研究をしていた幸い、久遠寺家には南斗星というギャル○根顔負けの大食漢(?)が居たから食べ物を粗末する事はなかったが「・・・ダメね、この程度で音をあげちゃあ」朱子の疲労は、着実に溜まっていった料理に没頭しすぎて、仕事を疎かにする事などあってはならないと、いつもよりも仕事に打ち込んだ「もっと煮詰めないと・・・もっと煮詰めて、もっと美味くしあげないと・・・」ここ数日、朱子の一日の睡眠時間は平均で四時間に満たなかったそして、徐々に朱子にも限界が見え始めてきた「・・・公・・・! ベ・・・公!!」「・・・ん?」「ベニ公!!!」「・・・!!!」不意に朱子の意識は覚醒するどうやら、転寝をしてしまったらしい視線を移すと、そこには錬と南斗星がいた「下男、それに南斗星。」「・・・お前、大丈夫か? 調子悪そうだぞ?」「ベニ、無理はよくないよ・・・顔色も悪いし、少し休んできたら?」「・・・ありがとう、でも気持ちだけ受け取っておくわ・・・んー!でもあたしとしたことが、仕事中に転寝しちゃうなんて弛んでる証拠ね! 名誉挽回の為、今日の昼食は気合入れて作ってあげるから期待していいわよ!」頬を叩いて、朱子は気合を入れて立ち上がるがその瞬間、立ち眩みを起こした咄嗟に錬が支えるが「・・・ば! お前、やっぱり無理してるじゃねえか! お前の分は俺がフォローに回っておくから、少し寝て来い!」「・・・は!なに下男が一丁前に人の心配してんのよ! 人の心配をする前に、まず自分の心配をしなさい! おら、早く離さないとセクハラで訴えるわよ」負けじと、錬が声を上げる「お前に何かあったら森羅様が悲しむのが分かんねぇのか!!!」「・・・!!!」その錬の言葉に、朱子の瞳は一瞬揺れるそうだ、これは結局のあたしの感情の問題だその事で、森羅様にご迷惑を掛ける事などあってはならないそう思い、錬の言葉に甘えようと思ったが「休んできなよ。仕事の事なら大丈夫だよベニ、美鳩さんだっているし・・・イタチくんだっているんだから。」「・・・!!!」それは、何気ない南斗星の一言南斗星は純粋な性格だ、イタチと朱子の雰囲気がおかしい事もわかっていただから、南斗星は二人の仲を改善させる為にイタチの名前を出したイタチくんはベニの敵なんかじゃない、頼っていい味方なんだよただその事だけを、南斗星は言いたかったのだがそれは、完全に逆効果だった南斗星の一言で、朱子に完全に火がついた「・・・やっぱ、休憩はなし。南斗星、あんたも仕事に戻りなさい・・・」「おい、ベニ公!」「下男も仕事に戻りなさい。大丈夫よ、あたしの体はそんなヤワじゃないわ。」そう言って、朱子は二人に背を向ける・・・確かにね、下男・・・あんたの言う通りよ。ここであたしが無理をしても・・・森羅様は決して喜ばないでしょうね・・・・・・でもね、例え森羅様の名前を出されても・・・これだけは譲れない・・・・・・これはあたしの・・・あたしの、プライドに関わる事だから・・・・・・絶対に、これだけは妥協する訳にはいかないから・・・・・・だから、これだけは譲れないの・・・そう思って、朱子が仕事に戻ろうとすると「鳩チョップ!」「・・・が!は・・・」その瞬間、朱子の首筋に衝撃が走るそこで、朱子の意識は途切れドサっと倒れた「鳩ねえ!何を・・・!!」「気絶させただけです。私としてはベニちゃんが倒れようと些細な問題ですが・・・久遠寺家の使用人としては、同僚の無理は見過ごせませんから。」「・・・鳩ねえ。」「南斗星さん、お手数ですがベニちゃんを部屋で寝かせて上げておいて下さい。無理しすぎて倒れたと言えば、流石に今後は無理をしないでしょう。」「うん、分かった。・・・それと、ありがとう。ベニを止めてくれて。」朱子を抱きとめながら、南斗星は美鳩に微笑みながら礼を言った「クルックー、お礼を言われる程じゃありません。」「でも、流石は鳩ねえだ。俺たちに出来ない事を平然とやってのける、そこに痺れる憧れるー!!!」「ああんレンちゃん!レンちゃんのその言葉だけで、お姉ちゃんはエクスタシーに達してしまいそうですー!!!」「・・・ははは・・・」朱子を南斗星に任せて、錬と美鳩は各々の仕事に就くそして、美鳩はポツリと呟いた「・・・流石に、これ以上は見過ごせませんね・・・」「・・・と、いう訳でベニちゃんと仲直りして下さい。」「いきなりお前は何を言っている。」美鳩は、屋敷の警備中だったイタチを捕まえていた「流石に、ここ数日の貴方たちの雰囲気は目に余るものが有ります。このままで行ったら、久遠寺家をクビになるかもしれませんよ?」「・・・ふむ・・・」その言葉を聞いて、イタチは流石に考えた確かにそれは自分の本意ではない「だが、なぜヤツが俺を目の仇にしているのかが・・・俺には分からん。」「・・・本気で言っているんですか?」「冗談に見えるか?」「残念ながら、見えません。」この男は、あくまで真面目に自分の考えを言っているだから尚の事問題なのだと、美鳩は溜息を吐く「本来は自分で考えろと言いたいところですが、それでは永遠にこの問題は解決されないでしょうから理由を教えます。ずばり、原因は貴方の料理と発言です。」「・・・なに?」意外だったのか、イタチの顔は一瞬呆ける「ベニちゃんみたいに、今まで料理一筋の人間が「お前の料理なら出来そうだったから作った」なんて言われれば、誰だって怒りますよ~。しかもベニちゃんは人一倍気が短いんですから、これは明らかに貴方の落ち度ですよ~。まあ、いつまでも根に持っているベニちゃんにも問題はありますが・・・」「・・・待て、俺はあいつを侮辱した意味でそう言った訳ではないぞ?」「・・・何ですって?」「そもそも、なぜ俺が朱子の料理を作ったというと・・・」イタチは、美鳩に説明をする美鳩はイタチの一言一言を聞き、吟味し、事の真相を理解して「と、いう訳だ。」「・・・・・・」イタチの説明が終わる美鳩は、笑顔のままイタチを見つめ「鳩デコピーン!」イタチの額に、炸裂音が響く「・・・何をする?」「やっぱり痛いですー!凄く痛いですー!爪が骨と一緒に割れそうですー!貴方のおデコは一体何で出来ているんですか!? オルハルコンでも仕込んでいるんですか!?」右手の中指を擦りながら、美鳩は「よよよ」と涙目で訴える「とにかくイタチさん、南斗星さんとの一件でも思っていましたが・・・貴方は絶対的に言葉が足りません!」「・・・そうか?」「そうです、ですからベニちゃんにさっきの内容を・・・そうですね、ざっと三倍増しで懇切丁寧に言って上げて下さい。そうすれば・・・少なくとも、互いの誤解は解けます。」有無を言わせぬ迫力で、美鳩が言うそう言って、美鳩は言葉を締めくくりとりあえず、イタチは納得し美鳩の言葉を聞き入れる時間は過ぎていった夜、ベニスは屋敷の屋根の上にいたここから見える景色は絶景だ、朱子が一ヶ月ほど前から見つけてちょくちょく来ているお気に入りのスポットだしかし、相変わらず朱子の心は晴れなかった「何なのよ、アイツ」憤怒の気持ちを込めて呟くあれから、より一層自分は自分の料理技術を高めようとしたあいつが私の模倣をしているだけの、ただの猿真似なら、真似できない程に自分の技術を高めればよいと思っただけど、それで結局周りに迷惑を掛けることになった気がついたら、私は自分の部屋のベッドに寝かされていて南斗星が傍に付き添っていた南斗星に話によると、三人と話した後に急に私は倒れたらしいその後、下男にハル、鳩に大佐・・・ミューさんとデニーロにまで心配されて私は居た堪れなくなった結局、無理した分が私自身に降りかかってきたのだ「・・・ちっくしょう・・・」悔しかった、私の積み重ねていた技術をあっさり再現される事が・・・憎かった、初見の相手にたやすく模倣されてしまう、私自身が・・・そしてその結果、周りに迷惑をかけて、心配を掛けさせた事が・・・私の存在意義を、否定された様な気分だった「ここにいたか。」不意に、声を掛けられた視線を移すと、そこにはイタチがいた「・・・あんた、何してるのよ?」「・・・見回りだ、たまたまお前の姿を見かけたのでな。」「・・・そ、ならさっさと仕事に戻れば?」そっけなく、私は言う内心では腸が煮えくり返そうだったが、必死で自制する「いや、俺はお前に話すことがある。」「・・・私はあんたと話す事なんてないわ」「なら、これから話す事はただの独り言だ。」むかつくヤツ私は立ち上がって、イタチに背をむけるこいつの顔を、見たくなかった「朱子は、今まで必死に料理の勉強をしてきた。」「・・・!!!」「そして苦労した得た技術を、俺の様な人間にあっさり再現されては・・・さぞ悔しいだろうな。」「分かったような口きいてんじゃねえぇ!!!!」我慢出来ず、私はイタチに掴みかかった「テメェに何が分かる!? あたしの何が分かる!!? あたしが今までどれだけ料理に掛けてきたか分かんのか!!? あたしが今までどんだけ苦労して! 努力して! 腕を磨いてきたかテメェに分かんのかぁ!?」「・・・そうだな。」「料理はあたしの誇りだ!あたしの全てだ! テメェにあたしの気持ちが分かんのか!? 今までの自分の誇りを!全てを! ものの数時間程度でテメエにあっさり実演されたあたしの気持ちが分かんのか!分かるなんて言わせない・・・分かってたまるかああぁ!!!」一度言葉が口から出てしまうと、感情が溢れて、止まらなかった「どうせ、テメエはここにあたしのご機嫌を取りにきただけだろ! 本当はあたしの事を心の中では見下してんだろ!? テメェみたいに他人の猿真似をするだけで、あっさり他人の技を自分の技に出来る人間なんかにしたら・・・あたしは体の良いカモにしか見えねえんだろ!! 『お前の料理だったら出来そうだった?』ふざけんなああああぁぁぁぁ!!! 猿真似野郎が、あたしを見下してんじゃねええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!」今まで心の中に溜めていた鬱憤を、叫びと共に一気に吐き出したそして、私は泣きたくなったこんなのは、全然「雅」じゃないきっと森羅様なら、イタチの猿真似なんか微笑みながら軽く受け流しただろうきっと森羅様なら、己の実力のみでイタチの模倣を圧倒しただろうでも、私にはどちらも出来なかった所詮、私はこの程度なのかと思ったヒステリックに見苦しく喚き散らすのが、私の限界なのかと思ったそう思うと・・・私は無性に泣きたくなった「猿真似、か・・・確かにそうだな・・・」私が呼吸を整えていると、イタチが口を開いた「確かに、俺が得意とするところは・・・結局、ただの猿真似だ。「その気」になれば、俺はお前の料理を寸分違わず再現できるだろう。」「・・・何よ、結局あたしの言うとおりじゃない・・・」恨みがましく私が言うと、イタチは再び口を開いた「・・・俺のこの模倣技術は、元々父から教わったものだ。・・・そして、父は俺にこの模倣技術を扱う際の心構えを教えた。」そう言って、イタチは目を瞑った俺は目を瞑って、写輪眼が開眼した時の事を思い出していた――まさか、僅か八歳で写輪眼に目覚めるとはな・・・流石は俺の子だ――――良いかイタチ、今からお前は写輪眼という新しい武器を持って任務に当たる事になる――――だから、お前に写輪眼を扱う際の心構えを教えよう――――心して聞け――――それは――「それは相手を敬う事、そして誇りに思うこと。それが父の言った心構えだ。」「・・・は?」朱子が俺の言葉に僅かに唖然とするが、俺は言葉を続ける――お前のその両目・「写輪眼」に刻み付けられた情報は、生涯消える事は無い・・・どんなに素晴らしい技術でも、忌むべき禁術でも――――己で律する事は出来ても、決して消える事はない――――イタチよ、お前はこれから先・・・任務を成功させる為、仲間を守る為、そして里を守る為に、幾度と無く写輪眼を使うだろう――――そして、それによって得た情報はお前が好む、好まざるを選らず、お前の写輪眼に刻まれて・・・お前の血肉となるだろう――――そして、写輪眼に刻まれた技術・情報の中には・・・お前にとって耐え難いものがあるかもしれない――――お前はソレを得た事を呪うかもしれない・・・お前は、写輪眼を持った事を心の底から後悔するかもしれない――――だからイタチ、写輪眼を使う時は・・・相手を心から尊敬し、敬意を持て――――そして、光栄に思え、誇りに思え、お前の糧となり血肉となった技術を――――そして、お前の糧となった相手自身を・・・心の底から尊敬しろ――――そうすれば、少なくともお前は間違わない、迷わない、後悔しない――――だからイタチ――――それを努々忘れるな――・・・結局、抜け忍となり・・・目標を達成する為に、生き抜くために、父の言う事を破ってしまったがな・・・俺は、心の中で苦笑したそして、表情を直して朱子と再び向かい合う「食事を作るとき、俺は真っ先にお前の料理が思い浮かんだ。それは作り易かったからではない・・・お前の作ったものが一番美味かったからだ。だから俺は覚えていた、再現したいと思った。」「・・・・・・」「そして、俺は自分で望んでお前の技術を得た。お前の技術は俺の糧となり、血肉になる。確かにお前からすれば面白くなかっただろう、悔しかっただろう、自分の努力を、誇りを、蔑ろにされたと思っただろう。」だから、俺はキチンと自分の気持ちを伝える「お前から見れば、俺はお前を見下している様に見えるかもしれんが・・・それは違う。」それが、美鳩に言われた俺の義務だ「お前の事を、俺は心から尊敬している。」「・・・・・・」「そして、誇りに思っている。お前の技術を得られた事を光栄に思っている・・・その事を、お前に伝えておきたかった。」そして、俺は朱子に背を向ける言いたい事は全て言った、もう話すべきことはなかったからだ仕事に戻ろうと、歩みを進めたところで「バーカ、調子に乗ってんじゃねえ。」後ろから、声を掛けられた「さっきから聞いてりゃあ、なに、アンタあの程度であたしの技を盗んだつもり? バッカじゃない、自惚れも甚だしいわ。確かに多少は上手く真似できたみたいだけど、ダメね。あの程度じゃ全然ダメよ・・・まあ、良いとこ85点ってところね。」「・・・そうか。」「一つ言っておくけど、私はあんたの事今でも気にいらないし、目障りだと思ってる。」「手厳しいな。」「・・・でも、そもそも原因はあたしが皆の食事を作れなかったのが原因だもんね。あたしの代わりに皆の食事を・・・森羅様をも満足してくれた食事を作ってくれたあんたに感謝こそはしても、怒鳴ったのは・・・我ながら筋違いだったわ・・・」「・・・そうか」俺は振り返って返事をするそして朱子と向かい合う「だから、これでお互い言いっこなし。」朱子は微笑んで俺に言ったしかし、すぐにいつもの顰め面にもどり「言っとくけど、あたしはアンタに謝んないわよ。あたしの技を無断で勝手に拝借したんだから・・・本来は使用料及び購入費及び著作権侵害の三コンボで諭吉100人は請求したいんだからね。寛大な処置に感謝しなさい。」ふう、ようやくいつもの調子が戻ったか「ああ、そうだな・・・感謝する。」「そ、じゃああたしはもう寝るわ、おやすみ。」「ああ、おやすみ。」そう言って、俺は中庭へ飛び降りた「・・・そうか、二人は和解したか。」「少なくとも、あの険悪な雰囲気は無くなると思いますよー。」「そうね、報告ご苦労さま美鳩。」美鳩はイタチと朱子の和解を報告し、一礼をして退出する。森羅、未有、夢の三人と大佐は安堵したかの様に息を吐いたそして場の空気が緩んだところで、大佐が尋ねる「それで、どうなさいますか森羅さま? そろそろイタチの奴に結果を出してみては?」「・・・そうだな。」森羅、未有、夢の三人は互いに目配せをする「・・・イタチのヤツは無表情で愛想もないし、錬と違ってからかい甲斐がない。」「おまけに口数が少なくて、今回の様な誤解を招くこともしばしば・・・」「しかも、イタチさんがいる間は・・・毎日の様に揚羽ちゃんと小十郎くんが家に押しかけて来て大変だったね。」「極めつけは、何より怪しい。身元不明、身分証なし、得体の知れない事この上無い。」三人は思い思いの意見を出して苦笑するしかし「・・・だが、錬とは違った意味で面白い。」「性格は真面目、仕事は優秀、料理も出来る。」「南斗星さんたちとも、少しずつ打ち解けて馴染んできてる。」「しかも、腕が立つ。大佐や南斗星、九鬼揚羽をも凌ぐ実力は正に圧巻だ。」「模倣技術も大したものだわ、器用な上に万能。」「いやー、ここまで来ると流石の夢も、霞んで見えちゃうよ。」「全員、答えは同じ様だな。」クスリと森羅は微笑えんで、三人は頷くそして、声を高らかに宣言する「それでは、『うちはイタチ・久遠寺家使用人正式採用決議案』を、今この時をもって可決とする!!」「「異議なし!!!」」三人は、揃って微笑むそして、森羅は確認をとる様に夢に尋ねる「・・・そう言えば夢、そろそろ春休みだったな?」「うん、明後日からね。」「・・・また何かの悪巧み?」「なぁに、最近我が家でもゴタゴタが続いたからな・・・偶には羽を伸ばさないとな。」「・・・と、言いますと?」大佐が尋ねると、森羅はニヤリと笑って「来週からは、バカンスだ。」続く後書き とりあえず、イタチと朱子は和解しました。あと本編におけるイタチの父親の写輪眼うんぬんの話は、自分で考えて作ったものです。 一応補足としての説明をすると、イタチが原作で常時写輪眼だったのは「サスケと闘って死ぬ」事を第一目標にしていた為、万が一にも他の要因で死ぬ訳にはいかず、常日頃から念には念を入れて写輪眼にしていたという設定です。沢山の感想、ありがとうございます! これを励みにこれからも頑張りたいと思います!!次回は、南の島でのバカンス編です! どうぞよろしく!!!