イタチが久遠寺家の使用人となって五日目最初は掃除などの勝手がイマイチ掴めず、少々苦労する場面等もあったが今では大方の手順や勝手を理解し、元々高かった仕事能率は格段に上がりその仕事振りは、森羅が長年自分に仕えてくれている朱子にも、決して引けをとらないと太鼓判を押すほどだったそしてイタチの人間関係に関しても、改善の方向へ向かっていた元々、森羅、未有、夢の三人はイタチが起こした事については、イタチがキチンと謝罪してくれた時点でその問題の決着は着いたつもりでいたし美鳩もイタチの誠意を感じ取って、それ以上の問題追及はせず、同僚としてイタチのフォローに回ったり南斗星も安易な決め付けは良くないと、己で反省して警備の事についてイタチに教授したりまた、イタチと一番打ち解けているのは意外にもハルだった切っ掛けは、イタチが久遠寺家の使用人となって三日目の事夢の見送りから屋敷に戻ったイタチは、久遠寺家内の客間の清掃を任されたイタチとて、何もこの手の仕事が始めてという訳ではない木の葉の忍時代、潜入を目的とする任務においてターゲットの屋敷に使用人として潜り込む事が、何度かあったそして、より任務の成功率を上げるには優秀な使用人を演じる必要があった潜入を目的とする任務は、大抵が情報収集を行う為だだから相手に自分が忍である事を悟らせない為には、完璧な使用人を演じる必要があっただから、自然と清掃のやり方を覚えたそして、いざ掃除を始めていると・・・「ダメですよー!そんなに乱暴に磨いちゃあぁ!!」イタチのその声の発信源に目を向ける、そこには自分と同じ使用人の少年・ハルがいた「いいですか? まずこの絨毯は冷水を用意して、こっちの専用洗剤を冷水に混ぜた後・・・こっちの軟性素材の雑巾に染み込ませて、色落ちしない様に軽く丁寧に・・・」そう言って、ハルはイタチの前でテキパキと掃除を進め「・・・それで、仕上げに乾拭きでさっと拭いて・・・」「ふむ、ふむ、なるほど・・・」「ね、全然違うでしょ。拭き方一つで、凄く綺麗にできるんですよ。」「確かに、これは凄いな・・・なるほど、参考になる。」イタチは、素直に感心していた確かに、自分の行った清掃の存在を疑ってしまう程に、その在り方は違うこの少年が自分がいた世界の大名に仕える使用人でも、決してその名に恥じないだろうそれほど、ハルの仕事は素晴らしいものだった「分かりましたね?それでは次にこっちソファーですが・・・」と、そこでハルは言葉を区切って、急に顔を引き攣らせるそして、汗をダラダラ流しながらイタチと向き合った「・・・どうした?」「ぐ、が、ぐぉ、ごごご、ごめんなさい!僕なんかが偉そうな口をきいて!!」「???」先程の自信満々の態度から一転、急に卑屈なこの態度感情が先走っての行動だったのかどうやら、今までの自分を行動の事を指している様だ「・・・何をそんなに卑屈になる? お前の仕事は贔屓目なしで素晴らしいものだったぞ、それに教え方も分かりやすい。堂々と、胸を張れば良い。」「・・・え?」「なるほど、掃除など汚れが落ちればそれで良いと考えていたが・・・絨毯の色落ちか、汚れを落とした後の事など考えていなかったな・・・」ハルは呆然とする怒りが向けられると思ったのに、それどころか自分が感謝されているからだ「大いに参考になった、感謝する・・・お陰で恥を晒さずに済んだ。」「あ、はい・・・どうも。」「ああ、そうだ・・・こっちのドアの取っ手なんだが、見た処これは銀製か? 普通に拭いていいのか?」「え、あ・・・それは、こちらのシルバーダスターを使って・・・」ハルが一つ一つの手順を説明する度に、イタチは感心していたハルが掃除の技術を教えている事に対してではない確か、この少年・ハルはこの屋敷の清掃主体の仕事を任されていている使用人だった筈だこの屋敷の清潔感は、イタチの目から見て完璧なものだ手を抜いて、手順や手間を無視した清掃では、ここまで屋敷を綺麗にする事はできないだろうましてや、この屋敷の広さは相当なものだただ掃除するだけでも、その労力は決して軽くはない筈だつまりは、そういう事だこの少年は、テキパキと自分に掃除の手順を教え、淀みなく行動に移している少なくともこの少年は、その手順を忠実に守って、手間暇を掛けて、毎日仕事に励んでいるという何よりの証拠それは決して容易な事ではないだからこの少年の働きは、尊敬に値するものだ「なるほど、粗方の手順は分かった。済まないな、態々面倒な事を頼んでしまって。」「いえいえ、僕が好きでやった事ですから気にしないで下さい。」「・・・そうか、分かった。おかげで、一人でも何とかなりそうだ。」そう言って、イタチは続きを行う為に掃除道具を持つと「あの、イタチさん!!」「何だ?」再び声を掛けられて、イタチが視線をハルに移すと「ゴメンなさい!!」突然、謝りだした「・・・急にどうした?」「僕、イタチさんの事を良く知りもしないのに・・・一人で勝手に恐がって、変な態度で接して・・・森羅様達にも先日の事は決着は着いたって言われてたのに、イタチさんもちゃんと謝ってくれたのに・・・僕はいつまでも気にしてて・・・」「・・・まあ、仕方あるまい。それだけの事をした自覚はあるからな。」「でも! 今までのイタチさんを見て、そんな僕は間違っていると悟りました! あんなに真面目に掃除と向き合ってくれる人が、悪い人の筈がありません!! だから、謝りたいんです!! 言わばこれは僕のケジメです!! 本当に、本当にすみませんでした!!!」そう言って、再びハルはイタチに深々と頭を下げて、謝罪した「・・・別に、気にはしていない。それよりも、頭を上げて貰いたい・・・こんな所を他の人間に見られたら誤解されそうだ。」「あ、ご、ごごご!ごめんなさぁい!」ハルは慌てて顔を上げて再び謝り、イタチは相も変わらずの表情であったが両者の空気は、どこか柔らかいものとなっていたこうして、イタチとハルはすんなりと打ち解けたのであった第六話「シェフは忍者?」大佐は自室にて、パソコンと向かい合っていたマウスを動かして、クリックするメールの受信フォルダだ大佐のパソコンに送られてくるメール種類は、大別すると二つある一つは、久遠寺家に関する物家長の森羅は幾ら威厳ある当主とはいえ、まだ若いそれに指揮者としての仕事に誇りを持っているため、大佐は森羅の負担を少しでも減らす為に大抵の久遠寺に関する仕事は、一旦大佐の下に届く様にしているもう一つは、大佐のプライベートに関する物だフォルダを開いて、まず久遠寺に関するメールのチェックを行う全てのメールに目を通し、森羅に相談する物や、自身で処理する物を分別するそして久遠寺のメールを全てチェックをし終えた後、今度はプライベートのメールのチェックを行う「・・・む?」大佐の手が止まるディスプレイに映るのは、ある自分宛の一通のメール嘗ての傭兵時代・よく世話になった情報屋からのメールだったそこに書かれた内容は、極めて単純『収穫なし。』「・・・むぅ・・・」大佐は唸る様に呟く大佐は森羅がイタチを家に置くと言った時、自分の勝率を僅かにでも上げる為イタチの事を調べた確かに、ここ数日間のイタチの仕事振りは目を見張るものがあるし使用人の間でも、美鳩、南斗星、ハル、この三人とは徐々に打ち解け始めている森羅の、人の本質を見抜く目は確かなものだしかし、だからと言って楽観視は出来ないあの男からは、血の匂いを感じるそれは森羅ですら気付いていない、大佐のみが気付いている事実大佐は、イタチについて考えたイタチの戦闘力・戦闘方法から大佐は、イタチはただの一般人ではなくどこかの組織に属する武闘派構成員、又は自分と同じ様に傭兵の様な仕事を生業にしていた人間だと考えていたイタチの戦闘技法は、錬の喧嘩スタイルとも、南斗星のムエタイとも、九鬼揚羽の古武術とも異なる相手の急所を性格に狙い、相手に「勝つ」のではなく相手を「倒す」事を目的とした武術嘗ての傭兵仲間が使うものが、一番近い様に思えたしかし、大佐の持つコネ、人脈を利用しイタチの素性を調べただが、目ぼしい結果は得られなかっただから大佐は嘗て世話になった情報屋と連絡をとり、イタチの顔写真と名前や分かり得る情報を送り、イタチに関して調べてもらったのであるだが、どうやら収穫はないらしい「・・・ぬぅ、ヤツでも調べがつかんとは・・・」大佐は思わず眉を顰めるあの情報屋は裏社会にもそれなりに顔が効き、自分が知りうる限りでは一番の情報収集力を持っていた筈だその事から考えられるのは、大きく三つイタチは、今まで特定の組織に属した事のないとある理由で、その存在を示すデータは根絶されている並大抵の事では調べる事すら出来ない、深い闇に関係している一つ目ならともかく、後二つはマズイイタチ自身が危険でなくとも、イタチに関わったという理由だけでこの屋敷に危険が降りかかる可能性があるからだまあ唯一の救いは、イタチが警察から指名手配を受けている犯罪者・テロリストの類ではない事だが・・・大佐は、自室に設置してある電話を取る番号を押して、受話器からコール音が響く「もしもし、田尻という者だが・・・ああそうだ、橘のヤツに代わってくれ。」用件を伝えると、受話器からメロディーが流れ、不意に切れる『今電話を変わった、耕か?』「うむ、先日頼んだ件について電話をしたのだが・・・何か分かったか幾蔵?」『ああ、例のイタチとか言う襲撃者についてか。一応出来うる限り軍の関係者を調べておいたが該当データはなかったな。我の権限を持っても調べがつかないところを見ると、少なくとも海軍関係者ではないな。同期で顔が利く連中にも調べを頼んだが、余り期待はできんな。』「・・・そうか、面倒を押し付けて済まないな。」『気にするな、貴様には傭兵時代に色々と私用で働いて貰ったからな。・・・それに、貴様を討ち取ったその男にも、我自身興味がある。今度暇を見つけたら、そちらに顔を出そう。』「・・・別に構わんが、戦艦で突っ込んでくるなよ?」『ふははは! そいつは約束できんな! それじゃあ、新しい情報が分かったらこちらから連絡する。』「ああ、頼む。」そう言って、大佐は電話を切るとりあえず、今後の新しい情報が入るのは難しそうだ「・・・ふぅ、仕事に戻るか。」大佐はパソコンをシャットダウンさせて、部屋を出た「・・・む、どうしたんだ小僧?」「あ、大佐」大佐が部屋から出て一階に向かうと、電話の前で森羅と夢、そして使用人達が集まっていた「森羅様、どうかなさったのですか?」「大佐か、いや大した事ではないのだが・・・今日の夕食を作る人間がいなくなってしまったのだ。」「・・・何ですと?」大佐が僅かに驚くそういえば、朱子は今日は暇を貰って県外の気になるレストランに料理研究してくると言っていたそして未有様と美鳩は少し遠出して買い物をしてくると言って、午後から出て行っただが、両者共に夕食には戻ってくると言っていた筈だ「何か、電車で人身事故があって止まっちゃったらしいんですよ。」「なに、人身事故だと?」疑問を浮べていた大佐にハルが告げる「さっきミューさんから電話があって、帰りの電車に乗ろうとした矢先に電車が止まっちまったらしい・・・復旧の目途は立ってないから、多分夕食には間に合わないって。」「ベニからも電話があって、同じような事を言っていた。ミューの奴に早めに帰ってくるようにと電話をしようとした所、皆とここで鉢合わせた訳だ。」「・・・なるほど・・・」大佐が合点がいった様に呟くこの家で主な食事担当は朱子と美鳩の二人だそして、たまに二人のサポートとして手伝う未有この三人が揃って帰ってこれなくなったのだ確かに、残った面子は自分を含めて料理には疎い人間ばかりだ「確かに、これは少々面倒な事態ですな。」「・・・ま、こういう事もあるさ。何も夕食が食べられなくなった訳ではない、外食に行くなり出前を取るなり、幾らでも手はある。」森羅はそう言って、皆の希望を聞こうとしたところ・・・「・・・こんな所で何をしている?」一同が声の発信源に視線を移すそこには、ダンボール箱を抱えたイタチが立っていた「あ、イタチくん。ちょっと今晩の夕飯について話していたんだよ。」「夕飯? まあ良い。大佐、貴方宛に荷物だ。応対は俺がやっといた。」「む?そうか、ご苦労。」「それで、夕飯がどうしたんだ?」「・・・あ、それはね~」イタチが尋ねると、イタチの隣にいた夢が説明するそして、大体の事態を理解すると「・・・なるほど、それで皆が集まっていた・・・と。」「まあ、そういう事だな。まあ、今日の夕食は外にでも食べに行こうと・・・」大佐がこれからの予定を説明しようとすると、「なら、俺が作ろう。」と、イタチは言った「「「「「「はぁ???」」」」」」皆の声が重なるそれは、全員イタチの発言に対してのものだった「作る人間がいないのなら、代わりに作れる人間がやるのが道理だろう。」「・・・まあ、確かにそうだが・・・お前、料理できるのか?」「調理技術の心得はある、それに一時期は自炊をしていた。」大佐の問いに、イタチは淀みなく答えるあくまで自然体で話すイタチを見て、ハッタリでは無いと実感するが「お前がそこまで言うのなら、ある程度は出来るんだろうが・・・ここの家の者は、朱子や美鳩の料理を食べているんだぞ? 普通に出来る程度なら、話にもならんぞ?」森羅が僅かに目を鋭くし、イタチに尋ねる朱子は幼少時代から料理店で下働きをしていて、プロ顔負けの調理技術を持っているし美鳩も、長い間上杉家の食事を作っていた為、朱子に近い調理技術をもっているそんな二人の料理を食べ慣れている久遠寺家の面々には、並みの料理では少々物足りない食事になるだろうしかしイタチは「なら、あの二人と同じ程度の味の食事なら文句はない・・・という訳ですね?」「ああ・・・って、おい、お前まさか!!」森羅が驚いた表情をするが、イタチは表情を変えず「それなら問題ない。」と言った数分後、イタチは執事服の上から灰色のシンプルなエプロンを着けて、台所に立っていた先程のイタチの言葉、ある程度の料理は出来るこれは、間違いではない木の葉のアカデミー時代、基本的なサバイバル技術で簡単な料理と調理方法を学んだ事もあるし母親が用事で作れない時には、自分が家族の食事を作っていたし木の葉の抜け忍になった後も、多々自炊する事もあっただが、イタチの調理技術はそれほど高くはないだから、イタチは調理技術の底上げをするイタチは目を瞑って、イメージするイメージするのは、自分がここで食べた料理の数々その中で、自分が再現できる物を適当にピックアップする通常、忍者は五感を余す事なく鍛える勿論、味覚も例外ではないむしろ、味覚を一番重要視して鍛錬する忍も多いその理由は、毒どんな忍でも、毒物を体内に摂取してしまってはその体に強い影響が出るし、毒物によっては死に至るこれは、イタチにも言える事だだから忍は、そういう物を口には含まないように嗅覚、そして味覚を鍛える近年、忍が扱う薬品のレベルはあがりほんの数滴で人一人を簡単に死に至らしめる無味無臭の毒など、腐るほどある毒の使用方法の主な方法として、料理に混ぜる方法がある毒が混じった料理等を摂取しないために、摂取しても舌が鋭敏に反応するように味覚を鍛えるでは、これが調理にどう繋がるか?答えは簡単。覚えて、再現する濃厚な味の料理に潜む、無味無臭の微かな毒の違和感を見つける事に比べれば「味」の塊である料理に使われた食材の特定など、決して不可能ではない通常、これらは可能でも時間と手間が掛かるが、今は違うまずイタチは屋敷のゴミ掃除もしているので、料理に使われた生ゴミは毎日見ているそれらを覚えていれば、大まかな材料は特定できる後は、それがどういう料理か覚えていれば簡単だ肉を食べた事を覚えていれば、同じ肉を使えばいいし野菜を食べた事を覚えていれば、同じ野菜を使えばいい食材がなければ、補充すればいいあとは、料理その物の味出来るだけ正確に、どんな味だったかを思い出す辛かったか? 甘かったか? 味は濃かったか? 薄かったか?どんな匂いだったか? どんな食感だったか? どんな歯応えだったか? どんな舌触りだったか?それらを、出来るだけ正確に思い出して、イメージするゆっくりと、目を開けるイタチは調理を始めた「出来たぞ」イタチが使用人の皆に伝える予定よりも三十分ほど出来るのが遅くなったが、まあ許容範囲だろう南斗星とハルに手伝って貰って、料理をテーブルに運ぶ「思ったよりも手こずってな、遅くなった。量は多めに作っておいたから、お代わりしたいなら気にするな。」「ふむ、クリームシチューと付け合せのパンに、ポテトサラダか。」「朱子さんが前に作ったヤツに似てるね。」この料理は夢の言うとおり、朱子が数日前に作ったメニューであったイタチがこれを作った理由も、至って単純一番印象に残って、味を正確に思い出せたのがこの二品だったからだそれにシチューの様な煮込む料理は少しの失敗なら、大きく味は崩れないまた崩れても、味の調整が他の料理よりも簡単に出来るこれも、大きなポイントだったそして皆が食卓に揃う全員が揃って「いただきます」と言い、皆がスプーンを手にとって食べようとするが「・・・ふむ。」そんな中、森羅もシチューに手を伸ばすその顔は、不敵に笑っているその目はイタチに「妥協はせんぞ」と言っているようだったそんな森羅の顔を見て、思わず他の人間は手を止めてしまったそして森羅はスプーンで一口掬い、匂いを嗅ぐ「匂いは悪くないな・・・さて、味はどうかな?」そしてゆっくり、口に含んでテイスティングする様にゆっくり味わうそして、ゆっくりと飲み込む「・・・ほう・・・」「どうですか?」「くくく、なるほど・・・そう来たか」そして、愉快気に笑うイタチは食卓の皆に視線を移して「食べてみろ。」それが合図になり、皆はそれぞれ口に運んだ「・・・む、これは・・・!!」「うわぁ!美味しい!! イタチくん、すごく美味しいよ!」「凄いです! 朱子さんと同じくらい美味しいですー!」「ぐ、悔しいが・・・美味ぇ。」「イタチさんて、料理も上手いんだねー。」それぞれが、言葉こそは違うがイタチの料理を絶賛するそれは当然だ。これは朱子が作った味で、皆が以前食べた時も至って好評だったその味を、イタチは入念に時間を掛けて出来る限り、食材を一つ一つ吟味して、厳選し、その上で再現したもの再現するのに苦労をしたのは、それほど朱子の調理技術は高かったという事だそしてその事実に、気付いた者がいた「・・・おい、イタチ。」「何ですか?」食べる手を止めて、森羅が愉快気に尋ねる「これは、ベニの味だな?」「ええ、その通りです。自分なりに再現してみました。」「・・・やはりな。」特に隠す程の事では無かったので、イタチはサラリと事実を言うその言葉に、森羅は納得したかの様に呟いた「お気に召しませんでしたか?」「まさか。私が聞きたいのは、どうしてこんな手のこんだ真似をしたのかだ。」「食べ慣れた味の方が良いと思いましたので。」「・・・くっくっく、そうか・・・それで、どうしてここまでベニの料理を再現できた? ベニのヤツが自分のレシピを教えるとは考えにくいが?」イタチは水を一口飲んで「思い出して解析しただけです。」「ぷ、ぷくくくく・・・そうか!・・・お前、本当に面白いな!」愉快気に笑ったまま、森羅は食事を続けた皆も食べ終わり、食器の片づけをしていると「ただいま戻りましたー!!」「姉さん、帰ったわよ。」「レンちゃ~ん、ただいまです~。」玄関から帰宅を知らせる声が響くどうやら、朱子、未有、美鳩の三人が帰宅した様だった「おかえりなさいませ。災難でしたね、未有様。」「まあ、偶にはこういう日もあるわ。」未有が少し疲れた表情で言い、朱子が不安げに大佐に尋ねた「すいません大佐、食事の用意ができなくて・・・」「なに事故が原因では仕方あるまい、森羅様も気にはしておらん。」「そういえば結局、食事はどうなさったんですか? 外食ですか?」「イタチの奴が作った。」その言葉に、三人は驚いた様な表情を浮べた「あ、あいつが作ったんですか!」「・・・何気に万能ね。」「なるほどーイタチさんが~・・・それで、どうでした?」美鳩が大佐に尋ねると、大佐は「うむ」と頷いて「文句なしで美味かったな。森羅様もご満悦で、終始笑顔のまま食事をされていた程ですから。」「へぇ、あの味に五月蝿い姉さんを満足させるなんて・・・やるわね。」「そうですねー、意外にあの人は掘り出し物かもしれませんね~」「・・・大佐。」「何だ?」朱子が何かを考える様にして、大佐に尋ねた「あいつの料理、まだ残ってますか?」「ふむ・・・確かイタチのヤツは、三人が夕食を食べないで帰ってくる事も想定して、料理を別にしてとっておいた筈だ。」「じゃあ、食べさせて下さい。台所ですね?」「なら、私も頂こうかしら。食事は済ませてきたけど、単純に興味があるわ。」「クルックー、それなら鳩もご一緒しますねー。」そして、三人は台所に向かう台所に入ると、そこにはイタチがいた「おかえりなさいませ。」未有の姿を確認したイタチが軽く頭を下げるイタチはシチューを温め直していた「ただいま。ところで、何をしているの?」「玄関での会話が聞こえていたので、シチューを温めておきました。少々お待ち下さい。」そう言って、三人は居間のテーブルに座る程なくして、イタチが料理を運んで来た「どうぞ。」「ありがとう。・・・あら、美味そうじゃない。」「ですねー。」「んじゃ、早速貰うわよ。」そして、三人はシチューを口にする未有と美鳩は、驚いた様に呟いた「・・・うん、美味しいわ。確かにこれなら姉さんも納得する筈だわ。」「むむ、確かにこれは想像以上ですね~。鳩もウカウカしていられませんね~。」「・・・恐縮です。」二人の賛辞の言葉に、イタチは小さくお辞儀をするしかし二人とは対照的に、顔を顰める者がいた「・・・ねえ、イタチ。」「何だ朱子?」「この料理、どうやって作った?」「・・・ベニ?」朱子が物々しい雰囲気でイタチに尋ね、未有はその空気に何か不穏な物を感じるそして朱子の問いに、イタチが答えた「ああ、お前が作った物を再現した。」「・・・!!!」その言葉に、朱子の顔は驚愕に歪むそして、確認するかの様に呟く「・・・さい、げんしたぁ? レシピも残してないのに、どうやって再現できたのよ?」「前にお前がこの料理を作っただろ? 味を覚えて食材を分析して、あとはこっちで調整しただけだ。」「・・・んな!!」イタチの言葉に、朱子が驚愕し「ふざけた事を言ってんじゃねえ! そんな簡単にあたしの味を再現できてたまるかあぁ!!! あたしがこの味を出すのに、どんだけ苦労したと思ってるのよ!!!」「・・・何をそんなに興奮している?」「ベニ、少し落ち着きなさい。」「!!・・・すみません、ミューさん。」「そうですよ、お食事中は静かにするのがマナーですよ?」「鳩は黙ってろ。」未有と美鳩が朱子を諌めるが、朱子の様子は変わらないそしてイタチは顎に手を置いて「お前が何をそんなに怒っているのかは知らんが、どうやら俺がお前の料理を模倣した事が原因のようだな。」「・・・あん?」「誤解がない様に言っておく。俺がお前の料理を模倣したのは、別に他意はない・・・」そして、イタチは一息吐いて「お前の料理なら出来そうだったから、作っただけだ。」淡々と、朱子に告げ「・・・おい・・・」その瞬間、朱子の顔が歪み「今、何つった?」続く後書き 復帰早々、沢山の感想ありがとうございます!! なるべき定期的に更新できる様にこれからも頑張りたいと思います!! 次回は朱子がメインになると思います、これからもよろしくお願いします!!!