川神市・とある廃ビルそこに、年の功がおよそ15~16の少年少女達が集まっていた。「おーい、キャップ。そろそろ起きろ。」「…うん、起きたかな?」頭上から響くその声に、青年は目覚めた赤いバンダナをつけたキャップと呼ばれたその少年は、目を開けてムクリと起き上がった「……大和、京?…それにモロにガクト…ワン子もか。」キャップと呼ばれた青年が呟くと、それぞれは安堵したかの様に溜息を吐いた「…もう、ジュース買いに行くとか言って中々戻ってこないから…心配したんだからね。」「そうよ、おまけにこんな所で寝そべっているんだもの…私達の心配、返しなさいよ!」モロと呼ばれた前髪で片目を隠した色白の少年と、ワン子と呼ばれた栗色のポニーテールの髪の少女二人がそれぞれ、キャップに声を掛けるが…「む? ここで、寝てた?……俺がか?」「…おい、頭でも打ったんじゃねーか?」ガクトと呼ばれた筋肉質の体格をした青年が心配気に言うしかし、キャップという男は途端に目を見開いて「そうだ、思い出した!! おい、俺の傍に男が二人いなかったか!!?」「…男? どんな?」京と呼ばれた紫色のショートヘアーの少女が不思議そうに尋ねるすると、キャップと呼ばれた男は僅かに唸って「二人とも見た感じ俺らより年上だったな。一人は金髪でモモ先輩より一つ二つ年上って感じのヤツだ。もう一人は大学生くらいで黒い髪を後ろに束ねてた…あと、そいつはスーツを着てたな。Yシャツの上にVネックのベストみたいな黒地のスーツを着てた。」「とりあえず、そんなヤツ等はいなかったぜ。」大和と呼ばれた青年が答えるキャップの言葉を聞いて、ワン子と呼ばれた少女が疑問の声を上げた「それで、その二人がどうしたの?」「おう! 皆、今から俺が目撃したスゲー事を話すぞ! 驚きすぎて腰を抜かすんじゃないぞ!」「とりあえず、早く喋る事を希望する。」京が疲れた様に溜息を吐いて、皆が聞く姿勢を作るそして、キャップは「コホン」と咳払いして「俺がジュースを買って戻って来たら、何も無い空間からいきなり男が二人現れたんだ!!」一瞬の間「…は?」「目の前で、それもいきなりだぜ! たぶんアレは映画や漫画で見る『空間跳躍』ってヤツだ!どうだ、スゲーだろ!!流石の俺も驚いたぜ、あれは恐らく超能力者…いや、未知の能力を使う異世界人という事も有り得る!」嬉々とした表情で、キャップは語るその顔からは、溢れんばかりのワクワクという名のオーラが滲み出ている。「そして、俺がここで寝ていたという事は…恐らく、その二人は目撃者の俺を口封じしようと襲い掛かったが俺を気絶させた時に皆がここに来る気配を感じ取り、即座にここから逃げたに違いない!!くぅー突然の事で動揺していたとはいえ、あっさり俺を気絶させるとは……!!だが、このまま引き下がっているままの俺じゃない! ここからは俺のターンだ!逆にアイツらを追い詰めてやるぜ!!」そう言って、キャップは熱くこれまでの経緯を語るがそんなキャップを、皆は心配げな目で見て「どうしよう大和、これ病院に連れて行った方が良いよね。」「言ってやるな京。未だに夢と現実の境目が分かっていないんだ、頭を打った人には偶にあるらしい。」「…ん、大和、京、それどういう事?」大和と京の言葉に、ワン子は首を傾げ「……むぅ、肉弾戦なら負ける気はせんが…相手が未知の力を持っているとなると俺様も少々不安だぜ。」「って、こっちは完全に信じちゃっているしいぃ!!!」ガクトの言葉に、モロのツッコミの言葉が廃ビルに響いた。特別編・第二話「川神」川神院・院内そこで、とある少女は道着を身に纏い佇んでいた精神を集中させて、体中の気を練り上げそして、爆発させる。「ハァ!!!」空気を切り裂いて、衝撃が突き抜ける拳打によって圧縮された空圧が弾丸となり、空間を貫通する「……ふぅ。」一連の動作を終えて、少女は一息つく呼吸を整えながら、少女は数日前の出来事を思い返していた。●遡る事、数日前――川神市・川神院「それはどういう了見だ、揚羽さん?」「…百代か、久しいな。」揚羽は背後からの声に反応して、振り向く。そこには、揚羽の予想通りの人間がいた。黒い艶やかな長い髪同性の自分ですら時折見惚れてしまう美しい顔つき引き締められ、鍛え上げられ整った体鬼神の様な闘気川神院師範・川神鉄心の実の孫、そして自分の宿敵齢十六にして『武道四天王』の一人――川神百代――「もちろん、言葉通りの意味よ。そちらは、なにやら随分不満があるようだな。」「…今日は貴方が来ると聞いて、久しぶりに全力で闘いが楽しめると思っていたのだが…四天王の座を返上するとはどういう事ですか?」苛立ちを隠し、それでも眉間に僅かな皺を作りながら百代は言うそして、百代の言葉を聞いて揚羽は肩を竦める。「ふむ、その性分は相変わらずの様だな……いや、お前のそれはもはや業の領域か?」「ま、そう言っても過言じゃないな。高校に入って、少しは環境に変化があると思ったが…相も変わらずだ。私に挑戦してくる者は殆どが格下、若しくは徒党を組んだ雑魚やチンピラ…… 積もりに積もったこの欲求不満を、ようやく今日は解消できると思ったのだが…」そう言って、百代は目を鋭くして揚羽を見て「ちょっと、私は不機嫌になってしまったぞ。」殺気収束、研磨された殺気が周囲に広がり、その場にいる人間の肌を張りの様に突き刺し重いプレッシャーが、体に圧し掛かる。「ふふ、中々心地良い殺気だ。また腕を上げた様だな?」「それはこちらの台詞です。揚羽さんも相当腕を上げた様子で。しかも、そっちの小十郎さんは軽く一段階は腕が上がっているんじゃないのですか?」「お褒めの言葉、恐縮です百代殿。」百代の賛辞の言葉に小十郎は一礼をするが、百代の気配は未だ変わらず「それで、なぜ貴方が四天王を返上するんですか? せめて説明くらいはして下さい。」「無論。こちらは元よりそのつもりよ。」そして、揚羽は百代と鉄心その二人に、改めて向かい合って「我が四天王の座を返上する理由はただ一つ、それは更なる高みを目指すため。」その真剣な瞳と共に、揚羽は宣言した。「…更なる…」「…高みじゃと?」百代と鉄心の二人が、そう呟く揚羽は「ウム」と頷いて「我は先日、ある二人の武人の闘いを見た。」そして、語りだす。自分が見たある日の光景を、そして自分が抱いた気持ちを「あれは正に、武の頂に立つ者同士のみが出来る真の死闘。力と技を極めた者達が織り成す闘いの極致それを見ると同時に、我等は悟った…今のままでは、この先どれだけ鍛えようとあの者等の膝元にも及ばぬと。…我等には、「何か」が足りない…彼等と我等の一線を画す何かが、根本的な何かが足りないという事を悟りました。」「………」「我等は、それを知りたい。そして我等も彼等と同じ頂に立ちたい……そう思ったのだ。」その揚羽の言葉に、二人は驚愕した揚羽も『武道四天王』の一人であり、その力は同年代の中でもズバ抜けており川神院がその力を認める屈指の実力者である。そして、川神院に属する百代と鉄心はその事を誰よりも理解しているだからこそ、揚羽がその様に語る人物がいる事は予想外であったからだ。「今、我はその事に集中したい。それに当たり「武道四天王」の座は今の我にとっては足枷以外の何物でも無いと判断したのだ。暫くは、己を見つめ直し我等と彼等の違いを見つける事に専念しようと思います。」揚羽の言葉を聞いて、百代が尋ねる。「…それほど強いのか、そいつら?」「強いぞ。次元が違うというレベルでなく、我等とは「存在」そのものが異なる強さだ。」「……そうか。」そう言って、百代は目を瞑って肩を竦め「なにやら、随分面白そうな展開になってきたじゃないか。」不敵な笑みを浮べながら、百代は言った。そして、鉄心はその百代を困った様な視線で見て「全く、この孫はいつもコレじゃ…。」「五月蝿いぞジジイ。それで、その二人の武人とは誰だ? 松笠の橘平蔵か? それとも九鬼家の切り札と名高いヒューム・ヘルシングか?」「どちらも、ハズレよ。」揚羽は一呼吸の間を置いて「一人は鉄一族・鉄ミナト。」揚羽の言葉を聞いて、二人は驚愕で目を見開いた。「!!!……クロガネミナト、あの鉄一族始まって以来の天才と言われた…あの鉄ミナトか!?」「鉄ミナト……あの子か。…確かに、あの子なら有り得ない話では無いが…あの子はもう何年も前に武術を止めた筈…」百代が驚愕の言葉を、鉄心が驚きと疑問の言葉を上げるが二人の言葉に、揚羽が繋げる「ええ、我もそう聞いておりましたが……ですがそれは誤りだった様です。ヤツは間違いなく、武術と鍛錬を続けていました。そして、鉄一族最強の陣内殿を倒したと言われたあの頃よりも強くなっております……」揚羽はここで言葉を区切り、その戦闘、力、技それらを一つ一つ思い返して「…それも、圧倒的に…。」ハッキリと二人に宣言する一切の誇張と過大もなく、ただの事実として述べた意見そんな様子の揚羽を見て、二人はそれが純然たる事実だと言う事を確信した。「ふむ。四天王であるお前がそこまで言うのなら……なるほど、では新しい四天王の第一候補は鉄ミナトじゃな。」揚羽の言葉に、鉄心は一考して「ククク、なんだかゾクゾクしてくる話だなぁ。」百代は笑った。「それで、もう一人とは誰だ? 同じ鉄一族の鉄乙女か?」百代の質問に、揚羽は答えようとするが……不意に押し黙り、何かを考え込んで…「いや、もう一人の名は教える事が出来ん。」「…む、何故だ? ここまで来てお預けはないぞ?」「そうではない。もう一人はあまり戦いに関しては積極的な人間ではないのでな、少々ここで軽率にその名を出して良いものか考えたのだ。事実、我等がその者と手合わせを願い出た時、かなり渋られたからな。恩を仇で返す様な真似はあまりしたくないのだ。」揚羽は過去に、何度もイタチと手合わせを断られた時期があったその時はイタチの体が本調子でなく、病み上がりという事実があったのだが揚羽はそれを知る由もなく初めて出会った時から今日まで、手合わせをしてくれたのは両手の指で数えられる程度そして、それらの事実がイタチは他者との戦いに関しては消極的な人間と揚羽は思っていたのだ。「我がここでその者の素性を言えば、鉄心殿はともかく…百代は放ってはおけんだろう? そういう性分だからな。 それにその者は我等の様な気楽な学生とは違い、既に手に職を持つ身分。あまり先方に迷惑を掛ける事はしたくない。」「むぅ、なにやら酷い言われようだな……まあ、合っているが。」「ふむ、手に職を持っているという事は…既に成人以上の年齢かの?」「年は二十一と聞いております。」「なるほど、それじゃあ四天王入りはちと厳しいのう。」残念そうに、鉄心は呟く武道四天王は元々若者をより切磋琢磨させようと競争心・闘争心・向上心を刺激する為に川神鉄心が考案した物でありその縛りである年齢もいわゆる学生の年齢、大学卒業の二十二歳程度までと決めてあるのだ。「それでは、話も終わったゆえ我等はそろそろ失礼する。今は時間が惜しいのでな。」「うむ、ご苦労じゃった。それでは鉄ミナトに関しては、早速こちらから通達を出しておこう。」そして、この日はこれで終了となった。●一連のやり取りを思い返し、百代は笑った今日、件の鉄ミナトはここにやってくるあの九鬼揚羽にあそこまで言わせた人間が、ここにやってくる「鉄ミナト、嘗てはあのジジイや釈迦堂さんですらその才能と力を認めた神童。」拳打を繰り出し、蹴撃を放つ「そして、その鉄ミナトと同格の実力を持つ者がもう一人…」四肢を行使して、型を繰り出す「…フフフ、暫く退屈する事は…なさそうだ!!!」ダン、という轟音が響き百代は愉快気に笑った。川神市・金柳街「美味っ!! ナニコレ、美味すぎるよマジで!!」「白玉きなこアイス・黒蜜付けと言いましたね。アイスに白玉や黄粉と言った物を合わせるのはどうかと思いましたが…確かに、これは美味い。今度久遠寺家で作ってみても良いな。」二人は金柳街のある甘味処で、それぞれ甘味を楽しんでいたミナトが川神院に訪問する約束時刻まで、まだ時間があったからだ。そして甘味を楽しみながら、イタチは先程の一件について尋ねる。「…それで、本当に良かったのですか? あの少年は」「ま、軽く当身をやって気絶させただけだからね。下手に幻術を掛けるよりはよっぽど健全で建設的さ。人間ってのは意外に単純だから、目が覚めたら俺たちの事は忘れてるか、夢を見たと思うかのどちらかだと思うよ。仮に他人に話したとしても、忍術が存在しないこっちの世界じゃ笑い話になるのがオチさ。」「…なるほど。」お茶を啜って、ミナトが語るあの時見知らぬ青年に「飛雷神の術」を見られたミナトは、即座に少年に背後に回りこんで当身をして気絶させたのだ「……と、言うか…随分、手馴れていませんでした?」「ははは、これでも元・火影だよ? あれくらいの芸は出来るって。」「…まさか、良く『こういう事』があるのではないでしょうね?」イタチがミナトに尋ねると、ミナトは軽く笑って「ははは、今日は間が悪かっただけだって。」「まあ、それなら良いのですが…。」「ソウダヨー、ナニモ問題ナイヨー。」何故だろうイタチは盛大に不安になった。「……ん?」「どうしました?」二人が甘味を食べ終わり、お茶を啜って「さあ、川神院へ行こう。」という時になった時不意に、ミナトが声を上げた。イタチは何だと思い、一瞬辺りの警戒を更に強めるが…「いんや、何でもない。ちょっと見知った顔がいると思っただけ、大した事じゃないよ。」「…そうですか。」ミナトがそう言い、再びお茶を啜るイタチもそんなミナトを見て、それ以上の追求を止めるが「っていうか、さっきからイタチくん…神経質になりすぎじゃない?」「こちらに来てから、やたら視線を感じるので。」「……あー、確かに。こっちは七浜の高級住宅街とは違って執事服は珍しいからね。」納得したかの様に、ミナトは呟く今までイタチは自分の職場がある七浜から出た事は、以前の南の島を抜かせばほぼ皆無だった七浜…特に久遠寺家周辺は高級住宅街ゆえに、執事服やメイド服はあまり目立つ事はなかったが七浜とは環境が違う川神では、確かにイタチの様な執事服は目立つだろう「…ま、イタチくんは何だかんだで執事服が似合ってるからねー。顔も良いし、普通の人なら目が行っちゃうさー。」ミナトはイタチと会話しながら、チラリと周囲を見るそこには自分達、更にいうならイタチの方をチラチラと見る女学生グループの姿があった。「そうですか? 確かに以前、主様達には似合っているとは言われましたが…」「ま、こういうのはさっさと受け入れちゃった方が楽だよ。それに、視線の中にヤバイ視線が有っても俺達なら直ぐ気付くでしょ。イタチくんは元より、俺だって自分に向けられる殺気や視線、気配に気付かない程ボケてはないよ。」そう言って、ミナトはお茶を口に運ぶ「…まぁ、そうかもしれませんね。」イタチはそう締め括り、お茶を口に運んだ。「さて、そろそろ出ようか…それじゃあお会計しておくから。」「悪いですね、奢ってもらって」「ま、今回は俺の私用で付き合って貰ってる訳だからね。コレくらいの事はやんないと、それにこれでも俺の方が年上だしね。」「…そうですね。それではご馳走さまです。」そう言って、イタチはミナトに一礼する。ミナトは「別に良いって」と少し照れた様な仕草をしたが、イタチに向き合い「あ、それとイタチくん。少し用事を思い出したから先に川神院に行っててくれない? 川神院はここから見えるし、大丈夫でしょ? 後で追いつくからさ。」ミナトは川神院を指差しながら、イタチに言う川神院はその建物自体が大きいため、二人がいる甘味処からもその姿は良く見えていた「急用、ですか?」「ま、大した事じゃないけど…放っておくと、少し面倒くさい程度のものかな?」「……まあ、別に構いませんよ。」見たところ、まだ時間に余裕はあるしああも目的地が分かり易く見えているのなら、迷うこともないだろうイタチはそう自分の考えを纏めて、判断した。しかし、イタチは気付いていなかったミナトの口元が、楽しげに歪んでいたのを…●ミナトとイタチが居た甘味処から少し離れたとある場所その場所から、六人の少年少女が二人を見ていた「おい、もっと近づかないと見えねえぞ?」「ガクトの言うとおりだよ。京、もう少し近づけない?」物陰から人混みを通して、遠く離れた人物を見ながらガクトとモロが言うしかし、京はこの意見を却下した。「…ダメ。多分これ以上近づくと、あの二人に気付かれるよ。あの金髪の人、さっきこっちをチラっと見たからね……あれは多分、偶然じゃないと思う。あの二人、武術か何かやってるね。」「私も京と同じ意見ね。あの二人、相当武術をやり込んでるわよ。 さっきからアイス食べてるけど、全く隙が無いもの……確かに、これ以上近づけば危ないわね。」京の言葉にワン子が同意して、二人はこの位置のままでいる事を進言する。京とワン子はそれぞれ武術を嗜んでいる為、それらに対する嗅覚は確かなものその二人の決定に、大和は興味深く呟いた。「なるほど、この距離と人込みで気づかれるんなら……確かに、普通じゃないな。キャップの言う事も満更嘘でもないって訳か…。」「そうだろ大和! 全く、キャップである俺の言う事を疑うなんて…お前ら、風間ファミリーとしての自覚が足りないぞー!」キャップと呼ばれた青年が不満を顔に出しながら言うが、大和はそれを嗜める。「大声上げるなよ。下手に騒いだら気づかれるぞ。」「…む、確かにそうだな。」「それに、いきなり超能力者や異世界人の話をされても普通は信じないって。」「だな。」「いや、ガクトは思いっきり信じてたでしょ!」キャップの言葉に、モロとガクトが続き、モロの突っ込みが響く。あの後、キャップはあの二人を追撃すると言って廃ビルから飛び出し残りの五人は、キャップについていく事にしたのである。キャップの言う事を、正直言って信じてはいないがもしも、偶然にもキャップが言う人相と全く同じ人相の人間が居たら…下手をしたら、不味い事態になったりするかもしれないこのキャップは良い意味でも悪いでも、子供の様に純粋な興味と好奇心、そして行動力を持っている人間子供と言っても、基本的にキャップは物事の分別が出来る人間なので他人に迷惑を掛ける事はないが…好奇心と行動力が相まって、意図しない被害を作る事も偶にあったりなかったりする。こういう時は、彼が作った「風間ファミリー」である人間がストッパーとして同行するのだ。そしてつい先程、キャップが自分の記憶にある人相を持つ二人を発見したのである。「んで、どうすんだキャップ? 見つけたは良いが、こっから先の事とか考えてんのか?」「ない!!」「…まあ、だと思ったよ。」ガクトの質問にキッパリと宣言するキャップを見て、モロは寧ろ納得した課の様に呟いたそして、皆の視線は自然とある人物に集まるこの風間ファミリーの参謀役、軍師・大和だ「とりあえず、今は静観だな。キャップの言っていた事を全否定するつもりはないが、いきなりあの二人に…『すいません。貴方達、さっきテレポートとかしてましたけど超能力者か何かですか?』なんて聞ける訳ないからな。あまりに度が過ぎれば、それだけで警察沙汰になるからな…。だから、今は遠目からの監視と追跡だ。もしキャップの言う事が事実なら、相手は絶対にどこかでボロを出す筈だ…どこにでもいる唯の学生に超能力を見られてそれで口封じに打って出る様なヤツ等だからな。」大和が結論づけると、京は顔を赤らめて「なるほど、流石大和。冷静な見解、そんな所が好き。」「すいません、お友達で。」京の言葉を、即座に大和は一蹴するが京は赤らめた頬に手を置いて、「つれないなー、大和。でもそんな所も好き。」微笑みながら、改めてそう言った。そして、キャップも大和の考えに異議はない様だった寧ろ乗り気であった「なるほど、付かず離れずの尾行作戦って訳か。なんか探偵漫画みたいで面白れーな!!」「探偵漫画か……なら、僕達これから絶対になんかの事件に巻き込まれるよね。」「バーロー、そんな事あってたまるか。」心の底から面白そうに、子供の様な笑顔で笑いながらそう言い、モロがポツリと呟き、大和が続く。そしてキャップはここで何かに気付いた様に手を叩いて「む、待てよ? 尾行なら…なんか足りない様な…」そう言って、ウームと唸りながらキャップは考え込むしかし、次の瞬間「キャップ、コレです。スポーツ新聞です!」「おお! そうだ、コレだー! やっぱり尾行にはカモフラージュ用の新聞が不可欠だぜ!」不意に渡された新聞紙を受け取りながら、キャップは納得がいったかの様に声を上げた。そして更に「あとキャップ、コレです! 飯用の餡パンと牛乳です! そこの古河パンで安売りしていたので買ってきました!」「そうそうコレコレ!! やっぱり尾行・張り込みの食事と言ったらアンパンと牛乳だろ!」「うっす! 定番です! いや、寧ろ王道です!! と、言う訳でお納め下さいキャップ!!」そう言われて、キャップは差し出されたアンパンと牛乳を受け取り、満足気に笑いそして、感謝の言葉を放った。「うむ! ありがたく受け取ろう。ご苦労だった、知らないお兄さん!!」「はい! 勿体無いお言葉! ありがたき幸せです!!」その言葉が、ファミリー全員の耳に響き一瞬、時が止まった「……へ?」キャップの声が響くそして、一同は初めて「ソレ」に気づいた「うっす。皆さん、どうかなさいましたか!?」声の発信源に、皆の視線が集中する。その視線の先そこには、自分達がこれから尾行しようとしていた金髪の青年が…笑みを浮べてそこに居た。続く補足説明大和……本名・直江大和(ナオエヤマト) 「まじ恋」の主人公、風間ファミリーの参謀役。頭を使っての作戦や戦略が得意なのでファミリーからは軍師と呼ばれる。ヤドカリをこよなく愛する男、ちなみに結構Sである。キャップ……本名・風間翔一(カザマショウイチ) 風間ファミリーのリーダー、キャップと呼ばれ何時も頭に着けているバンダナがトレードマーク。常識やルールに捕われない風の様に自由な男、好奇心と行動力が溢れる子供がそのまま大人になった様な男である。思春期でありながら異性への興味に目覚めていないという希少種な人間でもある。川神百代(カワカミモモヨ)……「まじ恋」のメインヒロイン。川神鉄心の孫にして、武道四天王。揚羽とは強敵と書いて友と呼ぶ関係。風間ファミリーのただ一人の年長者。根っからの戦闘狂であるが、良く他流派やチンピラの挑戦を受けるがほぼ瞬殺。周囲には自分と対等に勝負を出来る人間は皆無なので日々、戦闘に餓えている。ワン子……本名・川神一子(カワカミカズコ) 「まじ恋」のヒロインの一人、風間ファミリーの一人でありあだ名は「ワン子」。百代の妹。姉の影響で武術を嗜む、結構な武闘派だが頭が弱いのでアホの子扱い。ちなみに専用の犬笛を吹くと、無意識レベルで吹いた人間の下に行く様に調教されている。京……本名・椎名京(シイナミヤコ) まじ恋のヒロインの一人、風間ファミリーの一人。現在は大和にベタ惚れ。特別編では一人だけ県外に住んでいるが週末はいつも川神で過ごしている。幼い頃より弓術と護身術を習っていて、見た目よりも腕が立つ。いつもは冷めた性格だが、大和絡みになると超アグレッシブになる。ガクト……本名・島津岳人(シマヅガクト) 風間ファミリーの一人、日夜女にモテる為に体を鍛えるが…全く効果がない男。あだ名はガクト、名前負けとよく言われる。だが体を鍛えている分、実力は高い…のだが、ファミリーの百代が最強すぎるためにその事実は埋もれている。モロ……本名・師岡卓也(モロオカタクヤ) 風間ファミリーの一人。パソコンに詳しい、好きな漫画は『とらぶるン』。あだ名はモロ。人見知りする性格で、特に女性が相手だと目を見て話せない。自分でも直したいとおもっているが、効果はなし。だが、そんな彼が一度女装をすると……後書き 今回は少し遅くなりました、どうも申し訳ありません。意外に風間ファミリーを書くのに手こずりました。 今回はミナトが出てきたにも関わらず、ネタは少なめです。なぜだか知りませんが書いてて違和感がありました(笑) 今回は、とりあえずミナトは風間ファミリーと接触です。ちなみにイタチも風間ファミリーの視線には気づいています。 次回は多分明日に投稿できると思います。 そして次回、川神院にてイタチも動き始めます!!