久遠寺家・地下物置にて「ふー、これで大体一段落ついたかな?」「ですね~。思ったよりも時間が掛かっちゃいましたね。」錬は持っていた大きなダンボールを、戸棚に置く美鳩も持っていた荷物を置いて、一息つく錬が軽く腰を叩いていると、上への階段から南斗星が最後の荷物を持ってやって来た。「ゴメンね、二人とも。私の仕事だったのに、手伝って貰っちゃって。」「いやいや、気にしないでよ南斗星さん。」「困った時は、お互い様ですね。」「それでも、ありがとう。お陰で凄く助かったよ。」ニコリと微笑みながら南斗星は二人に感謝の言葉を送る一仕事を終えて、次の仕事に移ろうとした時「あ、そういえば揚羽様と小十郎くんが来てるみたいだよ。」「あらあら、本当ですか~?」南斗星が気が付いた様に声を上げる。「揚羽さんと小十郎が来てるのか、それなら少し挨拶をしておくか。」「そうですね。それで、お二人はどちらに?」「確か、森羅様達と一緒に居間の方にいらっしゃっていたよ。」美鳩の質問に南斗星が答えて、錬が声を上げた「森羅様達と一緒か、それなら報告がてら挨拶しにいくか。」そう言って、三人は居間へ足を運び「森羅様、上杉錬です。」居間の扉を軽くノックする僅かな間を置いて、中から了承の返事がきた「それでは、失礼します。」そして、錬が扉を開けると…「…………」「…………」「…………」そこには、とっても素敵な修羅場が出来上がっていました。第十四話「意外な顔」ナンデスカ、コノ空気ハ?居間に入った錬は、冷や汗を垂らしながらこう思った特に何かがある訳ではないいつもと比べて変わった所があるとすれば、揚羽と小十郎、そして見知らぬお客さんが来ている事くらいだ。そう、外面的には何も問題はないそう、問題は別の所にある(おぅいいいぃぃぃ!!!! 何だ!何なんだよこの空気! おいベニ公、何があったのか俺達に説明しろ!!!)(私が知るかああぁぁ!!! 大佐の友人の子っていうあの客が着たら、いきなりこんな空気になったのよ!!! ちょっとハル!あの客つれて来たのアンタでしょう!! 何とかしなさいよ!!!)(ぼ、ぼぼぼ僕がですかぁ!? む、むむむ無理ですよぉ!! それに、僕はあのお客さんがこの屋敷に来たから応対しただけですよぉ!!!)小声で、三人は思わず問答する。そう、錬達が先ほどから感じている「ナニカ」…それは、一重にこの居間の空気だ。何というか、重い…果てしなく重い。体が重い、咽喉が干上がる背筋が凍る、地に足が着かない居るだけで、尋常でない程のプレッシャーを掛けられている感覚に陥るまるで、己の五臓六腑全てが他者に握られている様な感覚「コホン。」そんな錬達のプレッシャーを感じ取ってか、森羅が咳払いをして「錬、美鳩、南斗星…未有のヤツも来たし、今屋敷に居る面子はこれで全員か。 なら、今が頃合か。客人、すまないが自己紹介を頼めるか?」「はい、勿論。」そう言って、テーブルに着いていた金髪の青年が錬や美鳩に視線を送るそして一礼して、自己紹介を始めた。「久遠寺家の皆さん初めまして、鉄ミナトと言います。先日この近くに引っ越してきたので、父の友人である田尻さんに挨拶に来たのですが、久遠寺家の皆さんにもこれから会う機会は多くなるからと、そこにおられる森羅様の言葉に甘えてこうして皆さんにも挨拶させて頂きました。まだ若輩者で至らぬ点も多々ありますが、これからよろしくお願いします。」爽やかな笑顔とハキハキとした口調と挨拶礼節も弁えたその態度、錬達も先ほどまでのプレッシャーが和らいだそして森羅達も自己紹介を始めた「うむ、中々良い挨拶だったぞ客人。私はこの久遠寺家の家長、久遠寺森羅だ。聞いた話だと、何でも四月から夢や揚羽達と同じ七浜学園に通うそうだ。これから、皆とも接する機会は多いだろう…大佐の知人とあれば、この久遠寺家は無碍には扱わん。困った事があったら、何時でも相談しろ。」「私は久遠寺未有、この久遠寺家の次女よ。困った事があれば、いつでもこの年上のお姉さんに相談しなさい。年上として、アダルトにお答えするわ。」「それじゃあ、次は私だね。私は久遠寺夢、ミナトくんと同じ七浜学園の三年生だよ。学校で分からない事があったら遠慮なく聞いてきてね。ミナトくんとは同い年だから、堅苦しい感じは抜きで仲良くしてね。」「はい、皆さんよろしくお願いします。」三姉妹が紹介を終えて、ミナトも改めて一礼をしたそしてその後、錬、朱子、美鳩、ハル、南斗星と挨拶をしたところで「うむ、これでほぼ全員か。しかし久しぶりに会ったが…ミナトよ、中々スペシャルな育ち方をした様だな。口調や仕草と言ったものだけでなく、滲み出るオーラでお前が如何な成長をしたのか手に取る様に分かるぞ?」「ははは、田尻さんもお変わりない様で。それに幾ら何でも褒めすぎですよ、自分はまだまだ若輩者です。」「ふふふ、謙遜するな。あいつもお前の様な息子なら、安心して留守を任せられるだろう。」「買い被りですよ。現にこうして一人暮らしはさせられないと、転校させられてしまいましたから。…そういえば、さっきから気になっていたんですけど…」「…ん、何だ?」ミナトは大佐との会話を打ち切って、揚羽と小十郎に視線を移し「そちらの方が、まだ自己紹介されていないのですが…?」「「!!?」」ミナトがそう言葉を発した瞬間揚羽と小十郎は目を見開かせ、僅かに顔を強張らせた「貴様、我等が誰なのかを忘れたか?」「誰って言われましても、その制服は七浜学園のものですよね? ひょっとして転校手続きの時にあったりして…」「貴様…とぼけるのもいい加減するのだな。それとも何か?我等は貴様にとって、記憶に残す価値すらないと?」薄れていた緊張が、またここで高まるまるで両者の間に、火花が散っている様な感覚一種の緊張感の中で、いつ一触即発が分からない状態になって所で…「…ん、その額の傷……バンダナ…」ミナトは、何かに気付いたかの様に二人を注視して「ああああぁぁぁぁ!!! もしかして、揚羽ちゃんに小十郎!!?」「…やっと気が付いたか。」「ああーそっかー、全然気付かなかった! ゴメンゴメン。でも久しぶりだねー二人共大人っぽくなってたから気付かなかったよ!」「あの、ひょっとして三人は知り合いなんですか?」納得が行ったかの様に言葉を発するミナトを見て、錬は疑問の声を上げた錬と美鳩と南斗星とハル、そして未有は、さっきの会話を聞いていなかったから三人の関係性が未だに分かっていなかった「そうですね。幼馴染で幼い時の修行仲間って感じですかね?」「……」「…まあ、間違ってはいませんね。」ミナトは揚羽と小十郎に視線を送るが、二人の態度はどこかつれない。しかし、そんな二人を尻目に南斗星が声を上げた「修行仲間って事は、ミナトくんも武術を?」「ええ、そこそこ嗜んでいた程度ですが…」「くくく、謙遜するな。」ミナトの言葉に、森羅が反応してニヤリと笑った「どういう事ですか、森羅様?」「それはな錬。こいつは、武術の界隈において九鬼家と肩を並べる鉄一族の一族最強の鉄のじいさんを幼少時にKOした程の天才なんだとさ。」その言葉に、錬やハル。先ほどの会話を知らない面々は大いに驚いた「揚羽さんの家とタメを張る一族最強の人を倒したって…マジですか?」「クルックー、それは凄いですね。ハトも驚きです。」「す、凄いですねー。僕とそんなに年は変わらないのに…」「確かに、それは凄いね。」それぞれの面々は驚いた表情でミナトを見つめる錬と南斗星、特に南斗星は揚羽を初めとする九鬼家の武闘派の実力を良く知っているので、驚きもより大きかったそれぞれの視線を一身に受けて、ミナトは恥ずかしそうに笑った「いえいえ、それ程のものでもありませんよ。確かに昔は天才だなんて周りから言われていましたが、今はそんなのもパッタリ。ジンじいちゃんとの話だって、そんなに大した事じゃないですよ。たまたま自分との組み手中にじいちゃんが足を滑らせた所に、自分の一撃がじいちゃんの鳩尾に入っちゃっただけで、しかもその直後にじいちゃんが持病のギックリ腰が出ちゃって、その話が大げさになって伝わっただけの話です。」あくまで自分の勝利は偶然の産物だったと、ミナトはそう語るが「何を言う、例え偶然でもあの陣内殿に一撃を入れる事が出来た時点でもその結果は大いに評価される事だ。もはや過ぎた話だが、お前が武術をやめたと聞いた時はわしも心の底から勿体無いと思ったものだ。」大佐がミナトの当時の実力を改めて評価する。しかし、ミナトは少々気まずそうな笑みを浮べて「…確かに、あの時は親戚一同が家に押しかけて来て大変でした。正確に言うと、武術は完全にやめた訳ではないのですけどね。今だって健康の為に運動をしていますし…」「我にとってはどちらでも変わらぬ!」不意に、揚羽は声を上げたその顔は確かな怒りを見せて、歪んでいるこの様な表情をする揚羽を見たのは、錬や美鳩は勿論級友の夢でさえ、初めてだった。「揚羽様、恐れながら申し上げます…ここは九鬼の家ではございませぬ。少々お声を荒げすぎかと…。」「…む、確かに。騒がせて申し訳ない……だが鉄ミナト、これはいい機会だ。久しぶりに我と手合わせをしようではないか? それで先ほどの無礼は忘れよう。」小十郎が揚羽の態度に釘を刺すという珍しい光景を目にしながら揚羽はミナトに手合わせを申し出るが、「え、ヤダ。」出されたお茶を啜りながら、ミナトはあっけらかんと答え揚羽はあまりに素早い返答に、思わず唖然とした「んな!」「いま思い出したけど…揚羽ちゃんって、組み手の時って凄い恐いんだもん。一撃一撃がモロに人体急所を狙ってくるし、勝つまで延々と組み手止めさせてくれなかったしあまりにそれが続くと涙目になってくるからこっちは何も悪くないのに…凄い罪悪感に襲われるし…」「ぬあ!!」幼い頃の触れられたくない過去を出されて、思わず揚羽は赤面するが「ほほ~、なるほど。昔の揚羽にはそんな子供らしい可愛らしい一面があったのか?」「まあ、急所を躊躇なく狙ってくるというのはあまり子供らしいとは言えないけど…」「でも、揚羽ちゃんの子供の頃か~…私も興味あるかな~?」マズイ、と揚羽は思った今の森羅は興味深々と言った顔をしている揚羽は森羅の事を尊敬しているが、森羅は良い意味でも悪い意味でも幼い面を持っている子供ころなんて、誰にだって思い出したくない過去など一つや二つ持っているものだろう子供故の幼さというものだってあるそう考えていた所で「じゃあさ、揚羽ちゃんと小十郎くんって昔から仲良かったの?」揚羽の心中を無視して、夢が先陣を切った「そうですね、昔から凄く仲良しでしたよ。今も相変わらずみたいですし。」「…ぬ!」「いえ、まあ…」ミナトが夢の言葉に答え、揚羽と小十郎が呻く様に声を出すしかし、ミナトは更に話を続けて「それで、乙女さんっていう鉄の親戚の女の子がいたんですけど…小十郎は昔、その娘に気に入られてたみたいでよくその娘にあっちこっち手を引かれて、遊び回って走り回ってで、とにかく気に入られてたんですけど…揚羽ちゃんは、それを見ては乙女さんにいつも『クロガネオトメェ!勝負だぁ!!』って言って突っ掛かって…」「ほほう?」更なる過去の暴露で、森羅が再びニヤニヤと笑い「それでも懲りずに乙女さんは小十郎を連れまわし、揚羽ちゃんはそれを見ては突っ掛かって喧嘩っていうお決まりパターン。それで、この乙女さんも揚羽ちゃんも同年代の中では力が飛び抜けてたから…もう喧嘩も凄くて…喧嘩が終わってもその後の口喧嘩が凄くて、やれ「小十郎は我のものだ!!」とか「私はコイツが気に入った!こいつは私のものだ!!」とかそれでもって最終的には揚羽ちゃんが「小十郎は我だけのものだぁ!!」って言って涙目になって乙女さんに「貴様ああああぁぁぁ!!! これ以上ふざけた事をぬかすとその首ヘシ折るぞおおおぉぉ!!!」おっと。」幼さ故の純真な発言が恥ずかしかったのかそれとも自分の従者の所有権を巡って幼稚な喧嘩をしたのが恥ずかしかったのかもしくは気に入らない相手に、自分の過去を勝手に暴露されたのが気に食わなかったのか顔を真っ赤にし目をこれ以上に無い程に吊り上げた揚羽がミナトに襲い掛かるが、ミナトはそれをひょいと避け「全く、コイツは……はっ!!!」それで一旦会話は終わるが、時は既に遅し揚羽は森羅や夢から生暖かい視線で見られていた「なるほどー、三角関係か。小十郎も意外にやるなぁ。」「ふふん、両手に花と言う訳ね。」「へぇ、やっぱり二人とも昔から仲が良かったんだぁ。」「…ぬ、ぬぐ、ぬぐぐぐぐ…」ニヤニヤと、森羅達は揚羽達に視線を送る咄嗟に、小十郎がフォローを入れるが「い、いえまあ…子供の時の話なので…」「愛されているんだなぁ、小十郎は。」「ぐっはぁ!!!」その森羅の一言で、小十郎は撃沈顔を赤面させて嬉し恥ずかしの表情で思わず膝を着いたそして、夢は再びミナトに視線を移して「ねえねえミナトくん、今の話に出てきた乙女さんってどんな人なの?美人?」「あ、待ってください。携帯に正月の時に取った写真が……あ、あったあった、この人です。」そう言って、ミナトは携帯電話を夢達に見せるそこには、青みがかかったショートヘアーの女性が映っていた「…わ、キレイな人。」「へえ、これは確かに中々。」「ほぉ、なかなかレベルが高いな。」そう言って、森羅達は携帯電話を注視するしかし、そこで再び揚羽が「きいぃすぅうあぁぁまあああぁぁぁ、そうか、そういう事か…これは我に対する宣戦布告だな、そうなんだな?」頬を盛大に引き攣らせて額に青筋を浮べて、拳をバキバキと鳴らして揚羽はそこに立つ「あれ、揚羽ちゃん…ひょっとして怒っちゃった?」恐る恐る夢が揚羽に尋ねる揚羽はクスリと笑い「ふふふ、侮るではない夢よ。我とて幼き日の思い出をからかわれた程度で憤怒したりはせぬ。」「……ほ、なら良かっ…」揚羽の発言に、夢がほっと一息を吐くが「ただ、無性にヤツの血が見たくなっただけだ。」「うわあああぁぁぁ! どうしようシンお姉ちゃん!揚羽ちゃんがマジ切れしちゃってるよおおぉぉ!!!」夜叉の様な表情を作りながら、揚羽はギラギラと目を光らせた「う~む、少しからかい過ぎたか…」「いや、これは止めた方が良くないですか? 流石にこれ以上は危険かと…」錬が事態の危険度を察知して、森羅に進言するどうしたものかと、森羅が考え始めた所で…「ただいま戻りました。」不意に、居間のドアが開いて「それで、何の騒ぎですかこれは?」久遠寺家、最後の使用人がその姿を見せた。「ふぅ、何とか買い物を済ませられたな。」久遠寺家への帰路を歩きながら、イタチは呟いた購入に手こずった「ジャンプ」とやらも、無事に入手できたやはり、分からない時は店員に聞くのが一番だ(…まあ、少し気になる事もあったが…)店員に、『ハンガー×ハンガー』が載っているジャンプとはどれだ?と尋ねたのだが……何故か、店員は半笑いだったのだ。まあ、こうして無事に買えたのだから良しとしよう買い物袋を携えて、イタチは久遠寺家の門を潜り抜けた「ただいま戻りました。」そう言って、玄関で声を上げるが返事がないまあ、気にする事もないと思って靴を脱ぐが…「…ん、この靴は?」来客用の靴箱に、何足か靴が入っていたそして、イタチはその内二つは見覚えがあった「これは揚羽、こっちは小十郎だな……それで、これは…」そう言って、最後の一足に目を向ける見知らぬ靴、どうやら自分が知らない客の物だろうと思って…ある事に、気が付いた「……ほう……」感心したかの様に、イタチは呟くその靴は踵の部位が、水平に磨り減っていた。殆どの靴の靴底というのは、斜めに磨り減っていくこれは殆どの人間の重心が、足の親指に定まっていない為である。しかし目の前の靴はほぼ水平に磨り減っているそこから考えられるのは、この靴の持ち主は足の親指にしっかりと重心が乗っているという事そしてこれは、余程の鍛錬を積み…足腰が鍛えられている何よりの証拠現に、揚羽と小十郎の靴も同じ磨り減り方をしているつまり、この靴の持ち主は足腰だけを見れば揚羽達と同等、もしくはそれ以上に鍛えた人間という事になる「あいつらの様に、好戦的でなければ良いがな。」一通りの考察を終えて、そう締めくくる流石にあの様な手合いが増えると、やや面倒が増える客人が来ているとなると、皆は応接室か居間だろう足を進めていると、なにやら騒ぎ声が聞こえてきた良く聞いてみると、それは居間から聞こえてきた「この声は、揚羽か? 何を騒いでいるんだ…」大方、自分との再戦を申し込みに来たのに留守だったから南斗星や大佐あたりに無茶な願い事をしているのだろうそう予測づけて、居間へのドアを開けた。「ただいま戻りました。それで、何の騒ぎですかこれは?」居間には、久遠寺家の面々揚羽と小十郎そしてその人物は居た「ああ、イタチか。丁度良かった、揚羽のヤツを……」揚羽を止めてくれと頼もうとして、森羅の言葉は止まる「…イタチ?」なぜなら、あの無表情のクールキャラのイタチがこれ以上にない程の、驚愕の表情を浮べてそこに立っていたからだ。ドクンと、心臓が跳ね上がった気がした心臓が脈打ち、激しく脈動していた呼吸が、止まった気がした肺が、停止した様に感じた時間が、凍った様に感じたそれらは、時間にすれば三秒に満たない時間だったろうが自分にとっては、遥かに永い永劫の時間に感じられたなぜなら、自分の目に飛び込んで来たのはあまりにも、想定外……そして、有り得ないものだったからだ「……な、ぜ…?」この久遠寺家の居間にいる、ただの来客の一人あの金髪の青年……恐らく、あの靴の持ち主その人間を目にした瞬間……自分の頭の中から、あらゆる雑念は吹き飛んだ「…あれ、どうしたのイタチくん?」「イタチさん…どうかしたんですか?」南斗星とハルが、自分に駆け寄って何かを言っているが耳に入らない自分の様子に気付き、居間にいる全ての者の視線が集中するが…気にもならないなぜなら、その人物が居る事比べれば…それらの事は塵芥に等しい事だったからだ有り得ない、そう思っていた「そんな事」は、有り得る筈がないと…そう思っていた普通に考えて、他人の空似というのが一番まともな考えだっただろうだが、それは即座に却下したなぜなら、既に自分という「前例」があったからそして、前例があるのなら…同じことは絶対に起こり得るからだそして、何より自分の直感が本能が写輪眼がそれら全てが、そこに居る人物は、あの人だとそこに居るのは、紛れも無い本物だと自分に告げていたからだ。「……な、ぜ……貴方が、ここにいる?……」それは、自分の故郷で知らぬ人間はまず存在しないなぜなら、その人物は自分の故郷の英雄だからかの大戦では、勇猛果敢な働きを持って…里を幾度となく勝利に導き己の命と引き換えに、あの九尾から里を守り抜き英雄として、その名を歴史に刻んだ伝説の忍その人が今、自分の目の前にいた「……四代、目……」ゆっくりと、その名を呟きそして、その青年も自分に視線を向け「……イタチ、さん。でしたっけ?……」その青年は、僅かに考えてゆっくりと言葉を繋いだ「少し、お時間を頂けますか?」続く後書き えー十四話を投稿させていただきました! 感想でも多かったのですが、このミナトはあのミナトなのか? どこまでミナトなのかが疑問視する声が多かったのですが、その疑問は次回で解決する予定です!!ちなみに、靴の踵うんぬんは昔に読んだ漫画の知識です。あと、「きみある」の主要キャラって年の順で並べると…大佐≫森羅≧南斗星>美鳩>未有>夢=朱子=錬=揚羽=小十郎>ハルの順ですかね?久遠寺三姉妹は言うに及ばず、原作では夢と朱子と錬は同年代と明言されています、これらは確実だと思います。更に、錬が南斗星は美鳩より年上と言っていて、美鳩は未有より年上か同年代らしいです。大佐を抜かすと、森羅と南斗星のどちらかが一番年長らしいのですが…これは良く分かりません。あとは、肝心な年の数ですが…夢と未有は年は一つしか離れていないそうです。夢が学生で尚且つ十八歳以上の未成年、そして未有は飲酒を許されている年齢らしいので未有は二十歳で確定とすると、美鳩は二十歳以上、南斗星は二十一歳以上それでファンブックによるとイタチは二十一歳なので南斗星>美鳩≧イタチ≧美鳩>未有という感じになります。という訳で、これからはイタチと美鳩は同年代という描写でいこうと思っています。