・・・追わねば・・・「おい貴様!この久遠寺家の庭園で何をしている!!」・・・早く、二人の後を・・・「答えろ!今ならばまだ穏便に済ませてやる事も可能だぞ!!」・・・五月蝿い・・・・・・黙れ・・・・・・何だ・・・コイツ等は・・・「どうした!何とか言わぬか!!この狼藉者めが!!」・・・邪魔を・・するな・・・・・・そこを・・・どけ・・・「ならば仕方あるまい、実力行使で行かせて貰うぞ!!」「・・・ど・・・け・・・・!!」「・・・なに?」「そこをどけええええぇぇぇぇぇ!!!俺の邪魔をするなあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」第一話「月下戦闘」「よおぉぉし!もういい塩梅ね!!今日は森羅様と夢っちの仲直りを記念してフグチリ鍋よ、ジャンジャン食ってよおぉぉし!!」「はい、お椀と箸ですよレンちゃん。」「サンキュー、鳩ねえ。」「あ、森羅様の分は私がよそいますね。」「うむ、頼む。」「デニーロ、この唐辛子切れ掛かってるわ。新しいの持ってきておいて。」「了解だぜ、未有。」「はい、南斗星さん。大盛りでよそっておいたよ。」「わあー、ありがとう夢!」「あ、大佐。お茶のお代わりはどうですか?」「お、気が利くなハル。それでは一杯貰おう。」七浜にある高級住宅地に建つ久遠寺家の一室そこでも食事の場、一つテーブルに久遠寺家の全員が揃っていた。テーブルの中央に置かれた二つの鍋を、皆が思い思いに箸で突き、歓談が始まる。そしてそんな光景を見ながら、この家の家長である久遠寺森羅は箸を止めて自分の専属の執事である上杉錬に視線を移した。「・・・しかし、今回の件については本当に錬には世話になった。改めて礼を言おう。」「・・・い、いえ・・・森羅様、そんな礼を言われるほど大層な・・・」「ほーう、私と夢の長年の誤解と確執が消え、姉妹としての絆を取り戻し、愛情という物を再確認できた事が大層では無いと・・・クックック、随分と偉くなったもんだなぁレン?」サディスティックな笑みを浮かべながら、森羅は錬に言った。「な!そういう意味で言った訳じゃないですよ!!今のは・・・何というか・・・」「もーうお姉ちゃん、余りレンくんを苛めちゃ駄目だよー。」久遠寺家の三女である久遠寺夢が、仲裁に入ると周囲には軽い笑いが生まれる。つい先日、この久遠寺家の三姉妹である森羅と夢が互いのすれ違いで大喧嘩するという事件が起きた。二人の喧嘩は、互いに罵り合ったり、暴力に訴えた苛烈な物にはならなかったが、周囲の人間にも明らかになる位の刺々しい雰囲気とプレッシャーを放つ、一種の冷戦の様な状態となった。しかし、そんな膠着状態から事態は急転する。喧嘩の切っ掛けとなり、全ての発端となった幼き日の記憶を、夢が思い出したのだ。それは幼い夢が、当時両親が死に、悲しむ間もなく、死を悼む間もなく、自分たち姉妹を安心させようとしていた長女の森羅に、追い討ちを掛けるという内容だった。その事に夢は激しい自己嫌悪に陥り、家でしたのだ。最初は互いに会う事を渋っていたが、錬が仲介役となり、めでたく事態は収拾したのだ。「はっはっは、なあに軽い冗談だ。レンはイジり甲斐があるからな。だがなレン、主が従者であるお前に礼を言っているんだ・・・ここは素直に受け取るのが礼儀というヤツだろ。」「・・・そうですね、すいません。でも何か照れくさくて・・・。」「照れくさくても、素直に受け取れ・・・それでお前が行った無礼と命令違反の数々を一先ずは忘れてやろう。」「りょ、了解しました。」背筋を伸ばし、主に向かって敬礼をする。そして、再び箸を進める。数十分後、二つの鍋は空になっていた。「ふ~う、食った食った。」錬が出張った腹を擦りながら満足気に言う。「さてと、後片付けしないとね。」「あ、ベニスさん手伝いますよ。」「私も手伝うわ。」「あ、ありがとうございます。それじゃあハルはお椀と箸を持ってきて、未有さんはテーブルを拭いておいて下さい。」朱子と美鳩にハルと未有が続き、食器をもって厨房に向かう。「・・・大佐、この後時間あるか?」「む?特に予定は入っていないが。」「それじゃあ、今日も一つ手合わせ頼むぜ!」拳をならして宣言する錬錬の言葉を聞くと、大佐は愉快気に笑みを浮かべ快諾する。「ふふ、血の気の多いヤツだな。ならば・・・・・!!!」しかし、その言葉は途中で切れる。大佐の顔は一転して真剣味を帯びた表情となり、南斗星に視線を向ける。「・・・南斗星。」「大佐もですか・・・やはり。」二人は互いに目配りをして、頷き合う。そして、大佐は何かを決意した様に周囲に呼びかける。「・・・森羅様、未有お嬢様、夢お嬢様・・・直ぐに使用人と共に階上へ向かい、ご自分の部屋に・・・いえ、一塊になって避難して下さい。」「・・・どうした、大佐?」「侵入者です。何者かが、この久遠寺家に侵入しました。」「・・・何だと?」大佐の言葉に、皆の表情は剣呑なものへと変わる。「・・・気のせい、では無いようだな。」「南斗星のヤツも、その気配を察知しています。まず間違いないでしょう。」「・・・数は?」「恐らく一人です、ですが油断はなりません。これから南斗星と共に向かい、対処します。」「なら大佐、俺も・・・」しかし、錬の申し出を大佐は一蹴する。「小僧・・・お前は、皆と一緒にいろ。相手が一人だけとはまだ分からん・・・万が一の時に備えてお前は森羅様たちと共に居ろ・・・分かったな?」「・・・え!・・んな・・・・そうか、分かった。」反論しようとするが、どこか納得し錬は頷く。「・・・は!まさかこの屋敷に乗り込んでくるなんて命知らずなヤツもいたもんねー!!」「大丈夫ですよ。鳩は平和の象徴ですからねー、この純白な羽を傷付けようものなら、鳩は鷹にも大鷲にもなりますよー。」「へ、そんなヤツがもし屋敷に乗り込んできても・・・未有が密かに取り付けた俺の必殺技パート3で蹴散らしてやるぜ!!」それぞれの人間が臨戦態勢に入り、森羅は大佐に向き直る。「・・・だ、そうだ。私達は大人しく避難しよう。だから安心して向かってくれ・・・怪我だけはするなよ?」「了解しました、森羅様。」そして、大佐は南斗星に向き直る。「行くぞ、南斗星!!」「了解です、大佐!!」そして、物語の冒頭へ「そこをどけええええぇぇぇぇぇ!!俺の邪魔をするなあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」「「・・・!!」」空を裂く巨声と共に発せられる禍々しいプレッシャー皮膚をビリビリと刺激し、鳩尾を直接殴りつけられた様な嘔吐感に襲われる口の中はカサカサに乾き、それとは裏腹に額と背中には冷や汗が止めどなく流れる凄まじいばかりの狂気と殺意その威力は、実戦慣れした大佐と南斗星を反射的に逃走体勢に追い込む程のものだった。(・・・何という凄まじい気当たり!何という禍々しい殺気!この男は一体!!?)(・・・う、わ・・・まず、い・・!・・・この、ひ、と・・・き、け、ん・・・!!)一瞬にして南斗星はイタチに呑まれていた実力では大佐と同等以上のものを持つが、それはあくまで単純な戦闘能力「のみ」を見た時の話。自分と同等以上の存在に本気の殺意を向けられた経験が全くない南斗星にとってその男の存在は、明確な「恐怖」だった僅かに揺らぐ覚悟その揺らぎを大佐は反射的に悟った。「来るぞ!!構えろ南斗・・・・」しかし、その言葉は途中で遮られる爆ぜる大地疾走する影迫る脅威大佐が南斗星に気を掛けたその僅かな一瞬その僅かな一瞬はイタチに二人の間合いを犯させるには十分な時間だったドゴオオオォォォ!!!「・・・・え?」南斗星が呟く一瞬にして、姿を消した侵入者耳に響く轟音反射的に視線を向けるとソコには顔面を鷲掴みにされ、木に叩き付けられる大佐の姿があった。メキ、メキ、メリメリ・・・「・・・が、ぶ!!・・フゴ!ぶごおおぉ!!」鼻と口から息が漏れる後頭部への衝撃叩き付けられる背中顔面を襲う圧迫感(・・・馬鹿な!!この私のスペシャルな制空圏を突き破るなど有り得ん!!・・・)その事実は、大佐に嘗て無い衝撃を与えていた。鼻血が噴出し、メリメリと頬が圧迫され口の中を切り呼吸と共に血が飛沫となる。万力の様に締め付けられる顔面、その細腕からは到底考えられない腕力と握力から解放されるのは容易な事では無かった。「大佐を放せえええぇぇぇ!!」「・・・!」イタチを背後から襲う南斗星の蹴撃空いた左手で咄嗟にガードしようとするが、それは軌道を変えてイタチの腹部を襲う。「・・・く、」大佐を解放し、迫る南斗星に向き合う。空を切り裂く南斗星のミドルキックそれを、イタチは掴んだ。「・・・な!」「邪魔だ。」ミシリ、と南斗星の骨が軋み瞬間、背骨を突き上げる衝撃苦痛を伴った浮遊感「ごっ!・・・・か、は・・!!」イタチのボディブローは、南斗星の腹部に深く突き刺さる。その衝撃に、南斗星は力無く膝をつくそんな南斗星をイタチは一瞥する事無く、歩みを進めようとするが・・・「行かせるものかあああぁぁぁ!!」しかし、それを大佐が阻む。オーソドックスなボクシングスタイルを取り、ワン・ツー肩口から真っ直ぐ伸びるジャブ、それと同じ軌道をもって敵を襲うストレートしかし、それは虚しく空を切る。「・・・ぬう!?」「邪魔をするなと言った筈だ。」手が微かにブレて、それは大佐の顔面を襲う。「同じ手は喰わん!!」しかし、大佐は手を十字に構えて、それを捌く。そこから手首を取り一本背負い。だが、その一本背負いも不発に終わる。イタチは空に身を投げ出される、その僅かな浮遊時間で身を捻り両足で着地する、が・・・「はああぁぁぁ!!!」「・・・!!?」着地の隙を突いて、ダメージから立ち直った南斗星が攻める。身構え、大佐は追い討ちを掛ける「小癪な!ならばスペシャルにギアを上げるまでだ!!」己のスピードをトップギアまで高めて、大佐の猛攻苛烈を極めた南斗星の高速ラッシュ暴風の様な大佐の拳と南斗星の蹴りがイタチに迫る。その一発一発の威力は、常人ならば一撃のみで意識を刈り取る威力を秘めていたが、イタチはその全てを着弾の前に叩き落す。拳と蹴り、戦気と闘気が入り混じった暴風をイタチは全て捌き凌ぐ。しかし、膠着はいつまでも続かない。イタチは、徐々に圧され始めていた。・・・ズキン、ズキン、ズキン!・・・「・・・く!」イタチの体中を絶え間なく蝕む激痛は、更に色濃く痛烈なモノとなり呼吸をするだけでも、体中の神経が引き千切れる様な痛みを帯びていたからだ。(・・・く!この程度の連中に圧されるとは・・・せめて、体術だけでも満足に使えれば・・・!!)イタチのチャクラは底をつき、体力も既に無いに等しい状態最下級の術すら使用できない己の体たらくに、イタチは心の中で舌打ちをする。しかし、追い詰められていたのはイタチだけではない。(・・・ぬぅ、恐ろしい程の使い手だ・・・単純な戦闘能力のみならば、あの鉄一族の上を行くぞ!!)(・・・凄い、私と大佐の同時攻撃をここまで捌くなんて・・・この人、本当に強い!!・・)二対一という有利な状況において、未だ決定打を決める事が出来ずにいた大佐と南斗星も同様であった。(・・・これ以上は、無駄な時間は割けられん・・・)徐々に追い詰められるイタチは一つの決断をする。それは賭けに等しい、一つの手段。大佐と南斗星の挟み打つかの様に放たれるハイキックほぼ同時に放たれたその一撃は、互いに衝突する。「・・・な!」「・・・え?」唖然とする、二人視界から消えたイタチは数歩の距離を取り、低空姿勢で構えをとる。・・・神経を細く、鋭く、針の様に尖らせろ・・・「・・・く、そこか!」・・・体の隅々まで神経を巡らせろ・・・「そんな、いつの間に!」・・・僅かに体に染み付いたチャクラを、血流に乗せて掻き集めろ・・・二人は、イタチの位置を捕らえる。・・・瞬時にチャクラを練り上げて・・・瞬時に体勢を整えて、イタチに駆ける。・・・両目に集中させろおおぉぉ!!・・・イタチの写輪眼が、唸りを上げる。その眼に映るのは、目の前の二人ではなくかつて自分の前に立ちはだかった忍の一人木の葉隠れの里の屈指の体術の使い手「・・・逃がさないよ!!」南斗星が攻める―――木の葉・剛力旋風!!!!―――「・・・がっ!!あ!ぁ!」南斗星の腹部にめり込むイタチの蹴撃。それは、今までのイタチが見せた体術とはケタ違いの威力と錬度の高速回し蹴りその一撃は攻撃を仕掛け、そのままカウンターで貰った南斗星の意識を刈り取るには十分すぎる程の破壊力を持っていた。「南斗星ええぇぇ!!」大佐が叫ぶ。しかし、それと同時に「・・・・あ!・・・ぐお、あ・・・!!」イタチは頭蓋が砕ける様な激痛と感覚に襲われる。チャクラの過剰消耗体中の力が抜け、意識が消失しそうになる。目の奥で閃光が瞬き、胃液をブチ撒けながら倒れそうになるだが、堪える。「・・・お、おお・・・」そのまま、倒れそうになる意識を拘束し前屈みになった体勢からダッシュへと繋げる。辿り着くのは、目の前の男の懐「うおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!そのまま、顎を蹴り上げた。「・・・な、に?」大佐の意識が揺れ、体が中に舞うしかし、既にイタチは・・・・次の行動に移していた。―――木の葉・大閃光!!!―――追い討ちの空中からの回し蹴り空中で、くの字のまま曲がった大佐の体は「ぐはああああぁぁぁぁぁああっ!!!」そのまま、轟音と共に地面に叩きつけられた。「・・・はあ・・・はあ、はあ・・・」二人の敵を倒し、その場に唯一立ち残るイタチしかし、その顔には勝者としての覇気も余裕もない。真っ青な顔に、滝の様な汗手足はブルブルと痙攣し、その場に崩れ堕ちそうになるが意識を繋ぎとめる。・・・これで、ようやく・・・追える・・・消えかかる自我を必死で奮い起こさせる。「俺の必殺技!パート2!!」「・・・・!!」不意に響く、声――カっ!!そして閃光・・・なに?・・・それは、イタチの周囲を爆煙で覆い状況的に孤立させる。そして、それは煙の中から飛び出す。「喰らいやがれえええぇぇぇぇぇぇ!!!」それは一人の青年、消耗しきったイタチに拳を振り下ろす。・・・フザケルナ・・・・・・一体、貴様等はどこまで・・・イタチの頭に、再び憤怒の篝火が宿る。ガシ!錬の拳は止められる。イタチは錬の一撃を額当てで受け「・・・・な!」「俺の邪魔をすれば気が済むんだああああぁぁぁぁ!!」錬の頬に深々と拳が突き刺さる。そのまま、錬はピンボールの様に吹き飛ばされた。「うおあ!!」そのまま、地面を転がる。イタチはそのまま追い討ちを掛けるべく、地面を蹴る。その時、一人の女性が、視界に入る。「レンちゃあぁん!」「!・・・鳩ねえ!来ちゃ駄目だ!!」その光景は自分が知る「何カ」の光景と不思議と重なった・・・・・・サスケ、来てはいかん!!・・・・・・・・ドクン・・・「・・・・!!」それは、突然のフラッシュバックあの忌まわしい夜の記憶自分の地獄絶望を見たあの日「・・・う・・・お、う、ぅ・・・ごぷっ・・・」張り詰めた緊張の糸の一瞬の緩み逆流する胃液「・・・お、おう・・・ぇ・・・」揺れる視界、混濁する意識混沌とした現、前後左右上下不覚の感覚その緩みは、イタチの意識を激痛と疲労で一瞬にして追い込みイタチの意識を、闇に落とした続く後書き 今回はイタチvs大佐&南斗星を描いて見ました。イタチは十四歳の時にマダラとたった二人でうちは一族を皆殺しにしてますから、この位の戦力差で丁度いいかな?と思って描きました。若干イタチがハイテンション気味ですが、それは追い詰められているからという事で納得を・・・w次回はイタチ&久遠寺家面子を描きたいと思ってます!あと、感想を見ました!!不安だっただけに凄く嬉しいです!!途中で挫折する事が無いように頑張ります!!補足 木の葉剛力旋風・・・使用者マイト・ガイ。イタチ初登場の戦闘シーンで使用、回し蹴り。 木の葉・大閃光・・・使用者マイト・ガイ。アニメのオリジナル体術、空中からの回し蹴り。(本編ではイタチはこの術を以前に見た事があるという設定です。)