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No.31071の一覧
[0] ゲート ZERO(ゼロ魔16巻時点 × ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり)[フェイリーン](2012/01/07 14:08)
[1] ゲート ZERO 2話[フェイリーン](2012/01/07 17:23)
[2] ゲート ZERO 3話[フェイリーン](2012/01/11 07:21)
[3] ゲート ZERO 4話[フェイリーン](2012/01/16 00:33)
[4] ゲート ZERO 5話[フェイリーン](2012/01/27 23:15)
[5] ゲート ZERO 6話[フェイリーン](2012/06/09 19:10)
[6] ゲート ZERO 7話[フェイリーン](2012/05/29 00:39)
[7] ゲート ZERO 8話[フェイリーン](2012/06/11 21:48)
[8] ゲート ZERO 9話[フェイリーン](2012/07/01 20:20)
[9] ゲート ZERO 10話[フェイリーン](2012/08/15 15:36)
[10] ゲート ZERO 11話[フェイリーン](2012/10/28 22:50)
[11] ゲート ZERO 12話[フェイリーン](2012/12/10 22:44)
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[31071] ゲート ZERO 7話
Name: フェイリーン◆2a205fc8 ID:fd7d0262 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/29 00:39
7フラン

(はぁ、どうしたもんかな)

 才人は眼前で完全に脱力し、地面に崩れ落ちている少年スリを前に内心頭を抱えていた。
彼に対し才人が取りうる選択肢はざっと思いつく限り次の通りである。

選択肢その一、治安組織に引渡す。
 目の前の少年は明らかに犯罪者である。だから衛視隊などの治安組織に引渡し、そこか
ら裁判所に送ってもらうなりなんなりで相応の処罰を加えてもらう。もしここが日本であ
れば才人は間違いなくこれを選択していただろう。だがここはトリステインである。ハル
ケギニアである。魔法なんてものはあるが基本的に完全無欠の中世封建社会である。そん
な社会における「相応の処罰」、それも自分のような一応爵位を持った貴族に対し、スラ
ムに住む平民が窃盗、というか強盗未遂をやった場合のそれがどれほどのものになるのか……。
才人が知るわずかな例だけでも、この世界の刑罰は基本的にホントにそこまでやる
必要あんのか、といいいたくなるほど苛烈である。おまけに少年法なんてものも無いので
ある。この選択肢を選べば眼前のまだ幼いとさえいえる少年はトリステイン王国の法の名
の下、ほぼ間違いなく神(ブリミル)の元に送られることになるだろう。

(却下)

目の前の少年は確かに罪を犯したとはいえ、才人の感覚ではそれが死に値するほどのもの
とは到底思えなかった。ましてこの年齢でスラムのような劣悪な環境に住まざるをえない
境遇を考えるとまずいと判りつつも、むしろ同情さえ感じてしまう。

選択肢その二、このまま放っておいて帰る。
 実の所これが一番無難な選択肢に思える。ルイズの財布は取り戻したし、これ以上余計
な手間も掛からない。さすがに今回の件でボンクラが多い貴族の中にも手を出したらまず
い相手がいることぐらいは理解できただろうから、ここで帰ればもう関わり合いになるこ
ともないだろう。

(……けどなぁ)

 才人の純粋な理性はこの選択を強く押していた。だが理性以外の部分、多分良心とか優
しさとかと呼ばれる酷く愚かで、同時に限りなく尊いものが潜んでいるあたりは、眼前に
いる全てを諦め、この世の終わりにいるかのような絶望の表情を浮かべている少年を放置
する選択について
「それってちょっとばかし冷たすぎるんじゃね? キミ一応金持ちの貴族でしょ? 他に
できることあるんじゃないの?」
と内側から才人を責めたててくる。

選択肢その三、許してやる。ついでにかわいそうだし面倒もみてやる。
 この選択は理性が大反対をしている。確かに今の才人なら目の前の少年の苦境をあっさ
りと救う事ができる。それだけの権力と財力が「サイト・シュバリエ・ド・ヒラガ・ド・
オルニエール子爵」にはある。しかし

(こいつを助けてそれからどうなる?)

 この少年のような境遇の人間はおそらく無数にいる。一人助ければ次は十人が助けてく
れといってくるだろう。その先は百人、千人ときりがない。その全てを救う事はいくら子
爵として破格なまでの裕福といえる才人でも到底不可能だ。
……やはり無視して帰るのが賢明な選択である。それが才人の純粋な理性の結論だった。
しかしそこでその「賢い」選択をできないのが平賀才人という少年でもあった。

 結局才人は第四の選択をした。

「ほら立てよ。……お前な、貴族相手にスリやって、おまけにナイフまで抜くなんてつか
まったらマジで殺されるぞ。そんな死に方したら親も泣くだろ」

 才人はフランにまず自分がどれだけ危ない橋を渡ったかを説教することにした。その後
の話の持って行き方もある程度考えてはいたのだが……

「親がどっちかでも生きていたらこんな所に住んでねぇよ!」
(うわ、いきなり地雷踏んだ……)

才人は思わず本気で頭を抱えたくなった。しかし才人が踏んだ地雷はいわば連鎖式のもの
であり、ここから先が本番だった。

「……親、死んじまったのか?」
「父ちゃんは前のアルビオンへ攻め込んだ戦争の時、荷物運びやれって軍隊に無理矢理連
れて行かれて、後で向こうで戦いに巻き込まれて死んだっていわれた。母ちゃんは父ちゃんが
いなくなってから、無理して働いたせいで体壊して病気で……」
「で、でも確か戦死者には国から補償金が出るんじゃなかったか?」
「そりゃ貴族にはたっぷりでるだろうさ! 兵隊の遺族にも少しはでるって聞いてる。
けど父ちゃんは兵隊じゃなくて荷物運びの人夫で、敵と戦ったわけじゃないから戦死扱いに
ならないって……」

その後、フランは途切れ途切れに事情を語った。
 妹が一人居る事、親戚も皆戦争で税金が上がった上に男手を徴用された影響などで生活
が苦しくなり引き取ってくれる者はいなかったこと、借りていた部屋の家賃を払えなくな
り追い出された後はスラムに移り、スリやひったくりなどで小金を稼いでいた事等々。

(……やっぱ聞くんじゃなかった)

 才人は自分の選択を本気で後悔していた。聞かないでいれば今まで薄々気づいてはいた
が、あえて見ないようにしていた事実に直面せずに済んだのだ。
 そう、基本的にいままで才人が行った場所、住んでいた場所は即ちルイズの居た場所だ
った。つまりそこはトリステイン王国最高位の貴族であるヴァリエール公爵家の姫君であ
るルイズの生きる世界である。それはトリテイン、いやハルケギニア世界の中で最も美しく、
どこまでも澄み切った、いわば極々一部の上澄みのような世界なのだ。時折用事で
「外の世界」に出る事があったとしても、それはいってしまえば短い旅行で通り過ぎるだけ
の通過点に過ぎない。無論、才人は貴族以外にも平民であるシエスタや魔法学園コック長
のマルトー、「魅惑の妖精」のカメロン店長にその娘のジェシカ等といった人々と交流を
もってもいる。しかしその彼らもまた貴族ではないにせよ、平民の中では破格に裕福で恵
まれているといえる階級に属する人々なのだ。爵位を持つ貴族の子弟ばかりが通う名門校
のメイドとコック長、裏通りとはいえれっきとした自前の店をもつ店長とその娘。彼らも
またこの世界のほとんどの平民から羨望の眼差しで見られる立ち位置にいる。そして才人
が目にすることのなかった、いや見ないことにしていた場所では、泥の中で這いずり回る
ような生き方をせざるをえない数え切れないほど多くの人々がいる。
もっともだからといって

「ハルケギニアの社会は間違っている」

などと単純に考えてしまえるほど、才人は短絡的でもなかった。
 才人はあまり歴史に詳しくないが、それでも地球で先進国といわれている国でも数百年
ぐらい前はどこもハルケギニアと大差の無い状況だったのだろうと思っている。自分が
現代日本に生まれついたのは単なる偶然であり、今の地球がハルケギニアより進んだ技術
を有している事もまた同様の偶然なのだ。才人は単なる偶然で発生した技術上の優劣で、
世界そのものに評価を下すつもりは毛頭無かった。
無論、現代日本に生まれた才人の感覚からすればハルケギニアの社会に個々の問題は数え
切れないほど存在する。
貧困、富の不平等、魔法至上主義、平民に対する貴族の蔑視・横暴、福祉制度の欠落……
 だがそれらの問題はきっとほとんどがこれまでハルケギニアで積み上げられてきた歴史
とそれによって生み出された社会的な制約、そして純粋な技術的限界が複雑に絡み合って
生み出されたもので、「外」から来た事情もよくわからない人間が口をつっこんで、誰か
一人、何か一つの存在を糾弾、排除して片付く問題とは到底思えなかった。むしろ下手に
手をだせば事態を益々悪化させるのではないかと思う。
だから才人はこれまでこのあたりの事情、ハルケギニアあるいはトリステインの社会的な
問題、については深く考えようとはしなかった。
いやそもそも才人にとっては自分自身とルイズ、そして周囲の友人達に直接的に関係する
問題に対応する事が最優先であり、同時にそれで手一杯な状況だったのだ。自分に直接関
係しない所でトリステイン王国に社会的な問題があったとしても。それは王族とか大臣と
か領主とか、この世界の「偉い人達」がなんとかしろよ、というのが本音だったのだ。
……そう、これまではそれでいいはずだった。
今の自分は一介の平民の使い魔でも、ただの騎士でもない。
領地と領民をもった領主で子爵、「偉い人達」の一人になってしまったのだ。
ハルケギニアに民主主義の概念は無い。
王領内の全ての決定権を王が有するように、領主には領内の全ての決定権があり、領民は
ただその決定に従うのみ。逆をいえば領内で起こる全ての物事の責任は領主にあるといえ
る。フランはトリスタニアの住人だが、才人は自分の領内にフランと似たような境遇の人
間がいないとはとても思えなかった。
 今更ながらに才人は自分が生まれた日本という国、いわゆる先進国と呼ばれる世界が、
どれほど豊かで恵まれた環境であったかを痛感する。少なくとも日本には極々まれな例を
のぞけば飢餓は無かったし、生活保護などの最低限の生きる権利を保障する福祉制度が整
えられていたのだ。それを可能としたのはハルケギニアより少なく見積もっても数世紀以
上進んだ科学技術と社会的な経験の蓄積そしてそれらによって生み出される莫大な生産力
だろう。

(かといってこっちの世界の事情もよくわかっていない俺がいきなり改革とかできるわけ
ないし)

 才人はこの世界における最高位の風の魔法使いを一人で倒した事がある。十を超える竜
騎士を一人で全滅させた事もある。人間には対抗不可能とまでいわれたエルフの高位術者
を退けたことも、伝説とされる魔法を用いる大国の王の狂気を止めた事もある。だがしかし

(ちくしょう。どうしろってんだよ。「貧困」なんて倒しようがないぞ)

 剣で倒せる相手なら、どんな相手にも対抗できる自信が今の才人にはある。
しかし実体の無い「概念」や「社会問題」といったものが相手となると、どうすればいい
のか具体的な方法はまるで思いつかなかった。
しかしそれでも眼前の問題はなんとかしなければならない。
だから才人はハルケギニアに来てからずっとそうしてきたように、現在の状況における自
分の能力とそれで出来る事、そしてやりたい事を冷静に判断し、その上で考えた案を実行
することにした。

「お前さ、なんか売るものもってないのか? スリとかひったくりとかやってるなら何か
盗んだものを残しているんじゃないか? 物次第じゃそれなりの値段で買ってやるから見
せてみろよ」

 これが才人が考えた妥協点だった。正直どんなガラクタでもそれなりの値段で買ってや
るつもりである。自分でも明らかに詭弁の類だと思うが、一方的に金を恵んでやるという
形はまずいと考えたのだ。どれほど稚拙でも金を渡す一応の建前というか理由は必要だった。

「…………」
「おい?」

才人に「売るものはないか?」といわれ、フランは一瞬黙り込んだ。しかしやがて何かを
決心したように強い口調で答えた。

「……あるぜ。それもとっておきのやつが。ついてこいよ」

そしてそれまで凍りつかせていた体を翻して歩き出す。不意打ちする気じゃないだろうな、
と内心で警戒しつつも才人はフランの後を追って歩き出した。


「……ここだ。入れよ」

 才人がフランに案内されてたどり着いた場所は廃屋という表現すら生ぬるい、今にも崩
れ落ちそうなまでに老巧化しきった小屋だった。そのくたびれ切った扉をくぐると、隅に
いくつかの盗品と思われる物品が積まれた以外ほとんど物の無い狭い殺風景な部屋の中に、
六歳程度と思われる金髪の幼い少女が膝を抱え込むように座り込んでいて、無表情な人
形のような視線を向けてきた。遠めに見ても顔色は良いとはとても言えず、粗末な衣服を
着込んだ手足は年齢を考慮しても酷く細く見える。

「悪い、ペリーヌ。ちょっと外にでていてくれ」

ペリーヌというのがフランの妹であるこの幼い少女の名前なのだろう。ペリーヌはフラン
の言葉に素直に従い部屋の外に出ようとした。だがフランの後ろにいた才人とその衣装を
見ると驚いた様子で立ち止まり小さな声で呟いた。

「騎士様?」
「ああ、この騎士様とこれからしばらく大切な話をしなくちゃならない。ひょっとしたら
夕方ぐらいまで時間がかかるかもしれないから、呼びにいくまでどこかで遊んでいて」

フランがあやすようにそう語りかけるとペリーヌは再びその小さな足を動かし扉の向こう
に消えた。

「分かった、お姉ちゃん」

との一言で才人を絶句させた後に。


 ペリーヌが部屋を出て行った後、才人はしばらく呆然としていた。フランの事を「少年」
だとばかり思っていたのだ。その間にフランは部屋の隅に置かれていた古い布切れを手
に取り、それで自身の顔を拭い始めた。すると汚れの下から驚くほど白い肌とこれまで数
多くの美少女を見てきた才人の目から見ても相当に整っている部類に入ると思われる目鼻
立ちと青い瞳が明確になり始める。後数年成長し、髪を整えれば脳内の美少女リストの中
でも相当高ランクに入ると思われる文句なしの美少女になるんじゃないかと才人は思った。

「……お前、女だったのか」
「なんだよアンタ、『分かっていたから着いてきた』んじゃないのか?」

 才人が呆然と漏らした言葉にフラン、おそらく略称か男に偽装するための偽名、は少し
驚いたような表情になった。そして顔の汚れを全てとり、手櫛による乱雑なものではある
が髪を整えおえると、間違えようも無い一人の「少女」が才人の前に居た。

「まあ、どっちでもいいや。どのみちやることは変わらないんだし」

フランはそう何かを吐き出すように言うと一瞬手を震わせてから自分の服に手を掛けた。
そして一気に服を脱ぎ始める。才人は慌ててそれを止めた。

「おい、ちょっと待て! 何する気だ」
「『何か売るものはないか』っていったのはアンタだろう! 売り物は俺の体だ! 喜べ
よ。男は知らないからアンタが最初だ。けどこんなガキでも処女を抱けるんだからそんだ
けの代金は払ってもらうぞ!」
「ちょっと待て! 俺はそういうつもりでいったんじゃ!」
「やかましい! 金になりそうな物なんてとっくに故買屋に売っちまったよ! ここにあ
るのはガラクタだけだ。……頼む。俺の事はこれから犬でも奴隷でもどう扱ってくれても
いいから、妹をアンタのところに置いてくれ。下働きの下女見習いって扱いでいい。爵位
持ちの貴族の家で働けるなら、飢え死にも冬に凍え死にすることも無い。それだけでもこ
ことは比べ物にならないほどマシなんだ。だから俺を、いや私を買ってください。お願い
します……」

最後は涙声になり、頭を床にこすり付けんばかりにしてそう懇願するフランの姿が余りに
も痛々しすぎて、才人は思わず視線を逸らしそうになってしまう。
だがそれでも才人にも引けない一線はあった。

「悪いけど、お前は買えない。いやお前に魅力がないとかそういう話じゃなくて、お前を
買ったら、あとで絶対まともに顔を見れなくなる奴がいるから駄目なんだ。」
「……それってアンタの好きな人?」
「ああ」
「……きっと貴族でとっても綺麗な人なんだろうな、それも綺麗な服とか宝石とか沢山持
ってる本物のお姫様の。……そりゃそうか、アンタ、英雄だもんな、この国で剣一本で爵
位とれるぐらい物凄い。やっぱ、それぐらいの人じゃなきゃ釣り合わないよな。……最初
の相手がアンタなら俺も諦めついたんだけど、それじゃしょうがないか」

 フランは再び才人に追い詰められたときに見せた諦めと絶望が混じった表情を浮かべた。
才人はそのフランの顔を見ることができず、部屋の隅に置かれた物品を物色し始める。
これ以上は耐えられそうに無かった。今の才人はたとえ石ころ以下の価値の無い物にでも、
金貨の山を積みたくなるほど追い詰められていた。そして薄汚れたガラクタの中で一つ
だけ比較的新しい布が付けられた竿のような何かを見つける。一瞬どこかの旗かとも思っ
たが普通のそれとは異なり、竿の先端部分には直角に交差するように短い棒がつけられて
いる。

(これは幟か? 珍しいな) 

日本では良く見かけるものであるがこれまで才人はハルケギニアで幟を見たことはなかっ
た。無論、構造自体は単純なのでこっちでも作る事は極めて容易だろうが。
興味を引かれ、才人は幟につけられていた布を手に取り広げてみた。
……そして時が凍りついたように動きを止めた。
 
「……出て行ってくれないか? アンタが俺を買ってくれないなら他に「客」を探さなく
ちゃいけないんだ」 

 動きを止めた才人にフランは怪訝な表情を向けたが、やがてこれ以上は話の無駄とばか
りに投げやりな口調で才人を追い出しにかかった。しかし才人から返ってきたのはいまま
でとはまるで異なる、必死とすらいいうる程の真剣な問いかけだった。

「これをどこで手に入れた?」
「え?」
「答えろ! これはどこで手に入れたんだ?」
「……露天商からかっぱらったやつだよ。けどその旗にかいてある「模様」はわけわかん
なくて不気味だし、他に同じのが数え切れないほどいくつも持ち込まれていて買い取れな
いって故買屋に言われた。……最近通りに店を出す許可も買えないくらい小さなモグリの
露天商連中がこれと同じものを店を開く時に立てまくっているんだよ。本当か嘘かしらな
いけど、露店を開くたびにこれを立てる事を約束するだけで馬鹿高い手間賃くれる連中が
オルニエールの方にいるって……」
「わかった。お前、名前は? フランってのは本名か?」
「……フランシーヌが本名だよ。それを縮めてフラン」

フランシーヌは才人の剣幕に押され、戸惑いながらもその質問に答えた。
そして才人は質問を終えると彼女にはっきりと告げた。

「分かった。フランシーヌ、俺のところに来い。お前と妹の面倒は見てやる」
「……えっ! じゃあ俺を買ってくれるのか?」

才人の言葉に、気が変わったのかとフランシーヌの顔色が生気が戻る。だが才人は彼女に
むしろ感謝を込めてこう告げた。

「いや、代金は今俺の方が貰った。それも十分すぎるほどのやつを!」

 才人の手の中にはフランシーヌの目にはまるで意味の通らない「模様」のような何かが
描かれた布が握られていた。しかしその「模様」は才人にとっては「文字」以外のなにも
のでもなかった。そしてその布には日本語ではっきりとこう記されていた。

「平賀才人様へ、連絡求む。日米共同外交使節団 連絡先は……」

(続)


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