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No.31071の一覧
[0] ゲート ZERO(ゼロ魔16巻時点 × ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり)[フェイリーン](2012/01/07 14:08)
[1] ゲート ZERO 2話[フェイリーン](2012/01/07 17:23)
[2] ゲート ZERO 3話[フェイリーン](2012/01/11 07:21)
[3] ゲート ZERO 4話[フェイリーン](2012/01/16 00:33)
[4] ゲート ZERO 5話[フェイリーン](2012/01/27 23:15)
[5] ゲート ZERO 6話[フェイリーン](2012/06/09 19:10)
[6] ゲート ZERO 7話[フェイリーン](2012/05/29 00:39)
[7] ゲート ZERO 8話[フェイリーン](2012/06/11 21:48)
[8] ゲート ZERO 9話[フェイリーン](2012/07/01 20:20)
[9] ゲート ZERO 10話[フェイリーン](2012/08/15 15:36)
[10] ゲート ZERO 11話[フェイリーン](2012/10/28 22:50)
[11] ゲート ZERO 12話[フェイリーン](2012/12/10 22:44)
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[31071] ゲート ZERO 4話
Name: フェイリーン◆2a205fc8 ID:1d38ce4d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/01/16 00:33
4  ギーシュ・ド・グラモン

「いや、実にいけるね、君の領地のワインは! それに料理も素晴らしい。才人、いい料
理人を雇えたみたいじゃないか!」

 金髪の少年が上機嫌で酒盃を傾けながら料理に舌鼓をうっていた。
少年はまず美形と呼んでよい顔立ちと、育ちの良さを反映したであろう品のよさ、そして
どこかお調子者めいた底抜けの陽気さを有しており、非常に人好きのする陽気な雰囲気を
その身に纏っている。この少年、名前をギーシュ・ド・グラモンといいトリステイン王国
近衛隊の一つで、才人が副隊長を務めている水精霊(オンディーヌ)騎士隊の隊長を務め
ている。

「そりゃタダ酒、タダ飯、こんだけ好き放題飲み食いできれば美味いだろうさ」

 才人が呆れてそういうとギーシュは臆面も無くこう言い切った。

「勿論さ! 他人が用意してくれた酒と食事だからこそここまで美味い! いやぁ! 君
が会計主任になってくれたおかげで、わが隊の財政的不安は完全に払拭された。実に素晴
らしい話だよ!」

 こいつホントに貴族か? と今までに幾度と無く抱いた疑問を胸にしまいこみ才人は自
らも手にした酒盃を傾けた。

……ここはトリステイン王国王都トリスタニアにあるオルニエール子爵邸、つまり才人の
館である。才人自身は館(というか家)など領地の都市にある分で十分と考えていたのだ
が、家令のムスカーから爵位と領地を持つ近衛隊の副長として首都に館は絶対必要である
と強く進言されたため、王都にも邸宅を購入せざるをえなかったのだ。
その大広間で、水精霊騎士隊メンバーによる宴会が行われていた。
名目は才人の館の開館祝いという事になっている。「引越し祝い」ではないのは才人以外
の水精霊騎士隊のメンバーが全員魔法学院の学生であり、正式に近衛部隊としての王宮勤
めを開始するのは彼らの卒業後だった為である。才人自身もそれまでは最初に顔出しをす
るだけでこちらに移るつもりはなかったのだが、夏休みで時間が出来た水精霊騎士隊のメ
ンバーが押しかけこの宴会となったわけである。もっとも彼らは才人が子爵位と莫大な収
入を保証する領地を得てからというもの、何かにつけてタダ飯、タダ酒を才人にたかって
いるのであるが。

(まあ、こいつらも部隊としての訓練はキチンと続けているからいいんだけどな。収入全
体からみたら大した金額じゃないし)

 金銭に関して割と小心な才人は掛かった費用について、定期的にムスカーに確認をとっ
ていた。その報告を聞いた限りでは現状の飲食費は収入から見てまったく問題無いレベル
に思えた。むしろ家令のムスカーはより積極的に彼らを宴に招き、関係を強化すべきだと
まで言い切っている。

(貴族同士の社交ってやつか? 姫様からは貴族としての付き合いに関しては近衛部隊と
して正式活動するまで行わずに済むよう手配してあるって言われたけど)

 才人は既に正式に爵位と領地を受け取っている。しかし近年連続した戦争とその後始末、
そして新領地拝領とその他諸々の手続きに時間が必要として、「オルニエール子爵家」
のお披露目等は近衛隊としての活動開始時に同時に行うとの通達がアンリエッタ女王自身
の名前で上位の貴族達に出されていた。

(なんていうかこれ以上宴会増やしたら、タダの「駄目貴族」になっちまいそうで怖いん
だが)

そんな才人の懊悩など欠片も気づかず、ギーシュを初めとする少年騎士達は酒と料理相手
の胃袋を使った戦闘を続行し続けていた。才人は駄目元でいいかと思いながらギーシュに
以前から抱いていた疑問を尋ねる事にした。

「ギーシュ、ちょっと教えてもらいたいことがあるんだが」
「なんだい、藪から棒に?」 
「いやな、爵位と領地をもった貴族は戦争のときに兵隊出さないといけないんだろ? 
で、部隊というか『兵隊としての部下を指揮する』ってぶっちゃけどうやるんだ?
 いやどう考えても一言で言えることじゃないことぐらいはわかるんで、なんか最低限の
心構えとかコツとか教えてくれないか?」

 それが目下、才人の頭を悩ませている最大の問題だった。
才人自身はこの世界で既に数え切れないほど多数の戦闘を経験している。しかしそれらは
ほとんどが自分自身で敵と戦う。あるいは味方が魔法を完成させるまでの時間稼ぎをする
といった形であり、「魔法使いでもない普通の兵隊を指揮して戦わせる」といった事は一
切やったことがなかった。一応水精霊騎士隊の副隊長を務めてはいるが、その戦い方も基
本的には自分が切り込み役をつとめ、全体指揮はギーシュとレイナール等の中枢メンバー
がとるという形になっている。加えて彼らは全員が魔法使い、すなわち貴族だった。はっ
きりいって才人は軍隊の大多数を占める「魔法をつかわない兵隊」の指揮について何も知
らないのだ。
 無論、領地経営についてはムスカーに時間を割いてもらったり、学園の友好的な教師な
どから教えて貰ったりしている。けれどその中に「普通の兵隊」について詳しく知ってい
る人はいなかった、いや一人だけ徹底的に詳しいかもしれないという人もいたが、その人
は現状軍隊との関わりを極端に嫌っており、とても直接聞く気になれなかった。
そんな時、才人にムスカーが進言した。
 ギーシュ殿にお尋ねになってみてはいかがですか? グラモン家はトリステインきって
の武門の名家。現党首は元帥位にあり、高齢でなければ間違いなく先のアルビオン相手の
戦争で総指揮を執っていたであろう御方です。その御子息であるギーシュ殿ならばなんら
かの有用な助言をしていただけるのではないでしょうか、と。
 学園でギーシュの振る舞いを常々見続けていた才人にとってその言葉は大いに疑問だっ
たが、他にあてもない為この機会に聞いてみることにしたのだ。 

「お前、アルビオン相手の戦争の時に中隊長として150人とか凄い人数の指揮を執ってた
だろう。おまけにその部隊で勲章もらえるぐらいの手柄も挙げている。あれってなんかコ
ツかなんかあったのか?」

その才人の質問にギーシュは唯でさえハイになっていた機嫌をさらに急上昇させた。

「おお、才人! 君もアルビオンの戦いにおける僕の華麗な武勇伝を聞きたいというのだ
ね! いいだろう、流石に君の武勲には遠く及ばないが、この僕の戦場における大活躍を
ここで再び語ってあげようじゃないか!」

才人はため息をついてギーシュにストップをかけた。

「いや、真面目に聞いているんだが」
「悪かった。まあ親友である君の頼みなら断る事はできないな。いいだろう。役にたつか
どうかわからないが僕の知る限りの事、僕が戦争中にやっていた事を説明しよう」

ギーシュはあっさりとテンションを落とし、今度は真面目な表情で語り始めた。

「といってもぶっちゃけ、戦闘になった時は全部下士官の軍曹の言うとおりにやってただ
けだった、で終わってしまうんだが」
「まてや、コラ」

才人はやっぱコイツ役にたたねぇと頭を抱えた。

「じゃあ戦闘以外の時はお前なにやっていたんだ? 訓練の指揮とかか?」
「まさか! ほんの数ヶ月訓練受けた程度の学生士官が本物の兵隊相手にどういう訓練の
指揮ができるというんだね? そういうのも全部下士官の軍曹に任せたよ」
「だったらお前、戦っていない時、何をやっていたんだよ。まさかモンモンに送る手紙の
文面考えていたとか、帰ったときの贈り物の準備とかしてたんじゃないだろうな」
 
ちなみにモンモンとはギーシュの恋人であるモンモランシー・マルガリタ・ラ・ フェー
ル・ド・モンモランシの名前を才人が(勝手に)略してつけた渾名である。

「勿論当然それはしていたとも! 僕を馬鹿にしているのかね、君は!」
「お前な……」
「まあ真面目な話、戦闘の無いときは金勘定と部下の食べ物と酒の手配ばかりやってたな、
うん」
「はぁ?」

その言葉に才人は呆れた声を挙げた。

「お前、確か部下は国が用意した兵を指揮してたんだろ。だったら食べ物とか酒とか給料
とかは国のほうで配ってくれるんじゃないのか。何でお前がそんな事しているんだよ」

その質問に今度はギーシュが疲れたような声で答えた。

「まあ、建前上はそうなっているんだが……才人、ぶっちゃけた話、軍隊ってのは 仕官、
つまり魔法使い以外の「兵隊」の給料は凄く安い。おまけに食べ物も名目上の配給量より
少なかったり、遅れたり、酷い時は無くなったりする事がしょっちゅうなんだ。
 そして手柄を立てた時の報奨金も末端の兵たちまで来ることはほとんどない。上の士官
連中が自分の手柄にしちまうからだ。
 そんな状態じゃあ下の兵達はよほどの理由、たとえば王族の方々が直接前線に出てこら
れるとか、がないとなかなか真面目に戦おうとはしない。当然だな。安い給料に食い物も
ろくなもんが無い状態で、評価もされないのに誰が命を賭けて本気で戦うかって話だ。そ
して仮に勝てた場合でも、安い給料と足りない食料の埋め合わせとして、戦場付近で略奪
とか女性に対するけしからん振舞いとか、名誉とは程遠い行いに及ぼうとしてしまう。勿
論そういう軍隊が強いわけがない。これも当然だ、彼らは軍隊としての命令より自分の目
先の欲望を優先してしまうんだから。まあ、この辺りの事情は僕も事前には父上や兄上達
から聞かされていただけだったんだがね」
「じゃあ、それでお前はどうしたんだよ?」
「勿論自腹で用意したんだよ。部下達の食料と宴会用の酒と手柄を立てたときの報奨金を」

その答えに今度こそ才人は驚愕した。彼の知る限りギーシュはまぎれもない「貧乏貴族」
だったからだ。

「自腹って、お前、んな金もっていたのかよ」
「僕の金じゃない。実家が用意してくれた金だ。前にもいってただろ? うちの実家は戦
争に金を使いすぎるからいつも借金でピーピーいっているって。それはこういった事に使
う金が多すぎる事が原因のひとつなんだ。まあ、これはあくまでウチの人間が戦争にいく
ときの先祖伝来の『伝統』だ。他の貴族がどうしているのかまでは僕は知らないね」
「……」
「話を戻すが、兵隊達に準備してやらなければならないものは報奨金と食べ物と酒だけじ
ゃない。それだけでは命を掛けるにはまだ足りない。それを埋めるものはなにかというと
だね。その、なんだ。世の中には金さえ払えば男にとって非常に素晴らしいサービスを提
供してくれる女性達がいる。無論相応の費用は掛かるんだが、部下達のそういう人達相手
の「交流」費用を持ってやることも我が家の『伝統』の一つだ。まあ手配自体は下士官に
頼んだがね。あ! いっとくが僕自身は誓って「交流」はもってないぞ! モンモランシーに
変な話は吹き込まないでくれたまえ!」

ギーシュはいつになく真剣な表情で才人にそう迫った。

「……い、いや、少し興奮した。ともかくだ。才人、100人とか200人ぐらいまでの少人
数の部隊なら初めの間は信頼できる古参の下士官のいう事を聞いて部隊のことはそいつに
任せた方がいい。……悪い、君の場合はその下士官自体のアテがないんだったな。わかっ
た。実家の下士官から何人か君の所に派遣させられないか聞いておこう」
「実家ってグラモン伯爵家が? いや、普通の領地持ち貴族は「普通の兵隊」は戦争無い
ときは雇わないんじゃなかったか?」
「ああ、普通の領主貴族はそうだ。よほど大きな所を除き、「普通の部隊」は戦争の度に
平民を徴兵して軍隊を一から作る。だがウチの実家は戦争に備え、下士官を常時結構な数
雇い続けているんだ。無論それなりの待遇でだ。そいつらを何人か君の所にやって最低限
中核となる部隊を育てさせる。規模は大きくなくてもそういう部隊があるかないかで戦争
の時にはとんでもない差が出る……と父上や兄上達からは聞いている。
 まあなんだ。軍隊に関してはそこそこの規模で十分だと思うよ。ウチのレベルまでやろ
うとしたらいくら金あっても足りなくなるから正直とてもお勧めできんね。やった結果が
領地持ちの伯爵でありながら貧乏貴族という稀有な存在である我がグラモン伯爵家なんだ
から」

ギーシュはここで一旦言葉を区切りワインを全て飲み干した。

「他に君の為になりそうなうちの『伝統』としては……そうだな、これは僕も先の戦争中
にやっていたことなんだが、戦争中はずっと部下と同じものを食べたまえ。士官と兵隊は
食事にも明らかに差がついているんだが、士官同士の付き合いはともかく、少なくとも配
下の部隊にいる間、戦争中は常に部下と同じものを食べろ……と僕は父上や兄上達に子供
の頃から耳に蛸ができるほど繰り返し言われ続けていた。これらの『伝統』が具体的にど
の程度効果があったのかはよくわからないが、生きて帰れて手柄を立てることができた以
上、少なくとも無意味じゃなかったと僕は思っている。
あとは……ウチと付き合いがあり信用できる酒保商人の名前と連絡先を何人か後で紙に書
いて渡しておこう。食料類の手配は基本的に彼ら酒保商人に頼るしかないんだが中には相
当悪辣な事をやる連中もいる。うちの名前を出せばそれなりの対応は受けられるからカモ
にされる事はないと思うよ。僕から君に言ってあげられるのはこんな所だな」
「……わかった。ありがとう」

才人は真剣に礼をいった。才人にもギーシュがいつに無く真剣に答えてくれていた事が理
解できたのだ。こういう話が聞けるなら宴会やるのも確かに悪くないかもしれないなと才
人は思った。

「話は変わるが、才人。君は自分の領地の北の方、「黒泥の死地」だったか、には行った
ことはあるのかい?」
「えっ、いや行った事はないぜ。俺も一度は見てみようかなと思ったんだけど、ルイズと
ムスカーにほとんど意味のあるものは無いからって止められた。ま、確かに今は覚えなき
ゃならない事が山積みだしな。暇になった時にでも行こうと思っている」
「そうか。いや数ヶ月前からその辺りに妙な連中が現われだしたって話を聞いたんだが君
は何も知らないのか?」
「いや何も聞いてないけど。妙な連中ってどんな奴らなんだ? ってかなんでお前がそん
な話を知っているんだよ」
「いやなに、コルベール先生が例の『がそりん』とかいう奴を作るために君の所の『黒泥』
を集めていただろう? で、学院生の中でバイトとしてそれを集める作業を引き受けた
連中がいるんだ。そいつらから聞いたのさ。最近あの辺りの村落に妙な風体をした連中が
度々現われているって。どんな風に妙かといわれたら僕も又聞きだし詳しい事はいえない
んだがね。
どうだ、才人。水精霊騎士隊の訓練がてら一度見に行ってみないか? 盗賊の類だとして
も水の無い場所じゃ大した数はいないだろうし、いい演習になるぜ」

才人はその申し出に少し考え込んだが、確かに盗賊だった場合は放っておけない。
訓練にもなるしやってみようと考えた。

「判った。じゃあ準備もあるし、来週に行けないか予定を調整してみよう。もし本当に盗
賊がいてそれの退治になった場合は、俺の方からみんなに礼金をださせてもらうよ」
「さすが子爵閣下! 太っ腹だねぇ!」

ギーシュがそう囃し立てるのを聞きながら才人は内心で、俺が領地持ちの子爵ねぇと、呆
れたような呟きをもらした。実際あまりにも急な話すぎて現在でも実感が無いのだ。
ファンタジー世界の貴族で(使い道はないが)油田持ちの領主貴族、日本の人間がこれを
知ったらどんな顔をするだろう。驚くだろうか、呆れるだろうか、それとも笑われるだろ
うか?

(考えても意味ないか。それよりこれ以上「あっち」を放っておくとエライ事になるな)

才人は酒の酔いを醒ますため、用意しておいたコップの水を飲み干すと先に酒の飲みすぎ
で退室したルイズの所に向かうため席を立った。

(続)


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