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No.31071の一覧
[0] ゲート ZERO(ゼロ魔16巻時点 × ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり)[フェイリーン](2012/01/07 14:08)
[1] ゲート ZERO 2話[フェイリーン](2012/01/07 17:23)
[2] ゲート ZERO 3話[フェイリーン](2012/01/11 07:21)
[3] ゲート ZERO 4話[フェイリーン](2012/01/16 00:33)
[4] ゲート ZERO 5話[フェイリーン](2012/01/27 23:15)
[5] ゲート ZERO 6話[フェイリーン](2012/06/09 19:10)
[6] ゲート ZERO 7話[フェイリーン](2012/05/29 00:39)
[7] ゲート ZERO 8話[フェイリーン](2012/06/11 21:48)
[8] ゲート ZERO 9話[フェイリーン](2012/07/01 20:20)
[9] ゲート ZERO 10話[フェイリーン](2012/08/15 15:36)
[10] ゲート ZERO 11話[フェイリーン](2012/10/28 22:50)
[11] ゲート ZERO 12話[フェイリーン](2012/12/10 22:44)
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[31071] ゲート ZERO 11話
Name: フェイリーン◆2a205fc8 ID:fd7d0262 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/10/28 22:50
11 人生色々、国も色々、贈り物も色々(上)

「皆様に我が国の産物を手土産として持って参りました。ささやかなものではございますが、ご笑納いただければ幸いです」

 才人との情報交換を終えた後、及川は「オルニエール領主」としての才人と、才人が副隊長を勤める水精霊(オンディーヌ)騎士隊に歓迎の礼としての贈り物を申し出た。
 貴族同士の付き合いにおける贈答品のやり取りや、外国からの使者が自国の産物を土産として持ち込む事はハルケギニアでも珍しい話ではない。申し出は当然のように受けいれられ護衛件侍従役の自衛隊員達が手土産の入った多数の箱をパーティ会場の広間に運び込み、文字通り山と成る程に積み上げ始める。
 西陣織、友禅織、結城紬など日本全国より集められた色鮮やかな絹布、繊細な絵付が施された大皿の磁器、漆器、細工物、その他多種多様な小物や日用品等々、箱の中から取り出された品々を一品ずつ目にする都度、トリステイン側の出席者の表情が絶句と驚愕で埋め尽くされていく。
 これらの物品は以前「第一特地」での交渉時に贈答品として用いた物品の中でも特に評価の高かった品々を中心に集められたものである。さらに事前調査で得た情報を元にハルケギニアで特に珍重されると判断された品を重点的に揃えてもいる。
今回の贈答品を全てオルニエールの市場で処分した場合、その総額は捨て値でも領地を有する子爵級貴族の年収を超えると及川達は見ていた。  

(これでとりあえず初っ端に「向こう」に「かます」事は成功だ。あとはこの面子全部に贈り物をばら蒔いてそれぞれの実家とのコネを作れば接触可能な対象が一気に広がる。得点高いぞ、こりゃ)

 これまでの苦労が実を結び始めたという実感と漸く見え始めた未来への希望を胸に、及川は熱を込めた口調で手土産の説明を行い始める。
 なにしろ今自分の前にいる水精霊(オンディーヌ)騎士隊の面々は全員が「トリステイン魔法学院」の学生であるという。そしてこれまでに得た情報によれば、この学院の生徒はほぼ全員が爵位を有する高位貴族の子女や、爵位こそ有さないが高額の授業料を支払えるだけの経済力を有する、言い換えればそれなりに有力な貴族の子弟であるという。彼らと良好な関係を構築できれば、その仲介によるトリステイン王国上層階級との接触が期待できる。つまり及川のような外交官にとって目の前のお気楽なボンボンやお嬢様連中は言ってしまえば「人の形をした人脈という宝の山」もしくは「贈り物という餌で釣り上げられる魚の群れ」なのだ。
 ハルケギニアのそれを遥かに凌駕する技術で作成された数々の贈り物に目を奪われている面々の中から及川は才人以外に特に重要視すべき対象を脳裏でリストアップし始めた。
 まず第一にほぼ確実に平賀氏の恋人と思われるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢。このトリステイン王国において王家に次ぐ最高位の貴族であるヴァリエール公爵家の三女であり、なおかつ現女王アンリエッタの幼馴染で公的には女王直属の女官としての地位を有する少女である。
 外見的にはまだまだ幼い(特に胸)のであるが、アンリエッタ女王への影響力を考慮するなら到底粗略に扱ってよい人物ではない。これまで収集した情報によると、彼女のような高い身分を持つ女性が女王直属の女官を務める場合、ハルケギニアの慣習ではその任務は往々にして「女王本人の代理人」となる。今後この少女が「アンリエッタ女王の代理人」として日本と関係を持つ可能性は到底排除できない。
 第二に水精霊(オンディーヌ)騎士隊の隊長であるギーシュ・ド・グラモン。グラモン伯爵家の四男で平賀氏と同年代の少年ではあるが既に近衛隊の隊長という公的な地位を得ている。
 トリステイン王国における地位の序列として近衛隊の隊長は宰相や軍の元帥に匹敵する「格」があるされる。この少年がおそらくは血筋と親の七光りだけでその地位についているにせよ、そのバックにあるグラモン伯爵家の勢力は到底軽視できない。彼の実父のグラモン伯爵はトリステイン軍内に絶大な影響力を持つ有力者であり、三人いる兄も既に全員が陸軍の将軍や空軍の提督(艦隊指揮官)といった将官級の地位に有るのだ。トリステイン王国内において軍と女王の関係がどのような状態にあるのか詳しい事情まではまだ把握できていないが彼とコネをつくれば有用な情報を得られる可能性は高い。
 第三にキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー嬢。トリステインの隣国で同盟国でもあるゲルマニアからの留学生だという。
彼女は水精霊(オンディーヌ)騎士隊のメンバーではないが、彼女もまたゲルマニアの高位貴族の子女であり、彼女と良好な関係を結べれば、それを糸口にゲルマニアの上位貴族と接触を持つ事は十分可能だろう。
 及川は才人以外に特に重要視すべき対象としてルイズとギーシュとキュルケの三人を選んだ。内二人は若い女性である。それゆえ彼は手持ちの「武器」の「切り札」をこの三人に対して切る事に決めた。手元に置いていた箱の仲からビロード張りの小箱を取り出し、中に保管されていた真珠のネックレスをルイズ達女性陣に差し出した。

「我が国の伊勢志摩産真珠のネックレスです。どうです、ご試着されてみませんか? 皆様であれば、どなたでもとてもお似合いになられると思いますよ」
「!!!」

一粒一粒のの大きさが優に1センチを超える大粒真珠のネックレスの輝きが全員に露になった途端、地球側出身者を除いた室内の驚愕は頂点に達した。

「嘘! これ全部真珠? それもこんな大粒のなんて姫様だってもっているか……」

 ルイズ達が驚愕するのも当然だった。地球と違いハルケギニアに真珠の養殖技術は存在しない。極めて低い確率で自然生成されるものを膨大な数の貝の中から偶然に頼って集めるしかないのだ。その上得られた真珠が真球形態をしている事も極めて稀で、大きさもまちまちである。端的に言えばハルケギニアでは傷の無い真球真珠の一粒は同じ大きさのダイヤモンド程の価値がある。ましてこれほどの大きさの真珠を連ねたネックレスとなると、ハルケギニアの基準であれば大国の王族の結婚式や戴冠式に使われるようなレベル、つまりは国宝クラスの宝飾品なのである。

(やはり子供でも女性相手には光物に限るな)

 無論及川達日本側外交団はこの辺りの事情、地球における真珠養殖技術確立前の真珠の価値や第一特地における珍重度、そしてオルニエールの市場における真珠の取引価格等、は事前に把握している。
それゆえ及川達は貴族の子女への贈答用として、比較的小粒の物を含めると100以上の真珠のネックレスを用意していた。今回取り出したのはそれらの中でも最高レベルの物である。
流石にこのレベルの品だと日本での調達費用も一つ100万を越えるが、相手に与えるインパクトを考えればコストパフォーマンス的には全く問題ないと及川や外務省の上層部は判断していた。そしてその予測どおりの反応を現に相手は示している。この時、及川は内心で

「計画通り!!!」

と悪党面そのものの笑みを浮かべていた。
……それゆえ彼は少し離れた場所で苦笑の混じった人の悪い表情で自らを眺めるロジェの様子にまったく気づかなかった。


「使者殿、一つ確認させていだきたい事があるのですが」

 日本側外交団が準備した贈り物の搬入と説明が全て終わり、室内がさながら日本全国の物産展の如き有様になった頃、それまで無言で及川達の説明を聞いていたギーシュが低い静かな口調で及川に問いかけた。彼との付き合いが長い人物であれば、その落ち着いた丁寧な口調が普段の彼のそれと明らかに一線を画するものであることに容易に気づいただろう。だが生憎及川がギーシュに紹介されたのはつい先刻だった。

「なんでしょうか?」
「見せて頂いた品々はどれも本当に素晴らしいものです。自分の語彙の乏しさを本当に痛感させられる程にそれ以外の言葉が出てきません。ですが下世話な話で申し訳ないのですが、これらの「贈り物」はどれが誰宛のものなのでしょう? 基本的に全て「日本国よりアンリエッタ女王陛下宛」の物で、水精霊(オンディーヌ)騎士隊全体として一品、領主としてのオルニエール子爵つまり才人が一品いただき、残りを陛下にお届けさせていただくといった理解でよろしいでしょうか?」
「いえいえアンリエッタ女王陛下宛の贈り物は別に準備してございますので、今回の手土産は全て皆様でお分けください。欲しい品の数が足りないといった場合は、お話いただければ直ちに手配させていただき……」
「使者殿、非常に申し訳ないがそういうお話なら水精霊騎士隊としてはこれらの品は一切受け取る事ができません。それと少しここでお待ちいただきたい。……才人ちょっとこっちに来てくれ」

ギーシュが非常に強い口調で及川の言葉をさえぎると、才人を連れて部屋の隅に移動した。そして小声で才人に尋ねる。

「才人、一つだけ聞きたい。君はあの贈り物をどうするつもりだ? まさかあれ全部受け取るつもりか?」
「つーか姫さん宛てならともかく、そもそも俺には受け取る理由がないだろ。というか貰ったらなんか後が怖そうだ」
「……いや「領主としての」君宛ての贈り物については理屈の上だけなら外から文句をつけることは難しいんだが。ともかく君も一切受け取らないという事でいいんだな? だったら後の話は僕に全て任せてもらえないだろうか?」
「それでいいぜ。はっきりいって俺は外交とかまったくわかんないし」
「外交というよりどっちかというと「常識」の問題なんだけどな。判った。僕が彼らと話をつける」

ギーシュは才人との意見調整を済ませると及川達の所に戻った。

「近衛隊長殿、何かご無礼を働いてしまったのでしょうか? そうであれば深くお詫びさせていただきます。なにぶん我々はこちらの世界に不慣れなものでして」

すると及川が焦燥を隠しきれない様子でギーシュにそう問いかけた。自分がなんらかの重大なタブーを犯してしまったのでないかという焦りがそこにはあった。
そんな及川にギーシュはゆっくりとした口調で言葉を選びながら話しかけた。

「使者殿、恐らく貴方に悪意はないのでしょう。ですが我々の役職を思い出していただきたい。我々水精霊騎士隊はアンリエッタ女王陛下の「近衛部隊」です。陛下の手足として誰よりもその命に忠実に動かなければならない部隊です。その我々が他国の使者からこれほどに高価な贈り物を受け取る事の意味をお考えください。無論、使者殿にもお立場があるでしょうから、陛下宛ての贈り物を我々がお預かりし、その中から「部隊として」一品程度いただくという話なら許容範囲とさせていただくつもりだったのですが……そちらの意図を伺ってしまった以上それもできません。お手数をお掛けして真に恐縮ですが、これらの品はお持ち帰り願います。これはオルニエール子爵も同じ意見です。
無論、別に用意されているという陛下宛の贈り物については「一品残らず」陛下にお届けする事を我々の名誉にかけて誓います」

ギーシュの拒絶は言葉こそ柔らかかったが極めて明確なものであり、その後及川がどのように言葉を尽くしても一切揺らぐ事はなかった。及川は途中で同国人である才人に遠まわしに助けを求めさえしたのだが、才人もまた交渉は全てギーシュに任せるという立場を貫いた為、結局才人と水精霊騎士隊に対する贈り物という名目の買収工作は諦めざるをえなくなった。
だが及川としてもここで成果ゼロで済ますわけにはいかない。

「そ、それでは女王陛下に対する贈り物は後日、皆様宛にお届けさせていただきます。ですが御婦人方は水精霊騎士隊の皆様と違い公的な軍務に就かれているわけではありませんよね?」

及川はギーシュに確認をとったあと、キュルケに懇願するようにそう話しかけた。
優先順位的にはルイズの方が上だったが彼女にも公的な立場を理由に受け取りを拒絶される恐れがあると判断したのだ。その点トリステインにおいて外国人であるキュルケであれば特に問題はない。成果ゼロを避けるという意味でもこの派手な外見の美女になんとしても贈り物を受け取らせる必要があったのだ。

「確かにこのネックレスはどこの宮殿の舞踏会でもまったく見たことがないぐらい素敵だわ」

キュルケは真珠のネックレスから視線を戻すとニッコリ微笑んで続けた。

「でもここまで露骨な「女は物で釣れる」って態度も、このネックレスと同じぐらいまったく見たことが無いわね。最低だわ」
「!」

余りにも辛辣なキュルケの評価に及川は完全に絶句せざるを得なかった。その及川にキュルケはなお笑みを絶やさず語りかける。

「貴方達のお国がとんでもないほどお金を持っているって事はよくわかったわ。でもお金と物さえあれば人の心なんてどうにでもなるって態度ははっきりいって不愉快よ。
そういうのはこっちでは「金貨の詰まった袋で相手の頭を殴りつける」っていうのよ」




(第一特地での成功体験が仇になりましたね、及川さん)

蒼白となって弁解を行っている及川を横目に眺めながら、ロジェはいささか人の悪い笑みを口の端に浮かべていた。

(確かに「帝国」相手ならそのやり方は完全に正解だった。宣戦布告なしに武力侵攻を掛けてきた相手を、自国の圧倒的に優越した財力、技術力に物をいわせて威嚇する。
実にスマートで見事だ。
だが交渉における正解は常に同一ではない。正解は相手と状況によってどうとでも変化する。
まったく相手との交渉が存在しないこの第二特地において潔癖な相手に対しその手は完全な失着ですよ)

ロジェは自分が「準備」を頼んだ自衛隊員が戻ってくるのを視界に確認すると自分のターンの行動を開始する事にした。

「及川さんとのお話は終わったという事でよろしいですか? でしたら今度は我々からの贈り物をご確認願いたいのですが」

及川とキュルケのやりとりによって部屋の中には気まずすぎる雰囲気が満ちていた。
そんな状況を平然と無視しきって、そう切り出したロジェにキュルケは皮肉っぽい口調で問いかけた。

「あら貴方のお国は何を見せていだけるのかしら? どれだけお金持ちかということを見せ付けたいならこの部屋一杯に金銀の延べ棒を詰め込んでもらえれば手っ取り早いのだけど」
「ご要望であれば簡単に出来ますよ。もっともそういったスマートではないやり方は私の流儀ではありませんがね。……どうやら品が届いたようです」

ロジェに宛がわれた侍従役の自衛隊員は紙製の大きな手提げ袋を複数両手に下げていた。
そして手提げ袋の中から薄い紙に包まれたこぶし程度の大きさの物体と、鈍い光沢を放つ透明な瓶上の物体を多数取り出し、机の上に並べ始める。

「これってもしかして……」

薄い紙に包まれた物体からはうっすらと湯気があがり、瓶状の物体の表面にはハルケギニアのそれとは異なる文字が描かれ、瓶の中には黒い液体が詰められている。
それらを目にした途端、才人の口から思わず言葉が漏れていた。

「これらは我が国を代表いや、象徴する食物と飲み物です。紙の包まれたものはハンバーガー、瓶に入っているのはコーラといいます。まあ詳しい事は後で平賀さんに確認していだたくとしてとりあえず食べてみてください。なに及川さん達の品と比べると恥ずかしくなるほど安価な代物です。我が国のごく普通の市民が毎日食べられる程にね」

ロジェは包み紙の中からハンバーガーを取り出すと見せ付けるようにそれに齧り付いた。続けてペットボトルのキャップを開き、逆さにして勢いよく飲み干していく。

「というように食べるわけです。どうです、平賀さんもお一つ」

半分程度中身が無くなった時点でロジェはコーラを机に置いた。そしてあっけにとられているハルケギニア出身者達を尻目に才人の前に別のコーラとハンバーガーを置く。コーラの種類は無論ロジェのものと同じだったがハンバーガーの包み紙はロジェのものとは異なり、表面に大きなアルファベットで「TERIYAKI」という印刷がされていた。

照り焼きバーガー。

才人の好物だった。無論ハルケギニアに来てから一度も食べた事はない。
才人は一瞬躊躇った後、それを手に取り、包み紙から取り出して齧り付いた。久方ぶりに味わった照り焼きバーガーのタレとマヨネーズから故郷のなにかを感じられたような気がした。
 そして才人とロジェがハンバーガーを口にする様を目の当たりにした他のハルケギニア出身者達も、恐る恐るといった様子ではあったがハンバーガーとコーラに手をつけ始める。
ハルケギニアの常識ではありえない程、多彩な香辛料と調味料によって味付けされたそれに彼らが驚嘆の声を挙げるまでほとんど時間は掛からなかった。

(続)


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