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No.3089の一覧
[0] NARUTO うちはルイ暴走忍法帖[咲夜泪](2010/06/23 02:13)
[1] 巻の2[咲夜泪](2010/06/23 02:30)
[2] 巻の3[咲夜泪](2010/06/23 02:36)
[3] 巻の4[咲夜泪](2010/06/23 02:54)
[4] 巻の5[咲夜泪](2010/06/23 03:02)
[5] 巻の6[咲夜泪](2010/08/03 21:09)
[6] 巻の7[咲夜泪](2010/06/23 03:13)
[7] 巻の8[咲夜泪](2010/06/23 03:23)
[8] 巻の9[咲夜泪](2010/06/23 15:36)
[9] 巻の10[咲夜泪](2010/06/23 15:47)
[10] 巻の11[咲夜泪](2010/06/23 16:44)
[11] 巻の12[咲夜泪](2010/06/23 17:00)
[12] 巻の13[咲夜泪](2010/06/23 17:16)
[13] 巻の14[咲夜泪](2010/06/23 17:23)
[14] 巻の15[咲夜泪](2010/06/23 17:37)
[15] 巻の16[咲夜泪](2010/06/23 17:45)
[16] 巻の17[咲夜泪](2010/06/23 17:52)
[17] 巻の18[咲夜泪](2010/06/23 18:01)
[18] 巻の19[咲夜泪](2010/07/01 23:34)
[19] 巻の20[咲夜泪](2010/06/23 18:13)
[20] 巻の21[咲夜泪](2010/06/23 18:42)
[21] 巻の22[咲夜泪](2010/07/01 23:39)
[22] 巻の23[咲夜泪](2010/06/23 19:09)
[23] 巻の24[咲夜泪](2010/07/01 23:54)
[24] 巻の25[咲夜泪](2010/07/01 23:59)
[25] 巻の26[咲夜泪](2010/07/02 00:10)
[26] 巻の27[咲夜泪](2010/06/23 19:42)
[27] 巻の28[咲夜泪](2010/06/23 22:52)
[28] 巻の29[咲夜泪](2010/06/23 23:01)
[29] 巻の??[咲夜泪](2010/06/23 23:07)
[30] 巻の30[咲夜泪](2010/07/02 00:43)
[31] 巻の31[咲夜泪](2010/06/23 23:29)
[32] 巻の32[咲夜泪](2010/06/23 23:36)
[33] 巻の33[咲夜泪](2010/06/23 23:51)
[34] 巻の34[咲夜泪](2010/06/24 00:31)
[35] 巻の35[咲夜泪](2010/06/24 01:19)
[36] 巻の36[咲夜泪](2010/06/24 00:38)
[37] 巻の37[咲夜泪](2010/06/24 01:00)
[38] 巻の38[咲夜泪](2010/06/24 01:05)
[39] 巻の39[咲夜泪](2010/06/24 01:26)
[40] 巻の40[咲夜泪](2010/06/24 01:37)
[41] 巻の41[咲夜泪](2010/09/10 01:08)
[42] 巻の42[咲夜泪](2010/07/07 03:50)
[43] 巻の43[咲夜泪](2010/07/20 02:03)
[44] 巻の44[咲夜泪](2010/07/30 20:06)
[45] 巻の45[咲夜泪](2010/08/03 02:20)
[46] 巻の46[咲夜泪](2010/09/07 06:26)
[47] 巻の47[咲夜泪](2011/01/12 13:50)
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[3089] 巻の5
Name: 咲夜泪◆ae045239 ID:ceb974ce 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/23 03:02




 ――お前が万華鏡写輪眼を開眼すれば操る者は三人になる。

 うちは一族が虐殺された夜、彼の兄はそう言い残して里を去った。
 木ノ葉隠れの里で隆盛を誇った一族は今や三人足らず。一族皆殺しの張本人であるうちはイタチ、その実の弟である彼ことうちはサスケ、そして――うちは最優の彼等とは遠い親戚の少女、うちはルイの三人である。
 自分はうちはイタチの情けで助けられた。その忌まわしき記憶を思い出すだけで腸が煮え返り、憎悪で気が狂わんばかりに激昂するが――うちはルイはあの夜、どうやって生き残ったのだろうか?
 うちはイタチは一族の者を容赦無く殺した。自身の両親さえも己が前で惨殺し、女子供に至るまで根絶やしにした。そんな彼がその女子供の一人であるうちはルイを見逃す可能性など無い。
 ならば自分と同じように、生かす理由があったのだろうか? そのような余分な疑念が生じたのは昼下がりでの教室の騒動がきっかけである。
 その日に限ってルイは日向ユウナと黒羽ヤクモと一緒に昼食を取った。その事に関してとやかく言うつもりは無いが、問題の瞬間は昼休みが終わり、教室に戻ってきた時に起こった。
 教室に入った直前、くノ一の一人にトレードマークの三つ編みのおさげを引っ張られ――その直後に濃密な煙が充満し、教室中は一時大騒ぎとなった。
 煙が視界を覆い隠すまでの刹那、振り返ろうとしたうちはルイの黒眸の筈の眸に何故か違和感を覚えた。距離的に遠めであり、最初から意識していなかったので確信は持てない。
 他の者だったら気のせいで済む話だが、彼女は自分と同じうちは一族の生き残りであり、そうなる可能性は在り得る。うちは一族の血継限界、写輪眼を開眼しているのであれば。
 ――お前が万華鏡写輪眼を開眼すれば操る者は三人になる。
 うちはイタチの言葉が再び脳裏に過ぎる。だからこそルイを生かしたのでは無いだろうか。うちは一族の生き残りは自分が知る限り三人、丁度数も合う。
 だとすれば、うちはルイは九歳以前に写輪眼を開眼させた――うちはイタチに匹敵する天賦の才を有しているのかもしれない。
 才能無き自分には到底届かない、うちはイタチと同じ境地に立っているのかもしれない。あの泣き虫の少女が、何代も写輪眼の開眼しない堕落した血筋に生まれ、名だけの落ちこぼれと蔑まれた少女が――!
 一族を亡くした悲しみと身を焦がす憎悪の念は、何時の間にか歯痒い焦燥と醜い嫉妬に一変している事にサスケは気づかない。
 確かめなければならない。あの刹那が錯覚か現実かを。あの夜での真相を、写輪眼の有無をこの眼で――。


 巻の5 羊の皮を被った獅子は爪を隠し、翼無き鷹と相搏つの事


「今日より共に住まう事になりましたうちはルイです。不束者ですが、よろしくお願いします」

 日向宗家の者が一同に揃って行われる恒例の朝食の前、その一本に纏めた三つ編みおさげの侵略者(インベーダー)は何食わぬ顔で、丁寧に御辞儀して微笑む。

「な、なな、なんですとぉおおおおおおぉ!?」
「ユウナ、騒がしいぞ」

 魂からの悲痛な叫びは父であるヒアシの一声で斬って捨てられる。いやいや、一体全体どういう事か理解出来ない。
 昨日まで友達だったが、今朝になると準家族扱いになっていた。何を言っているかさっぱり解らないと思うが、自分も解らない。写輪眼とか幻術とかちゃちなものじゃない。もっと恐ろしい片鱗を味わった……!

「す、すみません。しかし、何故に……!?」
「三代目火影殿より要請を受け、我が日向が後見人の形で引き取った。粗相の無いようにせよ」

 何故其処で火影の名が出るのか、余計に頭が混乱する。知っていても未然に防げなかったヒナタ誘拐事件以来、日向は木ノ葉隠れの上層部とほぼ絶縁状態まで陥っていたのに。
 縋り付くような思いでうちはルイの方へ目線を向けると、ほんの一瞬だけしてやったりというドス黒い笑顔を見せる。思わず全身に寒気が走った。
 や、やられた。昨日の挨拶は今日の布石だったのか! うちはルイ、恐ろしい子……!

「いえいえ、叔父様。身寄りの無い居候の身ゆえ気遣い無用ですわ」
「う、む。宜しく致せ、良いな」

 ヒアシのあんな反応は生まれて初めて見る。騙されている、完全に騙されていますよ。日向自慢の白眼でその女狐の本性を見抜いてくださいよぉ――っ!

「は、はいっ! ……よろしくね、ルイちゃん」
「此方こそよろしく、ヒナタ」

 ヒナタも細々と会釈を交わす。そうだよね、アカデミーでの彼女だけを見ていれば誰にでも比較的友好的で――敵らしい敵を作らないように終始しているとも言う――内気なヒナタでも簡単に受け入れられるだろう。

「よぉろしくぅ、ルイおねーちゃん」
「ハナビちゃんもこれからよろしくね」

 駄目だ、駄目だ。そんな人を姉と慕うのは危険すぎる。今年で四歳になる純真無垢なハナビが精神的に侵されて真っ黒になってしまう!

「……あー、えー」

 落ち着け、落ち着くんだ。このままでは孤立無援になり、家での立場を完全に失う。何処かの英国貴族が如く家と財産を乗っ取られかねない。
 開いた口が塞がらず、食い入るようにルイを凝視していると、彼女は無情にもトドメと言わんばかりに王手を掛ける。

「そんなに見詰められては照れちゃいます、ア・ナ・タ」
「え、えっ……そそ、そんな、ユウナ兄さん!?」

 ……は? 両頬を赤くして恥ずかしげな表情浮かべて何を言いやがりますかコイツは。てか、そんなあからさまな冗談を真に受けて耳まで真っ赤にするな我が妹よ。

「うわああああああああ~~~ッッ、完全に確信犯ですよぉおおおおおグゲゴォッ――!?」

 魂の底からの絶叫はヒアシの掌底により、完全に封殺される。
 面白いぐらい体が吹っ飛び、意識が途絶えるまでの刹那、身に降り掛かった理不尽さを呪う。おう、神よ。自分は一体何をした。こんな損な役割はヤクモの筈なのにッ!




 拉致未遂の事件から事の推移が全て私に都合良かった。
 間者の死亡状況から木ノ葉隠れの上層部はうちはイタチの仕業と断定した為、私の生存はイタチの意図と拡大解釈され、木ノ葉隠れの暗部に襲われる可能性はほぼ潰えた。
 更には予想外にも三代目火影が手を回し、私の後見人として日向ヒアシを指定(或いは志願)し、難無く強力な後ろ盾が手に入れる。もう下級一族との下らぬ縁談に時間を費やす事もあるまい。
 薬師カブトも今回の事件の顛末を〝私の自作自演〟だと勘違いしてくれたので、その通りに振舞ってやった。確かに客観的に見れば出来過ぎた内容なので、本気で攫われた、という弱味を見せずに済んだ。

「――上手く行き過ぎているな。逆に嫌な予感がする」

 私が木ノ葉隠れの里で平穏に暮らすに至って、障害となる問題が一挙に解決した風に見える。そう、余りにも都合良く片付きすぎた為、私は内心言い知れぬ危機感を募らせる。
 過去、幾たびの輪廻の経験から痛いほど実感している事だが、私には致命的なまでに運が無い。次々と頼みもしないのに死の要因を呼び寄せるぐらい運が無い。
 今回の事は余りにも運が良すぎる。在り得ない。だから、この最高の幸運を一瞬で掻き消すようなしっぺ返しが起こりそうで怖いのだ。
 これが杞憂に終われば下忍任官まで死亡フラグを回避出来るが、生憎な事にこういう時の不都合極まる予感を外した覚えは一度も無い。
 如何なる事態に対処出来るようにあらゆる可能性を想定し、兜の緒を締めて待ち構えよう。




「木登りかぁ、まだ一度も試した事無かったなー」

 此処は日向の私有地、私にとって監視の目から解放され、思う存分に自己鍛錬出来る唯一の修行場である。

「……案外簡単だぞ、チャクラを練るという感覚を掴むまでが大変だったが」
「そうか? 俺は死ぬほど苦労したぞ、水面歩行とかもすぐチャクラ切れるし」

 まだ今朝の事を根に持っているユウナは不機嫌さを隠さず、事情を知ったヤクモは完全に無視している。ちょっとした悪ふざけだったのに、心が狭い奴だ。

「よーし、行くぞ。とりゃー!」

 チャクラを足元に集中させ、記念すべき第一歩を踏み出す。
 ぐじゃっと快晴な音を響かせ、足が樹木にめり込む。二歩目も深々とめり込み、折角なのでそのままの状態で木を歩いて登っていく。あっと言う間に頂上である。

「流石は私っ。一発で成功よぉー」

 下では居た堪れない空気に包まれている。そりゃ原作のサスケのようにチャクラが強すぎた状態で登ったのだからこの修行の趣旨に外れているのは先刻承知である。

「あー……」
「……なんというか、あれだな。オマエは石仮面被った吸血鬼かっ!」
「あはは、そうそう、ユウナ。その突っ込みを待っていましたっ」

 一瞬通じないかな、と心配になったが。頂上から飛び、華麗に着地する。
 今度は違った木で真面目に挑戦する。最初の一歩で体重を支えられるぐらい吸着した事を確認し、普通に歩いて登っていく。難無く成功である。

「うんうん、これは案外簡単だったわ。……にしても、何でこれアカデミーで学ばせないのかねー? チャクラのコントロールなんて基礎中の基礎だろうに」
「教育カリキュラムを本気で見直した方が良いんじゃないかと真剣に悩むところだ」

 ユウナの言う事は最もだ。こういう基本的な事を教えないから忍の家出身とそうでない者の差が激しいんじゃないかと邪推したくなる。
 いや、逆に考えればそれが当然であり、サスケやナルトに至っては教える親がいなかったからこれが出来なかったのでないだろうか。

「性質変化の選定方法の紙見式もな。あれはまんま水見式だが」

 完全に後付設定だがな、ヤクモは苦笑する。
 紙切れにチャクラを送り込んで、その時生じた反応が自分の性質である、という感じだったと思う。アカデミーの授業でも触る程度はやっていた。本当に触る程度だが。

「あー、あれかぁ。私はうちはだから、やるまでもなく火の性質なんだろうなぁ。ユウナとヤクモは?」
「自分は水の性質だったな」
「俺は雷だが、未だに雷遁系の術使えないぜ……」

 木ノ葉隠れの里は大体火の性質で、他の性質は珍しいらしいが、主人公のナルトからして風の性質なんだから当てになるまい。

「そういえば螺旋丸の練習とかした? NARUTOの世界に来たからには習得しないとなーと常々思っているが」

 あれは少ないチャクラで即死級の威力を叩き出せる効率的な術だ。相手と互角の体術があれば必殺の武器になる故に、必ず習得しようと思っている。

「そりゃ練習したよ。……俺はまだ水風船すら割れねぇー。どうも俺は忍術系とは致命的に相性が悪いみたいだ」

 不貞腐れた表情でヤクモはがっくりと項垂れる。

「自分の方はまだゴムボールが割れないな。日向の柔拳に螺旋丸が加わればネジなど即座に引導を渡してやれるのだが」

 ふーん、と普通に受け流してしまうところだったが、ユウナにしては珍しい、聞き逃してはならない問題発言である。

「何気に物騒な事を言っているなー。一族の次期当主は原作通りハナビちゃんになるだろうから、分家の倅如きなんて気にする必要無いんじゃない?」
「どういう訳か事有る毎に、ね。真面目に戦ったら百回は殺されている」

 相当鬱憤が溜まっているのか、ユウナは疲れた表情で溜息付く。
 一緒に住んだ体験談から言えば、日向の気質は少々ネガティブだと思う。陰険で根に持ち易いので、その粘着度は想像するだに恐ろしい。

「完成形の螺旋丸を使える奴がいたら即座に写輪眼でコピー出来るけど、下忍になるまで三年あるから自力で習得するかねー」

 此処まで来て、二人は漸く私の意図に気づいたみたいだ。
 螺旋丸が完成していたなら即座に見て盗もうという私のせこい魂胆に。

「うがぁー! 写輪眼の有り余るチート能力が憎たらしいぃ! 神様は不平等すぎるぞぉ!」
「本当だな。忍術や幻術を一目見るだけ習得出来るのは羨ましい限りだ」
「テメェは白眼あるからまだマシだろうが、俺にゃ都合の良い血継限界なんてねぇぜ。マジへこむ」

 ヤクモは益々落胆するが、その言い草には文句がある。それは隣で不満を浮かべるユウナも同意見のようだ。

「寝言は寝て言えー、ヤクモの純粋な身体能力こそ反則級でしょ。男女の身体能力の優劣以前の問題を感じずにはいられないぞー!」
「刀を使われたら自分でも勝てないよ。生まれる世界、間違えてない?」
「……何気に酷い言われ様だな。漫画の知識を使ったお遊び剣術が功をなしているとは、素直に喜べん」

 一回、一対一で何でもありの組み手をして解った事だが、コイツは忍者じゃない。
 いや、この世界に真に忍者と言える奴が何人いるか知らないが、刀を主体とした戦闘スタイルはまさに侍(むしろSAMURAI?)と呼ぶに相応しい。
 小手先の忍術などヤクモには一切必要無いのだが、本人としては派手好きなので不本意なのだろう。

「この中じゃ一番の落ちこぼれは自分かなぁ」
「剛の拳よりストロングな柔の拳使いが何をほざくかっ!」
「ユウナが使うの絶対に日向の柔拳じゃねー。ありゃ世紀末で暴れる一子相伝の暗殺拳だろ?」

 ユウナは日向宗家の癖にまともな日向の柔拳を使わない。何故ならその分野では分家のネジに勝てない事を身をもって知っているからだ。
 それ故に日向の跡取りから弾かれるだろうと本人は楽観視しているが、より進化させてヤバイ方向性に発展させるのではないかと私は心配だ。

「というか、単純な勝負じゃ私が一番劣るねー。全く、大した奴等だわ……」
「その褒め文句はもう聞き飽きた。つーか、ルイが一番寝言を吐いてるじゃねぇか!」
「ルイは絶対に相手の土俵で戦わないからね。必ずルール外のルールで来るでしょ。将棋で勝負したら薬盛るとか、格闘技で勝負したら暗器使うとか」

 うんうんと頷くヤクモとユウナの二人。いやいや、万華鏡写輪眼を使わない私は殆どの分野において君達以下ですよ?
 基本性能が段違いだから、真正面からやっても勝ち目が無い。それ故に私が勝つという事は『嵌めて勝った』という結果しか残されていない。
 この二人は如何に自分が恵まれているか解っているのだろうか、気が滅入る。

「だけどまあ、うち等が組めば敵無しだねー。下忍の編成もこの三人にして貰いたいところだわ」
「そういえば前から思ったんだが、ルイはうちはだからカカシの班になるんじゃね? サクラ押しのいて」

 その事については既に予測済みだよ、ヤクモ。カカシ達に万華鏡写輪眼を暴露する事は絶対に選べない選択肢なので、波の国での死亡フラグの乱立は是非とも回避したい。

「そうならない為に写輪眼覚醒の見込み無い落ちこぼれとして、シカマルとドベ二位争いしているのよー。あとはユウナが二位まで駆け上がってヤクモは中間維持だねー」

 だが、それでもうちはというだけでカカシの班に組み込まれる可能性は捨てきれない、と二人は懸念を示した。まあ在り得そうな話であるが、それも予期せぬ事で解決した。

「いざとなればヒアシ殿に頼むとしよう。木ノ葉の名家は班編成にも融通利くみたいだしね」
「ああ、原作で露骨な組み合わせが二班あったしな」

 ぽん、と手を鳴らし、ヤクモは納得する。
 夕日紅が率いる犬塚キバ、油女シノ、日向ヒナタの班、猿飛アスマが率いる奈良シカマル、山中いの、秋道チョウジが代表的例である。
 アスマ班に至っては親も同じような組み合わせだったので、名家が越権行為じみた横暴を利かせているのは火を見るより明らかな事実である。

「あ、そういえば今思い出したが、下駄箱にあった手紙は結局何だったんだ? 果たし状? それとも斬奸状?」

 ヤクモの言う通り、アカデミーの帰り際、私の下駄箱には手紙が入っていた。前の陰湿ないじめ騒動の再燃を危惧したが、それどころじゃ済まないものだった。
 手紙を読んだ私は予想を遥かに超えた最悪の事態が訪れたと確信する。漸く手に入れた地盤を木っ端微塵にされる可能性すらある。それが身から出た錆ならば笑うしかない。
 私は痛烈な皮肉を籠めて、こう答えた。

「火傷しそうなぐらい熱烈な恋文よ、うちはサスケからの」




「どうしたの、サスケ。こんな時間に呼び出して――」

 忍者さえ静まる真夜中、手紙に指定された場所に足を運んだうちはルイはうちはサスケと対峙した。
 待ち構えていたサスケは睨むようにルイを射抜く。
 殺気すら滲ませる気迫さえ纏っていた為、明らかに話し合いの雰囲気ではなかった。

「ルイ――オレと、戦え!」
「え――?」

 問答無用、と言わんばかりに戦闘は開始される。
 投擲されたクナイをルイは紙一重で避けたが、即座に間合いを詰められ、繰り出された足蹴には反応出来ない。咄嗟に右手でガードしたが、受け止めきれずに吹っ飛び、草叢に転がる。

「――グッ!」

 空気を切り裂く風切り音が二つ、それが追い討ちのクナイだと察したルイは転がっている途中で跳ね上がるように飛び退き、難を逃れると同時に牽制のクナイを投げる。

「――本気を出せッ! おまえも使えるんだろう、写輪眼をッ!」

 だが、そんな苦し紛れの攻撃ではうちはサスケの動きを止める事は出来ない。
 サスケは疾走しながらも一歩ずれるだけで躱し、驚くルイの下に切迫する。そのまま振り抜いた拳はルイの無防備な腹部を痛烈に貫いた。

「あぐぅ――!?」

 余りの威力に地に踏ん張れず、ルイの小柄な体はさながら木ノ葉のように宙を舞い、地に落ちる。
 呼吸もまともに出来ず、倒れて蹲るルイを見下ろし、サスケは苛立ちさを隠さず叫ぶ。

「ふざけるなッ! オレ程度じゃ出す価値も無いのか――!」 
「――ふざけてなんか、ない」

 激しく咳き込みながら片膝を立て、ルイは正面のサスケの眼を見据える。
 その眼は写輪眼でもない只の眼だった。だからこそサスケには眼が離せなかった。

「これが、私の本気よ。サスケにとっては、遊んでいるようにしか見えないけれども、名だけの凡人ではこれが限度よ」

 ルイはふらつきながら己を自分の言葉で自傷する。弱々しく立ち上がる様など遅すぎて見ていられない。うちはイタチの片鱗など、この少女には欠片も見当たらない。

「写輪眼なんて、どんなに切望しても私には届かない。父さんも母さんもそうだった。本当にうちはの血がこの身に流れているのか、私が一番信じられないわ」

 苦痛に表情を歪ませながら、ルイは自嘲する。
 羨望と嫉妬が入り混じり、諦め掛けている顔はまるで優秀すぎる兄を追い続けた自分を見ているようだ。
 ……本当に、自分は彼女に写輪眼の影を見たのだろうか、疑心が大きくなる。

「でも、サスケは違う。貴方は間違い無く天才よ。私が保証する。近い将来、必ず写輪眼を開眼してうちはの名に恥じない忍者になれる。生まれつき落ちこぼれの私とは違って、ね。だから――今の貴方には負けられない」
「な、に――」

 そう言って、ルイは己一人で立ち上がる。
 唯一つだけ、強い意思が籠められた眼だけは違った。うちはイタチのものですらない、異質の眼をサスケは知らない。
 クナイを一本取り出し、ルイは腰を低めてクナイを持つ腕を限界まで後ろに逸らすという、今まで見た事の無い異形の構えを取る。
 さながらその構えは、矢を番えた弓に似ており、限界まで張り詰められた弦の如く少女の腕は解放の一瞬を待ち侘びていた。

「――行くよ。これが、私の全力ッ!」

 嘗て無いほどの大振りをもって、そのクナイは激烈な勢いで投擲された。
 空気を切り裂き、獰猛な速度で飛翔するクナイはサスケの顔面目掛けて直進する。
 躱すかクナイで弾くかの二択に迫られ、サスケは瞬時に弾く事を選択する。体勢を完璧に崩すほどの全力で投げられた一刀から逃げるのはサスケの誇りが許さなかった。

「ハァッ!」

 闇夜に目映い火花が散る。この必殺の一刀を弾けば、隙だらけのルイを小突いて終わる。サスケが自身の勝利を確信した時、それが早計だった事を瞬時に悟る。
 ルイは全力で投げ、体勢を崩しに崩した。自身の動きを制御出来ず、無様に地に転がる筈だった。だが、彼女は投げた反動を利用して独楽のように回転し、その回転力を殺す事無く在り得ない速度で疾走してきた。

(まず――だがッ!)

 クナイを弾いた反動で右腕は麻痺し、咄嗟に動かせない。
 間髪入れず絶妙なタイミングで突撃してくる。だが、まだサスケには左腕が残っており、一直線に向かってくるルイの動きを予測して反撃する余力が残っていた。
 ルイが疾走し、互いの必殺の間合いに入る刹那、彼女は己が右腕を引く。
 それが何かを引っ張り戻すような動作だと感じた瞬間、在り得ない角度からサスケの頬にクナイが一閃した。

「――っ!?」

 光無き夜で気づけなったが、あのクナイには糸が付けられていた。弾かれて宙に舞ったクナイを手元に引き寄せて当てたのだ。
 それに気を取られて一瞬隙が生じる。突進力を生かしてサスケの頬を殴るには十分すぎる隙だった。

「ぐあぁッ!」

 非力な少女であれどもこの一撃は痛烈極まった。余りの威力にサスケは踏み止まれず、激しい勢いで地面に倒れる。更に背中を強打し、息が詰まる。
 ――まずい、動けない。決定的な敗北を覚悟した時、自分の他に地に崩れ去る音が空しく響いた。

「……ルイ!?」

 すぐ傍でルイは精魂力尽きて倒れていた。
 本来なら腹部の一撃で悶絶し、暫くは動く事すら儘ならぬ身。限界に近しい行動で一時的な呼吸困難に陥り、拳を振り抜いて間もなく気絶していたのだ。

「おい、ルイ、大丈夫かっ!」

 咄嗟に近寄り、ルイの安否を気遣いながら抱き寄せる。
 同じ年齢なのに性別が違うというだけで、彼女の体は余りにも細かった。この小さな体の何処にあんな力を出せたのか、不思議で堪らない。

「……やっぱり、負けちゃった」

 薄っすらと眼を開け、ルイは弱々しく呟いた。
 大事に至らなかったと安堵すると同時に、サスケは自身の勘違いで彼女を此処まで痛めつけた事に激しい自己嫌悪を抱く。

「ごめん、サスケ」
「何を謝る――」
「泣きたい時に泣かないと、心が壊れちゃうよ。あの時、さ……辛いのは私だけじゃないのに、私だけ泣いて――ごめん」

 まさに総身が震えた。自分は謂れ無き嫉妬に駆られ、自分勝手な妄想で痛めつけたのに、彼女はぼろぼろになりながらも自分を案じたのだ。
 自身の余りにも愚かしい短絡的な行動に後悔する。自分は一体何に対してこんな妄執を抱いたのだろうか。

「此処には私だけしかいないよ。胸を貸す事ぐらいしか、出来ないけど」

 胸の奥から沸き上がった慟哭は止まらず、兄に復讐を誓った時に置き去りにした一族の死を悼む悲嘆が鮮やかに蘇る。
 罅割れていた心の堰は崩壊し、サスケは一族を亡くして以来、初めて涙を流した。

「あ、うぅ、あぁっ! すまん、すまないっ、ルイ……! オレは、オレはとんでもない過ちを――!」
「間違えたら、私が叩き直してあげる。弱いけど、サスケの頬を殴るくらい、私にも出来るから」

 ――日向の家に引き取られても、私達は家族だから。
 二人は互いに縋るように強く抱き締め合い、サスケは泣き叫んだ。心に巣食う悲哀を一緒に洗い流しながら――。




(――堕ちたな。全くもって梃子摺らせてくれる)

 私はサスケに痛いほど強く抱かれながら、内心高笑いしながら一息つく。
 サスケの手紙には指定された時刻と場所で会いたいという趣旨しか書かれていなかったが、私は先のいじめ騒動から私が写輪眼を開眼しているのではないか、と確信は持てずとも疑っていると瞬時に悟った。この時期にこれを差し向けた意図などそれしかあるまい。
 もし、私が写輪眼を開眼していると知られれば、苦労して築き上げた私の地盤が脆くも崩れ去っただろう。三代目火影など上層部が折角勘違いしたうちはイタチの事も発覚し、不都合な過去を白日の前に曝される可能性さえ出てきた。
 謂わば今回のは最大級の爆弾だったが、何とか不発弾として処理出来て安心する。
 訪れるピンチを切り抜けていくだけでは足りない。ピンチをチャンスに変えて躍進する。そうしなければ次々に襲い来る試練を乗り越えられない。それほど私の日常は切羽詰まっているが、今回の事は得難い財産となるだろう。
 そうと決まれば大蛇丸なんぞに渡す請われも無い。
 うちはサスケを情と言う名の絆で束縛し、木ノ葉隠れの里に押し留めよう。三文芝居を演じきり、此処まで骨を折ったのだから、里抜けされては採算が取れない。

(うちは一族復興の為の種馬、外敵の排除に私の守護――用途は幾らでもある。思う存分に使い潰してくれる。ふふ、あははは、あーっはははははははははははははは――!)

 うちはイタチにとって最大の誤算は私を殺せなかった事だろう。全てを賭けて守ろうとした大切な大切な弟は、私の掌で存分に舞い踊り、朽ち果てる運命にあるのだから――。





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