巻の33 黒羽ヤクモ、誓いの果てに死すの事
「……ヤ、クモ。この、馬鹿。なん、で、来た……!」
ルイは心底信じられない表情で、声を振り絞って悲痛の限り叫んだ。
「誰かと思えば――死に損ないの分際で何の用かしら?」
「聞こえなかったか? ルイを離せって言ったんだ、蛇野郎」
最初は相手にもしていなかった大蛇丸だったが、その一言で殺意をヤクモに向ける。
ヤクモはあの時の状況と似通っているなとしみじみ思い、凄絶な笑みで返す。
「馬鹿、逃げろ。私に、構うなぁ……!」
今にも泣き崩れそうなルイの声だけが鮮明であり、より一層、ヤクモを奮い立てた。
「馬鹿はルイ、お前の方だ。……こういう時は、素直に助けを求めるもんだぜ」
こんなになるまで痛めつけられた張本人たる大蛇丸への怒りが滾り、また気絶していた自分への怒りでヤクモは頭がどうにかなりそうだった。
「折角見逃してあげたのに御馬鹿な小僧ね。まあその傷では私に挑もうが挑まないが結果は同じだろうけど――そんなにこの子が大事かしら?」
その醜悪で下卑た嘲笑を、ヤクモは真っ直ぐ斬り捨てる。
「――当たり前だ、テメェみたいなカマ野郎にルイを渡せるか」
その聖句の如き揺るがぬ覚悟こそ、大蛇丸には心底気に食わなかった。
「いつの時代も餓鬼は身の程を知らぬようね、癇に障るわ」
大蛇丸はルイの三つ編みを手離す。地に叩き落ちたルイは喘ぐ間も無く、大蛇丸の袖から口寄せられた数匹の蛇に口元から全身に巻きつかれ、身動き一つ出来ない程度に拘束される。
「んぐ、んん――っ!」
「ルイ!? てめぇっ!」
まるで捕らわれのお姫様を助けに来た忍者だと大蛇丸は嘲笑った。
だが、現実は物語のように都合良く、また綺麗に出来ていない。必ずしも悪が討ち果たされる必要が無いのだ。悪が力無き正義によって滅びる法則など何処にも無いのだから。
「決めたわ。とりあえずその四肢圧し折って、目の前で愛しの愛しのルイを犯してあげるわ。クク、最高の冥土の土産でしょ?」
――運命の巡り合わせか、奇しくもあの時とほぼ同じような状況になった。
ヤクモは歯を食い縛りながら、刀の柄の握りを一層強める。
「――本当に愚かね。手の届かぬ高嶺の花を望むなんて。幾らお前が分不相応にこの子に恋焦がれ、望んでも、この子はうちは再興の為の道具。結局はサスケ君のモノにしかならないわ。手に入れたいのなら、私のように無理矢理じゃないとねぇ」
ルイを道具扱いするんじゃねぇ、と大声で言ってやりたかったが、生憎ともう喋りに興じる気力は彼に残されてない。
ただ一刀、それだけがヤクモに残された全てだった。
「――諦めたら? その方が楽よ。何なら最後にこの子の柔肌、触れさせて上げても良いわよ?」
本当に、この手の野郎は同じ事しか考えないとヤクモは内心毒付く。
「ふざけんな。乙女の柔肌を触るには惚れさせる必要があるぜ」
だから、その一言だけ付き合う事にした。嘗てと同じように、同じ答えを出して――。
「クク、これでも親切で言ったんだけどねぇ――構えるがいいわ、先手は譲ってあげる」
今の大蛇丸には刀を杖代わりにして立っている、としか見えてない。
確かに普通ならその通りだろう。だが、それ故に既に構えている事に気づかず、射程圏内に入っている事に気づいていない。
(……通用するかは、祈るばかり、か)
――ヤクモは大蛇丸に気づかれぬように、地に刺す刀身の刃先を足の指先で限界まで締め付ける。チャクラの強力な粘着力が足りない力を補い――その在り得ざる魔剣を確かなものへと昇華させる。
「――!」
歯が砕けんばかりに食い縛って――全身全霊をもって刀を解き放った。
僅か一瞬で、大蛇丸の顔から一切の余裕が消えた。突如放たれた神速の下段斬りは目測を遥かに超えて伸びる。
己が愛刀のように刀身が伸びたのでは無いのだが――在り得ない事に、己が顔に届く。
そう判断するや否や、大蛇丸は全力をもって退いた。百戦錬磨の経験が遥か格下への慢心と油断を刹那に払拭させ、不可避の魔剣を可避へと貶めた。
(――殺った!)
だが、ヤクモの一閃の本領は回避された後にあった。
刃先から生じた紫の雷光が縦一直線に疾駆する。予想を超えた死の雷閃が眼下に切迫する刹那――大蛇丸は頬を吊り上げて嘲笑った。
地に伏せる寸前のヤクモは見た。自身の紫の雷閃が、突如生じた吹き荒む暴風によって掻き消される瞬間を――。
「な……」
「ククッ、惜しかったねぇ。この身が風影で無ければ仕留められていたでしょうに。アカデミーでも習ったでしょ? 雷遁は風遁の前には無力同然だと」
大蛇丸が勝ち誇った直後、彼は拍子無くクナイを己が側面に投げる。
細心の注意を払って迫っていた掌サイズの水球に当たり、ユウナの水遁・浸水爆は呆気無く砕け散った。
「へぇ、日向のガキも逃げていなかったか」
捕まえて殺そうかと思った矢先――大蛇丸の胸に実体化したチャクラの刃が貫いた。
「な――に?」
一体誰が――背後を振り向いた大蛇丸が見たのはこれまでとは違い、一定の模様に定まった万華鏡写輪眼を浮かべたルイだった。
その背後に聳えるは、不透明な巨人の左腕だけであり、その手に持つ瓢箪からは自身を穿ち貫いたチャクラの刃が生じていた。
既にチャクラが切れた筈と大蛇丸が混乱した瞬間、傍に干乾びて倒れる蛇達を目の当たりにした。
使い捨ての部下の一人だったヨロイから盗み取ったであろうチャクラ吸引術が、自身を討つ事になった。その事を顔を歪ませながら理解する。
「――私、達の、勝ち、だ」
これが不死身の本体であるなら特に支障無かったが、元が影分身だけに消えざるを得ない。
だが、此処で得た戦闘経験から、もう一度戦って負ける事は絶対に在り得ない。そう苦し紛れに笑った時、影分身が消えずに吸われる感覚に大蛇丸は驚愕した。
「ま、まさかこの剣は十拳剣!? ルイ、アナタが隠し持って――!?」
大蛇丸の体が溶けるように吸われ、瓢箪の中に飲み込まれていく。最早消える事すら出来ない。大蛇丸の影分身は酔夢の精神世界に永久的に封印される事になる。
「その眼ェ、その眼ェエエエェエェエェ――!」
その一部始終を、模様であった黒色が主体の、五芒星を模った桔梗の中心に極点が鎮座する万華鏡写輪眼は感情無く見届けた――。
――その光景を、うちはサスケは戸惑いながら目の当たりにした。
あの大蛇丸をも葬り去った異端の瞳術に、普通の写輪眼ではない、彼の兄イタチを思わせる万華鏡の如き写輪眼を余す事無く見てしまった。
『――お前が開眼すれば、オレを含め、万華鏡写輪眼を操る者は三人になる』
サスケの脳裏にイタチの言葉が鮮やかに蘇り、様々な憶測と疑惑が入り乱れる。
一体何を信じて良いのか、またしてもサスケは解らなくなった。
「サスケくん、やっと追いついた……って、ルイ!?」
追いついたサクラに追い抜かれても尚、サスケは暫く呆然と立ち続けていた。
(……あ、れ……?)
原作通りの大蛇丸の結末を見届け、倒れてから反応が無いヤクモの下に向かおうとした時、ルイは急に視界が鎖された事に愕然する。
(……やば、い。須佐能乎のリスクが、此処まで大きい、とは)
感覚全てが曖昧で意識が急速に揺らぐ。だが、今気絶すれば、ヤクモを治療する事が出来ず、死なせてしまう事になる。
「――イ。ルイ! 大丈夫か!?」
「ユウ、ナ? 手、貸して。ヤクモの、下へ……」
差し伸べられたユウナの手を掴み、ルイはチャクラを吸おうとしたが、最早吸引術さえ発動出来ない我が身に驚愕する。
死に勝る絶望がルイの心に圧し掛かる。大蛇丸を倒したのに、最早ヤクモを救う術が無い。完全に望みが断たれた――。
「ルイっ、アンタ大丈夫!?」
その時、ナギではない女の声が聞こえた。この声が誰だか理解する前に、ルイは自身からは考えられぬ幸運に狂気喝采した。
「サ、クラ……協力、もとい、抵抗するな」
最後の気力を振り絞って両手を間に挟んでクロスさせ、ルイは祈るように術を発動させる。
「え? 心転身の術……?」
「そうよ」
「うわっ、私、勝手に喋ったぁ!?」
半端ながら術が成功した事にサクラの中に入ったルイは安堵の息を零した。
「サクラ、時間無いから手短に話すわ。私が力尽きるまでに医療忍術の感覚を気合で掴んで。兵糧丸と造血丸は私の医療パックの中にあるから」
「って、こんな方法あったのなら何で修行中にやんなかったのよ!?」
「平常時ならサクラの意識なんて残らんよ」
冷めた口調で話すも時間が残されていない。その事を同居されたサクラ自身も感じ取り、慌てて倒れ伏すヤクモの下に駆ける。
乱雑に巻かれた包帯を手早く外し、傷を改める。鋭利な刃物で完全に貫かれており、何より出血量が酷い。意識も無く、呼吸も弱まりつつある。最早一刻の猶予も無かった。
「行くよ、意識を集中させて――あ、私の事は最後で良いから。応急手当が終わったら何としても医療班と接触する事、良いね?」
「待てルイ、お前も長くは持たんぞ!? それになけなしのチャクラを使い切ったら死ぬぞ!」
ユウナの荒げた声に、サクラの中にいるルイが余計な事を、と強烈に睨んだ。
「……問題無いわ。その程度で死ぬほど軟じゃないから」
ルイはわざと自身の抜け殻か視線を反らし、ヤクモの治療を開始する。
サクラは全神経を集中させ、その微細なチャクラ操作の感覚を掴まんと必死に努めた――。
三代目火影と大蛇丸の頂上決戦が見渡せる場所にて、一羽の鴉が人知れず煙を立てて消滅した。
その直後に結界忍術が解け、術を奪われた大蛇丸は四人衆の肩を借りて脱出する。
――もしも、ルイがもう少しだけ意識を保っていたのならば、写輪眼で傍観していた一羽の鴉は影分身としての本領を発揮し、逃走する大蛇丸を天照の炎で葬っていただろう。
流石に三代目諸共、堂々と葬る訳にはいかない。
それ故にこの絶好のタイミングを虎視眈々と狙っていたのだが、ほんの数秒の差が明暗を分けた事に、ルイは酷く悔しがる事だろう。
そして、結果として失敗に終わった影分身の刺客が、大蛇丸の知らぬ処で生命を救った事は運命の皮肉としか言い様が無い――。
ナルトを背負ったシカマルがルイ達の下に辿り着いたのは少し後の事だった。
「……やっと追いついたぜ。ユウナ、状況説明してくれ」
「追手は何とか倒した。ルイへの応急手当が済み次第、敵を回避しながら医療班と接触する。……ルイとヤクモの容態が思わしくない。一刻の猶予も無いな」
ユウナの外面は冷静に見えるが、内心ではどうだかとシカマルは分析する。
如月ナギサは腹の奇妙な術式が刻まれた事以外の異常は見当たらないが、今背負っているナルトと同じく目覚める見込みは無い。
それに重傷で死の境に彷徨っているルイとヤクモは当然の事ながら戦力外、サクラもその治療に殆どのチャクラを費やしたから戦力に数えるのは無理かと判断する。
(このメンバーで戦えそうなのはサスケとユウナだけか。オレはオレでチャクラ切れだし、今、敵に襲撃されたら全滅しかねんな)
今の状況で負傷者合わせて八人の大所帯が移動するとなると、確実に敵に発見されるだろう。されども、二人の容態は待ってくれない。
思った以上に切羽詰っている事をシカマルは再認識した。
「道中はどうするんだ? 流石にこの大人数、しかも怪我人背負って移動するのは無理があるぜ?」
「その為に自分の白眼とパックンの鼻がある」
ユウナは自身の眼を指差す。チャクラの残量を気にしなければ、日向の白眼による目視と嗅覚に見破れないものは無いだろう。
方針が定まった――その時、パックンに反応があった。
「――!? まずい、二小隊、いや、三小隊が此方に向かっておる!」
「よりによってこんな時にかよ……!」
だが、それらは先に見つかっていない事が前提の事であり、早速その大前提が崩れたとシカマルは焦りに焦る。
気力だけでルイの治療に当たるサクラにしても、まだ途中であり、間の悪さに歯軋りを立てた。
「ちぃ、隠れるぞ。あとサスケ、場合によっては自分とお前で陽動する事に――」
「――その必要は無いな」
誰のものでもない声が響いた直後、彼等八人を取り囲むように周囲の土が隆起した。
「な!?」
高い樹木の高さまで達した土の上に、次々と音隠れの忍が着地する。白眼で見るまでもなく完全に包囲されていた。
「うちはのガキどもめ、こんな場所にいやがったか。大蛇丸様への最高の手土産となろう」
「で、他のガキは殺して良いんだよな?」
「ああ、だが遊ぶなよ? 手早く済ませろ――うおぉ!?」
万事休すかとユウナ達がそれぞれ覚悟を決めた瞬間、土の壁の一部が盛大に吹っ飛んだ。
巻き起こる土埃の中から颯爽と現れ出でたのは『油』の一文字が刻まれた額当てをする奇抜な大男、大蛇丸と同じ三忍の一人、自来也その人だった。
「――大蛇丸は何処じゃ? 逃げ損ないの下っ端どもが知っているとは思えんがのォ」
彼らの主を思わせるほど圧倒的な実力差を見せびらかす自来也と対峙した刹那、それとは別の異変が生じる。
「う、うわああぁ! な、何だこの蟲はァ!?」
数人の音隠れの忍の下に膨大な蟲が群がり、体全体に組まなく纏わり付く。もがき苦しむ忍達は程無く全てのチャクラを喰らい尽くされ、やがて動かなくなる。
「――援護します、自来也様」
音も気配も無く自来也の隣に現れたのはサングラスをした木ノ葉隠れの忍だった。
「おお、油女のか。相変わらず地味だのう」
「それが忍のあるべき姿かと。貴方は目立ちすぎる」
熟練の上忍が醸し出す風格に音隠れの忍達はたじろぐ。数の有利が既に質で覆されている事に彼等は未だ気づいていない。
「シノ、お前いたのか!?」
シカマルはその上忍らしき地味な男と一緒に現れていた油女シノの姿を見て驚く。
中忍試験場から見た覚えが無いシカマルとしては当然の反応だが、シノにとっては非常に傷つく一言だった。
「……時として何気無い言葉が人を傷つける事がある。因みにオレは元々の相手であるカンクロウと交戦していた。十分以上掛かったが、援護に来たぞ。うちはサスケ」
「あ、ああ。そういえばそうだったな……」
今の今まで忘れていたとは口が裂けても言えない、とサスケは口を噤んだ。
「お喋りは其処までだ。此奴等はワシ等が片付ける。お前達は負傷者の護衛を頼んだぞ」
仙術を用いる異端の蝦蟇仙人に、幾万の奇壊蟲を操る蟲使いの末裔が疾駆する。音隠れの忍達が全滅するのに一分も掛からなかった――。
「――此処、は……?」
目覚めたばかりで朦朧とする意識の中、そういえば土の国の一件でも病院送りになったなと感慨深く思う。
これでは不本意な事に戦闘ある度に病院送りになって寝込むカカシと同じではないかと気づき、私は一人ガックリとする。
「ルイ、目覚めたか!」
「良かった、良かったルイちゃん! 本当に、死んじゃうかと思ったよ……!」
目の前にはユウナとナギがいて、ナギに至っては涙ぐみながら喜んでいる。
「ユウナに、ナギ。無事だった、のね」
多少、額や腕などに包帯が巻かれているが、その元気そうな姿に私は心から安堵する。
……でも、おかしい。何処か違和感がある。何かが足りないような、そんな寂寥が心に蟠る――。
「あれ、ヤクモ……そう、だ。ヤクモはっ!?」
電撃的に意識が覚醒する。
そうだ、ヤクモだ。彼はあの後どうなったのか。自身への治療を後にした自分が無事だったのだから、当然の如く助かっている筈だ……!
「……」
「ぁ……」
先程の歓喜の顔とは一変したユウナの重い沈黙と、小声を震わせて俯いたナギは否応無しに最悪の事実を叩きつけてくる。
信じたく、ない。絶対に。否定して欲しかった。
「……嘘、よね? 私が助かったのに、そんな――」
「……あー。ごほん、ごほんっ」
「え……?」
その時、隣のベッドからわざとらしい咳き込みが耳に入った。
――その後ろ姿を、見間違う事など在り得ない。
侍の丁髷じみたポニーテールに桜吹雪が目立つ黒衣装、木ノ葉の額当てが巻き付けられた刀、何処からどう見てもヤクモでしかなかった。
「くく、あの間々死ねたら最高に格好良かっただろうに」
「えー。女の子に一生モノの傷を遺して死ぬなんて最低よー」
深刻な表情から一転し、笑い転げるユウナとナギを本気で睨みつける。
「――おーまーえーらぁー! やって良い冗談とやって駄目な冗談があるでしょっ!」
本気で信じかけて涙腺が崩壊した私の水分を返せと目元を拭う。
……でも、本当に、本当に良かった。
無理矢理弟子になって邪魔極まると思っていたサクラが上手く作用するとは欠片も思っていなかった。今回ばかりは感謝せねばなるまい。
「……えーとさ。何でこっち向かないの?」
「戦闘中に勢い任せて口走った事が恥ずかしすぎて顔向けれないんだってさ」
心底愉快そうにユウナとナギは笑い、ヤクモは肩を震わせた。
そういえば、色々凄い事を言っていた気がする。如何に切り抜けるか必死だったから全然覚えてないけど。
「ねぇ、ヤクモ」
「なな、何だよルイ!」
ヤクモは相変わらず振り向かない。けれど、その耳まで真っ赤な様子を見れば、どんな顔をしているのか大体想像付く。
私の中で悪戯心が鎌首を上げていた。
「もう一度、聞きたいな。今度は直接、さ」
「っ?! なななな、何言ううぅてっ、げほっごほっ!?」
ヤクモは慌てて振り向き、且つ、激しく咽た。我ながら効果は抜群だ。
「おーっす。おお、ルイ、元気みたいだな。……ん、ヤクモ顔真っ赤だぞ。どうやら青春してるようだなぁー!」
「せせ先生まで何言ってるんだっ!?」
何気無く生きていたカイエ先生も加わり、静寂を好む病室に歓喜の声が五月蝿く鳴り響いた。
――今はただ、無量の感謝を貴方達に。生きてくれて、ありがとう――。