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No.3089の一覧
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[3089] NARUTO うちはルイ暴走忍法帖
Name: 咲夜泪◆ae045239 ID:ceb974ce 次を表示する
Date: 2010/06/23 02:13




 序章 うちは虐殺の夜を乗り越えろ


 並行世界。それは無限の可能性を秘めた異世界。隣り合わせでありながら絶対に交わる事の無いイフの世界。
 例えば宇宙から降って来たBETAなる怪物に蹂躙された世界、スタンド使いが跋扈する奇妙な世界、管理局の白い魔王が非殺傷設定をいい事に全力全壊の魔砲をぶっ放す次元世界、ぶっちゃけ何でもありである。
 それを実体験として認識する私は死ぬ毎に別の世界へ輪廻転生する永遠の彷徨い人なのである。
 その理由云々の解明は考えても無駄なので、哲学者に丸投げしておく。
 ――さて、今回生誕した世界は、皆大好きエセ忍者が蔓延る嘘っぽい純和風の異世界、NARUTOの世界である。
 初めまして、こんにちは。今回の私の名前は『うちはルイ』――そう、皆も知っての通り、死亡フラグ全開の一族『うちは』である。今まで幾多の世界を渡り歩いて来たが、此処まで酷い初期条件は久方振りだ。
 ちなみにうちはサスケとは遠い従兄妹みたいな感じで、更には同年代なので凡そ九年後には他の一族の者と仲良く一緒に虐殺される予定である。
 わぁーぱちぱち――ふ・ざ・け・ん・なッ! 享年九歳なんて不名誉な最短記録、打ち立ててたまるか。
 私は絶対にこの木ノ葉隠れの里で平穏に面白おかしく暮らす! 赤ん坊の身ながら私は強く強く誓うのだった。


 巻の1 滅びるうちはに異端の寵児生まれるの事


「おぎゃあぁ、おぎゃぁ(全くもって、やってられん)」

 一歳――毎度の事ながらもどかしい時期だ。何をするにも他人の手が必要であり、培われた色々なものが木っ端微塵に砕かれる恥ずかしい時期である。

「しょうるぁいのユメは大・往・生しぅることー」

 二歳――漸く立ち歩けるまで身体が成長する。出来る限り動き回り、食っちゃ寝する。寝る子は良く育つのだ。
 疲れて動けなくなったら、原作の知識を思い出して今後の行動について考えを巡らせる。死んで此処に来る前にうちは虐殺の真相が明かされていたのは、まさに天恵だった。

「やれやれ、燃費のわりー眼だこと」

 三歳――当然の如く読み書きをマスターする。
 見た目は子供、頭脳というか精神面は大人だし、こんな些細な事に費やす時間は今のところ無い。九歳の死の壁を突き破らんと疾走する。
 こんな奇妙な子供を神童と持て囃す両親には内緒だが、既にうちは一族の血継限界、写輪眼を開眼している。……その折に体内のチャクラを使い果たして死に掛けたが。
 身近に切迫する死の恐怖は人間を物凄い速さで成長させるらしい。死の淵から目覚めた我が写輪眼の巴模様は当然のように三つに変化していた。

「萌えよ、萌えっ! 三つ編みの一本おさげには萌えがあるのよっ!」

 四歳――頭脳面以外は普通の子供を装うのは非常に疲れる。
 漸く結えるほど後ろ髪が伸び、親から強請った赤糸で縛り、一本の三つ編みおさげにする。この髪型こそ幾多の世界での共通点にして私の象徴みたいなものだ。愛着は結構ある。
 うちは一族は何処かきな臭い。こういう一族特有の、暗く淀みきった妄念が所々見られる。
 大人達は現在の支配体制に大層不満を抱いている様子であり、九尾の襲来で壊滅した木ノ葉隠れの里にとって由々しき問題として燻ぶっていた。

「そーいえば親の名前なんだっけ? どーでもいいけど」

 五歳――初めてうちはサスケとイタチ、オマケに彼等の親子と御対面する。
 刺々しさの欠片も無い二人に毒気を抜かれる。が、あと一年でイタチは中忍となり、暗部へ駆け上がっていく。残された時間は四年余り、余命のように思えてきた。
 隠れて体術の向上と忍術の練習に明け暮れるが、この度冗談で試した万華鏡写輪眼だが、普通に使える事が発覚する。
 考えて見れば、幾度の輪廻転生で親兄弟や親友など山のように殺してきているから、私に限って言えば開眼の条件など最初から満たしていたのかもしれない。
 しかし、こんな視神経に異常な負担が掛かる眼など使い続ければ失明するのも自明の理だ。使用の自粛など論外なので、誰かから万華鏡写輪眼を奪って解決するとしよう。

「初体験、しちゃいました。過程や方法など、どうでも良いのだー。てへっ」

 六歳――忍のアカデミーに入学する。基本的な忍術は習得済みなので退屈極まりないが、能力の片鱗を徹底的に隠し通す。うちはイタチは原作の予定通り、中忍となる。
 さて、此処で私の邪まな計画を発動させ――中々に手痛い代償を支払ったが、予想以上の成果を得る。
 うちは一族の同年代の子供二人と親しくし、周囲の眼から離れた場所まで拉致、もとい任意同行して貰って、人知れず幾つもの実験を開始する。
 一つ目は万華鏡写輪眼の催眠眼を利用した写輪眼の強制開眼。これは此方が思う以上に呆気無く成功した。
 二つ目は万華鏡写輪眼による月読で、私の写輪眼使用時の感覚を無理矢理叩き込み、巴模様を三つにさせる。一人は完全に見込み無く失敗したが、もう一人の方は波長が合ったらしく、見事二つだった巴模様が三つになる。
 さて最後の仕上げは見事完全体の写輪眼に至った彼に、最も親しい友人である失敗作の子をぶっ殺させてあげた。
 本当に幻術は便利なものだ。解いた後の取り乱し具合なんて股座が濡れるぐらい最高だった。まあ六歳の少女の身だとお漏らしと勘違いされそうな表現で格好がつかないが。
 この漫画最高の悪役である大蛇丸も真っ青な人体実験は見事成功した。原作に名前すら残されてない無名の彼は万華鏡写輪眼を開眼させたのだ。
 この時ばかりは神様に感謝した。本領を発揮される前に両眼を抉り取り、さくっと殺す。
 即座に移植手術を開始し――私は至極簡単に永遠の万華鏡写輪眼を手に入れたのだった。今ならうちはイタチぐらい簡単に殺せそうな錯覚さえ抱ける。100%返り討ちに遭うが。
 万華鏡写輪眼の力の一つ『天照』の漆黒の炎で二人の死体を骨すら残らず焼却する。後は平然と木ノ葉隠れの里に戻り、出遭った里の者達に『月読』を使って『一緒に帰ってきた』と幻術で疑似体験させて偽装を終わる。
 眼への殺人的な負荷と失明の心配は未来永劫に無くなったが、今日一日で余りにもチャクラを使い過ぎたので実家に帰った途端、数日間余り気絶し続ける。
 目覚めたら親友二人が行方不明――ではなく、在り得ない事か何者かに殺害された事実を知らされ、内心激しく動揺しながらも年相応に取り乱して泣き喚く主演女優賞ものの演技を披露する。

(――殺害現場を目撃された? いや、されたなら現場を押さえられるか、一族の内々で処理されるだろう。つまり、二人の死体を用意した者は『二人が死亡した事』を察知するが、殺害者が『私』である事までは特定し――確信出来なかったと見える。この足枷は真犯人である私を炙り出す為の策?)

 うちは一族の極一部の者から強い警戒心と猜疑心を抱かれる。
 一体誰がこの世から消滅した二人の焼死体を如何なる意図で用意したのか、激しく疑問だが、完全犯罪の目論見が崩され、日々戦々恐々である。
 今のうちは一族の者は万華鏡写輪眼の存在そのものを知らされていないだろうが、二人が殺害された日に気絶したのだから何らかの関連性を疑われるのは当然の流れだろう。
 常に監視され、腹立たしいほど行動に制限が増えたが、どうせあと三年で滅ぶ一族だ。少し辛抱するだけで黄金の未来が切り開かれる事だろう。

「能有る鷹は爪を隠し、水中でもがく白鳥が如く努力を見せないのだー」

 七歳――うちは一族の内部事情が更に険しくなってきた。
 九尾が里を襲来し、程々に復興してきたこの時期、妖狐襲来がうちは一族の仕業なのでは、という疑惑がまたもや再燃しだす。
 前々から暗部の監視が徹底され、一族の居住地は里の片隅へと隔離されていくだけで里との確執が増すばかりだと言うのに、今更新たな火種を増やすとは。里の上部は一体何を考えているのだろう?
 うちは一族に不穏な雰囲気が漂い、益々殺伐としていく。年端無い子供は空気を読めず、疑問符を浮かべるだけで終わるが、私は直に感じすぎて胃が痛い。
 確かこの時期にはうちは一族はクーデターを画策し、里の実権を乗っ取ろうとするが、暗部入りとなったうちはイタチが二重スパイとなり、計画が全て筒抜けになっているとは余りにも滑稽過ぎる。
 身内の縁と里の任務に挟まれ、うちはイタチの中の歯車が狂いに狂う。
 客観的に見れば、うちは一族の虐殺は里の上層部からしても彼からしても避けられぬ出来事だったと推測出来る。
 程無くして疑惑と謎を残したうちはシスイの自殺の一報も耳に入り――いよいよ運命の夜が近いのだな、と私は憂鬱になる。

「星が綺麗だなぁ。七つ列なる星の横の星まで良く見え――あれ、死兆星?」

 八歳――永遠の万華鏡写輪眼の新たな可能性を模索しながら、虐殺されない為にあらゆる努力を重ねていく。
 実力を隠さなければ私もうちはイタチのように飛び級出来ると思うが、目を付けられて暗殺される恐れがあるので自重する。眼はチートだが、身体能力だけは年相応なのだ。
 ――六歳の時の人体実験の一番の問題は、うちはイタチと接触した思われるうちはマダラに私の存在を知られた可能性が極めて高いという点だ。
 一族の開祖である彼は万華鏡写輪眼の秘密を知り尽くしている為、特異なチャクラの残り香からうちはの子供二人が天照で殺害された事に辿り着いている可能性がある。多分、二人の子供の焼死体を用意したのはこいつなのだろう。いつか殺す。
 他の一族の者では疑惑程度で済むが、マダラに至っては私が万華鏡写輪眼の事を悟られている恐れがある。……あの日に気絶さえしてなければ、と悔やまざるを得ない。
 眼の交換を行い、永遠の万華鏡写輪眼まで到達している事までは流石に悟られていないと思うが、最悪の事態を想定すれば虐殺の夜に特別扱いされる可能性が出てくる。
 当初考えていた生存方法は虐殺の夜に雲隠れして惨劇を回避する事だった。それは有象無象の取るに足らぬ存在だからこそ成功する見込みがあった。
 だが、特別視されていると私がいない事が簡単に発覚し、探し出される恐れが出てくる。上忍の域を軽く超えている天才達にとって、下忍に満たぬ少女を見つけ出すのは至極簡単な作業だろう。
 其処で眼を抉られて念入りに殺されるか、生け捕りにされるかは些細な問題だ。何方にしろお先真っ暗でゲームオーバーだ。
 それならばどうするか。原作に関係深い上忍と交流関係を築き、虐殺の夜に頼って逃げ出す――笑いたくなるほど論外だ。里の暗部そのものが敵だからうちはの住処から脱出した時点でさくっと殺されるだろうし、その上忍と合流出来ても一緒に消されるが落ちだ。
 あれこれ試行錯誤と思索を繰り返すが、最初思いついた本命の策以上に有効な手は今のところ見つからない。溜息ばかり出てくる。
 原作で一番の変態である大蛇丸とは関わりたくないが、今は生き残る事が一番大切だ。過程や方法や代償はこの際、眼を瞑ろう。




「こんばんは、初めまして薬師カブトさん」

 うちは虐殺が秒読みになったある夜、当初の策を実行すべく大蛇丸のスパイである彼との交渉に訪れた。
 御年十六歳のカブトの嘘で塗り固められた表情が露骨に崩れている。
 当然の反応だ。生まれてから被り続けた猫を彼方に捨てて万華鏡写輪眼で睨みつけ、大蛇丸も斯くもの禍々しいチャクラを遺憾無く解放しているのだ。驚きの一つや二つ程度では割に合わない。

「うふふ、驚かせてごめんなさい。唐突で悪いんだけど、一つ頼みたい事があるの。この木ノ葉隠れの里でも貴方にしか出来ない事」
「……え、どういう事かな? 僕みたいな落ちこぼれの下忍なんかに――」

 まだ正体を装うとするカブトの惚けた顔は、私が懐から出した物を見た瞬間、獰猛な殺意に満ちた無感情な顔に豹変する。素を曝け出した其方の顔の方が好印象だ。

「私の死体を一つ作って欲しいの。報酬はこの写輪眼。貴方の腕前なら容易い事でしょ?」

 勿論であるが、これは万華鏡写輪眼に開眼した私の眼じゃなく、三つの巴模様にすらならなかった名前すら覚えていない未熟者の写輪眼だ。
 大蛇丸に渡ってもチャクラを無駄使いする足枷にしかならないから実害は無い。カカシのように少しだけ月読に対する耐性が増えるだけだ。

「――」

 一般人なら心臓麻痺で殺せるほどの殺気を漂わせ、カブトは隙一つ無く訝しげに此方の意図を探ってくる。
 これは一種の賭けだ。自身の正体の発覚を防ぐ為に私を口封じしようものなら万華鏡写輪眼で始末する算段だが、今後の展開が圧倒的に不利になるので遠慮したい。

「詮索は不要よ、私も一切詮索しない。この依頼、受けるかどうか手早く答えてくれる?」




 見惚れるほど綺麗な満月の夜、その一本の三つ編みおさげを後ろに揺らした少女は何ら気取る事無く普段着で、されど圧倒的な存在感を漂わせて現れた。

「――な」

 この予期せぬ来客に薬師カブトは内心動揺する。
 少女の名はうちはルイ。彼の主が御執心の血継限界『写輪眼』を宿す一族の者であり、有象無象『でない』観察対象の一つである。
 何故下忍ですらない九歳の小娘風情を特別視しているか、それは二年前のある事件まで遡る。
 うちは一族の子供二人が焼死体で発見された謎の殺人事件。
 身内の子息が殺され、うちは一族は総力を決して事件解明に努めたが、下手人の特定すら出来なかった怪事件である。
 ――この事件の対応でうちは一族は木ノ葉隠れの里の上部との溝を更に深めたのは余談である。
 当時、うちはルイはこの二人の少年と最も親しい友人であり、三人で遊ぶ姿が良く目撃されていた。
 何故その事件の日に限って三人で無かったのか、それだけならば偶然という言葉で片付けられたが、理由は不明だがうちはルイは事件当日未明に倒れ、数日間余り意識不明だったという。
 此処まで来れば関連性を疑うなという方が無理な話だが、事情聴取は一族の内々で片付けられ、以来、監視の目が付けられたものの音沙汰無しとなる。
 その報告を聞いた薬師カブトの主はうちはルイに大層興味を抱き、遠目から監視する事も多くなった。
 薬師カブトが観察する限り、うちはルイは何処にでもいる普通の小娘に過ぎなかった。うちは一族の中でも写輪眼の開眼率が極めて低い家系で、天才と謳われるうちはの片鱗すら見当たらない、幼稚さが残る九歳の見習いの忍だった。今日、この瞬間までは――。

「こんばんは、初めまして薬師カブトさん」

 年不相応の艶やかな声が全身に寒気を走らせる。
 見惚れるほど禍々しい微笑み、全身に一片も濁り無き邪悪なチャクラを漲らせ、極めて歪な模様の写輪眼を爛々と輝かせる。唯一つ変わらぬのは夜風に揺れる一本の三つ編みおさげぐらいである。
 もはや同一人物とは到底思えないほどの豹変ぶりであり――同じように仮面を被っていた自身すら察知出来なかった事にありったけの驚愕と戦慄を抱かせる。
 何が下忍以下のお子様か、何が開眼すらしない血の薄い分家の小娘か。あれはうちはイタチに匹敵する異端の化け物だ。過去に下した自身の評価を壮絶に呪いたくなる。

「うふふ、驚かせてごめんなさい。唐突で悪いんだけど、一つ頼みたい事があるの。この木ノ葉隠れの里でも貴方にしか出来ない事」

 その写輪眼は全てを見抜くが如く、薬師カブトの根底を鋭く射抜く。
 背骨の変わりに氷柱を突っ込まれた気分だと唾を呑み、焦燥と危機感が慌しく乱れる。

「……え、どういう事かな? 僕みたいな落ちこぼれの下忍なんかに――」


「私の死体を一つ作って欲しいの。報酬はこの写輪眼。貴方の腕前なら容易い事でしょ?」


 咄嗟に返した言葉に対し、自分でも文句を言いたくなるぐらい下手な対応だと叱咤し、自身の釈明を遮った言葉と行動に不覚にも殺意を零す。

(――やはりあの事件はこの少女の仕業だったか……)

 少女が懐から出した物はホルマリン漬けにされた人間の眼球――写輪眼だった。
 もはや驚きを通り越して混乱の極致に至ったが、薬師カブトは心の何処かでは納得する。あれは偽る事においては自分以上の逸材だ。格下の者の偽装を見抜く事ぐらい至極簡単な事なのだろう。

(だとすれば、一体彼女は何処まで勘付いている――?)

 一体何処まで見抜かれているのか。偽った実力と他の里のスパイである事は少女の言動から確実に見抜かれているだろうが、S級犯罪者であるあの御方の事までも知られているのかは微妙なところだ。

(……我ながら希望的観測だな。今この場なら、消せるか?)

 あの歪な模様の写輪眼の前では全てが白日に曝け出されているような錯覚さえ感じる。冷静に冷徹に思考を巡らせたいが、冷や汗が止め処無く流れる。
 周囲に気配は無く、殺すなり攫うなりするには千載一遇の機会と言えよう。しかしながら、どういう訳か勝てる想像すら浮かんで来ない。
 過小評価も過大評価もするつもりは無い。真っ向勝負になれば恐らくは無傷で勝てるだろう。だが、幾度無く経験した死の予感は人生で最大の警報を撒き散らしている――。

「詮索は不要よ、私も一切詮索しない。この依頼、受けるかどうか手早く答えてくれる?」

 うちはルイの両眸に揺るぎ無い殺意が燈る。左頬を吊り上げて口元を盛大に歪ませる微笑みは彼の主の凄惨な嘲笑を連想させ、ある意味凌駕していた。
 その幼き少女が曝け出した素の表情は、今まで見せたどの表情よりも似合っていたのだから――。




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