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No.30822の一覧
[0] とある風紀の空間移動 (とある科学の超電磁砲 外伝)[一兵卒](2011/12/10 23:40)
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[30822] とある風紀の空間移動 (とある科学の超電磁砲 外伝)
Name: 一兵卒◆86bee364 ID:e2f64ede
Date: 2011/12/10 23:40






学園都市


東京西部に存在する約230万人の人口を持つ大都市。
日本の最先端の科学技術が結集しているその都市の人口のおよそ8割が学生で構成されているその場所は、様々な研究施設、教育機関が設置され、日々、能力開発の授業が行われている。そんな能力を持つ学生達が集う学園都市は治安の悪さが当面の問題となっていた。能力を手にし、ずるをしようなどいう輩はどうしてもでてくるわけで……。

「これで……今週になって、4件目ですわね」

 風紀委員、通称『ジャッジメント』……学園都市の治安を守るために能力者の学生により構成されてる治安組織。そんな組織でひと際目立つ、小柄な美少女……白井黒子。彼女は、ため息をつきながら、他の風紀委員、そしてアンチスキルとともに、事件の被害にあった店の前に立っていた。

『はい。手口は同じで、犯人は今日担当だった店員のようです』

 同じ風紀委員の初春飾利は、PCをうちこみながら、今までの事件との共通点を黒子にと通信にて報告する。白井黒子は、どこにでもありそうなコンビニエンスストアの店内を眺める。店内は荒らされた形跡はなく、すぐに営業を始められそうな状態だ。事件の概要は単純明快、店内のレジの金を盗まれた。そして、その犯人は店のアルバイト店員。なんということはない、事件。そして顛末だ。だが、この事件は、これで終りではない。

『今回も同様に、捕まった容疑者は容疑を否認しています。監視カメラ等でも捕まったアルバイト店員がレジから金を盗んでいる姿が映っています』
「……同じ、ですわね」

この奇妙な事件の発生は1週間前…。

 現金がなくなっていることに気がついた店主が、アンチスキルに通報。監視カメラを確認した際、店内のアルバイトが現金を盗んでいることを確認し、捕まる。だが本人は容疑を否認。本人は当日、携帯から何者かに呼び出された後、意識を失い、気がついたときには、数十分が経過していた。そういった事件が断続的に起こっている。

『学園都市連続不可解強盗事件ですね!』
「妙なネーミングをつけなくてはいいですわ……。バンクから該当しそうな能力者は?」
『今までの共通点から考えてみても、まだかなりの候補者がいます。ここから絞り出していくのは……』
「どちらにしろ、その該当者の中に犯人のいる可能性は否めませんわ。引き続き該当能力者の絞込みをお願いしますわ」

 通信を切った黒子は、大きく息を吐く。

「まったく……ホント、事件が絶えませんわね。この街は」

 青空と白い雲を眺めながら、黒子はポツリとつぶやいた。





とある風紀の空間移動


第1話 ドッペルゲンガー ①





「あー!!知ってます!?白井さん!それ、最近話題の都市伝説!ドッペルゲンガーですよ!?」

 いつもの行きつけのレストランにて。
 身を乗り出しながら、携帯を黒子にと見せるのは、花飾りの髪留めが特徴の同じ風紀委員同僚の初春と同級生である佐天涙子だ。彼女は、レベルアッパー事件の被害者であり、無能力者である。学園都市という能力によって、階級が自然と作り出されているこの都市で、彼女はそんな周りの視線を跳ね飛ばすように明るい笑顔を忘れずに、黒子、初春とともに接している。

「どっぺ……?」
「なんですの?それ?」

 初春は、首をかしげ、黒子は、目を細めて佐天の携帯を見る。そこに書かれているのは、新しい都市伝説の内容だった。佐天は、携帯を握ったまま、黒子と初春にと顔を近づける。

「自分と同じ姿をした、もう一人の自分のことです……。それは自分がいるはずのない場所と時間に現れて、人を不幸にしていくんです。やがて、そのもう一人の自分は、自分にと時間・場所とともに、近づいていって……。目が合ってしまったら……その人は、死んでしまうんです!!!」

 大きな声を上げながら驚かす佐天に。初春は、身体を震わせ、テーブルに顔をうつ伏せる。その隣では、黒子がため息をつきながら、視線を逸らした。

「まったく、そんな子供だましの話がはやってるんですの?」
「子供だましかもしれないですけど、結構見ている人いるみたいなんですよ!?自分がいるはずのない時間帯に、別の自分が別のことをしているんです」

 佐天は手をジタバタさせながら、黒子に訴える。放心状態の初春を放っておいて、黒子は、ふと窓の外を見る。天気のいい青空と白い雲が浮かぶ中、多くの人が行き通っている。その中、ふと黒子の視線にと入り込んでくる女子。それはどこかで見たことのある女の子。常盤台の制服を着て、髪を二つの縛り、小柄で……あれ、いつも、どこかで見て……って!?

「わ、私!?」

 思わず席から立ち上がり声を上げてしまう黒子。

「はい?」
「い、今……私が」
「またまた~白井さんったら、そうやって驚かすのは無しですよ!」

 笑う佐天をよそに、黒子は、確かに見たその姿に、空間移動【テレポーテーション】を用いて、先ほど、もう一人の自分が歩いていたレストランの窓から見える場所にと移動する。突然現れた黒子に、周りで歩いていた学生たちが驚いている。黒子は辺りを見回しながら、もう一人の自分の姿を追う。だが、そこには彼女の姿はない。

「……見間違え、かしら」

 黒子は、先ほどの自分そっくりの女を思い出す。一瞬であったこと、そして佐天の話を聞いたせいで、そう思ってしまっているだけ。黒子はそう自分で納得した。だいたい、あんな都市伝説のようなことがある筈がない。此処少し、レベルアッパー事件等で色々と立てこんでいたこともあったからだろうか。

「白井さん!今から、春上さんのところにいきますが、どうします?」

 店内から出てきた初春が黒子にと声をかける。黒子は、先ほどのもう一人の自分の姿がどうにも引っ掛かってしまっている。

「ごめんなさい、私はパスしますわ。ちょっと調べたいことがありますの」
「そ、それなら私も」
「大丈夫。一人で出来ますわ。春上さんには、貴方達が行ってあげたほうがきっと喜びます」

 そういって、黒子は姿を消す。
 初春と、一人お金を払わされて、文句を言おうと走ってきた佐天が顔を見合わせる中、黒子は、もう一度事件を洗い直そうと事件現場にと向かう。既に辺りは日が落ちかけ、オレンジ色にと学園都市は照らされている。事件現場は、アンチスキルたちも撤収し、その場所はKEEPOUTのテープだけが貼られている。黒子は、そのテープの中にとはいり、監視カメラの位置を確認する。そして問題の金庫……そこには別のジャッジメントの腕輪をした上級生だろうか、男子、女子学生が、部屋にいた。2人はやってきた黒子にと気がつく。

「あら?同僚の方かしら」
「君も、事件の不可解さを検証しに?」
「ええ。こうも近い期間に同じような窃盗事件、しかもまだ盗まれた金額が見つかってはいない以上、捕まってしまったアルバイト店員たちは囮にされたとおもうべきですわね。そして、まだ事件は終わってはいないですの」

 黒子は、二人を見ながら、自分の意見を述べる。オレンジ色に照らされた中、見える黒髪の学ランに身を包む短髪の男、そしてもう一人は、セーラー服に身を包み、背中にかかる茶髪の長い髪をしていた。

「なるほど、ということは……事件はまだ続くということか、えーっと君は……」
「白井黒子ですの。あなた方は?」

 黒子の問いかけに、まずはその茶髪の長髪の女が口を開ける。

「私は、祇園蓮華。そしてこっちが……」
「三枝雫だ。よろしく頼むよ。白井さん」
「こちらこそ」

 黒子は、二人に笑みを向けて挨拶をしながら、三人で現場を再度見渡す。金庫の近くには監視カメラが設置されており、此処から状況を把握、アルバイト店員が逮捕されている。雫は、その場所を首にぶら下げていた写真で撮る。

「僕の能力は念力写真【フラッシュバック】でね。過去の状況を写真で写し取ることが出来るんだ」

 そういって雫は撮った写真を黒子にと見せる。そこには、金庫を開ける今回のアルバイト店員の姿が映し出されている。その様子は少しモヤがかかっており鮮明ではない。

「時間がたつとこうしてブレがでてしまうから、なかなか上手くはいかないけれど、今回の犯行自体は彼が行っているというのは間違いないね」
「……ということは、本人そのものであるか、それとも、本人とよく似た誰かということになりますわね」
「本人とよく似た誰か?」
「知らない?今はやりの都市伝説、ドッペルゲンガーのことよ、白井さんは信じているのかしら?」

 雫の後ろから様子を眺めていた蓮華が雫にと告げる。

「あくまで噂ですわ、この発展した学園都市にそんなオカルトありえないですの」

 黒子は、そういいながら、頭に浮かぶレストランから見えた自分自身の姿を思い出しながら、それをかき消して答える。黒子は、部屋を見渡しながら、裏口の外にと出る。路地裏ということもあり、人通りも少ない黒子は振り返り、雫を見る。

「貴方の能力で、彼がどこにいったかわかりません?」

 黒子の言葉に、雫は笑みを浮かべ

「僕の能力でも限界があってね、店内の外、今……白井さんがいる路地裏から外にと出たのはわかったんだけれど、人通りの多い通りにと出てしまった後からは、ブレが多くてよくわからないんだ」
「そう……ですの」

 黒子は、雫の問いかけに頷く。

 日も沈みかけてきたことから、事件現場から立ち去った。彼女が風紀委員の支部にと戻ってきたのは既に日も落ちてからのことだ。空間移動で、部屋にと舞い戻ってきた黒子。そこには彼女の先輩であり、レベル3……透視能力を持つ固法美偉、そして、初春がパソコンで事件を洗い直しているようだ。黒子が戻ってきたことに、二人は、彼女にと視線を向ける。

「あれ?白井さん?何か忘れ物でもありました?」
「忘れ物?私は、今戻ってきたところですの」

 黒子は、初春の言葉に、首をかしげながら問いかける。初春と、固法先輩の二人が顔を見合わせる。

「何言ってるの、貴女さっきまで此処で、私たちと話をしながらお菓子食べてたじゃない?」
「そうですよ、今日の授業のこととか色々話してたじゃないですか?」

 黒子はため息をつきながら

「2人してからかってますの?私は今まで事件現場にいて、今、此処に戻ってきたんですの。まるで私がもう……ひと…り」

 自分の言葉で、黒子は息をのむ。
 それは、今日レストランにて、自分が見たもう一人の自分のことだ。最初、あれは見間違えだと思った。だが、初春はともかく、固法先輩まで自分に対して、こんなくだらない嘘をつくとは思えない。ということは、本当に……自分が、戻ってくる前、此処に白井黒子が存在し、初春と固法先輩と談笑をしていたということ。自分がいた別の場所・別の時間で。

「し、白井さん?顔色悪いですけど、大丈夫ですか?」
「だ……大丈夫ですわ。初春、事件発生直後、被害者が映っている映像がないか、確認をお願いするわ。後は、明日から事件発生時間帯と同じ時刻で、容疑者の姿を見た人を聞き込むわよ」
「わ、わかりました。白井さん、カメラの解析はやりますので、今日はもう……」
「え、ええ……無理はしない方がいいわ」
「……すいません」

 黒子のその動揺に2人もどこか不思議そうに眺めている。部屋からでた黒子は、大きく息をついて、寮にと戻るために街を歩いていく。黒子は歩きながら、その視線は、自分の姿を探していた。あの、もう一人の自分が、またどこかみいるのではないかと……そんな不安にかられながら。




「……戻りましたの」

 寮にと戻ってきた黒子は、門限通りに戻ってきたことを確認しながら、堂々と仁王立ちをして、腕組みをした眼鏡を輝かせる寮監を横目で見ながら、自室に戻ろうとする。今日に関しては、いつに増して、関わりたくない。

「白井」

 呼びとめられる黒子。
 黒子は足を止め、顔だけを寮監にと向けた。

「な、なんですの?」
「さっき、寮にと戻ってきたお前が、どうしてまた堂々と出入り口から入ってくる?」

 寮監の言葉の意味がわからない黒子は、首をかしげることしかできない。寮監は、黒子にと視線を向ける。眼鏡が光に反射し、寮監の目を伺いすることはできないが、こういうときは大抵、よくはない。

「わ、私は、今戻ってきたところですの。な、何か勘違いをされているのでは?」

 黒子の問いかけに、寮監は、人差し指で眼鏡を直す。

「白井。寮内で能力を使った場合、どうなるか……知らないわけではないだろう」
「ま、待ってください!!寮監!まさか、それは……」

 部屋にと戻ってきた。

 ようするに寮にと……もう一人の白井黒子がやってきたということだ。しかも、彼女は、部屋に戻ってきてそこから外にと出てはいない。ようするに、まだ部屋にいる可能性が高い。黒子は、寮監からにらまれる視線を感じながらも今は、一刻を争うと、能力を用いて自室に移動する。こんなことをすれば、後で寮監から何をされるかはわからないが、それ以上に、これ以上……もう一人の自分にうろうろされるほうがたまらない。

「どこにいますの!!姿を見せなさい!!」

 黒子は、大きく声を荒げながら、周りを見渡し、もう一人の自分を捜す。ベットの下、ベランダ、お風呂、人間がはいれるであろう場所は、隅々までさがす。

「一体、どこに……もしかして、私の空間移動を用いて逃げたとでもいいますの!?」

 黒子がひとり愚痴る中で大きくドアが開かれる。
 そのドアの音、そして、仁王立ちで立つ黒影に、黒子は殺気を感じた。ゆっくりと視線を向けると、そこには、何も言わず、こちらに歩いてくる寮監の姿があった。黒子は、後ずさりながら、苦笑いを浮かべるしかなかった。




翌朝……。



「白井さん、おはよう……」
「あ……」

 元気よく挨拶をする佐天涙子と初春飾利の2人。だが、挨拶をした相手は、黒いオーラにと包まれていた。

「……」

 首にギブスを巻いた白井黒子を見て、驚いた佐天、そして初春の二人。何があったのかを聞くことは、その黒子の表情から臆してしまう。黒子は、拳を握り締めながら、呆然とする二人を見る。

「また……でたんですか?白井さんの、その……ドッペルゲンガー?」

 初春が、恐る恐る問いかける。
 黒子は目を細めながら、初春にと振り向く、初春は、佐天の後ろにと逃げ込みながら、黒子を、見つめる。黒子は、初春から視線を変えると拳を強く握りしめる。

「こうなったら……そのドッペルゲンガー!目の前に引きずり出してやりますわ!!痛っ……くう」

 首を抑えながら、黒子は、大きく息を吐く。

「で、でも……どうやって?白井さんの前にはでてこないんですよね?」

 佐天が復讐の炎に燃える黒子を前に問いかける。
 黒子は、目を輝かせて、佐天、そして初春と目をやる。その眼は蛇が獲物を見つけたかのような、そんな怪しい輝きを放っている。佐天と初春は、その黒子の眼に、それこそ蛇に睨まれた蛙のように動けなくなっていた。


……放課後。


 佐天と初春の二人は、帰路に立ちながら、仲良く話をしながら歩いていく。だが、その二人の視線は、背後で黒ずくめの恰好をした謎の女(笑)にと向けられている。ずっと見ているわけにはいかないので、再度、正面を向いて歩いていく。

「……白井さん、こんなので本当にドッペルゲンガーなんか捕まえられると思ってるのかな?」
「一度言い出したことは、絶対遂行するのが白井さんですから……本当に、いつもいつもいつも……」
「う、初春!」

 二人は、ひそひそと話をしながら、背後の黒いオーラを感じつつ、『アハハハ……』と引きつった笑みを浮かべながら、歩いていく。そんな二人の前に現れる影。


「あら?初春?佐天さん、奇遇ですわね?お帰りですの?」


 談笑する初春、佐天の前に現れた、いつも良く見ている少女。それこそ、つい先ほども見た小柄な少女が、二人の前にと立っていた。初春と佐天の二人は、横目で、背後にいる人物を確認しながら、目を見開きながら、その少女……白井黒子を見る。その小柄な身長、喋らなければ可愛い・美少女ともいえるだろう。茶髪で、左右の髪の毛を縛った髪形、どれをとっても、黒子としか思えない。

「し、ししし、白井さん、こ、ここ…こんにちは」
「こ、こんなところで、ど、どうなさったんですかぁーーー?」

 異様なテンションの二人に、目の前の黒子は首を傾ける。

「どうなさったんですの?二人とも?まるで、今はやりのドッペルゲンガーでもみたような顔をなさって。まあ、あんな都市伝説まがいのことを信じる人はそうそういないでしょうけど」

「「アハハハ……ハハ……」」

 そんなもう一人の黒子の言葉に苦笑いを浮かべる佐天と初春。そんな中、二人の背後にいた黒ずくめの恰好をしたものが、瞬間移動し、目の前の黒子の腕を掴む。

「あ、貴女!一体なにをするんですの!?」
「……その台詞、そっくりそのままお返ししますわ」

 変装用のフードを脱ぎ、本物の黒子が姿を現す。佐天と初春の前には、今、白井黒子が二人いるという異様な状態が起こっている。きっと、御坂さんが見たら失神してしまうだろう光景……初春はそう思いながら、二人を見比べている。

「いい加減、お芝居もおしまいですわ。さあ、大人しく正体を現しなさい!」
「……」

 黒子がもう一人の黒子の手を掴み、強く言い放つ。だが、そのもう一人の黒子の目は蕩け、本物の黒子に見入っている。まるでそれ以外何も見えていないかのような、そんな表情だ。頬を染め、今にもこちらにと身を近づけ抱きしめんばかりに、距離を近づけてくる。黒子は、目の前の自分自身に迫られることに、思わず手を離してしまう。

「しまっ……!」

 黒子が手を離した隙に、もう一人の黒子は、二人の黒子の様子を見守っていた佐天と初春の二人にとぶつかり、初春の手を掴むと、そのままぐるぐると回り始める。倒れた佐天が、腰をさすりながら、初春にと視線を向ける。そこにいたのは、花飾りをした初春が二人いる。

「ええ!!!今度はう、初春が二人っ!?」
「「ええーーー!!わ、私が二人います!!」」

 立ちあがった佐天が絶叫し、ハモった声で初春同士が顔を見合わせて声を上げている。黒子は、そんな二人の初春を見ながら、小さくため息をつき、腰に手を当てる。佐天と二人の初春が騒いでいる中、1人冷静な黒子が口を開く。

「レベル3、容姿擬態【ボディ・ミメシス】……相手の身体そっくりに変身できる能力者。貴方が今回のドッペルゲンガーの正体ですわ!」
「し、白井さん、どっちの初春にいっているんですか?」

 佐天が黒子のずばり宣言するような言葉と、二人の初春に指をさして告げているところを見て告げる。黒子は面倒そうに、二人の初春を見ながら。

「二人とも捕まえてしまえばいいではありませんの?」
「「ええ~~!!?」」

 初春二人が、黒子を見て避難の声を上げる。佐天は、そんな押し問答を繰り返している三人を見ながら、先ほどのもう一人の黒子を思い出して、名案を思いつき、二人の初春の前にと立つ。

「初春!白井さんのことをどう思う?」

 黒子をバシっと指を指した佐天の問いかけを真顔で聞く二人の初春。

「し……白井さんは、綺麗な下着姿は可愛くて、事件解決の空間移動の姿はかっこよくて、立ち振る舞いで綺麗で、見ているだけで、もう……顔が赤くなってしまいます……本当に大好きです」

「白井さんは、頼れる先輩です。いつも御坂さんの身を守るために、嫌がられても四六時中纏わりついてますし、事件解決のために無茶をしていつも始末書をかかされてますけど、懲りずに、何度も何度も繰り返している様は、真似できないですけど、凄いな~って感心します」

 二人の初春のそれぞれの答えを聞く佐天と黒子。

「これで決まりましたね、本物の初春は……」
「ええ、本物は……」

 黒子はその手に鉄矢を握り、佐天は、二人の初春にと近づいていく。

「こっちが、本物の、う~い~は~る~です!」

 そういって、本物の初春のスカートをめくり上げる佐天。初春は短い悲鳴をあげて、佐天に対して、涙ながらに非難の声を上げる。そして、その隣にいた偽物の初春に、黒子は空間移動をし、彼女の背後にと回り込み、手首を掴む。偽物の初春は、黒子に背後を取られ、完全に抵抗を諦め、肩を落とす。

「ここまでのようですわね。ドッペルゲンガーさん。いえ、容姿擬態の能力者。帆絵夢美(ほえ・ゆめみ)」
「……さすが、私の愛しい愛しい白井さん。すぐにバレちゃいましたね」

 ゆっくりとため息をつきながら、偽初春こと夢美は、ゆっくりと口を開ける。

「それにしても、どうして白井さんに化けたりなんかしたんですか?」

 佐天は、黒子に捕まっている夢美を見ながら問いかける。よりにもよって、風紀委員であり、なおかつ能力はレベル4、しかもその名前でも黒子の前は有名である。それがいい意味なのか、悪い意味なのかは、その人の立ち位置にもよるが。佐天の問いかけに、夢美はゆっくりと顔をあげて、クスクスと微笑む。


「なぜ?なぜか……、フフフ。それは、私が……白井さんのことが大好きだからです!」


 初春の声で、高らかに宣言する夢美。佐天と初春、そして、彼女を捕まえている黒子が、ポカーンと口を開ける中、夢美は目を輝かせる。

「白井さんの、不貞をやらかす不良たちを捕まえる凛々しくかっこいい姿、そして、好きな人に対して、一生懸命な一途な姿。愛しい人を想いながら、夜な夜な、秘め事にふけ、その大胆な下着は、もう、悩殺的な姿で……何度、下着や私物を拝借しに寮にと潜り込んだことか……」

 ほっておけばそのまま何時間も語ってしまうのではないかといえるほど、興奮した表情で、話を続ける夢美。初春と佐天は呆然としながら、彼女を捕まえている黒子は、徐々に頬を赤くしていく。

「も、もういいですわ!貴女には、今回の連続強盗の容疑者として連行させてもらいますわ」
「え?私そんなことしてないですけど?」

 黒子の夢美の言葉を遮るような言葉に、夢美はキョトンとした表情で、背後にいる黒子を見つめ告げる。

「嘘をつくのは往生際が悪いですわよ。貴方が、店員に姿を変えて、お金を盗んでいたのは知っていますわ!」
「し、してないですよ、そんなこと!!私のしていたことは白井さんの部屋への不法潜入。白井さんの私物の窃盗、それから白井さんの使いかけの……」

再び夢見心地に話し出す夢美。
そんな夢美を見ながら佐天は黒子を見て

「……し、白井さん。とにかく連れて行きましょうよ?連続強盗犯かどうかはともかく、彼女、立派な白井さんのストーカーみたいですから」
「わ、私の姿でそんなこと言わないでぇ~~~」

 初春が、夢美の言葉を止めようと夢美の口を抑えようとして慌てている。

 黒子は、夢美の話を聞きながら、呆れることしかできなかった。この学園都市最強のレベル5の一人、御坂美琴のストーカーである白井黒子のストーカー、帆絵夢美の登場が、新たな事件の幕開けになることを、このとき、一同、誰も知る由もなかった。









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