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No.30608の一覧
[0] サスケという病[ぷりんこ](2012/02/12 16:46)
[1] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/08/04 05:38)
[2] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/02/13 05:02)
[3] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/08/04 05:39)
[4] ナルトという病[ぷりんこ](2012/08/04 05:40)
[5] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/08/03 11:45)
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[30608] ナルトという病
Name: ぷりんこ◆3fd4a793 ID:e9adabe3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/08/04 05:40
初めて 面と向かって話した人間っていうと、やっぱりサスケなんだろうなぁ。
その時の情景は今でも忘れない。
公園で俺と同じくらいの年の奴等が親に迎えに来てもらって皆帰っていった。
俺だけ公園に残った。日が沈んでいくのと同時に寂しくなっていく。
酷く、嫌な気分だったってばよ。
一人ぼっちなのを誰にも見られたくなくて場所を移した。
トボトボと、ずっと歩いていたら疲れて池の辺に座り込んだ。
そのままウジウジとしてたらアイツは、サスケは俺に声をかけてくれた。

「よぉ」

うちはサスケ、忍者アカデミーで同じクラス。
あまり周りとつるまねぇ暗いヤツ。
それがその時の俺のサスケに対する認識だったてばよ。
今でもそう変わらないかもしれない。

「家には帰らないのか」
「そんな気分じゃねぇ」
「そうか」

サスケはその時、それだけで会話を止めて本当に帰ろうとしやがった。

「ちょっと待てッ、普通は理由くらい聞くってばよッ!」
「悪い悪い、腹が減ってるんだ」
「嘘つけ、こんにゃろーッ! テメェの口からラーメンの匂いがするってばよ!!」
「鼻が利くなぁ」

サスケの適当さは当時からだったってばよ。
大して問題のない嘘なら平気で言う。
結局、サスケは、その場に留まって俺の話に付き合ってくれた。
内容はアカデミーの話やイルカ先生の愚痴、キバやチョウジのこととか。
サスケは、「へぇ」とか「ふぅん」みたいな返事ばかりだった。
だけど、ここまで俺の話に付き合ってくれたヤツはサスケ以外にはいなかった。
他のやつらはいつも俺からの一方通行で、「話す」というよりも「喋る」のようなもんで、
味気ないサスケの言葉は、とても楽しかった。
突けば鳴る鐘のようで、言葉を口に出せば絶対にサスケは返事をくれた。
最後には、

「ずっと暗いヤツ暗いヤツって思ってたけど、やっぱりサスケって暗いヤツだってばよ!」
「ずっと馬鹿だ馬鹿だと思ってたんだが、やはりとんでもない馬鹿なんだな、ナルトは」

そう言って笑いあった。
その日の帰りは一人でも寂しくなかった。
月がこんなにも明るいなんて知らなかった。


時は過ぎて、幾らかの出来事はあったけど、無事にアカデミーを卒業することができた。
下忍として俺もデビューできたってわけなんだが、なんと同じ班にサスケとサクラちゃんがいた。
サスケは俺と同じサボり魔。授業中は寝ているか、又は参加すらしていないらしい。
成績も同じくらいってキバが言ってた。
安心した。やっぱり俺らは同じようなもんだって思った。
サクラちゃんは俺の憧れのようなもんだ。
可愛くて、成績もアカデミーで一番良い。
元気でよく笑う。アカデミーで苛められて、それでも負けなかった。
俺はサクラちゃんが好きなんだってばよ。


「まずは自己紹介をしてもらおうか」

そう言ったのは俺たちの班の担当上忍、カカシ先生だってばよ。
真っ白い髪をツンツンさせて額当てで左目を隠して、ついでに顔の下半分がマスクで隠れている。
どっからどうみたって怪しいヤツ。遅刻した上に謝りもしねぇ。
ぜってぇ碌なヤツじゃねぇってば。

「先生から言ってください。どういう風に言えばいいかわかりません」

そう言ったのはサクラちゃん。そうだそうだ、と俺も手を上げて連呼した。
一瞬、サクラちゃんは俺のことを変な目で見た。
嫌な感じがしなかったから特に気にしなかったが、もうちょっとアカデミーでまじめにやっとけばよかったと思った。

「そうだな」

カカシ先生はそういって自己紹介をしてくれた。
俺の知ってる自己紹介とは違ったってば。
事前に好き嫌いや将来の夢、趣味とかを言えって言っていたのに、結局自己紹介で分かったのはカカシ先生の名前だけだった。
やっぱり変な人だってばよ。
しょうがねぇ、本当の自己紹介ってもんを見せてやる、ってな感じに俺は手をあげた。

「俺の名前はうずまきナルト! 好きなものは一楽のラーメン! 嫌いなもんは特になし! 
 将来の夢はぜってぇに火影になってやることだってばよ! そんでもって趣味はいたずらだ!!」

一瞬、シーンとなった。
サクラちゃんは、「サボり魔がなれるわけないじゃない」と目で訴えている。
サスケは、「へぇ、そうだったんだ、へぇ」と分かってるんだか分かってないんだか興味なさ気だ。
カカシ先生は、なんだか生暖かい眼差しで俺のことを見ていた。
あれ、これが普通の自己紹介じゃなかったてば?

「気合があってよろしい、よし、次!」

カカシ先生が一気にこの空気を吹っ飛ばしてサスケを指差した。
おい、こら、「言わなきゃ駄目?」って顔してんじゃねぇぞ!

「うちはサスケ。好きなモノはギャンブル、嫌いなものは絶対に勝てないモノと子供、
 あと将来の夢とか分からないけど、ある人と会って話がしたい。以上」

ぼけー、っとしながらサスケは言い終えた。
子供が嫌いってオメェも子供だろう!ってツッコミを入れたかったが、
サスケのヤツ、冗談でも叩くと本気で殴り返してくるから困ったヤツだってばよ。
なにが、「すまん、条件反射だ」だってば。
それからサクラちゃんの自己紹介。将来の夢は綱手様のようになりたいって言ってたけど、誰だってばよ。

俺達はこっから始まったんだと思う。波の国にいって、死にそうになったり、でも助け合ったりして、毎日俺は強くなってるって実感がある。
そしてこの中忍試験、途中で襲ってきた大蛇丸なんかサスケが一端は俺達を助ける為に囮になってくれけど、また襲ってきたってば。
サスケのやつが殺されちまったのかと思ったらすんげぇ力が出てきてなんとか倒せた。
正直、もう戦いたくねぇ相手だったってば。
大蛇丸以外は特に問題も無く塔へ向かった俺達は途中で木ノ葉隠れの先輩下忍だというカブトという人に会った。
第一試験の時に音の下忍共になんだかしらないけど攻撃されてた人だってばよ。
仲間とはぐれたらしく合流する為に一緒に行くことにした。
悪い人じゃあなさそうだ。サスケのやつが忍具をなくしたらしいってことでカブトさんが補給してくれた。
だらしねぇやつだってばよ。マジでカブトさん良い人だ。
そんでもって、カブトさん曰く、塔の周辺に巻物を奪おうとする奴がいる可能性がある、らしい。

「んなもんブッ飛ばしてやるってばよ!」

と、言ってみたけど、

「嫌よ。巻物が揃ってるならもうリスクを負う必要はない筈だわ」
「そうだな。ナルトの案だとリスクはあってもリターンがない」
「ボクも猪突猛進でいくよりはリスクを避けたほうがいいと思うよ。第一の試験の揉め事から左の耳がまったく聞こえないんだ。もし、戦う事になればボクは足を引っ張ってしまう」

まさかみんなにこうまで言われるとは思わなかったてばよ。
ひでぇなぁ。
んで、だ。塔に辿り着いて巻物を開いて見ると、

「人と…人?」

なんかわけわからねぇ。なんだってばよ、人と人って。
俺がそう思っているともわもわと煙が立ちこんできて、

「ナルト、サクラ!! さっさと離れろッ!」

なんでサスケってば、サクラちゃんは押して、俺だけ蹴っ飛ばすんだってばよ。
もしかしてサクラちゃんに気があるってばないってば。
はは、俺達は色々なライバルだなぁ、と思いながら俺は壁に激突した。
一瞬だけイルカ先生の姿を見た気がしたけど、一瞬で視界が真っ暗になった。
最後に、「やべ、強すぎた」って呟いたやつ、あとでとっちめる!

「今回は第一と第二の試験が甘かったせいか、少々人数が残りすぎてしまいました」

周りがざわめく。俺もざわめく。
気が付いたら知らない場所にいて、しかももう半ば説明が進んでいる状況だったってばよ。
回りにゃあ人がたくさん居やがるし、つか、空気が重い。
あとサスケの野朗が「やれやれだ」ってぐあいにため息を吐いているのが頭にくる。
ついでに、審査官の試験が甘かった云々で色々やばいってばよ。頭の整理がおいつかねぇ。
あれが甘かったのかってば。マジで死にそうだったてばよ。
もしかして俺達だけがあんな目にあったってことで、いつも運がいいっていわれるけど、実は運がないんじゃねぇのか。
隣を見る。サスケのやつもげんなりした顔で新しい審査官を見てるってばよ。
俺達、苦労したもんなぁ。あとサスケは後で一発殴る。

「第三の試験には多くのゲストがいらっしゃいます。よってだらだらと試合はできませんので第三の試験の予選が必要なんです」

ゴホゴホ、ってさっきから咳ばっかしてるってばよ。
月光ハヤテ、といってたけど、なんか今にも倒れそうだってば。

「というわけで体調のすぐれない方や今までの説明でやめたくなった方はすぐに申し付けてください」

これからすぐに予選が始まりますので、と咳をしつつ続けた。
おめぇがすぐに棄権しろ!! とツッコミをいれるところだったってばよ。
もう見た感じ死にそうだぜ。他に人がいなかったのか。

「あの、ボクはやめときます」
「え、カブトさん……」
「わかってくれ、ナルトくん。ボクは弱い。ボクがそれを一番理解している。だからこれ以上は危険なんだ」

え、マジで!? とまたもやツッコミをいれてしまいたくなっちまった。
なんでカブトさんが、と思ったけど、
『第一の試験の揉め事から左の耳がまったく聞こえないんだ。もし、戦う事になればボクは足を引っ張ってしまう』
森の中でそういっていたことを思い出しちまった。
誰も好き好んで棄権なんてしてぇわけがねぇってばよ。
仕方ねぇ、俺がカブトさんの代わりにいっちょ張り切って優勝しちまうってば。

電光掲示板に名前が出た2人が会場の中央で戦う、らしい。

ちなみに会場の中央にいるのは俺とサスケだってばよ。
サスケの後頭部には中々に大きいタンコブが出来ている。
背後からの不意打ちだった。助走をつけて思いっきり振りかぶった。
だけどサスケのやつ一瞬で気付きやがって、クリーンヒットはしなかった。
もしかしてたら一発でKOしてた自信があるね!
ちなみのその後は一方的なリンチだったってば。鼻血がやばい。
これは普通の鼻血の出方じゃないってばさ。なんか視界も不明瞭だし。
7発くらいは殴られたかな。マウントポジションから抜け出す忍術を考えなくちゃいけねぇな!
それと、2回くらい本当に気絶しそうになったけど、なんかしらねぇけど俺ってば気絶しにくい体質なんだってばよ。
本当に地獄の時間だったってば。気絶したくてもできねぇってすっごくつらいぜ。
カカシ先生とサクラちゃんが止めてくれなければ逝くとこまで逝ってた気がする。誤字じゃないってば。
別にこれ、第三の試験の予選ってわけじゃないってば。
最初か軽く小突くだけで済ます心算が隙だらけのサスケを見て、
勢い余ってフルスイングしちまったから予選さながらの戦いに発展しただけ。

「そろそろやめないと二人とも失格にしますよ」
「チッ、殺し損ねた」

サスケがマジで物騒なことを言ってる。やっぱり拳に乗っかった気配が物騒すぎた気がしたってば。

「では、掲示板に示された2名を除くみなさん方は上のほうへ移動してください」

そう、これは予選でも何でもないんだな、これが。
掲示板に書かれた名前は、ウチハ・サスケVSコウヨウ・モミジ。

「気張っていけってばよッ!」
「ぶっ殺すぞ!」
「やってみろってば! つかもう半殺しにされてるぞ、テメェッ!!」

コウヨウ・モミジってヤローとサスケを除いて俺達は上の階に移動した。
吹き抜けってやつかな、一つ下の階の全貌が見えてる。
2人だけで戦うにはかなり広いってばよ。

「カカシ先生ェ! サスケってば勝てるよな!」
「んー……オレもサスケの実力は測りかねてるんだな、これが」
「でもでも、アイツが負けるところは想像つかねぇってばよ」

負けて悔しがるサスケ……やべぇ、面白すぎる!!

「あ~、それは私も想像出来ないわ」
「でしょ、でしょ! サクラちゃん!!」
「お前達、本当に仲がいいのね」

まぁ、サスケが負ける筈ねぇってばよ。
だって俺がそれを一番知ってるんだ。
あいつは強い。

「では第一回戦対戦者、うちはサスケと紅葉モミジ、両名に決定。異存はありませんね」
「ええ」
「ああ」

そろそろ始まりそうだ。
モミジって奴は、なんか薄緑色のひらひらした服を着てて顔はなんか真っ白い布みてぇなのを巻いててよくわかんねぇ!
あんなのでよく前がわかるなぁ。俺だったら壁とかにぶつかっちまいそうだってば。

「ねぇ、カカシ先生、相手はどこの忍びなの。見たこと無い額当てだわ」
「あー……あの国は生い立ちが複雑だからなぁ。若い子は知らないのも無理はない」
「それってどういうことだってば」
「教科書や地図上では存在しない国だからね」
「それってどういうこと?」

意味が分からないってばよ。
存在しない? 幽霊みてぇだな。

「んー……国の名前は花繁みの国、花盛りの隠れ里っていうんだがな。
 花繁みの国の地図ではちゃんと独立しているんだが、木ノ葉の国の地図では木ノ葉の領土となっていた。
 そして雲の国の地図では雲の国の領土となっていたんだ。
 それで両国が反発し合って戦争を起こした。
 その時は木ノ葉の国が勝ったんだがすぐ後に独立したらしくね。ま、色々とあの国は複雑なんだ」

花盛り、ねぇ。だから花びらみてぇのが3枚くらい書かれてるのか。
そういや、その花盛りの隠れ里の奴の仲間2人の姿が見えねぇ。応援くらいしてもいいってのに。

「カブトさんが辞退した時に一緒に2人も辞退したわよ」
「んじゃさ、担当の先生ェはどうしたってばよ。まさか怪我して来れねぇとか」
「花盛りの隠れ里は慢性的に忍者不足なんだ。木ノ葉と雲が決めたことなんだけどね。両挟みしている独立した国が強力な軍を持ってはいけない、ってこと」
「ってことはあの人が担当の先生も兼ねてるってこと!?」

サクラちゃんも驚いてるってばよ。俺はなんか難しい話はよくわかんねってば。
それよりもすぐにでも始まりそうなサスケの試合にしか関心がないのが自分でもわかった。

「それでは、始めてください!」
「行きましょうか」
「頑張るよ」

お互いに一言、言葉を交わした瞬間に2人の姿が消えた。
早すぎて分からない。
隣を見る。サクラちゃんもどこを見ればいいのか分からないようで唖然としている。
周りを見る。木ノ葉のルーキー達も同じだ。
ひょうたん抱えてる変なやつとか1つ上の木ノ葉の下忍達は上を見てる。
よく見るとヒナタもそうだ。あと担当の先生ェ達も同じように上を、天井のほうを見ている。
だから俺もそうしてみた。
そうすると、いた。
舞台を下の床から天井に変えて戦っている。
それでも早すぎて目が追いつかない。
時々、金属同士がぶつかる堅い音と一緒にサスケとその相手が鍔迫り合いをしているところが映る。
それでもすぐにまた見失っちまう。
チチチチッ、と手裏剣が中央でぶつかり合って下に落ちていく。
俺だったら一度にあんな沢山は投げれないし、それに合わせて応戦も出来ないってばよ。
隣でカカシ先生ェが「不味いッ」とか「それにしても…」とかぶつぶつ呟いている。
俺が必死にサスケの跡を目で追っているとカカシ先生ェが肩を叩いた。

「今ちょっと2人が距離を取った時にサスケが兵糧丸みたいなのを口にしてたんだが、もしかしてサスケって医療忍者とかだったりするのか」
「アイツはただのジャンキーだってば!」

邪魔すんじゃねぇってばよ! というか距離を取ったのも見えなかったぞ、おい!
カカシ先生ェの話だとサスケの奴、重りを外して薬中モードに入ってるってばよ。
つまり本気ってことだ。
サスケのやつ、いつもは頭の中がぼんやりしてる、ってぼやいてた。
兵糧丸ってのを食べるとタバコなんて目じゃねぇくれえにすっきりしやがる、と感想を残していたけど、
タバコを吸った事ないってばね、俺。よくわかんね。
しっかし、それにしても目が追いつけねぇくらい速く動いているってのに足音もなにも聞こえねぇ。
頑張って見ても時々影が見えるくらいだ。なんつー動きだってば、うねうねしてて目が回っちまう。
あいつってば、こんなに強かったんだなぁ。
そう思っていると突然、壁に穴が開いた。

「戦局が変わった。体術と手裏剣術だけじゃなくて忍術も使い始めたぞ!」

今度は火遁だ!、とキバの声が会場に響いた。
サスケの火遁は牽制とか捕獲とかまるっきり考えてないからなぁ。
あんなおっかねぇ術を平気に放たせるってことは相手もメチャクチャ強いようだってば。
案の定、サスケの豪火球の術(それ以外に使っているところは見たことない)は地面を削って壁に激突した。
なにも巻き込まなかったようだけど、空気を震わせて2階までグラグラと揺れるような衝撃が伝わる。
爆心地は綺麗な円形に抉れている。
相変わらずの威力だ。あんなもんまともにくらっちまったら骨も残らねぇぞ。

「なぁ、カカシ先生ェ…」
「ん、なんだ」
「サスケのあれ、絶対に威力がおかしいってばよ」

カカシ先生ェは「そうだなぁ」と呟いてポリポリと頭を掻いた。

「木登りで教えたチャクラの配分があの豪火球の術においては完璧と言ってもいい」

サスケは最初から出来てたようだけど、と先生ェは言う。
サスケの奴、あの術の練習を俺が「もう必要ないってばよ!」と何度言ってもやめなかった。
おかげで演習場は穴だらけだってば。
でも、

「それって無駄がない、っつうことならカカシ先生ェにもあれくらい楽勝ってことだってばよ?」
「いや、無理だな」
「どういうことだってばさ」

無駄がねえってことは教科書通りってことじゃねぇのか。
つうことは、同じようにすればみんなあんな術が出切るようになるんじゃねぇのかってば。
カカシ先生ェは言葉を選ぶようにして言った。

「うちは一族は火に愛されている。殊更、うちはサスケはそれが顕著に出ている。無理矢理チャクラを多く込めて似たものは出せるが、オレにああは出来ん」
「でも、サスケの豪火球、スパッとやられたってばよ」

そう、サスケが出しただろうでかい火球が突如、スパッと2つに斬れた。
そのまま左右に散って爆発する。耳がキーンとした。

「近距離がチャクラ刀で中距離がカマイタチの術、遠距離が烈風弾。いい練度だ」

そういっているとさっきぶった切られたやつよりもずっとでかい火の玉が現れて壁に激突した。
どこの戦場だ、と思えるほどの爆発音が鳴り響く。
そしてやっとまともにサスケの姿が見れた。サスケは天井に張り付くようにしてモミジって奴を見下ろしている。
モミジは天上を睨みつけるようにして会場の中央に立っている。
2人とも無傷だ。

「なんでサスケが上にいるんだってばよ」
「分かるわけないじゃない」

俺とサクラちゃんは同時にカカシ先生ェのほうを向いた。

「んー……、あれはな、サスケは相手が自分の火遁を避けるために上に跳ぶだろうと思った。
サスケは術を放ってすぐに先回りのために跳んだんだが、相手はそれも先読みして烈風弾で地面に穴を開けて逃げ道を作った」

つまり読み合いでサスケが負けたってことか。
なんでサスケのやつ、いっそ清清しくしているのか理解が出来なかった。
サスケがなにか呟いた。モミジって奴も同じように呟いたのか、顔に巻かれた布が微かに動く。
こっからじゃあ聞き取れねぇ。

「これが最後だ、ってサスケは言ったんだよ」

いつのまにか、カカシ先生ェは写輪眼を使っていた。
ああっ! それでサスケの口の動きを読んだのか。
便利だなぁ、写輪眼。

「開始してから約10分か、忍び同士の戦いだと異常の長さだよ、ほんと」

サスケの奴は手慣れた手付きで印を組む。
それすらも速すぎて霞んで見えた。
もちろん、豪火球の術なんだってばよ。
繰り返すけど、サスケがそれ以外の忍術を使ってるところは見たことがない。
足を止めての本気の豪火球の術、隣でカカシ先生ェが「あれは怖かったなぁ」と呟いている。
サバイバル演習の時のことを思い出してんのかな。
あん時は念入りに俺とサスケ、サクラちゃんで罠を張った。
俺とサクラちゃんを囮に完璧に隙を作らせた。
そっからサスケに豪火球の術を打たせたってばよ。
なんかサスケが「カカシ担当上忍にも通用する忍術がある」とか言うから任せてたんだが、
その時は俺とカカシ先生は死に掛けた。
あの時、カカシ先生ェが水遁で守ってくれなければ……、想像するだけでもう一発殴ってやらなきゃ気がすまなくなったってばよ。
サスケェ……終わったら覚えとけよ。

「カカシ先生! モミジって人も印を組んでますがあれって何の忍術ですか!?」

サクラちゃんはあの時、本当の恐怖を味わってないからな。
俺はサスケがあの印を組む度に体がビクっとするんだってばよ。

「ん、あれは風遁大突破の術だな」
「それって広範囲に攻撃する奴ですよね」
「チャクラで吐く息を増幅させる忍術だからな。あれは中忍級の忍術の筈だが……まぁ、あいつらを枠に嵌めてもしょうがないか」

うん、しょうがないってばよ。
俺が思うに、サスケとその相手も簡単にそのまま忍術を出し合って終わりなわけがないってばね。
きっと俺達が驚くようなことをしでかすに決まってる。
サスケの奴は印を組み上げて大きく息を吸った状態で面前で両手の掌を拝むように合わせた。
始めて見る動作だってば。
モミジって奴も印を組み上げて大きく息を吸った。
サスケと違うところは、懐から銀色の筒を取り出して口元にまで持ってきたところだってば。
サスケの術が完成した。

「サスケのばっきゃろーッ!!!!」

強く両手の掌の隙間に噴出した豪火球の術は俺が知っているものよりも3倍、いや4倍ちかく大きかったってばよ。
それはもう、舞台に収まるギリギリの大きさで、完全に俺達も巻き込まれると思った。
直径10メートルくらいあったんじゃないか、って大きさだってばさ。
その時、見えた。
あの馬鹿でけぇ火の玉を迂回するように飛んでいく手裏剣が4枚、文字通り四方からサスケに向かっていくところを。
風遁はフェイクだった!? サスケは驚いたような表情を浮かべた。
何故ならあの術を放った反動で天井にぶつかって落下している最中だったからだ。
手裏剣が刺さる、と思った直後、サスケの体が不自然に逸れた。空中にいるのにも関わらずだ。
どういうことだってばよ。わけがわかんねぇ。あいつ飛べたのか。

「ん、チャクラの糸を天井に貼り付けて体を動かしたみたいだ」

マジでカカシ先生の写輪眼が活躍してるってばよ。俺にはなにも見えねぇぞ。
チャクラの糸ってあれか、なんかサスケが森で覚えたっていう引っ張ったりできる糸か。
そして、サスケが手裏剣を無事に避けたと思ったと同時に、なにかがあの馬鹿でけぇ火球を突き抜けた。
突き抜けたそれはサスケにぶつかって、

「サスケってば、天井ぶちぬいて吹っ飛んじまった……」

天井には人が2人ほど入れる程度の穴が空いていた。その穴から外の日の光が差し込んでくる。
ぽっかり穴の開いた火球がゆるやかに失速し、地面に激突したのはそのすぐ後だった。
俺とサクラちゃんはカカシ先生ェが作った3重の水の壁(サバイバル演習の時もこれだったってば)で襲い掛かる熱風を凌いでいる。
耳をつんざく爆音、視界が真っ白になる発光、そして水の壁越しに伝わる空気の振動。
半端ない忍術だ。
だけど、その忍術を放ったサスケの姿は見えない。
見えるのは各々、あの惨劇から身を守った(守られた)人たちと、未だに燃え盛る会場だ。
モミジって奴も見当たらない。まさか蒸発しちまったとか。

「まさか、サスケは豪火球の発展版ともいえる忍術を使い、相手も同じように術を昇華させるなんてな」

写輪眼を見開いてカカシ先生ェはそう言った。
少なくとも、俺は2人がなにをしたのかも分からなかったってば。

「2人ともなにか聞きたそうな顔をしてるな」
「いや、本当に何がなんだか…」
「うんうん」

俺はサクラちゃんの言葉に頷くだけだった。
もうなんか悔しいとかどうとか関係ない。
俺とサスケじゃあスタート地点も修行の量も色々と違うのだ。
同じ舞台に立てるなんて思ってもいない、と思わせられた。

「順を追って説明するぞ」
「はい」
「はい、だってばよ」
「ん、サスケがしたことは単純だ。
 豪火球の術の周りに更に両手で作った性質変化と形状変化で作った擬似豪火球をくっつけたんだ」
「性質変化って?」
「形状変化、ってば?」
「まぁ、性質変化はチャクラに属性を持たすこと。
 形状変化はチャクラに形を持たすこと。サスケはチャクラを火に、そして形を豪火球のように円形にしたってことだな」
「なるほど……」
「サスケってば、いつのまに……」

普通の豪火球の術でさえすんげぇ破壊力だってのに、またとんでもねぇ忍術になったってばよ。
サスケは誰と戦っているんだ。
あんなもんにしなくても十分殺傷力はやばいってばさ。

「そしてモミジって子のは更に複雑だ」
「ああっ、あの人なんか筒みたいのを出してた!」

確かに、そんなこともしてたってばよ。
でも複雑なのかぁ、理解できっかなぁ。

「あの子のしたことは大まかに分けると5つだ。先ず、忍術を組む。これは風遁大突破だ。
 2つ目は、手裏剣を投げること。あの大きさの火球を迂回して真反対にいたサスケを狙い撃つ技術が必要になる。
 3つ目は、広範囲に効果を現す風遁大突破の術に形状変化を加えて矛先を一点に絞ること。
 4つ目は、サスケが手裏剣をどう避けるかを予測してそこを風遁で狙い撃つこと」

その4つをあの一瞬でしたんだ、とカカシ先生ェはまとめた。
また形状変化かってばよ。チャクラの形を変えるんだっけ。

「まさかッ」
「そうだ。あの筒はそのためのものだ。チャクラを通すだけでその形を固定させる道具は忍具の中でも珍しくない」
「つまり、チャクラ刀等と同じ要領ですか」

そうだ、とカカシ先生ェは頷いた。
俺が分かった事は1つだってばよ。あの筒は風遁の術のなんかすげぇ範囲の攻撃を狭めたってことくらいだ。
あと2つだけわかんないことがある。

「なんでサスケの術が負けたんだってばよ。あと最後の1つってなんだってばさ」
「最後のは秘密だ。残念だが、言えない。術に関してだが、
 サスケは範囲を広げた対多人用の術であって、モミジという子は範囲を狭めて威力をあげた術なんだ」

つまり、術の性質(せいしつ)の相性よりも術の性質(たち)の相性が悪かった、とカカシ先生ェは言うがよくわからない。
サクラちゃんはなにやら頷いている様子からして理解はしてるんだろう。あとで教えてもらうってば。
会場の様子も落ち着いたのか、2階にいるみんなは冷静に舞台を見始めているみたいだ。
1階のほうも火が自然に鎮火して、黒く煤けた床が見えてくる。
そこにやはりモミジって奴の姿はない。本当に蒸発しちまったんじゃねぇのか、と俺は心配になった。
完全に火が消えた。やはりモミジの姿はない。これ勝敗はどうするんだってばよ、と思ったとき、
カラッ、と石の破片が天井から落ちてきた。差し込む日の光の中に見慣れた影があった。
サスケだッ!

「死ぬかと思った」

そういうと上から飛び降りてくる。
その姿は満身創痍と言ってもよかった。
服も髪もボロボロで頬には最後の手裏剣で傷がついたのか一筋の赤い線が見えた。
着地の際に左の腹部を片手で押さえていた。更に傷を負っているみたいだ。
そうやってサスケの状態を観察してると、また1つの変化が生じた。
地面がムクムクと膨らんできた。
まさか、と思った。

「……熱い」

地面から這い出てきたのはやっぱりモミジだった。

「やる気ないんじゃなかったのか」
「ちょっと勝ちたくなっただけ」

ほぼ同じ文句を言う2人の姿が、認めたくないけど、似合っていた。
サスケは怪我だらけ、比べて、モミジのほうは外装が少し焦げ付いているだけだった。
まったく正反対だったけど、それでもサスケが負けるところが想像できない。
アイツはきっとなにかする。そう思わせるなにかがある。
サスケは苦笑いを浮かべてモミジを見やる。
モミジのほうは顔を包む布のせいでよくわからなかったけど、似たような仕草だった。

「こんな強いなんて思ってなかった」
「ありがとう」
「私もちょっと勝ちたくなった」

そう言った直後、カツッ、と地面になにかが刺さる音とサクラちゃんの「影縫いッ!?」という声が聞こえた。
そして喋っていたサスケの姿が再び霞み、背後から表れてモミジの腕を掴んだ。避ける暇さえ与えずに。
なぜ簡単に捕まえられたんだ、と俺は思った。
よく見ると、モミジの手足がキラキラと光って見えるってば。
あれは、チャクラの糸だってばよ。
あれで動けないようにしたってわけか、だけど、なんで最初からやらなかったんだってばね。
そして、同時に上から物凄い速度でなにかが降ってきた。
サスケだった。天井の穴から風を切って飛び出してきた。
落下する力を利用して加速して、そのまま押さえつけるようにモミジの上に覆いかぶさった。
その衝撃で最初にいたサスケはボン、と煙となって消えた。
これは、影分身の術だってば。サスケの奴、本当にいつのまに。

「……これは」
「奥の手ってやつだな」

やっぱりまだ奥の手を残してやがったってばよ。
つか、チャクラの糸も奥の手ってことだったのか。
サスケの両腕はモミジの首元を締め上げる。
あれは痛かったなぁ、と俺は自分の首元をなぞったってば。
全然外れねぇんだ。あの馬鹿力で締め上げられると。
もうサスケの勝利を確信した。あれからは逃れられないってばさ。

「影分身の術は本戦で使いたかったな」
「……同意見」

モミジが苦しそうにそう言うと、さきほどのサスケと同様にボン、と白い煙となって露と消えた。
たまたま見えたんだけど、天井に刺さってた手裏剣の一枚がボン、とモミジになったってばよ。
俺も、サクラちゃんも、「え?」と一言あげた。きっとほとんどの下忍がそういったにちげぇねぇ。
そのまま天井を踏み絞めてモミジはサスケ目掛けて加速した。

「なんでだってばよ!?」

なんでサスケは、後ろに振り返ってるんだってばよ。
音は上からした。あのサスケに飛んで行った手裏剣に変化して。
それなのにサスケはわけも分からずに後ろを睨みつけた。
そして落下、モミジはサスケを組み伏せて首元にクナイを添えた。
さっきと全く同じ感じだってば。

「あれは幻術、いや風遁の一種だな」

カカシ先生が写輪眼で舞台を睨みつけている。
風遁って、いつのまにそんなことできる余裕があったんだってばよ。

「おまけにあれは性質変化と形状変化を同時に行い、その上で消費するチャクラの量が少ない。とても繊細な術だ」
「難しい術なのにチャクラがあんまいらねぇって矛盾してるぞ! あとやっぱりどうなってるかわからねぇってばよ!!」
「あれは空気の流れがない密室空間でしか使えないものだろう。音の伝達を滅茶苦茶にされたんだ」

音の伝達、意味がわからねぇぞ。サクラちゃんは一端驚きの表情を浮かべた後に納得したような顔になった。
同じような説明を受けたのか、あのキバでさえ驚いている。

「カカシ先生ェ……意味が分からないってばさ」
「音の伝達が狂わされた。つまり音の出所が違う場所から聞こえるようになったんだ。
モミジという子は手裏剣に変化していた。そして思い切り天井を蹴って落下した。
その時に生じた音はサスケにはまったく違う場所から聞こえるようにされていた」
「きっとサスケは今頃、自分の声が背中から聞こえたりしてるんだわ」

だからサスケは後ろを振り返っていたのか。
あまりの勢いで落ちたのが原因か、サスケの体が少し地面に陥没している。
考える事から行動まで、最後までそっくりだった。
その上で、奴はサスケの上をいっちまったってことか。
サスケがなにか呟いた。
そのお返しか、サスケの耳元に顔を近づけてモミジも同じようにする。
サスケは一瞬驚いたように顔を崩し、また苦笑いを浮かべた。

秘密だった5つめを今になって理解したってばよ。
カカシ先生は苦々しく現場を見つめていた。
「あと二月くらい、サスケに時間があれば」と呟いて。
サスケがこうなる前に影分身に気付けていれば、もし写輪眼さえ持っていれば、
そんな顔だった。

「まいった」

と告げた。
サスケは負けた。
どうやら、オレってばサスケとは戦えないみたいだってばよ。



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