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No.30608の一覧
[0] サスケという病[ぷりんこ](2012/02/12 16:46)
[1] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/08/04 05:38)
[2] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/02/13 05:02)
[3] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/08/04 05:39)
[4] ナルトという病[ぷりんこ](2012/08/04 05:40)
[5] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/08/03 11:45)
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[30608] Re:サスケという病
Name: ぷりんこ◆3fd4a793 ID:e9adabe3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/08/04 05:39

雲水《くもみず》
雲と水。また転じて、行く先の定まらないこと。うんすい。



気が付けば私は見渡して一番太い枝の上で居眠りをしてしまっていた。
疲れやすい体質なのかもしれない。いや、それだけじゃない。
疲れると眠い。嫌なことがあると眠い。難しいことを考えていると眠い。
一種の逃避行為なのだろう。
一次試験の筆記テストでもほかの事を考えていて眠ってしまった。
今はそのおかげで多少、身体も軽くなった。思考も障害物なしに淀みなく進んでいく。
解放された気分とはこのことを言うのだろう。
その癖、寝すぎると嫌な夢を見始める。
だから自然と常に浅い眠りになってしまう。
変な映像が流れたら即座に起きる。
毎日が寝不足だ。
剣戟が聞こえる。軽い金属のぶつかり合い。手裏剣かクナイか。
サクラ達かもしれない。そう思うと私は力強く枝を蹴る。
宙を駆ける。風が気持ちいい。
今までこんな気味の悪い森の空気なんて嫌いだったのに、今はそんなことが気にならない。

「嫌なら引っ込んでろつってんだよ、このデブ!」
「ボクはデブじゃない! ポッチャリ系だコラー!!」
「ネジとサスケって奴を狩らなきゃいけねぇってのに、先ずはこのデブからだな」
「サクラ、後ろの二人のことは頼んだわよ」
「ったく、めんどくせぇことになりそうだ」

広場に出るとどうやら複雑な状況のようだ。
茂みの中から観戦中である。
シカマルが敵の体を止めている。あれは、影か。便利そうだよなぁ。
どうやら自分以外は敵というルールの中ででシカマル達が私達の味方になっているらしい。
今も「いのチーム全力でいくわよ!」と音符の記号の額当てを身につけている三人と抗争中である。
そいつらはどうやら私が目当てのようだ。あとネジって誰だ? そんなのいたっけかなぁ。
いのが言っていた後ろの二人とは、ナルトとリーのようだ。お互いに気を失っている。
サクラもふらついているようだ。真っ直ぐに立てていない。
よろめきながらナルトの傍へ寄り倒れかけるように座り込む。
私を狙っているようだからあまり前には出たくなかったのだが、そうは言ってられないようだ。

「あまり無事とは言えないみたいだね」
「気配を消して後ろに立たないで。間違えて刺すわよ」

サクラは半目で私を睨め付けながらそう言った。
怖い怖い。冗談のつもりじゃなかったのだが。

「ナルトはどうしたんだ。そこまで痛めつけられるほどの奴等か」
「あいつ等じゃない。大蛇丸って奴が来た」
「こっちも同じだったよ。なんなんだ、あいつ」
「天災みたいなものね。死ぬかと思ったわ」
「あー、それだ。それ。どうやって助かったんだ」

大蛇丸の強さはそれこそ天災だ。
人は自然の前ではちっぽけなものだと、同じことを奴の前では感じた。
サクラとナルトの二人協力したそれよりも私のほうが強いと思ったから一人で残ったのだ。

「サスケのほうに影分身を送ったって奴が言った。殺すとも言ってた。そしたらナルトが急にキレて大蛇丸ってやつをブッ飛ばしたのよ」
「私は影分身にも殺されそうだったんだが、本当にナルトがやったのか」
「凄いチャクラだった。でも大蛇丸に何をされたか分からないけど急にそれがなくなって、大蛇丸もいなくなってた」

それでこいつ等に襲われたってことか。しかも私狙い。本当に大蛇丸って奴は厄介な事を残していくな。

「これでおしまいよ!」

いのが敵の女の体を乗っ取ったようだ。あれも便利そうだよなぁ。
敵に巻物を置いて遠くに行けと言う。しかし、奴等はそれを聞いて笑みを浮かべた。
頭がおかしいんじゃないかと思ったが、サクラは違ったようだ。

「いの! そいつ等から離れてッ」
「バーカ」

どうやら私も馬鹿の仲間入りのようだ。
男の腕から衝撃波のようなものが発射された。
いのが乗り移った仲間に向けて。

「がはっ」
「ふんっ、油断したな。俺たちの目的はくだらねぇ巻物じゃなければルール通りにこの試験を突破することでもねぇんだよ」
「ネジ君とサスケ君だよ」

どうやらその中でもサスケ君は腑抜けで出来損ないのようですが、と奴等は笑う。
いのは吹き飛ばされて大木に激突する。本体からも口から血が流れているところからみて危険な状況だ。

「サスケ」
「なんだ」
「さっさと行ってぶっ殺してきなさい」
「殺すのは勘弁な」

やれやれ、と私は敵を見やる。
いのを吹き飛ばしたほうは衝撃破のようなものを掌から出す術を持っていて。
もう一人の奇抜な服装と顔中が包帯塗れな方は一次試験の時にカブトという先輩を倒したよくわからない術を持っている。
女のほうは気絶中だからどうでもいい。
相手は私のことを出来損ないやら出涸らしやら、または失敗作だと思っているだろう。
つまり油断している。特に衝撃破の方は調子に乗りやすい性質だろう。キバとそっくりな気がする。

「ようやくお出ましか! ビビッてんじゃねぇぞ、おい!」
「まてザク。少しは冷静にいきましょう」
「お前までビビッてんじゃねぇ、ドス!」

ザクとドスか。よし、決めた。
ザクの手足を折ろう。徹底的にだ。
チャクラを体中に巡らす。静かに満遍なく充実させる。
兵糧丸の効果はまだ続いている。
全身を活性化させると間欠泉のようにアドレナリンが噴出してくる。
まるで脳髄が沸いているようだ。
体重を足の裏にかけて歩き出す。いつでも最大速度で走れるようにだ。

「余裕こいてんじゃねぇぞッ」

衝撃破、眼前まで空気の膜が広がってから気付く。
範囲が思っていたよりも広い。
受けたら致命傷ではないが、痛いだろう。
いのが乗り移っていた女を見やる。血を吐いて倒れている。
絶対に当たりたくないと思った。
地面に逃げた。高速で地下を掘っていく。手が痛い。
頭上を衝撃が通り過ぎていく。
穴を残さずに天井を作ってから目暗ましに起爆札を爆発させて更に地面を掘り進んでいく。
手が痛い。畜生、クナイの1つでもサクラから借りて置けばよかった。

「どこに消えやがった! 逃げたか!?」
「いや、さすがに逃げない」
「ぐはっ」

起爆札で巻き上げられた砂煙の中でザクは私を探していた。
背後から地下で掘り出した岩石で殴り倒す。
こぶしよりも3回りほど大きい岩石に血が付着した。
気持ち悪い。後ろに放り捨てる。
眩暈がした。血の臭いがする。鉄の臭いだ。くさい。
ぐったりと地面に伏しているザクの右腕を掴んで、肘を逆間接に折る。
チューベットのような小気味な音ではなく軟骨を噛み砕くような音がする。
嫌な感触だ。気持ちが悪い。
こんな状況じゃなきゃ絶対にやりたくない。
でもやらなきゃこいつらいつまでも私を殺しにくるんだろう、と思うと俄然力が篭る。
痛みで叫びだしそうだったので顔面を踏みつけ地面にめり込ませる。
そうすると声が出なくなった。
すかさず反対の左のほうも同じように圧し折る。
肘を膝の上に乗せて曲らないほうに一気に体重をかける。
嫌な感触が掴んだ手と膝に伝わる。
両膝が震えてくる。胃がムカムカする。
もう限界だったので足を折ることはやめる。
多分、いや、確実に次で吐くだろう。
だが、まだまだ終わらない。終われない。
もう一人いる。虚勢を張らなくてはならない。

「だから冷静に対処しろと言ったのに」
「サスケ! 残った方は超音波を使うから近寄らないで!!」
「うるさいですね、あの女。殺しておけば良かった」

煙が晴れると同時にサクラからの助言、なるほどと思った。
だからカブトは嘔吐し倒れ、サクラもまっすぐに歩けないほど消耗していたのか。
ならば怖くはない。
豪火球の術を放つ。直径2メートルはあるだろう火球が地面を抉って進行していく。

「こんな術に」
「いいから避けろ!」

私は叫んだ。
ドスはハッとなって直前で避けようとするが左手、手甲が取り付けられていないほうが火球に飲み込まれた。
火球は我にも関せずといったように直進し続ける。飲み込まれたドスの左手は肘から先が真っ黒になっていた。
嫌なにおいがあたりに漂った。火球は背後の大木を薙ぎ倒して爆発する。
この場全体が緋色に染まる。

「さっきの衝撃破ならいざ知らず、お前程度の超音波で私の火遁が掻き消せるわけがないだろう」
「くっ、うちはの基本忍術ですか。さすがに得意技なようですね」
「得意なんじゃない。これしか教われなかっただけだ」

だからこれだけは練習した、と私は続けた。
緊急事態を除いて、丁寧に練り上げた私の豪火球の術は中忍や上忍が放つそれと遜色がない威力だと私は思う。
もうこれしか残っていないのだ。よく研磨し、昇華させなくてはならない。


「早く残った奴等を連れて消えろ」

私に人を殺させるな。さっきも死ぬところだったんだ。
死ぬなら私の知らないところで死んでくれ。

「君は強い。全然話と違うじゃないですか。今の君はボク達では倒せない。これは手打ち料、ここは引きます」

ドスは巻物を置いて仲間を背負い消えた。地の巻物であった。
これで揃った。2種類揃った。
肩の荷が下りたような感触、気が抜けた。
少し疲れた。




ある男と出合った。栗毛の男だ。
髪は短くとても小ざっぱりした、とても優しそうな目をした奴だった。
お互いに魚を求めているという変な状況だった。



ナルトが目を覚ました。
第一声は、

「サクラちゃん、か、髪がっ」

え? うわ、本当だ。短い。気が付かなかった。
いの達と離れ、リーが目覚めて待ち合わせに遅れると焦ってどこかに行った。
私達はどこか落ち着ける場所を求めてナルトを背負って歩いていた。
大木が連なって壁のようにそそり立つ場の中央に大きい岩が転がっている。
厳かな雰囲気のある所であるが急襲にも対処しやすいだろうと休憩地点はここに決めた。

「イメチェンよ。似合うでしょ!」

そういえばあの後いのがサクラの髪になにかしていたような。
放心状態だったからあまり覚えていない。

「私は長いほうが好きなんだけど、ほら、こんな森だと動き回るのに邪魔なのよ」
「そういや、あの後どうなったんだってばよ。あのオカマ野朗ッ!?」
「いの達やサスケ、あとリーさんが助けてくれたわ」
「ふぅーん」
「あとね、一人になってちょっとだけあんたの大事さがわかったわ。ちょっとだけ強くなれた気がする」
「サクラちゃんは最初から強いし頼りになるってばよ! なぁ、サスケ!」

そこで俺に振るか。ずっと蚊帳の外だったのに。

「サクラは隊長だからな。そうじゃないと困る」
「生意気だってば」
「うっせ」
「二人ともありがと」

妙な空気になった。しんみりする。
だが、ナルトの腹が鳴ったと同時にサクラも、私も同じようにグゥと鳴った。
そういえば一日なにも食べてなかった。緊張が解けて自然体になってしまう。

「腹が減ったな。ここらで食料の調達でもするか」
「そうするってば、腹へって死にそうだぜ」
「私とナルトで果物とか探してくるからサスケは他のをお願いね」

また蚊帳の外か。
まぁ、あの大蛇丸が出たときにナルトは一人でサクラを守った。
わからないでもない。

「まぁいいさ。それじゃあ1時間後にここで集合だ。この大岩の前で」
「そうね、あんたたちたくさん食べそうだし一時間は必要ね」
「よっしゃー! ついでに肉も探すってばよ!」

サクラが果物、ナルトが肉、なら私はどうしようとトボトボと歩いていると川原を見つけた。
魚にしようかと座り込んで、拾った千本を曲げて針金を作っていると背後に気配を感じた。
いつでも対処出切るように千本をまた真っ直ぐに戻して投げれるようにしている。
動いた、と思ったらそいつは私の隣に座った。
短い栗毛に細目。
肌は雪のように白い。
服装は緑色のフードが付いた厚手のシャツ、濃紺の長ズボン。
両手には私と同じように捻じ曲がった千本があった。
笑みを浮かべて私を見てきた。
私は呆気に取られて、私も笑っていた。

「巻物は持ってないし、もう必要ないから緊張しないでよ」
「どうやって信用しろってんだよ」
「仲間はみんな殺されたし、巻物も取られたんだ。もう合格なんて出来ないでしょ」

クスクスと笑って何事もなさそうにそういった。

「やけに落ち着いてるな。どうかしてるよ」
「かもね。ボクは止めたんだけど、みんな勇猛果敢に挑んで砂にまみれてぺしゃんこになっちゃったよ」
「勇猛果敢ね。そりゃ五分五分の相手に挑んだ時に使われる言葉じゃあないか」
「命知らずでも間違ってないね、それじゃあ」

ナルト達よりも会話がしやすい。ただそんなことを考えてた。
久しぶりに話すのが楽しかった。

「ボクの名前はくもみずうんすい。字にすると雲水雲水だから、言いやすいほうの雲と水でいいよ」
「うちはサスケだ。それじゃあ雲水《うんすい》のほうで呼ぶ」
「ボクは草隠れの里からきたんだ」
「私は見ての通り、木ノ葉隠れの里だよ」

少し間が空いてから雲水が「う~ん」と唸りだした。
どうしたのかと聞くと、

「針はお互いできたみたいだけど、糸はどうするサスケ君?」

1つ分かった事は雲水はマイペースな奴だということだろう。
嫌いじゃあない。

「そこらの蔓か草の繊維で任せようと思ったが、雲水はどうするんだ」

ボクはこうする、といって雲水の指先から光る糸のようなものが出てきた。
なんだこれ、チャクラか。

「傀儡の術に使うチャクラの糸だよ。モノにくっつければ引っ張れるし持ち上げられる。生活と家事に便利なんだ」
「簡単なのか」
「わかんないや。ボクは簡単だったけどサスケ君はどうだろ。形状変化とか分かる?」
「分かる」
「その要領でやってみなよ。慣れてきたら何本も出せるようになるよ」

ほら、と雲水は右手の人差し指から一気に10数本の糸を出した。
私は同じように人差し指にチャクラを集中させた。指を凝視する。
イメージはそれこそ糸、髪の毛、細いもの。つらつらと指から垂れるようにそうイメージする。
ボッと、勢い良くバットくらい太い棒が出てきた時、雲水は大笑いしていた。
絞めてやろうか、と睨みつけると雲水は笑いを止めずに言った。

「筋はいいよ。もういないけど仲間にも同じように教えたらなにもでなかったしね」
「黙って釣ってろ。あと必要以上に釣れたらよこせ」
「いいよ。もとからそのつもりだったんだ」

横からパシャパシャと次々と魚を釣っていく雲水を横目に私はチャクラコントロールの調整をする。
「餌はつけないのか」と俺が聞くと「これも修行なんだ」と雲水は言った。
指から出てままのバット級の太い杭を徐々に細めていく。ゆっくりであるが細くなっていく。
雲水が10匹ほど魚を釣った時には杭は手首サイズにまでなっていた。我ながら遅い進歩だ。

「ボクの両親は普通の居酒屋なんだ」
「なんで忍者になったんだよ」
「才能があるって言われたんだよ」
「いいね、羨ましい」
「人を殺す才能はなかったけどね」
「嫌々やってんのか」
「そうじゃあないんだけどね。のらりくらりと続けてたら中忍試験に推薦されちゃったんだ」
「優秀なんだな」
「サスケ君だって今は同じステージに立っているよ。ただ、里の人たちはボクを普通の忍びにしたいみたいなんだ」
「いい迷惑だな。平和が一番だ」
「そうだね、本当にいい迷惑だよ」

雲水が20匹ほど魚を釣った時には杭は親指サイズにまでなっていた。格段に細くなったとは思う。

「君は血の臭いがあまりしないね」
「まだ一人も殺したことがない」
「だと思ったから隣に座ったんだと思うよ」
「適当だな」
「直感を信じたんだ。ボクの勘ってよく当たるんだ」
「いいね。そんな能力、私も欲しいよ」
「分けれたらいいんだけどね」

雲水が30匹ほど魚を釣った時には、雲水は飽きたといって私の様子を窺っていた。
杭の太さは人差し指ほどに太さになっていた。つまりあまり変わっていないということだ。
雲水が私に寄ってくる。

「ちょっと指を見せてよ」
「ほれ」
「チクってするよ」
「なにしやがるッ!」

こいつ、俺の指に千本を刺しやがった。とっさに雲水の頭を叩いていた。

「はは、イメージだよ。
このちっちゃい傷から血が出るのと似たイメージでやると僕はすぐにできるようになったよ。
あとチャクラ込めすぎ。
込めると確かに丈夫にはなるだろうけど、そんなの出来るようになってからでもいいんだ」

ほら、と雲水が指を見せてきた。奴の指先にはいくつもの微かな刺し傷がある。
実際に、先ほどよりも指先に集中しやすくなった。
他の箇所など目向きもせず傷がある指先に一直線で意識が向かう。
また先ほどと同じようにチャクラを練る。
そうするとさっきまでの中指サイズから一気に釘サイズにまで細くなった。

「おおっ」
「でしょ。サスケ君は集中力が凄いんだよ。ボクほどじゃあないけど知ってる中じゃあ一番早い覚えるのが早いよ!」
「今までに何人くらいにこれを教えたんだ」
「仲間だった二人とサスケ君だけかな」
「ぬか喜びさせんな!」

また雲水の頭を叩く。今度はもっとやさしくだった。
こんなやり取り、ずっとやってなかった。楽しい。
もっと話していたい。そう思った。
おっと、気が付けばチャクラ糸はほぼ髪と同じ太さといえるほどに細くなっていた。
動け、そう念じると糸の先端がピョンピョンと跳ねる。
石の上に糸を乗せてくっつけと念じて糸を引っ張ると一緒に石も浮かび上がった。

「言ったでしょ」
「ああ、こりゃあ確かに」
「「生活と家事に便利だ(なんだ)」」

私達はなんとも馬鹿のように笑う。この空間だけ現代に戻ったかのようだった。
期待するわけではないが、私は聞きたかった。

「雲水には変な記憶が残っていたりしてないか」
「いやだなぁ。ボクはまだボケてないよ」
「そうか」

変な記憶を持っていたからといってどうするわけでもない、と自分に言い聞かす。
ただ、私はこいつと一緒に秘密を共有したかっただけなのかもしれない。

「サスケ君、仲間は大丈夫?」
「今頃食料を集めてるだろう。時間は、あまりないな。そろそろ集合だ」
「それじゃ魚の分配といきましょうか!」
「ほとんど雲水が釣ったんだ。3匹でも残しておいてくれたら十分だ」

雲水はニコニコしながら魚の数を数えている。
そういえばこいつ、餌をつけずに釣ってたな。
魚を見つけて糸を移動させて引っ付けるか引っ掛けて釣っていたのだろう。
恐ろしいほどの精度だな。私と会話しながらそんな感じに30匹も釣ったのか。
敵として出会わなくて本当に良かった。

「おっと、魚は置いていきな。俺たちが頂く」
「他国の忍びと仲良くしてんじゃねぇぞ!」
「ついでに巻物も置いていけ。それなら命は取らない」

木ノ葉の先輩かね。随分と血の気が上がっているようだ。
返り血も拭かずにそのままのところから察するに戦闘直後か。
興奮している奴等に説得は無理だろう。

「私がやろうか」
「いや、もう終わったよ」

雲水がそういうと奴等はパタッと倒れた。
良く見るとチャクラ糸が奴等の首に絡まっている。

「殺した、わけないか」
「気絶させただけだよ。言ったでしょ、便利だって」

見事な手並みである。
いつのまに糸を動かしていたのか横にいる私も分からなかったし対面している奴等も気がつかなかっただろう。
本当に敵として出会わなくて良かった。
私がそんなことを考えていると雲水は魚の数を数える作業に戻っていた。

「全部で27匹だね。う~ん、そっちは3人だし18匹がそっちで9匹がボクでいい?」
「しかし、一人で9匹か。そんなに食べそうにないのに良く食べれるな」
「いやいや、そこで寝てる人たちの分もこっちにいれてるんだ。ボク自身は3匹あれば十分だよ」
「こんなにもらえるなら文句は言えないな。あと2日もあるから助かる。そうだ。雲水も一緒に行動しないか」
「ボクはいいよ。この人たちも言ってたけど敵国の忍びだからね。それに、この魚を食べたら移動して安全なところに行きたいんだ」

失格になれば森の外に出ても文句はないだろう。
危ない奴がいるようなこんな場所、私でも失格になったら早く出て行きたい。
だから無理強いはできないな。

「そうか。それじゃあ、ここでお別れか」
「そうなるね。でもきっとまたどこかで会うと思うよ」
「勘か」
「うん」
「良く当たるならしょうがない。きっと会うんだろうな」
「だからまたね、が正解だと思うよ」
「あぁ、またな。それとありがとう」
「うん、またね」


大量の魚を覚えたてのチャクラ糸で吊るして持ち帰る途中、そこにはどでかい豚を背負ったナルトとサクラと鉢合わせになった。
2日どころか5日くらい過ごせそうだなと私は思った。
サクラが塩を非常食として持ち歩いてなければ悲惨な味になっていたかもしれない。


誤字脱字の報告と感想を頂けたら嬉しいです。


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