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No.30608の一覧
[0] サスケという病[ぷりんこ](2012/02/12 16:46)
[1] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/08/04 05:38)
[2] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/02/13 05:02)
[3] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/08/04 05:39)
[4] ナルトという病[ぷりんこ](2012/08/04 05:40)
[5] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/08/03 11:45)
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[30608] Re:サスケという病
Name: ぷりんこ◆a66baa4e ID:e9adabe3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/13 05:02
中忍試験が始まる。それを知ったのはナルトとサクラが砂隠れの忍びと諍いを起こしているのを見かけたときだった。

「おいこらサスケ、見てるだけじゃなくてちゃんと助けろい!」
「悪い悪い、相手が怖かったのもあるが立ってた木の枝の位置が高すぎて腰が抜けてた」

そんな感じにナルトのいうことを流しつつある種の感覚が私の背中を走った。
それは、緊張と興奮である。恐怖に対して私は再び対峙することになる。
現代人である私がこうなってしまったというのも、正直な話で納得はしている。
これは漫画だ。私はその登場人物。私が主人公。周りはサブキャラ。物語は私を中心として動いている。
ならばこれはゲームなのだ。私はとてもリアルなゲームをしているに過ぎない。レベル上げに疲労と痛みが伴うだけの、ひたすら時間を浪費せざるを得ないゲームだ。
死にたい、と思うときがある。終わりにしたい、と嘆きたい時がある。生きたい、と思うときもある。明日を知りたい、と考えてる事もある。
死ぬ理由もあれば生きる理由もある。判定はイーブンだ。
今の私のスタンスは、死んでも良し、生きても良し、ということなのだろう。
サスケ一人がいないだけでどうにかなるような世界なんてダメだ。人間は消耗品であるべきなのだ。

翌日、私達は普通に集い、普通に中忍試験に挑んだ。最初こそリーダー風を吹かせていたサクラは今では名実共にリーダーである。行動力、統率力も下忍としては十分にある。
私とナルトは、個人プレーが多いほうなので素直にサクラの言うことを聞けるのだ。

「よく手をあげなかったな」
「だってサクラちゃんが手をあげなかったもんな」
「だな」

最初の中忍試験、それは筆記試験だった。各自10点ずつ持っており、これはチーム戦で各チーム30点持っているということであり、その上でこのテストは減点方式で行われた。
カンニングが一度バレる度に2点減点される。チーム内に一人でも問題の生回数が0だったら3人道連れで不合格である。そう言う意味では私達はよく統率のとれたチームなのかもしれない。
私達のブレインであるサクラが続行を決めたのだから0点組である私とナルトは黙ってついていくしかない。

「さすがサクラちゃんだってばよ」
「他国の忍びの試験資格を永久に剥奪だなんて、んなもん一発で戦争よ」
「おお、なるほど」
「すっげぇ」

やばいやばい、マジで信じてた。私の場合は白紙どころか居眠りしてしまって涎の跡が残ってしまっている。
序盤でいきなり死にはしないだろう、ということと興奮しすぎで寝不足だったためだ。皆には悪いが落ちてしまったら里を抜けようと思っていたところだ。
無事に第一の試験が終わった安心感を感じつつ私達は試験会場に突如派手に登場したみたらしアンコという女性の後をついていっている。
木ノ葉に点在する数々の演習場を通り過ぎ、人気のない林道を歩き続けているとそこは現れた。1
0メートルほどのフェンスで囲まれた広大な森だ。そのフェンスには立ち入り禁止区域という看板が張られている。

「ここが第二の試験会場、第44演習場……別名、死の森よ」
「なんか薄気味悪いところね……」

サクラの言葉通り、私からしてもこの森からは不気味な雰囲気を感じていた。質量のある冷たい空気が私の両肩に圧し掛かるような、そんなストレスを感じる。
目の前でナルトとみたらしアンコ、そして異常に舌を伸ばしている男が一悶着を起こしているが私はそれを無視した。これから殺し合いが始まるのだ。
殺し合い、嫌だなぁ。



「始まったようだな」
「ええ」
「おう」

悲鳴が聞こえた。私達は放り込まれたばかりで上手く地理を把握していないので最初のゲートからさほど離れていない場所を歩いていた。
まさかこんなに早く行動に移る者がいるとは楽観しすぎていたようだ。

「オレってばちっと小便したい」
「ナルト、始まった今だけなんだぞ。落ち着いて小便できるのは」
「さっさと草陰にいってきなさい」
「お、おう」

サクラと二人きりになる。草陰の向こうで少し音が聞こえるがまぁエチケットだ。聞かないでおこう。
というか、あまり聞きたくない。
しかし、この試験、中々難しい。各チームに2種類の巻物の内1つ渡されている。それを2種類そろえて中央の塔へ辿り着かなければならない。
勿論、他のチームは殺しにかかるだろう。つまり我々が今後対面するチームのほとんどが殺気に溢れていることとなる。
まぁ、殺気だなんてよく分からないだけどな。気配とかなら分かるようになってきたんだが、殺気ってなんだろう。

「あー、すっげぇ出たあ」

そういってナルトが草むらから出てきた。また女が居る前でそんな下品な事をいいやがって、と思っているとひとつ気が付いた。
ナルトの手裏剣をいれるホルスターが左右逆になっている。最初に音を聞いていたからわかるが、んな鉄器が入った重いものを外すような音はしなかった。
偽者かな。偽物だよな。偽物でいてくれ。

「ナルト、手はこれで拭けよ」
「サンキュー」

私は手拭を右手に持ち、ナルトへ渡そうとしながら全力で手刀をナルト(仮)の喉仏に突き刺した。全力である。
足にチャクラの吸引を使った腰を入れた初速からの最大速である。同じ下忍であるなら反応も出来ない筈だ。出来たら私よりも相当の実力者である。そうならば運がなかったと諦める。
ぐえ、という変な声をあげてナルトはパタッと地面に伏した。その直後にボン、という音と共に煙がでてボンベみたいなものを加えている忍びがでてきた。

「ふぅ、偽物でよかった」
「よっしゃ、巻物ゲットよ」

手に残る嫌な感触を振り払うように掌を開いたり閉めたりを繰り返す。運がよければまた声を出せるようになるだろう、という力の入れ方だった。
サクラは倒れ伏している忍びの持ち物を物色している。服も脱がし始めた。実に男らしい脱がし方だ。奴の服がどんどん宙を飛んでいく。

「なかったわ」
「よし、ナルトが心配だから向かうか」

私が奴を昏倒させてサクラが服を脱がせ、そいつを縛り終えるまで実に10秒程度しか経っていない。
サクラの奴、追剥業も達者に出来るのではないだろうか。
私とサクラが木々を飛び移って移動してさほど元の位置から離れていないところでナルトはさきほどの忍びと同じ額宛をした奴等と応戦していた。

「生きてたか」
「し、死にそうだってばよ」
「足止めナイスよ」

ナルトはどこかの忍びか知らないがそいつらの分身体に囲まれている状況であった。
どこかぶれていたり透けて見える分身体であった。
こういう少数対多数の場合こそ忍術が活躍する。
私とサクラは一瞬でアイコンタクトを交わす。
私は指先に神経を集中させる。
独特な形で構成されている印というものを指が次々と模っていく。
それが終わると体の中心から灼熱を感じた。
これがうちは一族の伝統的忍術であり俺の基本忍術だ。

「ナルト、飛ぶのよ!」
「もうちょい待ってくれってばよ!」
「無理ッ!」
「こ、殺されるってば!」
「火遁、豪火球の術!!」

長身の人間の身長を軽く越す大きさの火球がさきほどまでナルトがいた箇所にぶつかり、弾ける。
軽い爆発のような現象が起きて、煙が晴れるとさきほどまで十数体はいた分身共は消えていた。
さすがに人間を一瞬で蒸発させるほどの威力がないのにも関わらずそこにはなにもなかった。
私は即座にまだ奴等が生きていると判断した。

「奴等をとっちめるぞ」
「オレってばそういう単純なのが大好き!」

サクラは司令塔である。
私とナルトを線で結び、その中央の位置に常にいる。
そこから指令を送る。サクラが鋭い瞳で周りを見渡す。
一瞬目を見開いてそこを指差した。
私とナルトがそれを見て、ナルトがクナイを片手に駆ける。ナルトの方が近い上に加速状態に入りやすい地点にいたからだ。私は木の枝に立ち、ナルトがやばくなったらすぐに駆けつけれるように、その上、もしサクラが狙われたら助けられるように、または3人一組のこの試験、もう一人隠れている可能性が高いのでサクラが再び見つけ次第に迎えるようにする。
サクラは目だけではなく耳でも敵を探そうとしている。ナルトのほうは上手く自分の土俵に相手を乗せているようで、影分身3体で敵を翻弄させつつダメージを蓄積させていっている。
これは時間の問題だろう。
そして、突如サクラの背後の地面が少し盛り上がったように見えた。私は即座に豪火球の術をサクラ目掛けてはなった。
サクラなら余裕で避けられる筈だ。案の定、サクラは余裕を見て私の攻撃から避けた。

「よし、なんとか生きてるな」
「蒸し風呂状態だったみたいね、潜ってたところ」
「死んでなきゃどうでもいいさ。ナルトもそろそろ終わるだろう」

私がそういうと大木の裏側から鈍い打撃音が響いた。
幹から枝へとその振動が伝わり葉っぱが降り注いでくる。
髪に乗った葉を振り払うように手で叩く。

「なんとかとっちめたってばよ!」

ナルトが引きずってきた忍びを再びサクラが物色し始める。私とナルトはその間は周りの見張りだ。
しかし、ナルトの成長速度は目を見張るモノがある、ということを認めなければならないようだ。
目の前の大木、4人の成人男性が手を目一杯に伸ばしてやっと囲めるほどの太さだ。それをあそこまで揺らすなんてよほどの力がなければ無理だ。だって、ナルトはまだ13歳程度だろう。中学校に入ったばかりの子供と同じだ。
馬鹿げている。ありえない。そんなことばが出てくるが、とりあえず諦める。日本の常識は非常識だと留学にきたタイ人の友人に言われたのを思い出した。同じようなものだ。
ナルトが引っ張ってきた忍びを見やると白目をむいてのびている。そこまで弱くも無いように見えたのだが、もう少し苦戦すると思えばこれである。忍者学校での成績が低いだけで資質でいえばトップクラスなのだろう。特に羨ましくもない。何故なら原作では主人公はナルトだからだ。

「しゃーんなろーッ!」
「どうしたんだってば、サクラちゃん」

どうやら手に入れた巻物は天の巻物だったようだ。ダブりである。また振り出しか、と思った直後、風が吹いた。
それも特大の台風のようなものだ。体が浮き上がる浮遊感、私は即座にナルトとサクラの手を握った。2人とも一瞬あとに理解したようだ。これが敵の忍術であることを。

「やばいね、これ」
「なにがってば」
「バカたれ、こんなもん下忍の忍術の筈がないだろ。私達は今、空を飛んでるんだ」
「ああッ!」

私達の眼下には森が広がっている。私達を吹き飛ばし、周りの木をなぎ倒すほどの風遁忍術。
こんなもん下忍の実力じゃあ再現不可能だ。つまり下手人は中忍、または上忍レベルだろう。

「どうすんのよ」
「先ず、勝つのは無理だろうな」
「やっぱりそう?」
「うむ。だが、巻物を取られるのはシャクだな。おい、ナルト」
「あん?」
「お前が巻物持ってろ。足止めは私がする。なに、運が良ければまた会えるさ」

2つの天の巻物をナルトの上着の中に突っ込み、両手に握ったサクラとナルトを明後日のほうへ放り投げる。
奴等はまだ空の旅を、私は2人を放り投げた反動で失速し落下し始める。
冷静に考えなくてもこんな行動、自殺行為である。
まぁ、私がそんなことをする理由は恐らく3つある。
1つ目は今の時点ではナルトとサクラの二人よりも私一人のほうが強いからだ。
2つ目は、ナルトは私にはない運がある。ある日試しに麻雀を教えたら半荘3回やって天和を2回出した。天和というのは最初に配られた14枚の牌が最初から完成されていることである。天和が出る確率は33万分の1と言われている。『運がよければまた会えるさ』という言葉は私の運についてではない。ナルトの運である。十中八九、会えるだろう。
そして最後の理由であるが、もしかすればこれは写輪眼を開眼するチャンスなのではないだろうか、ということだ。
発動条件が分からないのが痛いが、原作でサスケはナルトを庇い、死に掛けて写輪眼を会得した。条件がとても似ているのである。
ならばかなり危険であるが挑戦する価値はあるだろう。
私は元私達が居た場所の方を睨みつける。
恐ろしい速度で地を這う蛇の如く駆け寄ってくる存在がある。
それが持つ恐ろしいプレッシャーが私の体を這うように脳髄へ駆け巡る。
下手人は確実に中忍以上のようだ。なぜ中忍試験なんかに参加しているのか問い詰めたくもなるが、そんな時間はなさそうだ。
枝で織られた天井を突き破る。
空から大地へ舞台を移したのだ。
久しぶりの地面との対面、そして四肢から感じる重力に安心する。
大丈夫、緊張していない。

「さて、鬼が出るか蛇が出るか…」

前途にはどんな運命が待ち構えているのか予測ができないという意味だった気がする。
遅かれ早かれ、人生にはそんな選択肢が阿呆のようにあるだろう。私は腹を括った。出たとこ勝負である。
移動しつつ両手足の重りを外す。途端、羽が映えたかのように体が軽くなる。
腰につけたホルスターから三粒ほどの兵糧丸を取り出し飲み込む。1粒で三日三晩戦場戦い続けられるというものだ。
過剰摂取であるが今はこれくらいがちょうどいい。カリッ、と周りの殻を噛み砕いて咀嚼する。
そうすると物の数秒で体の中で太陽が出来たかのように熱を感じる。
頭の中にどこまでも広がる草原と雲の青空を連想させるほどのすっきりとする感覚、タバコ程度では味わえない明瞭感だ。
体中の細胞が活性化していくような感覚に身を委ね、チャクラというガソリンで体というエンジンを稼動させる。

「いい目ね。中々にそそらせる」

下手人は先ほど試験官と口論していた下忍であった。
長くまっすぐな黒い髪が特徴的である。
そいつ自身が持っているチャクラは言葉に出来ない嫌な感じがした。
粘着質的ななにかを感じる。

「巻物の奪い合いって時点では貴方達の勝ちね。中々のチームワーク」
「命の奪い合いについては勝てそうにないよ」
「始めましょうか。命の奪い合いを、命がけでね」

突如体に襲い掛かる恐怖、重圧が増えた気がする。
重苦しい空気というのはこういうことだったのだ。
今まで感じてきたそれが一瞬で吹き飛ぶほどの殺意を私はいま感じている。
私は殺気というものを感じたことがなかった。
よくわからないのだから仕方ない。
再不斬の時でさえなにも感じなかった。
視線を感じる程度であった。
しかし、学んだ。これが殺気、そして殺意。
人に向けたくもないし向けられたくもない。
まぁ、毎晩自分が死ぬ夢で飛び起きる私に死角はなかった。
それに加えて兵糧丸の過剰摂取で興奮作用が増幅されているのですぐに恐怖なんてものは吹き飛ぶ。
今私の内に充満しているのは破壊衝動のみだ。
最速で駆け出す。後ろへ。

「悪くない。写輪眼も持っていないのに、期待していなかったんだけどね。審査してあげる」
「頼むから関わらないでよ」

奴は私の後ろを余裕で並走している。
下忍で私の全速力についてこられる奴はいないと思っていたからこそ逃げの一手を講じたのだが、やはり奴は規格外なのだろう。
反転しつつ、私は即座にこの前の武器屋で購入した刀(一番安い使い捨て)と手裏剣を口寄せする。
非生物の口寄せは印さえ覚えれば下忍でも出来るのだ。
刀を構えつつ手裏剣を投げる。
それを両手なり片手なりで防いでくれたのならその隙に刀で攻撃を加えようとしたのに奴は糞長い舌で手裏剣を打ち払った。
んなアホな! と私の動きが一瞬止まってしまった隙をついて奴は急接近してくる。
その片手にはクナイ、私の刀をぶつかり合い拮抗する形で両者の動きが止まる。

「下忍にしては腕力はある方ね」
「恐怖で悴む一方だよ」

奴の横腹に蹴りをいれようとするが突如現れた大量の蛇に足を絡め取られる。
最悪の状況である。
仕方ないので小規模の起爆札で足回りを爆破する。
灼熱の爆発が鼻先で生じる。
爆発の直前で奴はニヤリと笑い私から離れていった。
私も全速力で後ろへ飛ぶ。
手足や顔の表面がチリチリと焼ける。
蛇の群れのおかげで足に直接爆風は受けていないのが幸いだった。
一息入れる余裕もなく私の視界に奴の顔が映った。
体を動かすギアをマックスにまであげる。
実を言うと、先ほどまでは6割程度の力だった。
アリと象が戦っているかのような実力差を感じた。
全力でも結果は変わらないだろう。
だがそれだけ時間は稼げるだろうし生還のチャンスも増えるだろう。

「やっぱり強いね、こりゃまいった」
「興味の無い人は殺したくなるのよ」
「ありがとう。頑張るよ」

木と木の間をすり抜けるように動きつつ、手持ちの手裏剣を投げ続ける。
奴が近づいてくれば私は離れ、奴が離れるならば私は近づく。
中距離を保ち続ける。
なぜなら接近戦は厳しく、長距離戦いでは天と地の差で奴のほうが強いからだ。
先ず、奴の印を組む指が霞んで見える。
術の発動のキレもカカシ以上だ。
威力など中忍級の忍術が上忍級のそれに思えてくるほどだ。
こいつはカカシよりも遥かに強い。再不斬との戦いで手加減をしていたのなら分からないが、あれは本気だった筈だ。
口寄せで出し続けられる手裏剣の枚数は50枚、既に20枚ほど投げた。
同じ手法で奴もクナイを私に向かって放ってくる。
クナイの軌道、速度、私達の進行方向にある障害物、私の手裏剣の枚数から投げる力を方向、一瞬の間で計算しなければならないことが多すぎる。
思考を簡略化させて複数同時に思考する。頭に熱を感じる。
機関部に大量の石炭を詰め込んで風を送り灼熱を作るように、今の私は限界を楽しんでいる。
一杯一杯と同義であるがなんと楽しいことか。
恐怖もある。焦りもある。それでも楽しいと感じる。

「手裏剣が切れたようね。さぁ、次はどうするのかしら」
「無いものねだりはダメダメ、手持ちで勝負するしかないのさ」

私の手持ちの忍術は下忍の忍術しかない。しかも補助系ばかりで攻撃系は豪火球の術のみ。ならば接近戦しかない。
私はもう一本の刀を口寄せする。二刀流である。
未だに特製の槍が完成していないのが悔やまれる。
こういった状況の為に購入した筈なのに、もう一ヶ月近く経っているのにいまだに手元にない。
まぁ、しかたない。
それに、片手で刀を振るえるくらいには体を鍛えている。
左右別々に攻撃が出来るように体幹トレーニングもこなしている。
ならばこれが今の時点での最良の攻撃の筈である。

「やはり決断力がいい。手裏剣も体術もそれほど悪くない」
「そうかい、ありがとう」
「でもね」

左右の手で切り付けつつ、手が交差した時に刀を一瞬手離し、私は豪火球の術の印を組み上げ火球を放つ。
目暗ましと攻撃を同時に行い、かく乱させる。
火球は避けられるが大量の煙幕が生じる。煙に乗じて身を乗りだす。

「イタチ以下ね。出来損ないというのは本当らしい」

煙の中には私の刀がおもちゃの刀のように思えるほどの刀を携えた奴がいた。
振りかぶった腕はもう戻せない。
ならば、と刀が砕け散ってしまうほどの力を込めて2本の刀を奴のそれに振り下ろした。
キィンッ、と硬い金属の砕ける音が予想通り鳴り響く。
少しでも奴の刀に傷がつければと思ったのだが、奴の刀の光沢は暗い森の中の、更に煙の中でさえも変わらず輝き続けている。
即座に閃光弾を地面に叩きつけて私は逃げた。
3歩走るたびに私は手持ちの閃光弾を尽きるまで投げ続ける。無くなれば煙幕弾だ。
数百メートル、呼吸をするのも忘れて私は走り続けた。気配を隠し音も立てず、走り続けた。
視界一杯に白い点が交わり始めたころに呼吸することを思い出した。
酸欠直前になっていたようだ。
後ろを振り返る。
静かな森が広がっているだけである。
ホッと一息ついて私はナルト達とどう合流しようかと考え、前を向き直ると奴はいた。
それも不機嫌そうな顔で、だ。
どうやらここまでのようだ。

「付き合ってくれてありがとう。つまらなかったわ」

奴は私の脇腹に蹴りを入れる。
恐ろしく速い蹴りだった。
気が付いた時には間合いを詰められ蹴りのモーションに入っていた。
数メートル吹き飛んで2転、3転する。
猛烈な吐き気がして頭も痛い。

「期待はずれもいいところよ。こんな出来損ないがあの天才うちはイタチの弟なんてね」

そういえばさっきも兄さんの名前を出していたような気がする。
動転してそれどころじゃなかったから聞き流していたが。
そうか、こいつ、兄さんを知っているのか。

「まるで出涸らし。攻撃はしていても殺気はない。実力差を実感しても対処しない。ただの死にたがり。下忍にしては悪くないけど所詮は凡庸、欲しくもないわ」
「……笑えないね、どうも」
「貴方、本当にイタチの弟?」

そんなことも私のこともどうでもよいが、聞かなければならない事がある。やはり、兄さんのことだ。

「……1ついいかな、聞かせて欲しい」
「あの世への土産話ね。私の名前は大蛇丸、いいわ。聞いてあげる」
「まぁ、それでもいい。あんたは兄さんのことを知ってるようだけど、今どこであの人はなにをしているのさ」
「もう貴方には関係ないわ。それにたくさん答えるのは面倒だから殺す」
「そうかい」

聞いてくれるんじゃなかったのか。
私は殺されるだろう。理不尽だ。なんて理不尽。
まるで世界はゲームのようで、命はとても安っぽくて、私は死んでもいいとずっと思っていた。
だけどね、死にたい死に方ってのはあるんだよ。
死ぬなら誰かを守って、とかラスボスと相打ちとか、そういうのがいい。
なんの魅力も感じない死に方なんて絶対に嫌だ。
だから理不尽に死ぬのなんか嫌なのさ。
今はそう思える。だから徹底抗戦してやるのさ。
絶対にぶっ殺してやる。
寅の印、いつも通りの豪火球の術。
火球を噴出す瞬間、可視化するほどのチャクラを両手に集めて輪を作る。
まるで仏に祈るように。
手の輪の向こうに奴は見える。
そいつを焼き殺せるだけの熱量をチャクラの性質変化で作り上げ、形状変化で噴出した火球を覆う。
超豪火球の術。
私が唯一作った新しい忍術である。
ドラゴンボールのオマージュとも言える。
大きく、熱く、ただ豪火球の術の威力を追求したものだ。
規模でいえば通常の4倍ほどの威力はある。
通常の豪火球の術の5倍ほど消費してしまうが効率云々を無視してでも得なければならない破壊力というのは絶対にある。
いつか、その破壊力が必要な場面が絶対にくる。
私は見た。
巨大化する豪火球の術を見て意外そうにする奴がそれに飲み込まれる様を。

「ざまぁみろってんだ」

私は中指を立ててそう言い残して全力で逃げ出した。
背後で森の木々を圧し折って突き進む火球が巨大な爆炎を放出するのを感じつつ、はやくこの場から逃げたいと思った。



木の根元の空洞に辿り着いた私は周りを見渡して誰もいないことを確認してからそこへ入った。
風の吹く音とそれで揺れる木と葉の音、それしか聞こえなくなってから私は改めて先ほどの男、大蛇丸が原作に出ていた『なにやら暗躍していたラスボスのような男』なのではないだろうかと疑い始めた。
特徴は蛇と女言葉を使うこと。限りなく当人だろう。
原作でサスケ達と遭遇してなにをしたのかは覚えていない。
ただ実力を確かめる為だったような気もする。
なにかアクシデントを残していったような気もする。
いかん。立ち読み派だったからところどころが飛んでしまっている。

とにかく状況確認だ。
先ず、私はいま仲間からはぐれてしまっている。次にこの試験は殺し有り。周りは敵であること。巻物が二種類必要であること。先ほどの凶悪な奴が単独という保障もない。
先ほどので一人は上手くいけば始末できたかもしれない。
そう思った直後に私は予想も付かない不快感を感じた。
これは外から感じるものではなくて内側からのものであった。
原因は、きっと人を殺してしまったかもしれないからだろう。
現在人として絶対にやってはいけないことだ。絶対に人を殺してはいけないのだ。
理由はない。こっちには法律がないとしてもだ。
現代人としてのプライドとか関係なく、私を築いてきた、構成している感情や論理などが否定するのである。気持ちが悪い。
話がそれた。
試験には、奴は3人組で参加していたところから同程度の敵があと2人いる可能性もある。
『審査してあげる』と奴はいった。
勧誘だろうか。良い素材を己の里に連れ帰る算段なのだろう。
この試験に参加している木ノ葉のルーキーは皆、木ノ葉隠れの里を古くから守っている一族ばかりであり、良い素材ばかりなのだと思う。
皆が危ない。
しかし、私は動かない。安心によるものだろう。
急激な心境の変化でアドレナリンの低下したようだ。
頭が押さえつけられるような感じがする。まるで冷え切った鉛の頭だ。重く鈍い。不快だ。
体が冷え切った。拾ったクナイを握り締めるが、本当に握り締めているのか不安になるほど感触がない。
兵糧丸が切れたか、と一瞬思ったがそれはないだろう。
三日三晩戦えると謳うものを過剰に摂取しているのだ。
きっと怖かったのだろう。
精神よりも肉体がそれに堪えていたようだ。少し疲れた。


十数分ほど寝ていた。
微かに射す日の光の動き具合でそれが分かる。
体調も少しはよくなったようだった。
改めてみるとこの森はどういう目的で放されているのか分からないほど複雑で面妖なつくりである。
樹と樹の間に距離があまり空いていない。
普通ならば成長不良でか細いものにしかならない筈なのに樹齢100年は超えてそうな大木が点在している。
苔は覆い、そして厚い。あまり人が出入りしていないのだろう。
外から見た時は広く感じたが、体感してみると更に広く感じる。
最奥がどれほどか分からなくなる。
本当に摩訶不思議アドベンチャーだ。
私は音を立てないように枝伝いに駆けていた。
耳を澄まして目を凝らしながら駆けているのだが、何一つヒントのようなものはない。
そう思ったときに悲鳴が聞こえた。
女だ。

「サクラじゃあ……ないか。一応見に行くか、めんどくさいね」

木の葉の人間かもしれない。
もし違っても実力差を判断して可能なら巻物を奪取したい。
私はまた枝伝いに音を殺して声の元へ向かった。
ある程度進むと馬鹿のようにでかいクマとメガネをかけた女がいた。
気配を確認する。女は仲間とはぐれたのか、どうやら一人のようだ。

「ねぇ、みんなどこ!?」

手に持った巻物は天の巻物。
私達と同じである。
保険として持ち帰るのもいいが、それで天の巻物が3本となってもあまり意味が無いだろう。
どうせこいつも敵になるのだ。
無視しよう。女も忍者だ。対処する術くらいあるだろう。
なければどうせいつか死ぬ。そうだ。どうせ死ぬのだ。関わる必要はない。
私は別方向を向いて駆け出した。
早くサクラ達と合流すべきだ。
先ほどの大蛇丸の動向が気になっている。
どちらにしても急がなければならない。

「さっきの、女だった。それにまだ子供だ」

私の独白。
人間の心は多くの心的事象の上で保たれている、と言っても過言ではない。
人間はそういった不快な出来事から解放されようと行動する。
嫌なこと、不快な出来事が起こるたびに我々の心は自動的に緊張という警戒態勢に入る。
その警戒態勢を解除しようと我々は快感を求め、その結末へ向かって尽力する。
この心のプロセスを快感原理という。

「これは、フロイトだったか」

人間が感じ取る大抵の不快は実際、知覚の不快であって、それは、満足されていない欲動が迫りくることの外的知覚である。
外的知覚とは、それ自体としての知覚の苦痛、または心の装置の内に不快な予期を換気して、装置によって危険として認識される知覚である。
心の装置が予期する不快とは、本人が望まない出来事に対する感情であると考える。
何をいいたいとすれば、私はあの女の見捨てることが不快なのだろう。
殺すことは絶対に嫌だ。
殺されるところを見過ごすのも同義語ということらしい。

「よし、行くかッ」

私は意を決して反転し、来た道を戻る事にした。
どうも心がムカムカする。
果たしてこの選択が正解なのかを確かめたいのかもしれない。
頭の中に浮かんだフレーズは「かも」や「しれない」ばかりだが、やはり分からないのだからしょうがない。
分からないのなら確かめるしかないのだ。
こればかりは他人に任せられない。
自分で答えを見つけなければならない。
女の悲鳴が聞こえる。
目を凝らしてみると女が倒れてメガネが地面に落ちている。
このままではやはり殺されるだろう。
クマまで止めだといわんばかりに襲いかかろうとしている。
頭の中でもう一人の自分が囁く。
やはり見過ごそう、と。
もう私はどちらでもいいのだと思う。
どちらにしてもメリット・デメリットがない。
ならばどうするか、それは気分で決める。
人の死を見過ごすか、助けるか。
そして私は見過ごす気分ではないのだ。
その選択肢ならば絶対に助ける。
私は全力疾走のままクマの額を蹴り上げた。
鈍い感覚が足越しに伝わってくる。
言葉で表せられないクマの悲鳴が木霊する。
人以外に危害を加えてもこんなにも気持ちが悪いのか。
ならば人を助けてよかったのだろう。
女は何が起きたのか分からないといった様子でメガネを拾い私を見た。
今のお前は天秤の皿だ。
偶々私がそちらに乗っかったようなものだ。
だから私はいった。

「運がよかったね」

そう言いつつ、私の胸の中は歓喜に満ち溢れていた。
その喜びを一言でまとめるときっとこれだろう。『やって良かった』だ。
自分の傘が盗まれて、腹が立った。
自分のを盗まれたのだから他のを盗んでやれ、と思った。
実際に盗んだが、どうも気分が悪い。
気持ち悪くなる。
原因が分からないままに私は傘を元にあった場所に戻して雨の中を歩いた。
どうも気分がよかった。今と同じほどにだ。つまりは同じなのだろう。
身体が軽い。
ずっと頭を紐で縛られたようで窮屈だったのがそれがなくなったようだ。
重力を感じない。
私は女の反応を確かめずに走り出した。
サクラ達を探すためだ。
きっと今の私は笑顔なのだろう。私は笑っていた。



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