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No.30608の一覧
[0] サスケという病[ぷりんこ](2012/02/12 16:46)
[1] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/08/04 05:38)
[2] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/02/13 05:02)
[3] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/08/04 05:39)
[4] ナルトという病[ぷりんこ](2012/08/04 05:40)
[5] Re:サスケという病[ぷりんこ](2012/08/03 11:45)
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[30608] サスケという病
Name: ぷりんこ◆a66baa4e ID:e9adabe3 次を表示する
Date: 2012/02/12 16:46


「ふ、ふざけんなッッ」

私は飛び起きると同時にそう叫んだ。私の叫びに呼応するかのように周りの人間は心配しているように-事実しているのだろう-私の顔を覗き込む。

「どうしたのよ、サスケ」
「大丈夫だってばよ?」

春野サクラ、そしてうずまきナルトである。
あぁ、体中が痛む。切り傷に刺し傷だらけのこの体が今の、頭を使わなければならないこの状況ではとても恨めしい。畜生。
今、私は波の国にいる。サスケとして生まれ変わった私にとって第二の危険なイベントであった。
そう、私はサスケとして生まれ変わった。憑依、というものかもしれない。そういったオカルト染みた現象を私はよく知らないのだ。



赤ん坊として生まれ変わった最初は夢だと思っていた。しかし、いつまでも夢から覚めず、痛みを感じ、味を感じ、五感を通して全てが現実だと知った。元々は漫画よりは小説のほうが好きで、小説よりもギャンブルのほうが好きな大学生であった。この世界が舞台であるNARUTOも読んだ事があるが、それは人気があったから読んだようなものだった。それも中学生の時に、である。確か、中忍試験、だったか、正式名も思い出せないがそんなのが行われていた。なにやら蛇みたいなオカマが暗躍しているようなシーンもあった気がする。きっとラスボスであろう。そんな風格があった、気がする。
とりあえず、現実だという事を受け入れるしかないのだ、と諦めた。なにせ他に選択肢が無い。記憶の中では主要キャラクターに死亡者は出ていなかった、と思う。ハンターハンターやドラゴンボールじゃあないのだ。下手な事をしなければ死にはせんだろう、とその時は楽観的に考えていた。この漫画を熟読しているのならば元の世界に戻る手段を知りえたかもしれない。


とある日、手裏剣術を教えてやる、と珍しく兄さんの方から言ってくれた。兄さんの名前はうちはイタチという。原作には出ていなかったが兄さんはどうやら一族きっての秀才のようで才能の上で胡坐を掻かず日頃から修練を重ねる人間だった。同年代では張り合える者が存在せず、時折見せる寂しそうな瞳が印象的な方であった。当然のようにすでに写輪眼を会得している。初めて見た時はグロテスクな目だとしきりに凝視していたら教えてくれた。体が子供なせいか実際には年下である兄さんに失礼のないように言葉を選ぶことがそれほど苦に感じなくなっていった。寧ろ、自然体で自分が本当に子供なのだと認識し始め、今ではそれに順応している。故にだろう。そのような兄さんに私は尊敬の念を抱いていた。こんなに実力者なのにうちは一族は全滅してしまうとは、この方だけは生き残ってもらいたいものだ、とさえ思っていた。とまぁ、そんな兄さんからの修行のお誘いである。断わる理由も無く私は嬉々として後をついていった。そういうところが変化してきているのだと自覚はあるのだが喧嘩しても絶対に勝てないので大人しくしているのがいいのである。そう思いつつ、鬱蒼と茂る森の中、大岩や大木の裏側、つまり死角に多数用意されていた的を複数同時にクナイを命中させていく兄さんに私はいたく感服したものだ。

「緩急をつけたクナイ同士を弾け合わせて方向変換をさせたんだ」

「そうだ。サスケは賢いな」

兄さんはいつも通りに儚くも笑みを浮かべる。悲観さえ伝わってくる。最近は家族同士の会話さえ少なくなってきているのには気がついていた。父上と兄さんの間に特に感じる。兄弟間だけでも円滑にしていきたいものだと私は痛感してしまうのである。元々の生活では家族主義で親とも兄弟ともとても仲が良かったというのもあるやもしれない。
私は徐に手にしていた2つのクナイを兄さんが当てた大岩の裏にある的に命中させるべく投げた。兄さんは6つ同時に投げていたので私は2つからが妥当であろう、という考えがあったからだ。先ず、1つ目を比較的緩く投げ、2つ目は早く投げた。上手く2つのクナイが大岩の上で接触しようとした時、クナイは交差し1つ目のクナイは失速し地に落ちた。2つ目はそのまま茂みに突っこんでいく。つまり投げた2本のクナイは互いに衝突せずに通過していったということだ。

「これは、中々に難しい」

「なに、明日からサスケも忍者学校に入るんだ。サスケならすぐに習得出来るようになるさ」

頑張ります、と私は元気よく告げ、投げたクナイを拾いに走っていった。元々、成功させようと投げたわけではない。兄さんは口下手なので会話の機会を増やす為の行為であった。それも成功したのか、はたまた感づかれたのか分からぬが結果オーライである。

家へ帰る際に父上の勤務先である木ノ葉警備部隊の本部の前を通りかかった。私の一族の家紋が目立つ位置に飾られた建物である。きっと創立者はうちは一族の者だろう。それが誇らしいとうちはサスケとして生きている私は感じた。元々、私の家にも家紋があり大して歴史にも介入していないものであったが私の目にはカッコよく見え、誇らしく感じた。
私はうちは一族の家紋が木ノ葉隠れの里に大きく貢献していることに誇りを感じていると素直に兄さんに伝えた。

「昔からうちは一族はこの里の治安をずっと預かり守ってきた。今ではうちは一族も小さくなってしまったけど、ほぼ全員が里の治安維持に貢献している」

誇り高い一族の証だ、と兄さんは言った。

「ほぼ全員ということは、兄さんも警備部隊に入るの?」

「さぁ、どうかな」

「どうせなら火影になって欲しいな」

「どうして」

「優秀な人が火影になるものだよ」

「それならサスケがなれよ」

「面倒なことは全て兄さんに丸投げするよ」

久しぶりに兄弟で笑った。

帰路の終には門の前で父上が待っていた。うちはフガク、実力競争が激しい中、素晴らしい成績を残している兄さんの自慢が好きな方だ。基本的に悪い人ではない。世が世なら厳格な父親であるがこのような荒くれた舞台ならば一族の頭領として十分なのだろう。

「明日の特別任務だが……」

なにやら重大な話のようなので私は口を挟まない。どうせ私が話す内容は明日の忍者学校の入学についてだけだ。忍者社会において特別任務とまでいわれる仕事ならそちらを優先すべきであろう。

「この任務が成功すれば、イタチの暗部への入隊がほぼ内定する。それは分かってるな」

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」

それより、と兄さんは私の顔を見て頷く。どうやら私に明日のことを伝えろ、ということだろう。私は軽く頭を左右に振った。この緊迫感のなかで水を差すことは良くない。父上も真剣に兄さんとの会話を求めているのだ。といってもただこの父親に横から口を挟む度胸が無いだけなのだ。

「明日の任務はうちは一族にとっても大事な任務となる」

「やっぱり、明日の任務はやめるよ」

「なにを血迷った事を言っているんだ! 明日がどれほど大事な日かお前にも分かっている筈だ!」

ああ、やっぱり怖い。自分から言わないでよかった。

「明日はサスケの忍者学校の入学式についてくよ。忍者学校の入学式には身内が参列するのが通例と通達にもあったでしょ、父上」

「分かった。忍者学校へはオレが――」

「母上と行きます」

さすがに見過ごせなくなった。なにやらただの緊迫感から危機感へと移り変わるのを感じた。

「母上も身内です。確かに警備部隊の仕事はあるだろうけど、入学式は午前中、それに一時間も掛からないでしょう。その間は母上の代わりを誰かに頼んでもらってはいけないですか」

そう言って私は翌日、母上の手を握って忍者学校を訪れた。きっと父上と兄さんは特別任務を無事に果たす、と願いつつ入学式が始まり、そして終わった。一人の教官に兄さんの褒め言葉を聞き、母上と私は自分のように喜んだ。



忍者学校が始まってからが悪夢だった。
この物語はジャンプ作品、様々な特殊能力が跳梁跋扈する作品群の1つであり、当然のようにNARUTOの世界にもそれは該当する。所謂、チャクラの存在である。ドラゴンボールの気、ハンターハンターの念、有名どころしか知らないのが悔やまれるが、そのようなものだ。この世界で生きていれば当然のように得られる能力だと思っていた。そう、思っていたのだ。

現実は無情である。

「あれってうちはだよな…やっぱすげーのかな」

「そうじゃない?」

等と後ろから子供達が囁いているがそれどころではなかった。忍者学校の初等部ではそれほどまでチャクラを扱う忍術を教えることがないのが救いであったが、原作が始まる頃には状況は変わる。善は急げ、思い立ったが吉である。

「キリン先生」

「おう、どうしたサスケ」

私は素直に中忍であるキリン先生の門戸を叩いた。まだイルカ先生が教職についていないのでなるべく温和そうな人を選んだ。原作に出ていたのかさえ分からない。ガリガリでメガネが良く似合う先生だ。見たとおりならば神経質そうであると共に目が細く狡猾そうに思える。

「チャクラってなんッスか?」

家では丁寧な言葉を使う。何故なら父上が厳しいお方だからである。案外、家族以外とは素で話す。

「いきなりだな。家族に教えられなかったのか?」

なんたってあのうちは一族なんだろ、と言外に目で語っているのを感じた。もちろん、皮肉ではない、とは思う。どちらかというと驚きのほうが近いだろう。とにかく糸目であるから一々感情を把握するのが大変な人だ。

「うちはだから聞けないんッスよ。私は出来損ないです、だなんてあの父上に伝えるようなもんじゃないッスか」

うちは一族の人間なんて気がついたらチャクラを感じ取って操っているのがデフォルトだと思っている人間ばかりだ。

「あぁ、あのフガクさんなら聞き辛いか」

でしょう、と私は全力で頷いた。兄さんもストイックな方だが、父上はそれプラス責任感の塊もついてくる。世のエリート2世もきっとこんな苦しみを感じていたのだろう。

「まぁいい。チャクラについてだったな」

「おう」

「チャクラってのはだなぁ、体が持つエネルギーと修行や経験で蓄えた精神力を合わせたもんだ」

「おう?」

「それを体中に張り巡らされた経絡系という神経を通して俺たち忍びはチャクラを感じることが出来る」

全然理解ができない。特に精神力の件が理解不能だ。そもそもキリン先生が言っていることは最初の座学で教えられたこととほぼ同じだ。それでも理解できないのだから尋ねているというのに。いやはや、困ったぞ。私が頭を悩ませていると、

「まぁ、君もうちはの人間なら自然と分かるようになるさ」

話は終わりだ、という風にキリン先生はデスクに目を戻した。新学期ゆえに色々と情報整理が大変なのかもしれない。

「ありがとうございました」

そういって私は職員室から出た。
これからどうしようかと思ったが、体が持つエネルギーと経験等で蓄える精神エネルギーを体感するにはどうすればいいか、というと修行しかないだろう、と結論付ける。そうか、修行しかないのか。下手な事をしない限り、死なないだろうけど、最低限の実力がないとさすがに死にそうだ。死にたくはない。ならば頑張るしかないのだろう。そういえば、いつぐらいに一族は滅亡するのだろう。もしかして唐突にそれが起こるのであれば、運に任せるしかあるまい。私はその日は素直に家に帰った。こっそり兄さんに尋ねてみたが「気が付けば使えた」という言葉に絶望した。その日は素直に寝た。次の日から本気を出そう。


私にとっての修行とは体を虐めることである。こちらに来るまでは一時期筋トレに熱中していた頃があった。ある程度の目標を立ててそれを達成する。苦しいがそれ以上の達成感を得られ、継続し、やがては快感にもなった。筋肉がついてくると自信を持ち始め、ポジティブな思考を持てるようにもなった。
今だからこそ分かる。
それは別段、命の危機感を持っていなかったからこそ感じることである、と。目標を立てたとしてもすぐ脳裏に「その程度で大丈夫か?」という言葉が過ぎる。故に達成感など感じることもない。ただ苦しいだけである。しかし、継続はする。何故なら命が懸かっているからだ。筋肉がついても自信は生まれない。ポジティブな思考も持ち得ない。やはり命が懸かっているからだ。その上、修行を始めてかなりの日数が経つというのにチャクラというものを感じない。故に、自信などというものは生じない。寧ろ、コンプレックスが生まれるだけだ。欝だ。
様々な修行を試行する。これらを修行というのは甚だ疑問ではあるが。腕立て、背筋、腹筋は当然のように何時間も鉄棒にぶら下がったりもした。バランス感覚を得るために屋根の上や突き刺した杭の上をいつまでも走り回った。やはり忍者として手裏剣やクナイ、刀の扱いも覚えようとした。やればやるほど焦燥感は大きく膨れ上がっていく。何故なら筋力がついただけだからだ。神秘的な力を体得することはなかった。

更に時間が過ぎて上期の終わった。担任から成績表を受け取った。大人になっても慣れない作業である。生徒がざわめく。私もその中にいた。欲しくもないモノを受け取るというのはどれほど時間が過ぎても嫌なのだ。なぜなら、上期が終了しても私は未だにチャクラというものを感じることが出来ていないからだ。上期とは約半年である。肉体的には格段に強くなってきていると感じる。それでもまだ足りないと感じているが。しかし、NARUTOという作品においてチャクラは必要不可欠なのだ。チャクラを持ちえなければドラゴンボールのMr.サタンとなんら変わらない。ドラゴンボールではMr.サタンはそのやさしさや人情で物語を切り抜けたが、殊NARUTOの世界ではそんなもの手裏剣一枚にも劣るだろう。
とにかく、私は素直に成績表を受け取った。諦めの精神である。そして開く。成績表には項目ごとに升目があり、忍術という項目は30人中30位と書かれていた。そのほかは全て一位である。いやはや、これはもう欠陥といってもいい、と私は感じた。

「諦めないで努力を続けなさい」

成績表を受け取る時の担任の言葉だ。同情の念を感じた。これを父上に見せるのか、と思うと私は両肩に質量の篭ったプレッシャーを感じた。





「お前は本当にオレの子か?」

第一声がこれである。そして父子の会話がこの第一声で終了した。ピシャリ、と障子を閉める音と共に父上は私の目の前から姿を消した。
ふぅ、と大きくため息を吐いた。これはどちらかというと安堵の息である。私はてっきり殴られるものだと想像していた。失望させてしまったか。物語に大きな変化を与えないように努力してきたつもりだが、結果を出せないのであれば無駄な時間だったようだ。きっと忍術の項目も1位と表記されていれば「さすがオレの子」と兄さんのように褒められていたやもしれない。きっと原作では褒められたのだ。つまり私はたとえ実際のサスケよりも精神的に成長をしているとしても質を考えれば劣った存在だということだ。私は父上と対面した時の正座の姿勢で居続けた。

「オレが疎ましいか」

突然、背後から兄さんの声が聞こえた。障子を開ける音もしなかったから内心では少なからず驚いたが、忍者の世界なのだから一々驚いていると疲れるので慣れた。そんな内心を察知されないように私は努めて冷静に返す。

「いや、それだとただの八つ当たりだよ」

振り向くと兄さんは写輪眼を開いて私の顔を見てきた。私はそれに慄きはしない。何故なら本心だからである。そして兄さんの背景の空は青色から茜色へと変わっていた。

「なぜオレのことを憎まない。こんなオレがいなければサスケもああ言われずに済んだかもしれないのに」

「こんな風にならないように努力はしたつもりだけど、こうなった。努力して大成する人もいる。大成しない人もいる。きっとこうなるべくしてこうなったんだよ」

「………」

まぁ、まだ諦めた訳じゃあないけどね、と私は肩を竦めて言った。

「なら、サスケがオレよりも強くなった時は『さすがオレの弟だ』と言うさ」

「いいね、それ」

「オレとサスケは唯一無二の兄弟だ。お前の越えるべき壁としてあり続けるさ」

それが兄貴ってもんだ、とイタチは寂しげに笑った。



「イタチはいるか! 出て来い、話がある!」

勢い良く玄関門を開ける音と共に聞こえる怒号。どうやら兄さんに用事があるようだ。兄さんはスッと音もなく立ち上がり玄関へ向かった。私はそのまま縁側で静かに兄さんを待っていた。別にトラブルに巻き込まれたくなかったというわけではない。多分。
続く怒号、聞き取れないほどの荒い怒鳴り声が幾つかの打撃音と共に静まった。本当に行かなくて良かった。

「止めろ、イタチ!」

そして父上の声も聞こえた。どうやらのこの騒動に終止符を打ちに出たようだ。なにごとも起きなければ良いのだが、以前感じた不穏な空気が濃くなってきているのをいま改めて感じる。
そろそろ大きなイベントが起きるのかもしれない。兄さん、父上、母上の身の安全を願いながら遅くまで修行に明け暮れることを私は決意した。



数週間が過ぎ、忍者学校のほうでは修行の成果が如実に現れたのか、忍術を除く全てに他の生徒とは差を感じ始めた。しかし、未だにチャクラの存在を感じたことはない。8時間は寝た筈なのに疲れが全然取れていないのは家にいない間は全て修行に回しているからだろう。
そんなある朝、私が縁側を歩いていると兄さんとすれ違った。

「おはようございます」

「……おはよう」

兄さんはどうやら低血圧のようだ。返事を返すのに時間が掛かる上に抑揚もない。任務が忙しいのだろう。父上とすれ違ってもお互いに朝の挨拶はなかった。もしかしたら以前の一悶着でなにかあったのかもしれない。心配であるが、家族とはいえ重大な問題は当人同士で解決するのが一番だと考えた。解決までの手助けならばするに越したことがないとは思うが、第三者が解決すれば、それは解決したつもりになっているだけであり確実にしこりは残る。そして私は自己満足には浸りたくない。故に今はなにもしない。
とはいっても肉親への挨拶は大事なことであり当然のことだ。

「おはようございます」

「ああ……おはよう」

成績表を見てから父上は中々私の目を見て話さない。理由はある程度の推測が可能だが、元いた世界の常識を持つ私から言えば嫌な現状だ。家族で否定しあうなんて求められる展開なんかじゃない。
そう思っていると、

「忍者学校のほうは……どうなんだ?」

父上はしどろもどろと私に語りかけてくれた。私はそれが嬉しくてつい張り切って答えてしまった。

「忍術はまだ進歩してませんが別の授業だと他の生徒と差を感じてます」

決して声を荒げているわけではないが、自分でも分かるほどにその声は張りがあった。

そうか、と父上が言うと、

「オレの目に焦点を当てなさい」

そういい、始めからちゃんと目を合わせていた私は父上の写輪眼に意識を飲み込まれた。



一瞬であったが意識が鈍くなるような感覚がした。そしてその直後、元に戻った。私は自宅の縁側に立っていたと記憶しているが、今現在、私は森の中にいた。木々が生い茂り、私の周りを囲んでいる。音はなにもしない。風が存在しないから葉は揺れず、枝と葉の隙間に見える細かい雲の群れも動かない。

「今のお前はオレの幻術の中にいる」

「そうですか」

「動揺しないな。まぁ、いい」

そういって父上は複雑な印を組む。知らない印の組み方の上、私の目では追いつけないほどの速度で父は指を動かす。その動きが止まった時、私の体の表面に湯気のようなものが発ちこみ始めた。一体なんであろう。父上が私に害のあることはしないだろう、と願っているが実際問題、父上の真意が分からない。そう考えていると、

「これが可視化させたチャクラだ」

「………」

言葉が出なかった。呆気に取られている私を見て父上は冷たく見下ろしている。

「もっとも、その感覚はオレがチャクラを練る際に実際に感じているものだ」

「はい」

「チャクラをどう感じるか。それは個人によって差異が生じる」

ならなぜこんなことを、と私は疑問に思った。

「チャクラを感じるということは感覚的なものだが体質にも関係が出ると研究報告にも書かれていた。もし、お前が本当にオレの子ならばきっとチャクラの感じ方も似ているのだろう」

最近、非番でも家をよく空けると母上が言ってたがもしかしたらこのことを調べていたのかもしれない。
いや、考えすぎだろう。
楽観的な思考はやめておく。今は話を聞きつつこの体を覆うチャクラを感じたい。父上はそれっきり喋らなくなった。つまり今はこの感覚を覚えろということだろう。

「お前がチャクラを扱えるようになった時、この幻術は解かれる」

「はい」

「この幻術はここで過ごした時間だけ現実でも同じ時間を消費する。忍者学校に早く行きたいのであればすぐにチャクラを扱えるようになれ」

オレは仕事がある、と言って父上の姿は消えた。同時に体を包んでいた父上のチャクラも消えた。普通ならばこんな自分にも父上は期待してくれている、と思うのだろう。私は違った。故に、心が焦り、逸る。やはりここは私がもと居た世界ではなく、容易に死ぬ可能性もあるのだ、と再確認する。これは試験だ。これが私がチャクラを得られる最後のチャンスなのだ。そして、もしチャクラを得られなければこのまま幻術の中に居続けることとなる。そうすれば発狂するか現実の体が先に朽ちる。やはりこの世界は残酷だ。やさしさと人情なんて手裏剣一枚にも劣る。
結果として私はチャクラを得た。そして幻術が解けて現実へ帰ったのは次の日の正午だった。



「やっぱりね。父さん、私と話すときはアナタのことばっかり話してるのよ」

「本当に?」

「ただ、父さん……いつもムスッとして不器用だからね」

「兄さんも同じだね。やっぱり親子だよ」

そうね、嘘がつけないのもそっくり、と母上が笑い、私も笑う。現実へと帰ってきて、チャクラを得た私は若干の余裕があった。父上にうちはの基本忍術を教えてもらったことが原因の一端でもあろう。やはり忍術、それも強そうなものを知るとワクワクするのだ。男だから。しかし、数日頑張ってみたが中々合格をもらえない。兄さんは教えてもらってすぐに出来たようだが素材が違い過ぎるとしかいえない。まぁ、いい。一歩どころか数歩も前進した気がして浮き足立ってしまっている。まぁ、これがこの世界にきて初めての余裕であった。もうしばらく浸りたい。それに、母上との会話が楽しかった。気を張らずに済むオーラが母上にはあった。だから私は緊張と焦燥の毎日から逃げるように母上と一緒にいることが多くなっていた。

「ふふ、きっとサスケは私似ね」

「え、なんで」

「だって元気で素直なのはウチじゃあ私とサスケくらいだもの」

だったらそうなのかも知れないね、と私は曖昧な笑みを浮かべた。血こそ繋がっているが、この人格はこの家系で築かれたものではない。その事実がなによりも辛かった。こちらに住み始めてもうすぐ両手の指の数に近い年月が経つ。私はこの世界に順応し、この家族にも順応した。深く考え込まないようしていたのもあるが、今にして久しぶりに目の前の女性が他人に見えた。軽い吐き気と不快感が体の内面から外へ押し出ようとするのを感じる。

「修行に行ってくるよ」

「行ってらっしゃい。頑張ってね」

私は逃げるように、されど家族に見せる歳相応の笑顔でそう告げ、家から出た。



南賀ノ神社の本堂裏には森がある。うちは一族の土地にあるので基本的にうちはの人間以外は立ち寄らない。そして祭日や集会がない限りうちはの人間も近づかない。
小高い丘の上にあるこの場所は風が良く吹き入れ、空が近い。住宅街の音も聞こえない。自然から生じる音以外は私の耳に届かない。そして神社がもつ張り詰めた空気がぞわぞわと背筋をピンとさせる。精神集中にはうってつけの修行場である。
ここで私はチャクラの修行をする。原作にもあった木登りはとても魅力的であるが今はまだそれが出来る段階ではない。確か中忍試験の件ではナルトは温泉の上に立っていた、ような気がする。地面に立ち、水に立つ。最終的には空中にも立ちそうだな、と私は苦笑する。
とりあえず、今の私がするべきことはチャクラを練る時間の短縮である。つまりはチャクラに慣れることが今日の目標だ。忍術のほうは追々、父上か兄さんにでも教えてもらう。
そしてあっという間に時間は過ぎる。


しまった。チャクラ切れで寝ていた。高い場所にいるせいか、いつもよりも月が大きく見えた。満月だ。
それにしても肌寒い。外で寝ていたからだろう。早く家に帰って母上か父上の説教を受けてあったかいごはんにありつけたいものだ。
時には兄さんに怒られるのもいいかもしれない。今まで怒られたことがなかったような気がする。そういうことがあってもいいものだ。兄弟なのだから。
それはそうとさっさと帰ろう。しかし、チャクラを使いすぎると体を酷使するのとはまた違った疲れ方をするということは勉強になった。疲労感はそれほどないのに力が入らないのである。痺れているといってもいいだろう。しかし、それでも私は南賀ノ神社の400段ほどの階段を5段飛ばしで駆け下りていく。元居た世界では出来なかったことだ。
そして一番下まで降りた私はうちは一族の商店街を通りかかって、

「今日だったのか」

なんとなく理解した。今日、うちはは滅びるのだ、と。至る所で死体が転がっている。
私は駆け寄り、脈を確かめる。ほとんどの人が死んでいる。体はまだ温かい。惨劇は始まったばかりだということなのか。それとも短期間でこれほどの人数を殺めたということか。とてつもなく後ろに向かって走り出したくなった。死にたくない。しかし、それもできない。他の人間はどうでもいいが家族は守りたい。故に、どちらにしても今考えるべきは家族の安全である。原作ではサスケ以外は全滅しているのだ。私が介入した影響で1人くらい、否、3人くらい生き残っていて欲しい。
そう願った。
自宅へ辿り着き、扉を開けようとしたとき、

「サスケッ!? 開けちゃダメッ」

「来てはならん!」

両親の声がする。まだ生きている。生きてくれている。なら私が出来る事は両親を救うだけだ。
草臥れた体に喝を入れ、扉を勢い良く抉じ開けた。そこで目にしたのはちょうど事切れた両親とそれを目の前にする兄さんであった。

「サスケ……」

兄さんが私の名前を呼んだ。久しく呼ばれていないような気がした。それが寂しいとも感じ、これはなにかの間違いであるという期待を抱かせた。
そして兄さんの目を直視していた私はぐるんと視界が一転し、影で私のことを褒めている父上、それを自らのように喜ぶ母上、いつか他愛もない話しをしていた兄さんが現れ、その兄さんが父上と母上を刺し殺す場景が映し出される。
舞台は現実へ移り、気が付けば私は地に伏していた。あれは幻術であったか。直接脳を弄られたかのような不快感が体中を駆け巡る。

「お前が望むような兄を演じ続けていた。それは俺の器を確かめる為だった」

兄さんの目、あれは普通の写輪眼なんかじゃあない。もっと凶悪ななにかだ。分からない。元より疲れきっていた体に強烈な幻術をぶつけられて体中が麻痺しているのが現状。
しかし、ここで立ち上がれなきゃ今後を望んでも無駄になりそうだ。立たなければならない。

「お前はオレの器を確かめる為の相手になる。お前もオレと同じ万華鏡写輪眼を開眼しうる者だ」

万華鏡写輪眼……兄さんが私を見ているその目か。

「万華鏡写輪眼が欲しければ、最も親しい友を殺すことだ」

「兄さんは…つまりあれだ、殺したってことだ、ね」

喉が乾燥しきっていて上手く声が出せない。緊張か、恐怖か、まぁどちらもなのだろう。今はどうでもいい。

「そのおかげでこの眼を手に入れた」

最も親しい友を殺す、か。通りで近頃の兄さんの様子がおかしいと思った。
兄さんは突如、家から飛び出て駆け出した。私も足に力を入れて追いかける。2度、3度倒れるが痛みよりも先に体が動いた。街灯に明かりが灯っていない。外はもう真っ暗だというのに。これはそのうちにうちは一族以外の警備部隊が異変に察知して近くへやってくるだろう。兄さんは塀を飛び越えた。同時に私は2組のクナイを放る。1つ目は7割の力で、2つ目は全力で。塀の頂点付近でふたつのクナイはぶつかり、弾ける。そして進行方向を変えた2つ目のクナイが兄さんの肩口へ吸い込まれるかのように進んでいくのを塀を飛び越えた私は見た。そのクナイは兄さんの刀で簡単に止められてしまった。
しかし、

「この手裏剣術、覚えていたのか」

兄さんは立ち止まって私の方を向き直った。

「正直、これ以外は覚えてない」

もっと色々教えて欲しかった、そう言外に目で語った。これが私が出来る最後の行動であった。もう気絶寸前である。兄さんが2人にも3人にも見える。

「南賀ノ神社の本堂……その右奥から7枚目の畳の下に一族秘密の集会場がある」

兄さんとの会話はこれが最後であった。


再び、あの万華鏡写輪眼とやらを見つめてしまってから気が付いたら病院だった。救助隊に拾われたようだ。四面全て真っ白な壁、真っ白なカーテン、真っ白なシーツ、なにもかもが真っ白な部屋であった。どれくらい日にちが経過したのかが分からない。次に人が来るのがどれくらい後かも分からない。ただ、いなくなってやっと気付く、というのは本当のようで、最初こそ他人としか思えなかったうちは夫妻、私の両親は本当に両親であったのだと分かった。泣きはしない。ただただ家族の喪失感に心に穴が開く思いをしただけだ。兄さんはうちは滅亡の首謀者として指名手配となった。私はその弟として色々と事情聴取を受けることとなるがずっと黙っていた。事件が起こる少し前に兄さんと他のうちはの人間とのいざこざがあったがそれに逆上して皆殺しにするほど短気な人でもあるまい。ただ、親を殺すのだからよっぽどの事情があったのだろう。今となってはどちらが悪かったか分からない。世論では兄さん1択であるが、まぁ1000人の内に1人くらい無効票を入れてもいいだろう。
しかし、うちは滅亡の原因が兄さんだったとは……。原作のサスケが殺したいっていっていた人は兄さんなのやもしれん。私の場合はとりあえず話し合いたいものだ。原作をあまり読んでいないので今後会えるかどうか分からないが、きっと会うのだろう。今のところ、その時まで生き抜くことが目標である。
私の物語、原作介入がそして始まった。そして冒頭へ戻る。

「ふ、ふざけんなッッ」

私は飛び起きると同時にそう叫んだ。波の国へ赴き、白という名の女にしか見えない男に半殺しにされた。
体中が奴の千本による切り傷に刺し傷だらけでまったくもって痛々しいものだ。あまりの痛さに気絶してしまった。
漫画の波の国編で私が覚えていること、それは概ね3つだ。1つは強い敵が現れる。2つは木登りする。最後が私にとって重大なイベントであった。それは私が写輪眼に覚醒することだ。
確か、友達を助けて覚醒する、みたいな感じだったと思う。あやふやな記憶を頼りに原作よりは親しくなっていたナルトを白の攻撃から身を持って助けた。
その結果、私はボロボロになりナルトはなんだか凄いチャクラを纏って白を撃退した。
つまり、何が言いたいかというと、私は波の国編を終えて未だに写輪眼を得ていないということだ。
死ぬかもしれない。

誤字脱字の報告をお願い致します。


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