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No.30578の一覧
[0] 早く夫婦になって欲しいなぁって妄想(戦国妖狐・一話完結)[黒いメロン](2011/11/19 18:04)
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[30578] 早く夫婦になって欲しいなぁって妄想(戦国妖狐・一話完結)
Name: 黒いメロン◆0d68d2f7 ID:fc186c6d
Date: 2011/11/19 18:04
晴々と広がる空の下、手を繋いでゆっくりと景色を楽しみながら足を進める、繋いだ手のひらに"ジワっ"と染み込むような汗の感覚。

少し気恥ずかしいが――姉弟ならば手を取り合って道を行くのは何もおかしな事では無い、春の息吹を感じて地面の下から顔を出している若芽たちを踏まぬ様にして歩く。

意味の無い殺生は好かない……それが己の利を追求する狐の闇(かたわら)の想う事であろうか?―――――いかんいかん、思考が鈍っている、自分の存在意義を疑ってはならない。

ぎゅう、自然と手を握る力が強くなる、隣にいる長髪の青年は目を瞬かせ足を止める、何処か頼り無い覇気の無い顔、顔の造形は悪くないのに漂う気だるげな雰囲気が全てを台無しにしている。

それでも世界でたった一人の大切な義弟であるのは変わりないし、家族だと素直に呼べる唯一無二の存在である、長身であるソレを見上げ……嘘は良くない、自分の身長が異常に低いだけだ。

青々とした空を見上げ、流れゆく雲に目を細める、義弟……迅火もこちらの視線を追うようにして空を見上げる、その動きも鈍間でいて怠惰、髪を掻き上げながら口をモゴモゴと意味も無く動かす。

「姉上?」

意味も無く口を動かした果てに呆れた様な口調、しかしその顔には優しげな笑みが浮かんでいる、何処か人を安心させるような邪気の無い笑顔、自惚れで無ければソレを一番見ているのは紛れも無く自分だろう。

それが『人』に対しては決して向けられない事に少しだけ悲しみを感じる、しかしそれもまた時間と出会いが解決してくれるであろうと自分を納得させる。

「見ろ」

天を指さす、高い位置で鳥が意味も鳴く声を上げて旋回している、くるくる、くるくるくる、暫しソレを大人しく見上げていた迅火は『はぁ』と感情を含まない気だるげな返事をする。

「あれだけ広大な空を自由気ままに飛ぶ鳥ですら、円を描く、輪を求める、鳥ですら出来るのだから人と闇で出来ぬ道理など無いだろう」

「何だか取って付けた様な言い分ですねぇ」

「まさに、今、適当にでっち上げたのだからな」

「姉上の才にいやはや、感服するばかりです、ははっ」

引っ張るように手を引くと少し前のめりになりながら迅火は黙って従う、そこそこの冗談だったのだが気の無い返事で粉砕された、木端微塵だ。

少しだけ不機嫌そうに鼻を鳴らすが自然と"にんまり"と笑顔になってしまう、気付かれていないだろうかと少しだけ不安になるが、家族の間に隠し事があるのも如何なものか?

迅火に問い掛けようとして口を開くが、モゴモゴ、先程の迅火のように意味も無く口を動かし、閉じる………迅火の経験や感性は闇(かたわら)の自分よりもより闇に近い。

問い掛けても意味が無いと思い直す、中々に手のかかる弟だがソレすらも好ましく思ってしまうのは姉の贔屓目なのだろうか?ピコピコと耳が嬉しげに揺れる、しっかりしろおれ。

「そのような言(げん)で人を騙すのですか?」

歩き疲れたので小高い丘の上にある大きな木の根の上で寄り添って飯を食らう、頬に付いた米粒を親指で取りながら急に迅火がそのような問い掛けをして来た。

迅火の膝の上はかたくて骨ばっているが何故か落ち着く、その上でにぎり飯をモグモグと食べていたおれはその言葉に首を傾げる、暫しの後、『ああ』と納得する。

先程の冗談で輪について論じた事か……もぐもぐ、ごくり、やはりにぎり飯は美味しいなと別の事を思いながら黙って頷く、騙すと言う表現が些か気に食わぬが自分でもわかっている。

「人は言葉を通じて仲良くなるではないか、おれはそう思う」

「さて、ぼくは……"私"は人嫌いなもので、興味がありません」

「おれが思うにそろそろ定めても良いんじゃないか?」

「はぁ」

一人称が『ぼく』なのか『私』なのかいまいち安定しない、出会って暫くして感じた違和感はソレだった……人と闇(かたわら)の間でフラフラとさ迷っている迅火は足元が危ういように感じる、精神的な意味でだが――どうにも、落ち着かない。

自然と目で追うようになってしまう、年下の弟がフラフラと危うげに歩いているのだ……姉としては放っておけない、その事を口にしたらいつもの笑みで軽く受け流されそうだ。

「自分では無意識なんですが、成程、姉上に言われれば私と言ったりぼくと言ったりして、ムカつきますね」

「じ、自分の事だろう、ま、まあ、どちらにせよ、何にせよ、小さな事だ」

戸惑いから言葉が乱れてしまう。

「ですね」

モグモグ、姉弟揃って飯を食う、何となく、これが『幸福』なのだろうなと思う、迅火がどのように感じていようがおれはおれでそう思う、そう感じるのだ。

風が吹き抜ける、それと同時に思い出が過る、迅火の父であった源蔵との優しい思い出、自分が人を大好きになった瞬間、あの時もこうやって寄り添ってにぎり飯を食らった。

その内、屋敷に招いてくれて、毬で遊んでくれて、ずっと、ずっと寄り添って生きた――迅火は嫌がるかも知れないが、源蔵と迅火は似ている、見た目や雰囲気では無く、根底にあるもの。

……迅火の場合、その出生と境遇のせいか多少歪んでしまっているが……それもまた、小さな事だ。

「姉上?」

「しかし、今回の行く先は遠い、多少疲れた」

誤魔化すように矢継ぎ早に言葉を紡ぐ、変な所で感の良い迅火の事だ――おれが己が父との記憶を懐かしんでいた事などすぐに気付いてしまうだろう。

別に気付かれても良いのだが……どうしてだろう、胸の奥にズキッと刺す様な痛みを覚える、どうしてか、素直に口にするのがいけない事のように思えてしまう。

「ほう、では」

「んなっーー!?」

「人の世では愛しい娘に男性がこのようにすると聞いたのですが、違いましたか?お姫様抱っこと俗に言うらしいのですが……この場合は妖狐様抱っこでしょうか」

はははっ、笑う、軽々と持ち上げられた!体を捻らせて逃げようとするが迅火の細腕はビクともしない、鉄のような強度を持って自分に絡み付いている。

ぜーはーぜーはー、暫しの後に息を整え諦める、妙な所で頑固な迅火、自分が抵抗する姿を目を細めて観察していたようだし……悪趣味だ、だから素直に従う道を取る。

「姉上は軽くて暖かいですね」

「…………そうか、次、断りも無しに同じ事をしたら顔面をぶん殴る」

「成程、それが噂に聞く夫婦喧嘩ですね」

「違う、姉弟喧嘩だ!」

口調を荒げてもにっこりと笑顔で返されるだけ、不毛だ…………それに、迅火の笑顔を見ていたら自分の自尊心を多少傷つけてでも弟が喜ぶのならと……好きにやらせても良いかなと思ってしまう。

今までに感じた事の無い感情だ、恐らく源蔵にも感じた事の無い不思議な感情――だけれど、嫌では無い、その証拠に耳がピコピコと嬉しそうにリズムを刻んでいる。

「姉上、今日も良い天気ですねぇ」

「……ああ、そうだな」

優しく細められた色の違う左右の瞳、それが人と闇(かたわら)の未来を暗示しているようで、おれはキレイだと素直に感じた。







新刊見てたら悲しくてうがーと書いてしまったのでー、早く結婚して下さい、姉弟で幸せになって下さい、ドロヘドロのニカイドウとカイマンもさっさと結婚して下さい、パートナー関係から恋仲パターンが好きなのです。


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