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No.30271の一覧
[0] 【東方紅魔館】 悪魔のような吸血鬼[豆腐](2011/10/25 15:30)
[1] 01-1[豆腐](2011/10/26 14:01)
[2] 01-2[豆腐](2011/10/28 13:24)
[3] 01-5[豆腐](2012/03/09 11:18)
[4] 02[豆腐](2011/11/26 11:53)
[5] 02-1[豆腐](2011/11/26 11:54)
[6] 02-5[豆腐](2011/12/06 14:37)
[7] 03[豆腐](2012/01/18 11:29)
[8] 04[豆腐](2012/02/10 12:36)
[9] 04-1[豆腐](2012/02/10 12:37)
[10] 04-2[豆腐](2012/02/15 14:29)
[11] 05[豆腐](2012/03/09 11:23)
[12] 05-1[豆腐](2012/03/13 13:24)
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[30271] 03
Name: 豆腐◆4185b71f ID:e7b10c20 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/01/18 11:29
「さ、そろそろ行きましょう。ずっと同じ場所に居続けると持ち主さんに悪いわ」

 そう言って私と妹は長らく使われていないであろう物置小屋の扉を開けた。中とは違い、清んだ空気が私の肺を刺激する。時季は春となった。その内夏が来て、秋が来るだろう。本当に楽しみだ。私は次の居場所を何処にするか考えながら外へと出て行った。

「秋静葉様と秋穣子様ですね?」

 外に出て背伸びをし、さぁ歩き出そうとした所で突然後ろから声を掛けられた。私達が振り返ると、そこにはメイド服を着込んだ妖精が一人立っていた。

「そうだけど……貴方は誰?」

「失礼しました。私はアルフォンツ・スカーレット様に仕えている、ただのメイドです。当主様の命により、お二方を探しておりました」

 そう言うと妖精はその場で方膝を付き、こちらに頭を下げて来た。……意味が分からない。私と穣子が顔を見合わせていると、妖精は立ち上がり、しばらくここで待っていて欲しいと言って来た。妖精は少し私達から離れると服の中から筒状の物を取り出し、地面にそれを設置し始めた。そして妖精がそれに何かをすると、ポシュッ!という小さな音と共に光の弾が空へと舞い上がった。光の弾は一定の高さまで上昇すると、その場に滞空し、光を放ち続けた。

 その数分後、私達の周りには五十人以上のメイド服を着た妖精達が集まって居た。初めは一人二人と増えて行くだけだったが、時間が経つに連れて次々と妖精達の来るペースが上がった。そして最後に彼等がやって来た。

 日傘を差して降りて来る三つの影。それは多数の妖精を待たせているにも関わらず、早くも無く遅くも無い、実に優雅なスピードで降りて来た。妖精達は自分達の真ん中を空け、跪いてそれを出迎える。彼等は地面に降り立つと、真ん中に立っていた男が私達に一礼し、近付いて来た。

「お初にお目に掛かります。私はアルフォンツ・スカーレット。吸血鬼です」

 吸血鬼!!それを聞いた瞬間、私は自分の顔が強張るのを自覚した。吸血鬼といえば悪魔でも上位に入る種族。落ちぶれた三流神とはいえ、私も神の一人だ。悪魔相手に退く訳には行かなかった。私が妹の前に立ち塞がるように動くと、穣子は後ろからそっと私の服の裾を少しだけ掴んでくれた。この子だけでも絶対に守らないといけない。

「これはご丁寧にどうも。ただ誰かと勘違いしてるんじゃない?名前を聞き間違えているとか」

 一番に考えられる理由としてはそれだ。そもそも私達に用がある吸血鬼などを想像する事が出来ない。

「紅葉を司る神、秋静葉様と、豊穣を司る神、秋穣子様と聞いております」

 私の希望は一瞬で灰となった。間違いなく私達だ。つまり彼は本当に私達に用が有って、これだけの労力を使って捜し出して来たという事になる。彼は妖精に当主と言われていた。そしてその妖精達だって異常な程に統率が取れている。一目で彼が強大な組織を従えているのが見て取れた。私の頬に一筋の汗が流れる。吸血鬼三人と妖精達の視線が私の鼓動を速くした。

「そう。それで一体何の用なの?吸血鬼に睨まれるような覚えは余り無いのだけれど」

「本日は、我等スカーレット家がお二方を信仰する事を許して貰いに参りました」

 …………は?

「え?いやいや……え?信仰?」

 彼はその場で方膝を地面に付け跪き、私達に対して臣下の礼を取って来た。それに続いて後ろに控えていた吸血鬼二人と妖精達も同じように跪いた。異常な空間だった。私はその間少し息が止まっていたと思う。吸血鬼が三人も。しかも当主が、私達の前で頭を下げている。その状況が信じられなかった。

「えっと……いや、貴方本気?別に私達を信仰しても宝玉とかは手に入らないわよ?」

「我等の信仰を許して頂ける。それだけで望外の極みです」

 彼は頭を下げたまま、そう言って来た。どうやら本気のようだ。私の疑問はますます深まるだけだったが。

「はぁ……まぁ信仰は個人の自由だし、私達が決める事でもないんだけど、もしそれでもしてくれると言うのなら嬉しいわ」

「ありがたきお言葉、感謝致します。僭越では御座いますが、奉納品を持参して参りました。御受け取り下さい」

 彼がそう言うと、後ろに居た妖精達が幾つかの箱を持って来た。随分と手際の良い事だこと。……しかし吸血鬼の奉納品か。ありがたいが、中身が全部血液とかだったらどうしようかしら。そんな事を思いながら私が箱を見ていると、妖精達が箱の蓋を開けた。

 目が眩むとはこの事なのか。箱の中に入っていたのは金銀財宝は元より、余り工芸品に詳しくない私でも分かる程に洗練された一品達も入っていた。多数の妖怪を従える一級神に献上してもおかしくない代物だ。これを私達に捧げると言うのか?道理がまるで分からない。

「こ、これを私達に?全部?」

 信じられなかった私は改めて口に出して聞いてしまった。だって幾ら考えても分からない。私達を信仰しても彼のメリットなど何処にも無いのだ。私は完全に混乱していた。

「はい。何分急を要した事ですので、今回の分はあくまでも手付です。また後日改めて正式な献上品を持参して参りますので、今日の所は何卒これにてご容赦下さい。勿論、その後の定期的な奉納もさせて頂きますのでご安心を」

 頭を下げて言う彼の言葉の意味がまるで分からなかった。これで手付?一体これだけの財を手に入れるのに私達では何十年と掛かる事だろう。私の頭の中は真っ白となった。

「え、ちょっと待って、ちょっと待って!!……もう一度聞くわ。私達を信仰しても宝は手に入らないし、貴方達の加護も出来ない。強い妖怪も別に従えてないし、私達自身も強くない。そんな私達なのに、これをくれると言うの?」

「そうです」

「まさか実験体か何かにしようとかしてる?」

「とんでもない」

 もう何がなんだか分からない。出来る事なら頭を両手で抱えて唸りながら、地面をゴロゴロと転がり回りたかった。

「あぁ、言い忘れておりました。お二人の社(やしろ)が無いと聞き及びましたので、人里の隣りに本社の方を作っております。勿論人間の許可は取り付けてあるのでご心配無く。多分もう出来上がる頃でしょう」

 私は地面を転がった。



―――――――――――――――――――――――――――



 引っ越して来て三日目。今度は人里へと挨拶に行きました。何でも今日行く人里は、幻想卿内で唯一の人里らしいです。こりゃ本気で気合入れてかないとな。人間マジ怖い。妖怪は一度殺せば終わるんだけど、人間の場合一人殺すと次の日には数十人は来るからな。どういう精神構造をしているのかまるで分からん。ほんの十年近く放っといただけで、人口爆発的に増えるし。実際俺の周りの吸血鬼達も、妖怪に殺されるのと、人間に殺されるの半々くらいでした。だから俺は遠くの奴はまだしも、近場の人間達とは友好関係を築くのがモットーだった。仲良くしておくと凄腕のハンターが来た時とかに、チラッと教えてくれたりするし。

 そんな訳で何時も通りの土下座外交を行った結果、何とか友好関係を築く事に成功しました。それにしても里の守護者は怖かった。最初物凄い睨まれて泣きそうになったよ。まぁ最終的には警戒しつつも受け入れてくれたので大丈夫だろう。別に里なんて荒らす気無いし。

 その数日後、里の中を買出しの為にダラダラと歩いていると、人間達がとんでもない話をしているのを聞いてしまった。

 何でもこの幻想卿には紅葉を司る神と、豊穣を司る神が居るらしい。何それ?それって居るだけで補給線の心配が無くなるって事?マジやべぇ。チートって所の話じゃねぇぞ。俺はさっそく館へと帰って緊急会議を開いた。

 全員を集めた会議の中で、俺はこの二人の神を自陣営に引き込む事を発表した。悪魔が神を仲間に入れるなど前代未聞だとレミリアとパチェリーが反対したが、俺が補給線ヤベェみたいな事を話すと、二人は顔を近付けてボソボソと何かを話し始めた。

 何とかしてこの二人の了承は取り付けないとな。何と言ってもこの二人こそが、この紅魔館の財政運営担当大臣にして仕分け人だからだ。俺なんて当主なのに小遣い制なんだぜ?あー、早く当主の座をレミリアかフランに譲りてぇー。まぁその作戦は着々と進行しているのだが。むしろその為に美鈴と咲夜さんを二人に就けたと言っても過言では無い。

 結局この日は情報が少な過ぎるという事で解散になってしまった。しかし俺は諦めるつもりは毛頭無い。数日後、情報が集まった我々は再度会議を開いた。

「それでお兄様。二人を引き込むと仰られましたが、具体的にはどうするおつもりなのですか?」

 うん、会議っていうか異端審問だったね。さっきからずっと俺への質問攻めしか行われてないの。

「相手は神だ。無論信仰するという形になるだろう」

「それは屈服するという風に捉えても宜しいのですか?」

「そうでは無い。協調歩行を取るという事だ」

「しかし信仰という事は頭を下げるという事では?」

 ヤバいな。レミリアめっちゃ怒ってるよ。殺されちゃう。しかしここで折れる訳には行かない。妹の豊穣は勿論それだけでチートだが、姉の紅葉も更にヤバい。食欲の秋とは良く言った物だが、この二人が姉妹ってのも良く出来ている物だな。紅葉とは秋の事。秋は実りの季節だが、その秋を姉が支配している。つまりこの二人がその気になれば冬の間でも強制的に秋にして、そこに実りを作る事が出来るという訳だ。ウチの姉妹も大概だが、彼女等は一人でも強いが、くっつくと更に強くなるというタイプだな。

 文明が進歩したせいで、今や宿無しの生活となってしまったみたいだが、そのポテンシャルは計り知れない物が有る。大体どんなに文明が進歩して、天気の見方や農薬が分かるようになったと言っても、予想外の出来事も有るのだ。そんな時に彼女達の力はとても頼りになるだろう。

 まぁレミリアとしては何(いず)れ西洋に戻るつもりだから要らないと言ってるんだろうが、俺としてはここに永住するつもりなので彼女達の力は絶対に得たい。幻想郷は何か知らないけど、物凄い文明が古いのだ。電子機器とか全然無い。というか何でこの時代なのに、この二人が敬われてないのかまるで意味が分からん。俺なら土下座して住んで貰うけどな。

 後は単純に神に対して頭を下げるってのが嫌なんだろうな。レミリア自身もこの二人の能力に関しては先程認めていた。つまり俺がしなければならないのは、この二人の凄さを伝えるのでは無く、何とかしてレミリアの心に折り合いを付けて貰えるように話を進めれば良いのだ。

「確かに私とて神は好かん。しかし今回の神はあの十字架では無い。更に聞く所に寄ると東方の神は八百万も居るらしい。一神教の奴等が聞いたら何と言うかな。今回はその八百万分の二に歩み寄るだけだ。その二人だけ。他の奴等は捨て置け。それとも我が妹は四百万分の一の誤差すら我慢出来ない完璧主義者だったのかな?」

「……吸血鬼とは常に完璧で有るべきです」

「吸血鬼が完璧と言うのなら、何故頭を吹っ飛ばされたくらいで死ぬのかね?」

「……我々は悪魔です。私は天地創造の頃からのライバルに膝を折るような真似はしたくない」

「ハッ!あの神が一週間で世界を作ったという与太話か。神がそれ程の力を持っているのなら、今頃私達は土の中だな」

 すまんレミリア。お兄ちゃんは今心を鬼にしてます。後でケーキを一杯食べさせてあげるから簡便しておくれ。しかし流石のレミリアもこの「秘技!論点ズラシ作戦!!」には成す術が無いようだな。長年口先だけで戦って来た俺だからこそ使える技。一見関連性が有るが、実は全く関係無い事を言っているので、相手からすれば一々答える言葉を一から考えねばならず、無駄に時間を食って何だか負けているような気分になるのだ。

「話が随分とズレてしまっているようだから、私の方からも質問したいんだけど大丈夫?」

 パチュリーが手を上げてそう言って来る。マズいな……パッチェさんにこの方法は通じない。下手をすると俺の質問には答えてくれず、自分の質問だけを延々として来る「キャッチボール否定型」を取って来る可能性すら有るのだ。気合を入れないと……。俺が発言を促すと、彼女は椅子から立ち上がり発言を始めた。

「話を元に戻すけど……結局私達が、この二人に頭を下げると言う事よね?」

 そう言いつつ彼女は秋姉妹の写真を指差している。

「心情的には違うが……まぁ傍から見ればそうなる」

「他の人からすれば、それが大事なんじゃない?」

「それをする価値は無いと?」

「ハッキリ言ってしまえば。ご主人様はそれをする価値が有ると考えているのかしら?」

「勿論有る」

 俺がそう答えると、パチュリーはまたしてもレミリアに近付いて何かをボソボソと喋り合っている。俺は仕方なく紅茶を飲んで周りを見渡すと、フランや美鈴、咲夜さんに小悪魔といったメンツは、最早普通にリラックスしていた。用意されていたケーキを突付いて遊んだり、紅茶の香りを楽しんだりしている。まぁ基本的にこのメンバー達は余程の事が無い限り、決められた事には反対しませんよっていうスタンスが多いので、この風景も何時もの事なのだが。

「それで?頭を下げた後は一体どうするの?」

 何時の間にか話し終えていたパチュリーがまた会話を再開する。

「……彼女達は宿が無いそうだ。無論神社と言った本拠地もな。だからこそ、それをこちらで建ててやろうと思う。人里の隣りに。無論管理もこちらで行う。当面の間は妖精メイドを交代で派遣する。人里には既に私の方から許可を取り付けておいた。後はこれにサインさえしてくれれば、直ぐにでも計画に移る事が出来るだろう」

 俺はそう言いつつパチュリーに見積書を渡した。

 パラパラとパチュリーが書類の中に目を通して行く。レミリアも後ろから覗き込んでいるようだ。この書類は絶対に通したい計画だ。何と言っても俺はレミリアかフランを後継者にして、紅魔館が幻想郷から去った後もここに残るつもりなのだから。その時に彼女達の住まいが無いでは困るのだ。建てるだけでは無くて、早々の内に専門のメイド部隊も作ってしまいたい。無論金銭的な援助は恒久的に行って貰わなければならないだろうが、もし本国で何か有った場合に援助するという風にしておけば、保険的な意味合いで許されるだろう。俺が心の中で祈りながら待っていると、パチュリーが最後の紙を見終わった。

「驚いたわ。随分細かい事まで考えているようね」

 当然だ。この数日間徹夜して作った力作だからな。

「それにしても……フフッ、なる程。やっぱりそういう事なのね。ご主人様も悪い人。良いわ。パチュリー・ノーレッジの名において、この計画を許可します」

 そう言うとパチュリーはその場でその書類にサインした。ん?何?何がどうした?意味が分からんが、まぁサインしてくれたのならそれで良いか。気が変わらない内にさっさと済ませよう。俺は直ぐに妖精メイドを呼び、計画の実行を命令した。俺がそれを行っている間もレミリアとパチュリーは二人でボソボソと何かを囁き合っている。結局あれは何だったんだろう。……ま、良いか。良ぉーし!!これでまたお兄ちゃん隠居計画が一歩前に進んだぜ!!


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