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No.30271の一覧
[0] 【東方紅魔館】 悪魔のような吸血鬼[豆腐](2011/10/25 15:30)
[1] 01-1[豆腐](2011/10/26 14:01)
[2] 01-2[豆腐](2011/10/28 13:24)
[3] 01-5[豆腐](2012/03/09 11:18)
[4] 02[豆腐](2011/11/26 11:53)
[5] 02-1[豆腐](2011/11/26 11:54)
[6] 02-5[豆腐](2011/12/06 14:37)
[7] 03[豆腐](2012/01/18 11:29)
[8] 04[豆腐](2012/02/10 12:36)
[9] 04-1[豆腐](2012/02/10 12:37)
[10] 04-2[豆腐](2012/02/15 14:29)
[11] 05[豆腐](2012/03/09 11:23)
[12] 05-1[豆腐](2012/03/13 13:24)
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[30271] 01-2
Name: 豆腐◆4185b71f ID:e7b10c20 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/10/28 13:24
「どうやら成功したみたいですね」

「うわー!!家の前に大きな湖があるよ!!ねねっ、お姉様も見て見て!!」

 妹のフランが大きな声を上げて窓から外を見下ろしている。気持ちは分かるが、やはりまだまだ子供ね。ここはスカーレット家の一員として手本を見せなければならない。

「はいはい、フラン落ち着きなさい。スカーレット家として恥ずかしくない佇まいを常に心掛ける事。お姉様との約束でしょ?」

「まぁまぁレミリア様。フラン様も悪気があって言ってるんじゃ無いんですから」

 相変わらず美鈴はフランに甘いわね。まぁ私も咲夜には良くして貰っているし、仕方の無い事なのかもしれないが。

「お兄様も早く早くー!!」

「あぁ。少し落ち着いてから見させて貰うよ。」

 私も咲夜も美鈴もフランの後に続いて窓に向かっていたから気付かなかったが、後ろを見ればお兄様だけはまだ椅子に座って前を見ている。ワープ酔いでもした?……有り得ないわね。咲夜でさえも平然としていた先程の揺れ如きでお兄様がどうこうされる筈も無い。お兄様の行動には必ず何か意味があるのだ。一見不可解な行動を取っている時でも、結果から見れば最良の選択をしているのは何時もの事。一々驚いていたら、こちらの身が持たない。

 お兄様は西洋でも……いえ、世界でも一番の吸血鬼であると私は信じている。まさに吸血鬼の中の吸血鬼、それがお兄様だ。類稀なる身体能力と、他の追随を許さないカリスマ性。能力だけは私にもフランにも教えてくれないが、私は今でもたまに「何でも出来る程度の能力」ではないかと疑ってしまう時がある。何手先まで見通しているのか不明な程の先見性、例え自分の身に災厄が降り掛かろうとも突き進む事が出来る決断力、そして弱者の意見すらも汲み上げる公平性。お兄様に出来ない事などこの世に有るのだろうか?少なくとも私は今までにお兄様が頭を抱えて唸っているシーンなど見た事が無い。

 そのお兄様が席を立たないのだ。これはただ事では無いのが直ぐに分かった。お兄様は少しだけ首を動かして一点のみを集中して見ている。……スキマ?と言って良いのかどうかは分からないが、スキマの様な物からこちらを覗き見ている者が居た。……良く見付けたと思う。私はお兄様が見ていたからこそ分かったが、有ると分かって見ている今でさえ、私の見間違えでは無いかと思ってしまう程に存在感が無いのだ。お兄様はこれが開いた瞬間に気付いたのか?少なくともフランが声を掛ける前までに見付けていたのは間違いないだろう。お兄様は黙ってそのスキマを見ている。声を掛けるでも、立ち上がって近付くでも無く、ただ見ている。私達を待ってくれているのだ。お兄様はこの来訪者に対して、個人としてでは無く、スカーレット家として対面しようとしている。それが堪らなく嬉しかった。

 お兄様は私達を自分と同格として扱ってくれているのだ。私達を呼ばないのは、相手は卑劣にもこちらを無断で覗き見している変態野郎だ。アポイントも無い上にフランは外の様子を見るのに夢中、私達も外の様子を見に行こうとしている。相手が失礼なのだから、こちらも少しくらい待たせるという失礼な行為をしても構わない、という事なのだろう。

 正直に言うと私だって外を見たい。見たいが、しかし今は仮面を被る時だ。スカーレット家としての仮面を。

「フラン、お客様よ。ご挨拶なさい」

「えっ?……あ、うん。行こう、お姉様」

 私が声を掛けるとフランも直ぐに気付いたのか小走りで戻って来てくれた。凄く可愛いが、駄目よフラン。お客人の前で走るなんてハシタないわ。後でまたお勉強ね……

 私とフランがお兄様の両隣りのやや後ろに立つと、何時もの通り咲夜が私のすぐ斜め後ろに、フランには美鈴が寄り添っている。……しばらく無言の時間が流れたが、観念したのか突然スキマが開き、その中から傘を差した女性の姿が現れた。

「ようこそ、紅魔館へ」

「あら、無断で侵入して来た私を歓迎して下さいますの?初めまして吸血鬼さん。私は八雲紫と申しますわ。一応これでもここの管理をしておりますの」

 招かれざる客は驚いた事に幻想郷の管理をしていると言って来た。正気か?この女。確かに能力は応用が利きそうだが、やはり東方の地ね。いきなり覗きとは品が知れる。

「これはどうもご親切に。私の名前はアルフォンツ・スカーレット。ここの当主をさせて貰っている。……にしても申し訳無い。ここに来る前に土地の持ち主を探したのだが見付からなくてね。やむなく無断で来させて貰った。一応結界魔法で封鎖してから来たので人的な被害は無い筈だが……ここの土地の借用金は幾らかね?」

「お金だなんてそんな物は必要ありません。幻想郷は全てを受け入れる。それはそれは残酷な話ですわ」

 お兄様は紳士的に話そうとしているのに、相手の女は何処か飄々として胡散臭い。吸血鬼に対して口調が軽過ぎる。こちらを挑発しようとしているのか。お兄様相手に無駄な事をする。

「ただ……一つルールというか守って頂きたいお願いが御座いまして」

「お願い?」

「スペルカード……人によっては弾幕ごっこと呼ぶ者もおりますが、それを守って頂きたい」

 内容を簡単に纏めると、本気の戦闘をする遊びといった所だった。なる程……悪くない案ね。擬似的に命を懸けた戦いが出来、同時に持ち得る力を衰えさせない為の訓練ともなる。平和に身を落とした連中には良い刺激となるだろう。本来ならば我々がこれに従う義理も道理も何も無いのだが、今回の旅行はあくまでも養生が目的。……まぁそれはあくまでも建て前なのだが、一時の戯れとしてこの提案を受け入れるのも悪くないとは思う。私達は別に侵略に来た訳でも戦争を吹っ掛けに来た訳でも無いのだから。

 というかお兄様は元々権力欲が少ない人だ。その気になれば世界を治める事だって出来るかもしれないのに、お兄様が望むのは私やフラン達が幸せに暮らして行ける程度の物しか欲しない。お兄様の平和に暮らしたいだけの、その行動が更にスカーレット家を神格化たらしめているとは皮肉ね。戦争は既に何度も経験したが、そのほとんどが恐怖に駆られた相手が突っ込んで来て自滅するという結果だった。お兄様が味方である私達だからこそ、こんなにも頼もしく見えるが、確かに敵側から見ればお兄様ほど不気味な存在も無いのだ。

 きっと、お兄様はこの提案を受け入れるだろう。吸血鬼としては駄目かもしれない。しかしお兄様はそんな事は気にしない。良い物は次々と採用して行くその柔軟性こそが、ここまでスカーレット家を大きくしたのだ。そもそも当主の妹の側近が人間なのだ。今更常識に囚われろという方が無理なのかもしれない。

「…………ふむ。色々考えてはみたのだが……我々にそれを守るメリットは無いように感じるが……」

 えっ!?間違いなくその瞬間、部屋の中の空気は一変した。お兄様は先程までの紳士的な対応が嘘のように、態度を崩し憮然とした対応を取っている。フランや咲夜、美鈴でさえも今の対応は予測していなかったのか、少し慌てているのが伝わって来る。

「……そうですか。それはそれは大変残念なお返事ですわ。私としましても今回のお話は―――」

 どうして?と私が考える間も無く話は先に進んで行く。確かにあの女の対応は我々を持て成すのには不適格な態度だったが、それくらいでお兄様が怒る筈も無い。お兄様には何か考えがあるのだろうか?と私が少し意識を頭の中に持っていったその瞬間、私の目の前数センチを物凄い勢いの弾丸が通過して行った。「お兄様!?」と声を上げる暇も、そちらを向く刹那さえ無かった。気付いたらお兄様は上半身だけを前にズラし、弾丸は部屋の周りに並べてあった彫像の一つを壊していた。

 その瞬間私の中に有った疑問や疑念といった感情は全て失われ、一つの感情だけが私を支配した。殺意。この女は今自分が誰に手を出したのか分かっているのか?恐らく分かっては居まい。西洋でスカーレット家と言えば子供ですら裸足で逃げ出すのだ。その当主を会談の場で暗殺しようなどとは一体どういう了見だ。殺すだけでは飽き足らない。この女の一番嫌がる未来を見付けてやろう。家族を目の前で殺す事だろうか?それとも純粋に自分が甚振(いたぶ)られる事だろうか?今から楽しみで仕方が無い。隣りではフランの腕の筋肉が少し動いているのが分かる。恐らくあの女の目を捜しているのだ。ちゃんとお姉様の分も残しおいてくれるかしら。

「咲夜、後片付けを頼む」

「はい、ご主人様」

 今か今かと待ち望んでいた私達に、一番最初に声が掛かったのは咲夜だった。咲夜は言われた通りに彫像の後片付けをし、ナイフも数本女の目の前に投げ付けていた。なる程。「後片付け」だけでは彫像に対してなのか、出来の悪い妖怪に対してなのかが分からなかったので両方にやりましたと言い訳するつもりね。ズルいわよ咲夜。自分だけ先に動いちゃうなんて。お兄様も当然それに気付いている筈だが、特に咲夜を責めはしなかった。

 その後、お兄様は意外な事に黙り通した。視線こそ女に向けている物の、会話をするでも無く、私達に指示するでも無く、ただ黙って女を見詰めていた。今お兄様は何を考えているのだろう?普通に考えれば、この女はこの場で処刑だ。まぁそれはあくまでも建て前で実際には地下に連れて行くが、どちらにしろこの女は終わりなのだ。部屋の外ではパチェも既に臨戦態勢に入っている。間違いなく勝てる布陣だ。何を思い悩む必要性が有るのか。

 ガバァ!!と音が聞こえてもおかしくないくらいの勢いでお兄様が突然立ち上がった。上体が全くブレていないという奇妙な立ち方だったので一瞬私はお兄様がそのまま女に突っ込むのではないかと思った程だ。

「どうですか、八雲さんという大事な賓客をここで立ちっ放しというのもスカーレット家としての名折れ。もしよろしければご一緒に軽い茶会でも如何でしょう?」

 そう言いながらお兄様は女に対して近付いて行く。一歩一歩優雅に、華麗に。それはここが戦場に有ると忘れさせる程に完璧な身のこなし方だった。

 瞬時に女の顔から血の気が引いて行くのが分かる。それはそうだろう。もし私があの立場に居たら無様に声を上げながら逃げ出すに違いない。自分の必殺の技が、手も無くあっさりと避けられたのだ。既に実力の違いはハッキリとしている。お兄様が何故ご自分の手であの女を殺す事に決めたのかは分からないが、これでもう勝敗は決した。本来なら私もやりたかったが、お兄様がするのなら仕方が無い。黙って女の最後を見届ける事にしよう。さようなら管理人さん。安心して死になさい。幻想郷の事は心配しなくても大丈夫よ。お兄様がきっと数倍……いえ、数十倍は良くして下さるでしょうから。

 女は諦めきれないのか、お兄様の足に向かって弾丸を発射する。無駄な事を。私は咲夜にでも紅茶を頼もうかと思った次の瞬間、お兄様は地面に倒れこんだ。何が起こった?女は呆然として立っている。いや先程とは変わっている部分がある。服だ。服の胸元が大きく破かれている。そして無くなった部分はお兄様が持っている。状況から見てお兄様が破ったのには違いないが、私はその意味が分からなかった。女が急いでスキマを開いたので私が代わりに殺そうかとも思ったが、お兄様が殺らなかったのだ。状況が分からない中で勝手な行動を取る訳には行かない。女は這這(ほうほう)の体で逃げ出していった。





 ……………………





 女が居なくなった後、沈黙がその場を支配する。お兄様は何故か女が消えた後も、スキマが有った場所を黙って見続けている。誰も言葉を発しない。発せないのだ。しばらくするとお兄様はゆっくりとだが、こちらに向き直る。私達はお兄様からの声を貰う為に全員が黙っている。お兄様はこちらを見渡した後、何故かしばらく目を瞑り何かを考えていた。が、またゆっくりと目を開くと右手を握り頭に当て「てへ♪失敗失敗☆」と言い出した。

 瞬間、部屋の中は固まった。何が起きているのか分からなかった。質問がしたいが完全に頭の中がパニックになってしまっている。何て言えば良いのか分からないのだ。気付けばお兄様が足早に部屋を出て行かれる瞬間だった。扉を開けるとパチェと小悪魔が居た。お兄様は一瞬だけパチェと視線を合わせると、やはり直ぐさまその場を後にした。

「え……と、今のは一体何だったんですかね……?」

 美鈴が何とか声を上げるが、そんなのは私が知りたいくらいだ。結局誰も返事する事は出来なかった。その後パチェと小悪魔が部屋に入って来たが、パチェの話によると、廊下を歩いて行くお兄様は随分と肩を落としている様子だったらしい。失敗、帰り際に肩を落とす、そして先程のお兄様の不可解な態度。この三つから導き出せる答えは少なかったので、落ち着いて考えてみれば直ぐに分かった。

 まず失敗だ。これはお兄様が肩を落としていた事についても繋がってくるのだが、当然失敗とは先の会談の件についてだろう。結果から見れば、相手がお兄様を暗殺しようとして失敗し、更にお兄様にビビッて逃げ出したという事だが、これがお兄様にとって失敗だったという事だ。また皆の意見を聞いてみた所、やはりあのスペルカードという提案を蹴ったのは誰も予想だにしていなかったらしい。確かに余り良い気はしないが、別に遊びに来たんだし、一時の戯れとしてなら良っか。それに平和主義的なお兄様なら喜びそうな意見だよね!!というのが大方の予想であった。

 空気が一変したのはこの提案をお兄様が蹴ってからだ。そしてその結果起こった一連の事態が失敗だとすると、お兄様はやはりこの意見を受け入れたかったのだろうと思う。では何故蹴ったのか。その答えはお兄様の態度に有った。あの提案を蹴った時、お兄様は突然態度を崩された。お兄様が公式の場で態度を露わにするのは本当に珍しい。勿論そんな事はあの女は知らなかっただろうが、結果として女は交渉を諦め暗殺という手段に打って出て来た。普段のお兄様を知っている私達だからこそ分かる。あれは女を挑発していたのだ。わざわざ態勢を崩して肘を付き頭を乗せ、足を組んでみせる。無意識にあの女はこう思っただろう。やるなら今がチャンスだと。

 そして放たれた必殺の一撃。しかしそれはお兄様の予想を遥かに下回る攻撃だったに違いない。お兄様は落胆した。お兄様は間違いなく、あのスペルカードという概念に興味を覚えた筈だ。それは間違いない。だからこそ、あの女の実力を試したかったのだ。西洋で戦争の日々に明け暮れていた私達だからこそ言える事が有る。力無き正義に名分無し。正義とは力有る者が振りかざす事によって初めてその価値が出る。例えどんなに正しい事を言っていたとしても、悪がちょっとやって来ただけで殺されるようでは話にもならないのだ。だからこそお兄様はあえてこの提案を蹴った。自分が悪と仮定する為に。

 その結果がこれだ。最初の一撃はあっさりと躱(かわ)され、二撃目は撃つのが遅過ぎた。それを分からせる為にわざと服を破いたのだろう。私がその気なら今頃お前は死んでいたのだぞ、と言う為に。しかし女は有ろう事か恐怖に駆られ逃げ出すという行動に出てしまった。勿論逃げ出すという選択は間違いではない。意味も分からず突っ込んで行くよりかは何倍も良い。だからこそお兄様も追撃せずに見逃したのだろう。

 しかしそれはお兄様の望む物では無かった。彼女もまた、今まで見て来たような力無き正義で有った。だからこそ落胆した。悲しくなった。そしてちょっとやり過ぎてしまったと思ったのかもしれない。確かにお兄様は強過ぎるので、加減してやったとしてもこれだ。女の方からしてみれば、本当に恐怖以外の何物でも無かったであろう。命の危険すら感じたかもしれない。だからこその失敗だった。やり過ぎてしまった自分への。

 そしてここで更に自分への失敗に気付いてしまったのだ。今回の旅の目的はあくまでも養生。少なくともお兄様はそう思っている。だからこそいきなりの戦闘行為にしまったと思ったのだろう。ついやってしまったが、指標となるべき当主である自分がいきなりの違反。とは言え既に手遅れだ。やってしまった事は元には戻せない。そこでお兄様は考えた。そして出て来たのが最後の行動だ。

 私達の目的は養生でも何でも無いので、特に戦闘行為に対しても何も気に止めていなかったが、もしそれに対して不満を持っていたとしても、あんな行動を取られてみろ。大丈夫ですか!?と最初に声を掛けてしまっていた事だろう。全ての感情が一回頭から抜け落ちてしまっていた。まさにお兄様の目論見通り。しかし流石に恥ずかしくなったのか足早に部屋を出るも、また先程の女に対する失望と自分への反省で肩を落としたのだ。これなら一応ながら辻褄が合うし、お兄様の性格にも一致する。流石に最後の行動はお兄様も思い切ったと思うが。

 下手に尾を引くと拙いかもしれないという事で、今日のお兄様の最後の行動は皆で見なかった事にする事に決めた。それにしてもあの女が標準なのだろうか。それだけが私の気掛かりだ。


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