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No.30271の一覧
[0] 【東方紅魔館】 悪魔のような吸血鬼[豆腐](2011/10/25 15:30)
[1] 01-1[豆腐](2011/10/26 14:01)
[2] 01-2[豆腐](2011/10/28 13:24)
[3] 01-5[豆腐](2012/03/09 11:18)
[4] 02[豆腐](2011/11/26 11:53)
[5] 02-1[豆腐](2011/11/26 11:54)
[6] 02-5[豆腐](2011/12/06 14:37)
[7] 03[豆腐](2012/01/18 11:29)
[8] 04[豆腐](2012/02/10 12:36)
[9] 04-1[豆腐](2012/02/10 12:37)
[10] 04-2[豆腐](2012/02/15 14:29)
[11] 05[豆腐](2012/03/09 11:23)
[12] 05-1[豆腐](2012/03/13 13:24)
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[30271] 05
Name: 豆腐◆4185b71f ID:e7b10c20 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/09 11:23
 私は一人居間で座り考え事をしていた。妖怪の山は制圧出来た。奴等は単純に私達が怖いだけだろうが、それでも跪く事を認めたのだ。本心からでは無い信仰だが、それでも幾分かの信仰は取り戻せるだろう。力を取り戻した私達は直ぐに本分で有る人間の信仰心へと着手をし始めたのだが、ここで驚くべく事態と遭遇してしまった。

 既に人間の里には確固とした信仰心が確立されてしまっていたのだ。そこに新規参入の入り込む余地は無く、私達は完全に二の足を踏む事となってしまった。博麗の巫女と秋姉妹を中心とした信仰。これが今現在、人間の里を支配している二大信仰だった。

 無論私達も馬鹿では無い。引越しをするにあたって前もって幻想郷の事は調べておいた。私が調べた時には間違いなくこんな信仰は行われていなかった筈なのだ。確かに移るにしても色々と準備が必要だったので大分時間は経ってしまったが、それでもまさかここまで状況が変わっているとは思いもしなかった。

 そしてこんなにも状況を変えてしまった勢力こそがスカーレット家だった。彼等は幻想郷にやって来たかと思えば、瞬く間に変革を実施した。結果こそ時間が掛かったが、準備期間だけで見れば僅か二週間にも満たない間に全てやってしまっていたのである。腑抜けきっていた幻想郷の住民では誰もそれを止める事が出来なかった。いや、それに気付きすらしなかったのだろう。今や幻想郷を衰退させるも繁栄させるも彼等の思いのままとなっていた。

 何故妖怪の理想とされる幻想郷に人間が入り込んでいるのか。それは妖怪や神にとって人間という存在は必要不可欠な物だからだ。神は当然信仰が必要で、妖怪も自分を恐れてくれる人間が居なければ存在する意義を失ってしまう。だからこそ、幻想郷の管理者である八雲紫も人間に対しては人一倍気を使っているし、わざわざ殺してはならないという不文律まで作ってしまっている。そしてその妖怪や神にとって一番必要とされる人間を完全に掌握しているのが彼等だった。

 彼等はまず財力で人間の里に侵攻した。館一つで乗り込んで来た自分達には物資が何も無いので、余り物で構わないから食料等を売って欲しいと取引を持ち掛けたのだ。今まで内需しかなかった里は当然これに喜んで飛び付いた。蔵や倉庫で眠っていた物がキチンとした適正な値段で買われるのだ。誰も彼もが喜んで彼等に物を売った。

 彼等は次に秋姉妹を祭った神社を里の横に作らせて欲しいとお願いして来た。元々農民達の間では信仰されていた神で有ったし、費用も維持費も全て彼等持ちだったので里は普通に許可を出した。彼等は惜しげも無く金を使い、立派な神社を築き上げた。秋姉妹がそこに就任すると、彼等は直ぐに食料品を買い漁った。勿論人間の里にとっては余剰品となっている物をだ。農民の蔵は次々と空になった。そして気が付くと、農民は里で一番のお金持ちとなっていた。農民バブルが里に巻き起こった。何せ幾ら作っても彼等が買い占めてくれるのだ。農業に興味が無かった者も農業を始め、また同時に人々は毎日のように秋姉妹の下へと通い詰めた。そこに偽りの信仰心はまるで無く、誰しもが本気で豊穣を願い、神に頭を下げていた。

 これに並行して彼等は自分達の館の中に分社を築き上げた。当然分社を築いてからも、彼等の秋姉妹信仰の態度は変わらなかった。むしろ内勤の妖精メイド達も参加し始めた事で更に信仰心が増える事となった。

 この騒動に一番驚いたのは秋姉妹だった。毎日毎日使い切れない程の信仰心が自分の中に流れ込んで来る上に、朝も昼も夜も上げ膳据え膳、多数の教育の行き届いた妖精メイドが跪き、人間達も自分達を本気で信仰している。吸血鬼からは金銀きらびやかな宝飾品を贈られて、着ている服装もそれに見合った肌触りの良い一級品をめかし込んでいる。こんな事をされればどんな三流神だろうとも神としての自尊心を取り戻す事だろう。だからこそ彼女達はもはや彼等を裏切る事は出来なくなってしまった。一度味わってしまえば、その快楽は麻薬。またあの吹きだめに戻る生活なんて選択出来ない。主従の関係が何時の間にか逆転してしまった事に彼女達は気付いているのだろうか。最近ではスカーレット家に取り入ろうとする妖怪達までもが秋姉妹を信仰し始めているらしい。今や秋姉妹は幻想郷内でも最も信仰を集めている神かもしれない。

 次に彼等は大衆情報を支配した。幻想郷内における情報は天狗による新聞か、口コミでの広まりぐらいしかなかった。更に天狗は基本的に内輪でしか新聞のやり取りをせず、新聞を作る事は自己満足での意味の方が大きかった。しかし中には変わり者の天狗も少数だが居た。その中でも変わり者の筆頭で有った射命丸文を彼等は抱き込んだのだ。私も一度会ってみたが、なる程と思った。真面目で融通が利かず、更には口では何だかんだ言いつつも、本当に裏が取れないネタは書かないというポリシーを持っている彼女はまさに理想的な人物で有ったであろう。彼等は彼女以外の取材は一切受け付けない物とし、事実上彼女を専属の記者とした。これにより彼等の動向が知りたい者は全員彼女の新聞に乗り換える事となった。また彼等は彼女の新聞を高値で購入し、人間の里にもバラ撒いた。その結果彼女の知名度は向上し、他の取材もしやすくなった。

 そこに利が有れば、人は必ず付いて来る。稀に金にも力にも屈服しない変人が居るが、それですら自分にとっての信念だとか理念だとかいう曲げられない物が有るからそうしているだけなのであって、自分はどっちでも良いと思っていて、更に自分にとっては得となって帰って来るにも関わらず、わざわざそれを潰すような馬鹿などは存在しない。彼女にとっては新聞を書く事。そしてそれを人に読んで貰う事こそが生きがいなのだ。高値の購読料のお陰で、彼女は今金銭的な事を気にせずに号外を作り続けられている。彼等が大量の新聞を買い続けている間は、彼女も裏の顔を書くような事はしないだろう。彼等も当然彼女の前では裏の顔を出さないし、そういう噂も流れない。彼女もわざわざ彼等の粗を探したりはしない筈だ。

 最後に彼等は里の守護にも乗り出した。人間達がバブルを謳歌している熱気に当てられて、考え無しの弱小妖怪達が里周辺に集まり出したのだ。これを好機と捉えた彼等は直ぐに自警団を設立。里の警護へと乗り出した。人を驚かせたり、軽症を負わせたりするくらいならば見逃したが、殺したり、手足をもぎ取ってしまう等の重症の場合には彼等は絶対にそれを許さなかった。例えどんなに弱小な妖怪相手だとしても彼等は草の根分けて捜し出し、それに制裁を加えた。しかし逆に里の外での出来事に関しては、彼等は一切関知しなかった。ただし彼等は博麗神社に頼る事を積極的に推奨したのだ。農業をする為にはどうしても里の外へと出なければならない人間達は博麗の巫女を頼った。これにより人里の内部は紅魔館が、外は博麗神社が抑えているという状況になったのだ。

 当然人間達は博麗神社への賽銭と言う名の寄付金には色を付けた。誰しもが自分達の畑を一番に守って貰いたいからだ。博麗の巫女は特に生活には困っていなかったが、それでも賽銭だと言われれば、それを受け取らざるを得なかった。彼女は立場上中立を保たねばならなかったが、彼女は人間だ。お腹だって減るし、眠くもなる。博麗の巫女は何事にも動じない強い精神力を有しているというのは有名な話だが、次々と目の前に金が積み上げられた時、果たして彼女は本当に何も感じなかっただろうか?それは私には分からないが、とにかく彼女も動いた。彼女も彼等と同じく「幻想郷のルールを逸脱した妖怪は許せない」として、度が過ぎる者達に対して制裁を加えた。

 ちなみに博麗の巫女が動き出したのを確認すると、彼等は博麗神社までの道のりを全て無償で石畳の道路へと改修した。これにより更に博麗神社への寄贈品は増える事となった。

 今や人間の里は紅魔館に依存していると言っても良い。情報、経済、宗教、軍事とその全てが彼等の庇護下だった。彼等が少しでも手を捻れば人間は右へ左へ右往左往する事になるだろう。つまりは幻想郷の根本を握っているのと同じ事だ。何処の組織も彼等に手を出せなくなった。

 私はチラリと壁に掛けてある時計の針を見た。今頃は恐らく早苗が吸血鬼達を相手に、如何に自分達が素晴らしい神なのかを声高にして説法をしている頃だろう。それを頼んだのは私だが、私はそれが実際に上手く行くとは思ってはいなかった。早苗にはもう数日はそれを繰り返してもらうが、あくまでもそれは顔繋ぎの意味が大きく、私達の存在を知らしめる為だけの行動だ。それが終わったら次は私が行く番だろう。

 私は必ず彼等を跪かせてみせるつもりだ。人は平等で有って平等では無い。数千の凡人を跪かせるよりも、たった一人の天才を跪かせた方が遥かに大きい信仰心を得る事が出来るのだ。西洋だけでは飽き足らず、東方の地まで足を伸ばして来た吸血鬼の当主を跪かせたら一体どれ程の信仰心が自分の中に流れ込んで来るのだろう。秋姉妹ではその余りある力を活かす事も出来ずに、未だに小さな範囲で種を蒔いてから数日で実を付けるといった程度の事しか起こせていないらしい。そんな軟弱な神などに彼等の力は勿体無い。私が彼等を手に入れた暁には、山をも動かせる未曾有の大災害すら片手間で出来るようになるだろう。本当に楽しみだ。私は無意識に口角が釣り上がるのを我慢出来なかった。


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