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No.30220の一覧
[0] とある過負荷の大嘘憑き 禁書×めだか[昆布](2011/10/21 23:54)
[2] とある過負荷の大嘘憑き 禁書×めだか 第3章[昆布](2011/11/02 16:33)
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[30220] とある過負荷の大嘘憑き 禁書×めだか
Name: 昆布◆ef72b19c ID:fe541d86 次を表示する
Date: 2011/10/21 23:54
はじめまして昆布です。今回は駄文を投稿させて頂くことにしました。
できるだけ原作のキャラを崩壊させないようにしましたが、実際は崩壊しているかもしれません。
ちょっとした都合により球磨川には「大嘘憑き」と「却本作り」の二つの過負荷を持たせました。
誤字、脱字等あると思いますが最後までお付き合いいただけると光栄です



序章

 ここ、学園都市は東京都の約3分の1に相当する巨大都市で、総人口は約230万人、その内の約8割は学生である。さらにこの学生達は脳を開発し、超常現象を引き起こす力、いわゆる超能力と呼ばれる力を持っている。
レベルは6段階に分けられ、上から順に超能力者(レベル5)、大能力者(レベル4)、強能力者(レベル3)、異能力者(レベル2)、低能力者(レベル1)、無能力者(レベル0)と分けられ、超能力者に関しては、数は7人と少ないものの単独で軍隊と戦える程の力を備えている。
だが、無能力者は学生全体の約6割にも及び、能力によってすべてが決まるこの学園都市において能力者は優越感、無能力者は劣等感が生まれ能力者と無能力者の格差が広がっている。
下のレベルの者は上のレベルの者には勝てない―
これが学園都市における共通の認識、
 だがその認識を覆した男がいた。
彼の名前は球磨川禊―
地球上最弱にして最凶、無能力者にして不完全、『大嘘憑き(オールフィクション)』と『却本作り(ブックメーカー)』の二つの欠点(マイナス)をもつ過負荷(マイナス)である。
彼は退廃的思考、破滅願望を持ち、転校する先々の学校を潰して周りその末に仲間と来た学園都市において能力者数人を螺子伏せ、病院送りにした。その情報は「滞空回線」を辿って統括理事長、アレイスター=クロウリーに知れ渡り、彼と彼の仲間は当面の生活費などを保証する変わりに身体検査を受けさせられた。アレイスターとしてはレベルに関係なく能力者ならば研究対象が増えるなどの見込みだったのかもしれないが結果は少しも能力が発現しない無能力者だった。
 それもそのはず、球磨川禊、蝶ヶ崎蛾々丸、志布志飛沫の三人は過負荷(マイナス)なのだ、超能力などプラスの塊でしかない力などあるはずもない。そもそも過負荷なのだから無能力者にも失礼だろう。
 どういう訳か―無能力者が能力者を倒した―
という噂が学園都市中に広まった。
だが、誰がという事まではわからなかったらしく、当事者である球磨川禊はアレイスターとの交渉の結果暗部組織「マイナス」を作り上げていた。球磨川としては彼の当面の目標である『エリート抹殺計画』を進めるには学校へ通うよりも情報が集めやすい暗部組織はうってつけの場所だった。
表向きは
『僕(マイナス)にとって暗部なんてうってつけの場所じゃないか』
という理由でアレイスターの提示に二つ返事で承諾をしたがそれを信じているかどうか定かではなかった。
 アレイスターとしては彼のプランに影響さえなければどう転ばそうがどうでも良く、超能力でも魔術でもない彼らの力(マイナス)は興味深くもあった。
しかし、アレイスターは彼を、球磨川禊という男の欠点(マイナス)見誤っていた。そのせいで彼のプランに多大な影響を与えたことは当事者である球磨川禊は知る由もなかった。


第一章

 球磨川が暗部組織「マイナス」を設立してからしばらくして、いくつかの下部組織が付いていた。
理由は簡単、リーダーである球磨川禊が誰よりも弱く、誰よりも過負荷だったからである。
 人間という呼ばれる生物は優劣に付いて非常に敏感であり、これは弱肉強食というはるか昔からの世界のシステムがそうさせたのかもしれない。
人間は他人よりも優越感に浸りたいがために習い事をし、他人の失敗を表向きでは心配したり、励ましたりしながら裏では嘲笑い、喜んでいる。
そんな人間だからこそ、自分より下の人間がいれば安心する。
無能力者にとって自分よりはるか下、地球上の底辺とも呼べる位置に存在する球磨川禊は心の拠り所になった。
 そしてそこに球磨川禊は漬け込む。彼は持ち前の、良い人ぶっている奴(プラス)に限っていう仲間意識と呼ばれるものを使い、無能力者の心を過負荷(マイナス)に染め上げて行った。
 そういう努力(マイナス)もあり、球磨川率いる「マイナス」は暗部でもかなりの勢力を誇っていた。
 だが所詮無能力者の集まりには違いない。能力者率いる組織には勝ち目がなかった。何度か行われた暗部同士の小競り合いにおいて彼らは勝ったことは一度もない。
それでも彼らの結束は固かった。
『大丈夫、君達の不幸は僕が無かったことにしてあげるから』
いくら負けても、いくら傷つき、失ってもリーダーである球磨川はそう言ってその現実を虚構にしてくれた。
 球磨川禊は誰よりも仲間思いの男だった。
好きな相手と一緒に駄目になる。
愛する人と一緒に堕落する。
気に入った者と一緒に破滅を選ぶ
それが球磨川禊という男の強固(ぬる)すぎる仲間意識だった。


第2章

10月9日、「0930」事件からしばらくして遂に、本格的に『エリート抹殺計画』を始めるときが来た。
暗部組織である「ブロック」「スクール」が学園都市に反旗を翻し、これに対し「グループ」「アイテム」「メンバー」、そして「マイナス」が鎮圧に乗り出す。
だが彼ら「マイナス」はこの機に乗じて部隊を三つに分けそれぞれのリーダーは球磨川禊、蝶ヶ崎蛾々丸、志布志飛沫が務め、暗部組織であろうがなかろうがお構いなしに能力者狩りを始めた。

 球磨川禊が標的にしていたのは学園都市レベル5の序列第2位、垣根帝督率いる暗部組織「スクール」
なぜ、と問われれば垣根帝督の能力である「未元物質(ダークマター)」に興味を持ったからというのが理由といえば理由だろう。
この世に存在しない物質(素粒子)を作り出し使役する能力。
虚構を現実にする力。
球磨川の持つ「大嘘憑き」、現実を虚構にする力と逆の性質をもつ力。
超能力(プラス)と過負荷(マイナス)、不幸が幸福を凌駕する―、それを成し遂げるには垣根帝督の能力は格好の獲物だった。

 そして今、球磨川の目の前には垣根帝督が跪いている。彼らがそうなったのは少し前に遡る。

「―だから俺はこう尋ねたんだぜ。、『こういう子を知りませんか』じゃなくて、『こういう子がどこへ行ったか知りませんか』ってな―」
そういって垣根帝督は頭に花飾りのある少女を自分の障害と断定し、力を振るう。
そして少女は理解できないまま傷つき、気を失いそうになる。そんな最中、少女を救ったのが球磨川禊だった。

 二人が出会ったのは偶然だった。球磨川は「スクール」を標的にはしていたが、どこにいるかまではつかめずにいた。街中を探し回り、偶然いざこざが発生したと思ったら、そこに偶然垣根帝督がいたのだ。
少女が気を失いそうになる中、球磨川は少女のそばに行き、「大嘘憑き」を使い、彼女が傷ついたとういう現実を虚構へと変えた。
『君が帝督ちゃんだね。ダメだよ。男の子が女の子に暴力を振るうなんて』
『男の子は女の子を守らなきゃダメなんだぜ。』
『それが、ラノベ、マンガの主人公の条件だよ。』
球磨川は彼女を治した事を気にもせず、淡々と垣根に話かける。だがその態度は今の垣根のイラつかせるには十分だった。
「てめぇ、ムカつくな。
男が女を守る? 
主人公? 
笑わせんじゃねえよ。そんな甘ったれた考えでこの俺の邪魔をしやがったのか」
誰にでもわかる挑発。イラつきはしつつも相手を挑発、状況把握を優先し、目の前で何が起きたのかを考えるだけの余裕をまだ垣根は持ち合わせている。
(あのくそ野郎は何をしやがった? 傷を治した。違う、治るまでの時間が早すぎる。時間を巻き戻した。違う、そんな能力者は存在しない・・・・・・)
『あれ?』
『もしかして僕は邪魔をしちゃったのかな』 
『それは悪いことをしたね』 
『ごめんよ でも、今回は僕の顔に免じて許してくれると助かるな』
垣根が球磨川のしたことに対し、様々な見解を立てていることなど知る由もない球磨川はとぼけたような口調でさらに垣根をイラつかせる。
何かを考えているようにも見える垣根に対し球磨川は
『あ』
『もしかして、僕のしたことが理解できない?』 
『まぁ超能力者(プラス)の君には僕(マイナス)の事が理解できるはずもないよね』
とどめの一言を浴びせる。君には理解できない―、
名前もしらない奴に馬鹿にされる。これはレベル5の第2位、垣根帝督にとって侮辱そのものだった。
「ナメテやがるな。よほど愉快な死体になりてえと見える」
垣根の我慢は限界だった。一刻も早くこの目障りで不気味な雰囲気を纏っているくそ野郎を消したい。
 そして垣根は球磨川の能力について考えるのを止め、潰しにかかる。
垣根帝督の序列は第2位。第1位を除けばこの学園都市において敵はいない。それだけの力があるからこそ、敵の能力を見定める事なく戦うことができる。
そして彼の考えは半分正しい。能力が、レベルがすべてを言うこの学園都市において垣根の敵になる者は第1位以外いない。
だが半分は不正解。その考えは相手が過負荷でなければの話だ。プラスの定規でマイナスを図ることはできない。ましてやこの球磨川は混沌よりも這いよる過負荷なのだ。彼の常識が通じる相手ではない。

 垣根の能力「未元物質」により彼は太陽光を殺人光線へと変え、それにより球磨川の身体が燃え始める
『!?』
『熱っ・・・・・・』
『焼け・・・・・・』
『溶け・・・・・・る』
『早く・・・・・消さないと』
だが炎を消えるどころか、もがき苦しむ球磨川をあざ笑うかのように炎は勢いを上げ球磨川を燃やしつくす。
垣根が「未元物質」によって太陽光を殺人光線へと変えてから数分とたたない内に彼の目の前には真っ黒に焦げ、所々溶けている‘何か’が転がっていた。
「ちっ、くだらねえ事に時間使っちまった・・・・・・」
そういって垣根は目の前に転がっている‘何か’を一瞥し、その場から立ち去ろうと背を向けた時に不快で不気味な感覚を背中に浴びた。
「なっ!?」
振り向くとそこには先ほどまで‘何か’が転がっていた場所に、先ほど殺したはずの球磨川が悠然と構えていた。
『身体がいきなり燃えるなんてビックリしたよ』
『うん。やっぱり君のその力は僕の過負荷に似ている』
『だけど、僕の過負荷は、「大嘘憑き」はこんな程度じゃすまないぜ』
どこから取り出したかもわからないような巨大な螺子を両手に持ち、球磨川は垣根に近づいていく。
(胸糞わりい。この空間が螺子曲がっていくような感覚はなんだ?)
『理解できないかい?』
『なら受け入れることだよ』
『不条理を』
『理不尽を』
『嘘泣きを』
『言い訳を』
『いかがわしさを』
『インチキを』
『堕落を』
『混雑を』
『偽善を』
『偽悪を』
『不幸せを』
『不都合を』
『冤罪を』
『流れ弾を』
『見苦しさを』
『みっともなさを』
『風評を』
『密告を』
『嫉妬を』
『格差を』
『裏切りを』
『虐待を』
『巻き添えを』
『二次被害を』
『愛しい恋人のように受け入れることだ』
『そうすればきっと』
『僕(マイナス)のことが理解できるようになるよ』
 垣根は理解した。こいつは決して理解するような物ではないと。そもそも人間かどうかも定かではない。それほどこの球磨川という男は醜く、不気味で気持ちが悪かった。
『さっきの帝督ちゃんの攻撃は良く聞いたよ』
『だから、帝督ちゃんにはしっかりと‘お礼’をしなきゃね』
『僕が受けた痛みや苦しみはそこら辺にいる君とは無縁なモブキャラ達に晴らすことにしたから安心して!』
ズバッ!!鋭い音と共に垣根に襲いかかった球磨川の両腕は見事に切り落とされていた。
『いったいーい』
『うわ、血がこんなに出てる』
『なんか、頭もくらくらしてきたぞ』
『あーでも、痛みが引いてきた』
『これは治る兆しかな』
『それとも、これが死ぬ直前の状態なのかな』
 いかにも、といわんばかりに演技がかった球磨川の発言を余所に、垣根の目は先ほどとは違い球磨川を敵として認識していた。
「いいぜ、認めてやるよ。お前は俺が本気で潰してやる。ありがたく思え、この垣根帝督がわざわざ本気を出してやるんだ」
そしてその直後垣根の背後からは現れたソレはまるで天使のような白い6枚の翼の形になった。
「うわ・・・・・・」
 いつの間にか切れた両腕を元に戻していた球磨川は垣根のその姿に思わず息をのみ思わず格好つけずに括弧つけずについ本音をこぼしてしまった。
 それもそのはず、垣根はこの翼を羽ばたかせ宙に浮いていて、人類がはるか太古から夢見てきた空を飛ぶという行為をこの垣根帝督は成し遂げているのだ。端整な顔立ちの所為もありその姿はまさに天使のようで時代が時代なら崇められてもおかしくはなかった。そして垣根はこう呼ばれている
―神が住む天界の片鱗を振るう者―と。
「ここからは俺の独壇場だ。テメェの見せ場は存在しねえ」
「今の俺にてめえの常識が通用すると思うなよ」
まさしく圧倒的だった。そこにいるだけで戦わずして相手が敗北を悟れるほど、今の垣根は圧倒的で絶対的な存在だった。
『そんなメルヘンチックな翼が生えているなんて』
『垣根ちゃんは人間じゃなくて天使か何かだったんだね』
 我に返った球磨川はそんな圧倒的な存在を目の前にしても括弧をつけて格好をつける。
これこそが球磨川のアイデンティーだ。
「心配すんな。メルヘンチックってのは自覚はある」
そういって垣根は刺殺、斬殺、圧殺、抉殺、撲殺・・・・・・未元物質を使い思いつく限りの様々な方法で球磨川を殺す。
「これが『未元物質』」
「異物の混じった空間。ここはテメェの知る場所じゃねえ」
 その圧倒的な力を持って垣根は球磨川に告げる。だが球磨川は決して死なない。否、死ねないと言った方が正しいかもしれない。死んでも天国にも、地獄にも居場所がないから死ねないのではなく、彼の持つ「大嘘憑き」によって彼は死ぬことができない。
もちろん、垣根もただ殺している訳ではない。球磨川が何かの理由で死なないとわかり、それを利用して垣根は未元物質の本質を理解し、さらなる高みへと登り始めていた。
 もう何回殺したかも覚えていない、覚える必要もない。ついに垣根は未元物質の本質を理解した。垣根はそれと同時に確信した。今、この学園都市において自分は最強だと―
垣根の背に生えている翼が突如10m以上の大きさに成長する。
(感謝するぜ、くそ野郎。テメェのおかげで俺は間違いなく最強になった。)
『うん』
『参った!』
『僕の負けだよ』
垣根の進化を目の当たりにした球磨川は、突如降参を申し立てた。
『統括理事長に脅されてしかたなくやっていたけど今の帝督ちゃんの姿を見たらもう勝てないってことはわかったよ』
『どうしてかな、不思議と全然悔しくないや』
『むしろ帝督ちゃんがパワーアップしたからかな、すがすがしくも感じるよ』
『だから』
『最後に僕のお願いを聞いてほしい』
「・・・・・・お願い、だと?」
そう言いつつも垣根は球磨川の下へと降り立つ。
『さっき、統括理事長に脅されてる』
『って言ったよね』
『実は、僕の妹が人質になっているんだ』
「・・・・・・」
垣根は何も答えで球磨川に耳を傾けている。それが最強たる者の矜持。
(人質、か・・・・・・なくもねえ話だな)
『君を殺せば、妹を開放してくれると約束してくれた』
『でも』
『僕は君に勝てない』
『だから』
『妹を・・・・・・助け出して欲しいんだ!』
最後の言葉に球磨川の目からは涙が惜しみなく流れている。
それを見た垣根は最強になった暁にこの男を救ってみるのも悪くないと思ってしまった。
それが彼にとって悲惨な結果を招くとも知らずに―
垣根はさらに球磨川に近づく、手をさし延ばせる距離に、そして球磨川の螺子が垣根の身体に届く距離に
垣根は無言で球磨川に手を差し伸べる。それを見た球磨川は
『ありがとう』
涙ながらにそう一言いって垣根の手をつかみ、もう一方の手でこの世の者とは思えない残虐な笑みを浮かべながら垣根の身体に螺子を突き刺した。
「は?」
垣根は自分の身体を見る。そこには巨大な螺子が突き刺さっていた。だが、不思議と痛みは感じない。
そして突如、垣根の背に生えていた巨大な6枚の翼は跡形もなく消え去った。
『相手(ぼく)が降参したくらいで油断しないでちょうだい』
『こともあろうかこの僕と』
『スポーツか何かでもしているつもりだったの?』
思考が覚束ない―身体が別人のように怠い
『それとも』
『涙を流しながらお願いする僕に同情してくれたとか?』
(違う―俺はお前を救ってやろうと)
『だとしたら、それはいらない心配だよ』
(心配ない?―何を言っているんだ、お前の妹は・・・・・・)
『全部、嘘だから』
(嘘・・・・・・あの言葉が行動が、泣きながら助けを求めたのが嘘だっていうのか)
『あはっ』
『もしかして、信じてくれちゃったの?』
『やーだ、帝督ちゃんってお人よしー』
『それはそうと今の心境はどうかな?』
『あーまだ何がどうなったのかわからないみたいだね』
『まあ、仕方ないよね』
『今の帝督ちゃんは地球上で最も弱い僕と、肉体も精神も技術も頭脳も才能も!ぜーんぶ同じなんだから』
 その言葉に驚きつつもどこか納得がいっている。そして初めて同じ立場になってわかる。
垣根は自分のことを最低の人間と認識していた。しかしそれは間違っていた。最低で最弱なのは球磨川(俺)なのだ、と。今となってはこの戦いを見ている一般人(モブキャラ)達でさえ自分より輝いて見える。
かつて人々を圧倒し、神に近づいた垣根は、太陽に近づきすぎて翼を奪われたイカロスのように、絶望と言う名の地に堕ちた。
『さて、色々思うところもあると思うけどここで一つ提案がある』
「提案・・・・・・だと?」
『うん』
『帝督ちゃんが僕と友達になってくれるなら』
『元の強くて格好良かった帝督ちゃんに戻してあげてもいいよ』
(元に戻す・・・・・・何を言っているんだ、こいつは)
『僕達は敵同士だった。でもそんなことは些細なことだよ』
『きっとどこかで行き違いがあっただけで』
『僕達はきっと、とても仲の良い友達になれると思うんだ』
 まるで舞台役者のように一挙一動を大げさにして球磨川は語る。そして狙ってか手を差し伸べたその状態は先ほど垣根が球磨川に手を差し伸べた状態と一緒だった。
自分(垣根)ならここで救いの手を求める。それがわかっているからこその行動だった。
 しかし、その考えは、彼の常識は通用しなかった。
何もかもが球磨川と同じになっても、それは今の状態であって、決して過去までは変えられない。垣根にはあって球磨川にはない物―それは強者たる者の矜持、今まで培ってきた物のすべて、それが球磨川の誘いを断わり、殺されるかもしれない状況でも貫かなければならない彼なりの信念だった。
「俺は、お前の友達にはならない」
 はっきりと伝えた拒絶の言葉、これで殺されても垣根帝督と言う人物は最後まで自分を貫いた。
(さあ、これで煮るなり焼くなり好きにしろよ。能力が使えないんじゃ俺に勝ち目はねえ)
『んー』
『そっか、それは残念だよ』
『君とは友達になれると思っていたのに』
『じゃあ、僕は君を殺さない』
(は?・・・・・・今こいつはなんて言った)
『ここで殺したら、君が格好良いままじゃないか』
『そんなことはさせないよ』
『このまま、弱者(僕)として無様に這いつくばって生きていくといいよ』
『だけど、さすがに螺子がささったままなのは可哀相だよね』
「!?」
 そういった直後身体に刺さっていた螺子が消えた、否、感覚はまだ残っている。消えたのではなく見えなくなったのだ。
『とりあえず螺子は見えないようにしておいたから』
『じゃあね』
そう一言いって球磨川はどこかへと消えてしまった。
 そして今まで不気味な相手と戦っていた垣根はそこで糸が切れた操り人形のようにその場で倒れ、気を失ってしまった。

球磨川が垣根と戦っているのと同時刻、別の場所で別の戦いが行われていた。
 本来建物の中であるはずなのだが、鉄骨は所々むき出しになり、壁は崩れている。言うまでもまく廃墟というやつだ。辺り一面に人間がまるでゴミのように倒れている。倒れているのは彼の部下たる者たちで生きているのか、死んでいるのかもわからない。そもそも、なぜ倒れているのかさえわからない。彼には「痛み」という物が理解できない。彼の過負荷によって痛みを別の場所に移してしまう。
だからこそ、「痛み」を受けて倒れている彼らの事がわからない。
痛みを感じないなら良いじゃないか、そう言う輩もいるかもしれない。蝶ヶ崎も初めはそんな風に考えていた。
―嫌なことを避け続ければ
―痛い思いをすることなく生き続ければ
―自分はきっと誰よりも幸せになれるに決まっている
―人生から嫌なことを取り除けば
―最後には幸せだけが残るはずだ
と。だからこそ不幸(イヤナコト)を周りに押し付けて、押し付けて、押し付けて、押し付けて、押し付けて、押し付けて、押し付けて、押し付けて、押し付けて―
気が付けば彼の周りには何も無くなっていた。
無くしてから、失ってから気が付いた。
「痛み」がわからないような奴(マイナス)がどうやって幸せ(プラス)になれるのか―と。

痛みと言っても、身体的外傷、心的外傷(トラウマ)、精神抑圧(ストレス)、様々な痛みがある。痛みを知らない人間に誰が寄ってくるのだろうか、寄ってくるはずもない、痛みを知らない、という事は他人の痛みを理解できない。
寄ってくるとしてもその過負荷を研究したいとかいう人を人として扱わない研究者ぐらいだ。
それが蝶ヶ崎蛾々丸、「不慮の事故(エンカウンター)」を持つ過負荷だった。

そして蝶ヶ崎の目の前には白髪で紅眼の中性的な悪魔が目の前に立ちふさがっている。
今この場にいるのはこの二人だけ、数分前には蝶ヶ崎の周りにはたくさんの部下がいたが彼の目の前にいる悪魔によって倒された。何人かはダメージを押し付けてしまったかもしれないが、そんなことは一々数えていない。
「改めて聞くけどよォ、テメェやる気あンのか?」
一方通行にはこの男が理解できていない。殺します。と言ってきたものの襲ってきたのはそこらに倒れている連中だけで、宣言した本人は一向に手を出そうとはしない。こちらから攻撃を仕掛けても、何かの能力か知らないが全く効いている様子はなかった。
「ありますとも。仲間がやられて、ますますやる気が出ているくらいですよ」
「だったら、なんで攻めてこねェ。そこで突っ立っているだけでこの俺に勝てるとでも思ってンのか?それともビビッてそこから動けねェのか?」
「そんな安い挑発に乗るとでも思っているんですか。私は何を言われたところで私は―」
「あァ、そうだよなァ。お前みたいにトランプでも使って戦いそうな面してるような奴はこんな挑発のらねェよな・・・・・・」
挑発にのらない蝶ヶ崎をつまらないと思い、これを最後にして潰してやろうと思った一方通行だが、突如蝶ヶ崎が豹変した。
「なんっ・・・・・・で、そこまで!」
「的確に人を傷つける台詞が言えるんだよ、お前はあああああっ!!」
「言うに事欠いてまさかのトランプだと!?トランプを武器にする奴なんて現実にいるわけねーだろ!」
「俺が2次元と3次元の区別もつかねー馬鹿野郎だってのか!?」
「こんな侮辱を受けたのは初めてだ!確実に許せねえ!」
「お前は!俺が! ぶっ殺す!!」
先ほどまでの知的で紳士的な面影はない。今は暴力的で与太者のようだった。
「痛み」を知らない蝶ヶ崎は精神面がまるっきり鍛えられていない。か細く、繊細な彼の精神はいつ、どんな事で壊れるのかわからない。
「いいねェ!!やっぱ戦いはこうでなきゃなァ!!」
どういう訳か突然キレた蝶ヶ崎に一方通行は再び攻撃を浴びせる。
足元にあった石ころを軽く蹴飛ばす。だがそれに反比例して蹴られた小石はとてつもない速さで蝶ヶ崎めがけて飛んでいく。
「!!」
ゴンッ!!という鈍い音と共に蝶ヶ崎の額に小石は勢い良くぶつかる。その思いもしなかった威力に頭が吹き飛びそうになる。
だが姿勢を戻した蝶ヶ崎の額には傷一つなかった。今もポケットに手を入れたまま不敵な笑みを浮かべている。
(やっぱり無傷か・・・・・・反射でもねェみてェだし、どォなってやがる)
「!?」
轟!!というすさまじい音と共に、考えている一方通行に突如建物が崩壊し鉄骨が落ちてくる。一方通行に降りかかる瓦礫と鉄骨。普通の人間ならば腰を抜かすなりするかもしれないが一方通行はまるで動じない。建物が半壊し、本来下敷きになるはずだった一方通行は無傷のまま、さらに思考を巡らせる。
「まさか、建物が崩れるなんて不幸でしたね。」
「てめェ、何をした」
偶然にしてはあまりにもでき過ぎている。偶然建物が崩壊し、偶然一方通行にだけ襲いかかるなどありえない。
「私は何もしていませんよ。こんなのはただの、『不慮の事故』ですから」
「それにしても、しぶといですね。普通あれだけの物が自分に振ってきたら間違いなく即死のはずなんですが・・・・・・」
確かに間違いなく相手が普通なら即死のはずだった。
「はッ!笑わせンじゃねェよ。たったこれだけで俺を殺せると思ったのか。お前ごときに俺は殺せねェ。学園都市第1位をなめンじゃねェぞ!」
そう、この一方通行は普通ではない。学園都市最強のレベル5。「ベクトル操作」の能力をもち、ベクトルの存在するありとあらゆる物を操作することができる。核爆発が起こっても彼には生きていられる自身があるのだ。
「そちらこそわかりませんよ。学園都市最強ごときがどうしてこの『不慮の事故(エンカウンター)』を屈服させうると思うのかね」
「・・・・・・不慮の、事故だァ、なンだ、それがてめェの能力か?」
「能力?いえいえ、そんな優れているような物(プラス)ではありません。これは私の欠点(マイナス)ですよ」
蝶ヶ崎の能力は決して他人から羨まれる物ではない。彼の人として劣っている物の集大成、こそが彼の過負荷である『不慮の事故』なのだ。
一方通行は理解した。蝶ヶ崎の力は自分達の力とは違う物だと。そして蝶ヶ崎から一向に攻撃してこない理由も。
(やつが攻撃をしてこねェのはおそらく、やつに攻撃手段が存在しねェからだ。そして俺がいくら攻撃してもダメージがねェのと、さっきの建物の崩壊を考慮すれば、でてくる答えは一つ)
(―奴はダメージを任意の場所に押し付けられる―)
一方通行が蝶ヶ崎の能力を理解した頃、蝶ヶ崎も考え事をしていた。
(まさか、あれで死なないとは、さすがに学園都市1位は伊達ではありませんね。まったく、球磨川さんもよく私にこんな化物を任せたものだ。この調子じゃ志布志さんも危ないかもしれませんね。まぁ球磨川さんに至っては全く心配いりませんが・・・・・・)
「てめェの欠点がどォいう物かだいたいわかった上でもう1度言ってやる。お前に俺は殺せねェ!それを理解して尚、俺と戦おうと言うなら容赦はしねェ」
「話に聞いていたのと違いますね。あなたはもっと残虐だと聞いていたのですが」
「人ってのはな変わろうと思えば変われンだよ。俺はもう無駄に人は殺さねェ。あいつとあいつの周りの世界に脅威を為す敵は容赦なく叩き潰すがなァ」
一方通行は変わった。実験を隔て上条当麻に出会い、打ち止めに出会い、傷つき、彼女の命を助けた。そして決めたのだ。彼女のような‘闇’とは無関係の人間が巻き込まれることの無いようにしようと―
「人は変われる、ですか。いかにもプラスな考えですね。知っていますよ、過去にあなたがしたことを。まさか改心することでそれを無かったことにできるとでもお思いですか?」
その言葉に一方通行はあの時の事を思い出す。かつてレベル6になるために1万人もの妹達を殺したことを―
分かっている。決して何をしたことで1万人の妹達を殺したことはチャラにならない。だからこそ、これ以上自分と同じ境遇の人間を生み出さないために、妹達のような存在を生み出させないために変わる必要があるのだと。
「確かに、俺がかつてやったことは何をやっても償える物じゃねェ・・・・・・だがなァ、だからってそこで変わろうとしなけりゃ何も始まらねェだろォが!」
自分に似合わない説教だと思った。こういった奴を救えるのは自分ではなく自分を救ってくれたあいつ―上条当麻のような奴だということはわかっている。
蝶ヶ崎が何か言いだそうとした時、ほぼ同時に二人の電話が鳴る。そして思わぬ形で戦いは幕を閉じることになる。
「・・・・・何か用ですか球磨川さん?」
『やっほー、蛾々丸ちゃん。そっちに飛沫ちゃんいない?』
「は?・・・・・・いませんけど、本人に直接電話すればいいじゃないですか」
『それがさー、何回かかけたんだけどつながらないんだよね』
『もしかして死んじゃったのかなー』
『なんて思っちゃったから心配なんだよね』
『ほら』
『僕の「大嘘憑き」は対象者が近くにいないと使えないからさ』
『もし殺されて、処分されちゃうと僕でもどうしようもないんだよね』
『と言うわけで』
『飛沫ちゃん探すの手伝って』
『じゃあ、見つけたら連絡ちょうだい』
「ちょっ・・・・・・球磨川さん!?」
・・・・・・
はぁ、と溜息。
「もうしわけありませんが、急用ができてしまいました。そういう訳でこの辺で失礼させていただきます。」
そういって部下を置き去りにして、いつの間にかもとに戻っていた蝶ヶ崎はどこかへ行ってしまった。
一方通行はその後ろ姿が見えなくなる前に電極のスイッチをoffにしてこちらも別の場所に移動する。
電話の相手は土御門からで、第2位がやられた。とのことだ。そのことで何やら話があるとのことらしい。おそらく上から指示が出たのだと理解できた。そして第2位をやったのは恐らく先ほどまで戦っていた奴の仲間だという事も想像がついた。
両者別の理由により戦闘が呆気なく幕を閉じる。そしてそこには倒れている人々のみがとりのこされていた。


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