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No.30039の一覧
[0] 史上最萌の侵略者 (ウル〇ラマン パロディ)[羽](2011/10/07 01:04)
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[30039] 史上最萌の侵略者 (ウル〇ラマン パロディ)
Name: 羽◆acd714cc ID:49b7ad8f
Date: 2011/10/07 01:04


地球は狙われている!

古いアニメの文句ではないが、大宇宙規模的な立場から俯瞰しても、それは厳然たる事実であった。

端的に言ってしまえば、安定して生命を育める壮年期の惑星というものは、銀河系を見渡しても数えるほどしか存在しないからだ。

銀河に輝く青い宝石。

初めて地球を訪れた際、先人たちの感慨は誇張表現ではないのだと、私はしみじみ感じ入ったものだ。

閑話休題。

ここでは『事実であった』と過去形で語ったことにこそ注目してもらいたい。

なぜなら、私も含めた先達たちが、文字通り身命を賭して地球と人類を護ってきたからだ。

賢明なる読者の方々は薄々察しておられることだろう。

そう。私は人間ではない。

遠く光の国からやってきた、戦士の一人なのである。












史上最萌の侵略










今日も今日とて、MAAD(Monster Attacking And defender)内は暇だった。

地球人の身分を借りて楽をして碌を食むことに、多少後ろめたさを感じないこともないが、だいたい地球の誇る防衛組織が千客万来というのも由々しき自体なわけで、忙しくないことは基本的に結構なことだろう。

隊長は定例会議で不在。

副隊長と紅一点のサカキ隊員は近所の小学校に出向いて、子供たちに教条めいた生活指導を行っている。他隊員は第二次本部待機で、以上が本日の基本業務である。

報告書を早々に片付けた私は、自席のデスクトップのPCで情報収集と称しながらネットサーフィンを楽しむ。

地球のネットワーク環境は宇宙規模的な見地からすればまだまだ未成熟なわけだが、存在するコンテンツはなかなか興味深いものが多い。

特にいわゆるファンサイトと呼ばれるものが私の興味を惹いた。

そこには偉大な先人たち―――つまり私の諸先輩方の記録が、熱狂的なファンの手によって網羅されている。

いずれここに私の名前も記されるのだろうか。

そう考えると実におもはがゆい気持ちになる。

初代、ジャック、Aと、みなヒーローという名に恥じない先輩たちであるが、私が一番尊敬しているのはもちろん7先輩だ。

多才な必殺技と体術、超能力。

戦士として超一流なのはいうまでもないが―――かの人の様々なエピソードにこそ私は痺れた。

『西の空にあけの明星が輝く頃1つの光が宇宙へ飛んでいく。それが僕なんだよ』

最後の戦いでのこの台詞。すがりつく女性隊員の手を振り解いて、彼は死地へと赴いた…。

渋い。

渋すぎる。

初登場のシーンも、実に白眉だと私は考える。

『ご覧の通りの風来坊です。名前は………そうですね、モロ〇シ・〇ンとでもしておきましょうか』

こんな胡散臭い自己紹介を爽やかに言ってのける度量。

〇の伏字を入れ替えるととんでもないことになるというのに。

そこに痺れる、憧れるゥッ!

………こほん。


そんな敬愛して止まない7先輩であるが、私は直接彼から指導を受けることは叶わなかった。

私の師である獅子先輩は7先輩の薫陶も厚かったそうだから、私は直系の孫弟子ということになるだろうか。

それが私のささやかな誇りであると同時に、頭痛の種でもあった。

というのも、地球は日本的に俗っぽく表現してしまえば、獅子先輩はとてつもなく体育会系なのだ。

体術を最も得意とする獅子先輩であるからにして、格闘訓練を重きに置いた指導を受けたのは納得できる。

しかし、分けのわからない、それこそ中学生の夏休みの宿題の工作のようなものを相手に空手の特訓をしたり、目をつぶったまま死ぬほどボールを投げつけられたのには閉口した。

仕上げに、松葉杖を投げつけられて『うむ、免許皆伝だ』っていわれても、本当に分けわかんねーっつーの!

ぶっちゃけアナログである。

脳筋である。

私が地球への赴任することになった際、彼の人は直々に命名してくれた。

『俺も地球に居た頃、OPでよく囃したてられたものだよ』

さらりとメタ発言をかまして私に付けてくれた名前は、センスとしては最悪だった。光の戦士の寿命は地球人類のそれと比較にならないとはいえ、古過ぎた。

今と昔では、別の意味合いの方が強いんですよ、先輩…。



その時、緊急アラームが鳴り響いた。

指令室の警報ランプがひっきりなしに明滅を繰り返す。

オペレーターのヒノマ隊員が叫ぶ。

「大気圏外から突入してくる物体があります! 墜落予定地は…東京湾です!」

すかさず私の脳裏にワンダバミュージックが流れ出す。

―――さあ、出撃だ。












▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽








『対象の物体は、高度一万メートルでスピードを落としました!
 なおスピードを緩めつつ目標予定地へ降下中!』

MAAD専用戦闘機『イーグル・KⅡ(カトゥー)』の座席で私はヒノマ隊員の説明に耳をそばだてた。

これは間違いなく怪獣か何かだな。

隕石やら壊れた人口衛星だった場合、判明した時点でミサイルで撃墜されている。

なら怪獣も大気圏に入るなり撃墜してしまえば、と短絡的に片付けられるほど昨今の宇宙情勢は甘くない。

我々光の住人が常駐していることも含め、友好的な宇宙人、もしくは比較的―――あくまで比較的だが―――温厚な宇宙怪獣が、止むを得ず地球に立ち寄るケースも稀ではないのだ。

地球に到着即破壊活動などという災害コンボ的なアクションを起こすまでは、敵性生命体と認識されない。

もっともこれは専守防衛に特化した日本国圏に限った話だが。(それになぜか連中もこぞって日本圏にばかり落ちてくる)

だがMAADを擁する日本も、相手が攻撃してくるまで大人しくしているほど平和ボケもしていなかった。
                                                  
交流を求める宇宙人であれば即座に交渉、世界に冠たるおもてなしと温泉宴会攻撃で骨抜きにする。

怪獣の場合は世界一の処理能力を誇るスパコンが、ほぼ一方的に対象の性質と目的を断定する。

『怪獣です!』

ヒノマ隊員の声に、私は内心で喝采を叫ぶ。

友好的な宇宙人なら管轄外だし、侵略目的の宇宙人だったら遠慮したい。本体とガチンコするならともかく手下の怪獣やロボット相手はさすがに面倒だ。

さあて肝腎の怪獣は、うっかり落ちてきてしまったマスコット系か? はたまたそれとも…?



『解析でました! …対象を【 やさぐれおしかけ怪獣クダマクドン 】と仮称認定!』


………。

わかりやすっ!



と、とにかく、

「こちらイーグル1! 攻撃を開始します!」

クダマクドンへ向かってレーザーの発射ボタンを押す。

石油コンビナートなどを爆発させてしまっては事だ。海上で決着を。戦うなら被害は少ないほうがいい。

分厚い外皮にさえぎられ、レーザーはたいした効果を上げていない。

しかしクダマクドンの注意はこちらに向いた。

振り上げる腕の下を、機体は猛烈なスピードで通過する。

ああ、このタイミング。我ながら絶妙だ。

自画自賛した瞬間クダマクドンの腕は振り下ろされ、予想通りに尾翼が火を噴いた。

装甲1枚を切り裂き、盛大に火花を散らすこのテクニックはもはや芸術と呼んでもいいと思う。

あとは操縦桿を思い切り捻り、ヘルメットのマイクに向かって叫ぶだけでいい。

「うわあああああっ!! 操縦不能!!」

海へ向かって墜落。軟着陸させるにあたって、極力機体にダメージを与えないよう注意を払う。

着地寸前、コックピットの風防を弾き飛ばし、私は高々と手を上げた。

盛大な水飛沫の降る中、私の身体は閃光に包まれて―――。



『デュワッ!』

東京湾に降り立つ、光の巨人の私の勇姿。

遥か陸地より観戦しているちびっ子の歓声が、ここまではっきりと聞こえる。

使命感と開放感。このカタルシスは最高だ。

プラス地球人の期待感。

決して負ける気はしない。

クダマクドンが酔っ払いサラリーマンのような剣呑な目で睨んでくるが、全く臆することなく私は立ち向かう。

チョップ、パンチ、キック。

合間に意味もなく側転などを織り交ぜ、ギャラリーの歓声を誘う。

ところが意外とクダマクドンはタフだった。

格闘攻撃をものともせず、私に向かって体当たり。

受け止めそこね、大きく跳ね飛ばされる。

水飛沫を上げながら受身を取る私に追撃。

いかん結構強いぞコイツ。

どうにか横に転がってやり過ごし、私は退路がないことに気付く。

背後には陸地。避ければ、多くの地球人に被害が出てしまう。

明滅を開始する胸のタイマー。

ならば。

ゴフウッ! とも ゲフウッ! ともつかぬ声を上げてくるクダマクドンへ向けて、私は大きく両腕を上げて万歳の格好を取る。

続いて突っ込んでくる怪獣へ向けて、両腕を大きく交差させた。

腕の交差点から光線が飛ぶ。

これぞ私の必殺技『ラムスデン光線』ッ!

果たして、クダマクドンは発泡スチロールを爆発させたみたいに吹き飛んだ。

綺麗さっぱり消し飛んで解体業者要らずである。最近の光の巨人は地球環境にも優しいのだ。

光線ポーズをとき、ゆっくりと私は背後の陸地を振り返る。子供たちの興奮冷めやらぬ様子はいつ見ても格別である。

「ありがとー!」

子供の一人が叫ぶと、次々と別の子供たちも唱和した。


「ありがとう、怪獣をやっつけてくれてー!」


「ありがとー!」


「ありがとおー!」


うんうん。


「ありがとうモエスー!」


「モエスーー! モエスー!」


「フヒヒ、モエスwwwww」



…………。


このときほど、光の巨人状態時は表情筋が動かないことに感謝したことはない。

実は地球での初陣の時にこっそり変更しようと考えていたのに、獅子先輩はわざわざ参戦しくさったあげく、全地球人の前で公言されてしまっては、どうやっても訂正のしようがなかった。

本人は、燃え+エースというミーイングだったらしいんだけど…。

残念ながら今の日本では(いや世界的にか?)【もえ】という単語から連想する意味合いは全然異なる。

いわば勇ましさと正反対の抽象表現になっているのだ。




『…ヂュワッ!』

逃げるように私は空へと向かって飛び立った。













▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



MAADの回収船に小破した機体ごと回収された私は、まずはイワシミズ隊長からたっぷりと説教を貰った。

曰く、「貴様は独断専行がすぎる」「機体の操縦が粗雑すぎる」などなど。

正体を明かせない身としては、ひたすら平身低頭して清聴するしかない。

一種の宮仕えの辛さは、全宇宙共通なのであることをしみじみ思い知る。

始末書の提出と引き換えに指令室を出れば、今度は格納庫で整備士長と整備士への謝罪行脚だ。

ここでも散々説教を貰ったあと、

「にしてもてめえ、妙に壊し方が上手くねえか?」

整備士長からの一言はさすがに鋭い。

「いやそんなことないですよ、ははははは」

内心で冷や汗を流しながらあくまで笑顔で応じる。最近とみに腹芸が上手くなってるという自覚はあった。

「…まあいいけどよ。隊員が無事ならそれが一番だ」

そういってくれる整備士長にホロリと来て、同時に罪悪感がこみ上げてくる。

それでも敢えて抗弁させてもらえれば、現場へ急行するのは戦闘機が最も早いのだ。

地上車を使う手もあるが、変身する瞬間を見咎められないのはやはり単座式戦闘機が一番よろしい。

私の事情を鑑みて、整備コスト面は大目に見て頂けるとありがたい。さすがに公言はできないが。

「怪我がなくてよかったですね、オニロク隊員」

格納庫から戻りがてら、廊下で行き会った女性隊員がそう労ってくれた。

華奢で清楚な大和撫子風の容貌に、芯の強そうな挙措がまことに清々しい。極東基地の華という表現は、誰もが認めるところだろう。

「ありがとう、サカキ隊員」

ひそかに恋慕している才媛からの優しい言葉が、本日唯一の慰めとなった。








▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


MAAD基地から程近い場所にあるマンションは、独身者へ割り当てられた半ば官舎のようなものになっている。

そこの三階の東南角部屋が私の地球における住まいだ。

オニロクと表札のかかっているドアを潜れば、こざっぱりとした室内が出迎えてくれた。

申し遅れたが、私の地球は日本における姓はオニロクである。(名前の方は、敬愛する7先輩の地球人名を貰っていることは説明するまでもない)

まずはシャワーを浴び、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、カウンターの上のノートPCを起動させた。

さっそくインターネットでニュースサイトを見て回るのは、もちろん情報収集のためだ。

昼間の騒動から一段落ついて、ようやく本日のニュースでも私の活躍は取りざたされている。

ざっとブックマークしているサイトを見て回って、それほど批判的な記事がないことに胸を撫で下ろす。

むしろ被害を最小限にとどめたことに賞賛めいたコメントもちらほら見られ、そこでようやく缶ビールのプルタップを開け、祝杯を挙げた。

この懊悩を分かってくれる地球人はいないだろう。きっと光の戦士の先達にも分かるまい。

それというのも最近の地球人はメテオールなどという技術を開発している。ルーキーの∞は大変世話になったらしい。

そして技術というものは日進月歩で、現在のMAADの有する兵器は怪獣へもかなり効果的なものもある。

つまり、私が変身するまでもなく、怪獣が撃退されてしまう可能性があるのだ。

地球人類による自己防衛プランは基本的に結構なことである。

しかし私の存在意義が失われてしまうのは頂けない。

実働3分。

それに諸々の手当てが付くのはぶっちゃけ美味しい。

また、私は地球の文化が好きだし、MAADも含め日本の仲間たちも気に入っている。

可能なかぎり任期いっぱいは勤め上げ、引退後は地球で余生を過ごしたいとさえ思っているのだ。

もちろん私の傍らにはサカキ隊員が…ふひひひひ。

おピンクな妄想を振り払うように缶ビールを一気に空け、私はマウスをクリックし専用ブラウザを起動した。

某巨大掲示板のブラウザである。本音を言えばあまり覗きたくないのだが、忌憚のない意見というものは得てしてこういうところにあるものだ。

私たちの活躍はなぜか実況スレでなく特撮スレにあるのは、もはや伝統といっていいだろう。

さっそくスレッドを開けば、そこには。





211:名無しより愛をこめて
名無しより愛をこめてモエスキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!


212:名無しより愛をこめて
モエスキタワァ(n'∀')ηコレ!


213:名無しより愛をこめて
モエスwwww


214:名無しより愛をこめて
ラムスデン光線撃つの早くね?w


216:名無しより愛をこめて
三分ももたないモエスさん乙ww







…概ね好評のようだった。

パタン、とノートPCを閉じ、私は窓辺に立って黄昏れる。

煌びやかなネオンと夜風に身を任せ……出しっぱなしの洗濯物に完全に興が削がれた。

全く締まらない。洗濯物を急いで取り込み畳みながらぼやく。

いくら光の戦士といえど、独り身では家事炊事と全てこなさなければならないわけで。

地球の平和を守っているのに、やたら小市民的なことに頭を悩まさなければならないのはどういうことだろう?

まあこれも修行、もとい仕事のうちだと割り切ってはいるが。







そんなこんなで、私の日常も含め、地球は概ね平和だった。

そう。連中がやってくるまでは―――。








▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


某月某日。

グリニッジ天文台の観察局が、火星軌道上に大規模な異星人艦隊を発見。

地球防衛軍が警戒を強める一方、交渉を望むとの発信が地球側のチャンネルに送られてきた。

艦隊が地球圏に至るまでの会議で国際宇宙機構は交渉要請を受諾。

交渉主国として日本が挙げられた。

MAADを擁することはもちろんだが、異星人との交渉役の人種は日本人を推奨するとNASAのマニュアルに示されている件にも由来する。

艦隊の多くは地球の衛星軌道上に待機。

旗艦よりの連絡艇の着水が東京湾に指定されたのは、利便性と警備上のギリギリの妥協点だった。

衛星軌道上の大艦隊がいつ牙を剥くやも知れず、私もイーグルKⅡで待機している。もちろんいざとなれば真っ先に駆けつけるためだ。

果たして、連絡艇の艦橋が開き、交渉場である空母の上に降り立った異星人の姿は、銀色のスーツに身を包んだ―――――



――――幼女だった。


い、いや、マジでそうとしか見えなかったのだ、ホント。

大きなクリクリとした目にサラサラのロングヘアー。

ノースリーブのぴったりとした銀色素材のスーツの表面は滑らかに凹凸が少なく、ヒラヒラのこれまた銀色のミニスカートみたいな感じのやつから、細い足が伸びている。

足もつま先から銀色素材のロングソックスみたいなもので膝上まで覆われ、太ももの絶対領域が眩しい。

訂正。

幼女ではなく、美幼女である。

卵形の輪郭に整った目鼻立ちは地球人の―――いや、日本人の120パーセント以上は感銘を受ける可愛さと美しさを誇示していた。

頭に、セミの頭部を半分にぶった切ったようなものをかぶっていなければ。

くわえて、両手が巨大なハサミでさえなければ。

かの有名な宇宙忍者星人を幼女化すればこうなるのかも知れない。

我ながらそうとしか形容しようがないビジュアルの異星人だった。

MAADの隊員として私が美幼女の姿を拝めたのはこのときの僅かな時間だけである。

あとは交渉役の政府の役人に、地球防衛軍極東司令官など錚々たる面々と一緒に空母内へと入ってしまったからだ。

だから私が改めて彼女の姿を目にするのは、三日後のTVにおける全世界中継放送でである。

MAADの司令室にある大型モニター前に、非番の隊員も含めほぼ全員が顔を揃えていた。

告知されていた時間ちょうどに画面が切り替わる。



広大な壇上に、例の星人たちが立っていた。しかし、先日私が見た美幼女とは違う。

ずらりと立ち並んでいるのはみなが成人女性に匹敵する背丈とプロポーションを誇っていた。

全員が全員の美形で、しかもみなそろって例のコスチューム姿である。

司令室の男性隊員がみな俄かに色めき立つ。まるで頭部と両手のハサミが目に入っていないよう。



「全員女性しかいないんでしょうかねえ」

おれは安直なエロティシズムに流されないぞと主張しつつ知的アカデミズムを滲ませながらサカキ隊員に話しかけると、

「そ、そうですね」

サカキ隊員はやや挙動不審な様子。きっと緊張していたか、周囲の男性隊員の反応に引いていたのかどちらかだろう。



まるでアイドルグループのバックダンサーのような彼女らの前に、すっと横から出てくる姿がある。

例の美幼女だ。

美幼女は壇上の真ん中まで歩いて正面を向く。それからマイクを向き直り、軽くお辞儀をしようとして、


ゴツン


『ふ、ふえっ?!』

頭をマイクの先端にぶつけた。


その仕草に男性隊員は爆笑し、サカキ隊員も口元を抑えている。

会見会場はあくまで静まり返っている対比が余計笑いを誘うのか。



『…失礼しました』

改めて幼女がマイクへ向かい合った。両ほほが真っ赤に染まっているあたり、地球人と同様のメンタリティを持っているらしきことを推察する。

なにより喋った言葉が、翻訳機抜きの完璧な日本語である。やや舌ったらずに聞こえるけど。


『え、えーと、わたしの名前は、バウ=バ・ルー・ババルウ=バルといいます。バウ=バ星の第三王女です。

 わたしたちは、その、地球じんるいのみなさんとおともだちになりたくて来ましたっ!」





…とてつもなく抽象的でこのうえなく分かりやすい会見内容は、この後も繰り返し放映された。

例のマイクに頭をぶつけるという行為も含めた映像への反響はすさまじく、たちまちガラパゴス的な日本のネット世界にも受け入れられた。

のちに『バルたん星人』と呼ばれることになる彼女が世界人類に周知されたのは、まさにこのときのことである。













…to be continued







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