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No.29965の一覧
[0] オレが王様を目指す理由は……。[花坊主](2011/09/30 01:52)
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[29965] オレが王様を目指す理由は……。
Name: 花坊主◆a8ac6d7c ID:779032c7
Date: 2011/09/30 01:52
「わたしはランプの魔人です」
骨董屋で買ったランプを擦ったら、なんか出てきた!!
「なんでも願いを叶えてあげましょう」
ドッキリカメラじゃあないのか。
「な、なんでも叶うんですか?」
「なんでも叶います」
カメラだったら、騙されるものか!
「じゃあ願い事の回数を増やしてください」
「………………」
………………
「なんでも願い事を三つ叶えてあげましょう。さあ、願い事を」
流された!? いや三つには増えたけど。
「願いがなければ、わたしは消えますが」
わかった。いやあいいんでしょうが。
「聞きましょう」
読心術師か、アンタ!!
え、えーと、うーむ、その。
「願い事がないようなので……」
なにか、適当にでも。
「お、王様にして下さい」
オレ、なに言ってんの!? 王様、え?、王様って言った!! メッチャ、恥かしいよ。
「次の願いを言いなさい」
アレ、願いは叶ったのか?
「……無ければ消えます」
くッ、なんだ人を小馬鹿にしてるのか!
「異世界に言ってみたいです!!」
ふふ、これは流石に無理だろう。
「最後の願いを言いなさい」
え、反応なし。そこ重要じゃないの? 番組として。
「願いがなければ……」
くそ、こうなりゃ自棄だ。
「魔法使いにして下さい」
魔法使いならなんか反応してくるだろう。ふはは、オレって、天才!!
「あなたの願いは受理されました」
ど、どうなるんだ? タライでも落ちてくんのか?
「それでは、あなたは魔法大陸エルドガンドヘ召喚されます」
わッ! なんか光り輝いてるよ。この人。
「それでは、行ってらっしゃいませ」
ぎゃあーーー!! 落ちる。落ちてるよ!!

うーん、ここはどこだろう?
アリスの国だと、落とし穴を落ちた先は不思議の国なのだが。
テニスコート二面は余裕で入るぐらいのピカピカ輝くフロアに、バスケットのゴール、教壇みたいなステージまである。
完璧、学校の体育館みたいだぞ。
だけど俺の通う学校のとは風景が異なっているな。
……えっさ、ほいさ。えっさ、ほいさ。
なんだ!? 髭を生やした子供のようなおっさんが、慌てながらオレの目の前まで走ってきた。
ありゃあ、童話に出てくるドワーフとかいうヤツじゃあないのか?
「こら、こら、君ぃ。もの凄い魔力を感じたんだけど、君が原因かね」
おっさんはオレの顔をジロリと睨んでくる。
つーか魔力!? ランプの魔人に願ったように、本当に異世界に来てしまったのだろうか?
マジ、信じらねぇよ。
「ふむ、どこにも怪我はないようだが」
「あ、えーと、オレは……」
「君、さすがに『無断魔法の使用を禁ずる』という校則は知ってるな」
知るか!! ドッキリにしてもやりすぎだぞ!
「制服も着ておらんようだし。クラスはどこだね。名前は?」
ちょ、勝手に話を進めんでくれ。こっちは何がなんだか。
「鈴木三郎汰です。えーと、クラスって、ここ学校なんスか?」
「スズキサ ブロウタデス。かわった名前だな。ここはエルド唯一の王養成学校だぞ。記憶が飛んでおるのか?」
名前違ぇ!! なんじゃ、その間違え方は。
「王養成学校って、やっぱり地球じゃあなんですね」
少なくとも日本ではなさそうだぞ。
「チキュウ? そりゃあオマエさん、古代語かね?」
「イエ、なんでもないです」
「ふーむ、似しても、おかしな格好じゃ。お主、ここを動くなよ。今、担任を探してくるからな」
なんか、ドッキリとも違うようだ。不安になってきた。逃げた方がいいかもしれない。
「先生、こっちです」
早ぇえええよ!!
「本当に、うちの生徒なんですか? ブルタゴス君は休むと連絡があったんですが」
「でも、本人がブルタゴスだと言うておるんです」
誰!? それ。オレはブルタゴスでもなけりゃあ、ブルータスでもないぞ!
「ほれ、オマエさん。この先生に見覚えはないね」
「あるわけないでしょ。全然、別人じゃあないですか。彼は骸骨剣士なんですから」
オレ、骨と勘違いされていたのか。
つーか、骸骨剣士がこの世界にはいるのか?
目の前のこの女の人にも、背中に天使みたいな羽が生えてるし。
「ま、天使。ぼくぅ、お世辞がうまいのね」
この人も読心術が使えるのか!!
「はあ、だけど困ったわね」
すンごくきれいな人だな。唇に手をあてる動作が様になってる。
「もう、だから、そんない褒めなくてもいいって」
照れて顔が真っ赤だけど、騙されやすそうでこっちが心配になってくるな。
「あ、あの、オレ、実はこの学校の生徒じゃあないんです」
「ほら、やっぱり私の生徒じゃ……ええ!!」
なんで、そんなに驚くのだろうか?
「け、結界はどうしたの。この学園には、関係者以外は入れないように厳重な警備が……むむ、あなた」
なんスか。さっきから二人して、オレに顔を近づけて。
「あなた。種族はなに。見たところ、羽も、尻尾も、角も無いみたいだけど」
羽や、尻尾や、角があるほうが一般的なのか?
「オレは普通の人間ですけど」
「に、にんげん!!!!!?」
な、なんだ。なんなんだよ。さっきから一体!
「こ、こら、ガキんちょ。大人をからかうもんじゃあないぞ」
「そうよね。にんげんなんて……で、でも、やっぱり、羽も、尻尾も、角も無いわね」
「はは、まさか、そんなあり得んですよ」
だからオレが人間で何が悪いんだって言うんだよ。
「ま、まって、わかったわ、落ち着きましょう。はい、深呼吸、すぅ、すぅ、はぁ」
ラマーズ法はいいですから。
「ちょっと、本当ににんげんだったら、どうすればいいの!?」
「いっそ、校長にでも相談されてはどうですかね」
「え、ええ。でも、食べられちゃわなかしら。にんげん、なのよ」
タベラレル? 奇妙な単語だな……はは、まさかな。
「はは、校長はドラゴンですから。保障はできませんな。にんげん、ですし」
ド、ドラゴン!! イヤだ。この若さで死にたくねえ。
そ、そうだ。魔人のお願い。ま、魔法でなんとか。
「ふふ、ビックリしちゃったかしら。冗だ……って、アラ?」
魔法って、どうやって使うんだ? 
そうだ。呪文だ。
えーと、オレの知ってる呪文は……。
「……パ、パルプンテ?」
……しかし、何も起らなかった。
ですよね。普通。
「え、えーと、そ、それじゃあ。校長室に転---移!!」
ぎゃあああ、死にたくねえ!!

地面に落ちるような感覚はない。
あるのは空中をふわふわ漂うかのような奇妙な感覚だった。
「到ぉーーー着」
年貢の納め時のようだ。
欲をかいて魔人になど、お願い事などしなければ良かった。
「先生、問題が発生です」
「ああ異世界から人間が来たようだね」
な、なんで知ってんの!?
つか、椅子小っちゃ。ドラゴンじゃあねえの?
「ふむ、見た目で判断するとは、まだまだ青二才のようじゃな」
またかよ。読心術はもういいって。
「ほほ、失礼。しかし、この学校の先生は皆、読唇術を治めたものたちがほとんどじゃでの」
くるりと椅子が反転する。
そこには……。
「椅子よりもちっちぇーーー」
「大声を出すでない。ばか者が!!」
椅子の上にちょこんと座るぐらいの大きさって、ドカゲの親戚かよ。
「ほお口の利き方を知らんようじゃな」
「こ、こら、ブルタゴス君。校長先生もお気になさってるんですから」
それ、トドメじゃあないのか?
「このガキどもがぁ、晩飯にされたいのかねぇーーー!!!」
ぐはあ、空気の振動で鼓膜が破れる。
「それで、彼についてなんですが」
流した!?
「ふむ、異世界から来た人間で間違いないようだの」
「や、やっぱり」
ん? なんだ。こっちを向いて?
「だ、だだだだ、大スクープよ。これは歴史に残る大事件よ」
「だから、なんなんだよ。さっきから」
「ふむ、人間は1万年以上前に滅んだ種族なんじゃよ」
はあ、なるほどねぇ。人間が滅んだ。だから驚いて!!
「ええ、人間が滅んだ!!」
「ふむ、なんでも古代語でチキュウと呼称しとったらしいのう。この世界のことを」
ぐは、これが本当だとすると、オレは未来に来ちまったのか!?
ランプの魔人の嘘つき。異世界じゃあないじゃん。
「そのランプの魔人とやらが、お主をここに寄越したのかね?」
「え、ええ、たぶん」
それ以外に考えられんし。
「ちと妙じゃのう」
何がですか。
「お主が言ってるランプには、これと同じ文様が付いておらなんだか」
空中に投影って、すごいな!!
二匹の蛇がお互いの尻尾に噛み付いていた。
ウロボロスだったかな。
「左様。この世界を生み出した創造神とも言われておる。で、見覚えはあるかね?」
あ、えーと、あったような。なかったような。
「ええい、はっきりせん奴め。ディアナ先生! 記憶を覗く許可を出しますでな」
へえ、この先生、ディアナって言うのか。
「それじゃあ、ちょっと記憶を覗かせてもらうわね」
「あ、ちょっと!」
心の準備がまだ。
額と額が触れ合うと、何かを吸い取られているような感覚がした。
「どうかね?」
「はい、確かに校長先生が仰るようにウロボロスの文様があります」
「やはりの」
ど、どういうことなんですか?
「うむ、『なんでも願いを叶える魔人』。それは千年の昔に作られたウロボロスの化身ぐらいしか存在せぬ」
はあ、珍しいものなんスね。そりゃあ。
「ああ、本来は厳重に封印されておって、人の手に触れることはないはずなんじゃが」
ああ、そんな重要な品が、何故か、一万年前に滅んだ人間の世界にあったと。
「そういうことじゃ。ディアナ先生、王立魔法研究所に至急連絡を」
「は、はい。わかりました」
ディアナ先生は、転移魔法の呪文を唱えると、どこかへと消えてしまった。

「でじゃ。小僧、お主の処遇じゃが……」
「元の世界に返してください」
「そうしたいのは山々じゃが」
「不可能なんですか!」
「時間を操る魔法など、聞いたこともないでの」
じゃあ、オレはどうすりゃあいいんだよ!
「ふむ、この学校に通ってみてはどうかの」
ええ!! 面白そうではあるけど。オレって単なる学生ですよ。
「なに、皆、学生じゃよ。学費はわしが立て替えてやろう」
立替って。後から、請求が来るんですか?
「ほほ、この学校を卒業できればすぐに返せる金額じゃよ」
「この学校って?」
「うむ、この学校はエルド養成学校。百年に一度代替わりするエルドの唯一王を選定、養育するための学校じゃ」
「王様って、オレはそんなモノに興味はないですよ!!」
「まあ落ち着きなさい。エルドの王になるということは、唯一神の加護を賜るということに他ならん」
「そ、それって、つまり」
「そう、お主が選定の日に残り、うまく王になれれば、ウロボロスは一度だけお主の願いを聞き届けてくれるはずじゃ」
な、なんだよ。こんな、簡単な方法があるんじゃあないか。
「早トチリをするな。王になるといっても、それはライバルたちに勝つということじゃ」
ええ!? 他にも王様になりたい人がいるんですか?
「当たり前じゃ」
まあ、そりゃあそうか。一国一城の主に憧れるのが男ってものだ。
「数は男女で半々じゃがな」
へえ、でも、オレが王様になったら拙いんじゃないか。だって、この世界からいなくなる人間だぞ。
「王の願いは絶対じゃ。神の力だからな」
つまり、オレは自分の世界に返っても良いということだな。
「まあ、王に選ばれればじゃがな」
よーし、やってやろうじゃあないか。それ以外に道がないって言うなら。
「ふふ、まあ適当にがんばれ」
適当って、もうすこし励ましてくれないのかよ。
「職業上、一人を贔屓はできないんじゃよ」
まあ、そりゃあそうだろうけど。
「よし、お主は、これから王候補生じゃ」
お、おし。やってるぜ。ドラゴンの婆さん。
「婆さんではない。校長先生と呼ばんか!」
「校長」
「なんじゃ」
「オレって、住む場所はどうすればいいんですか?」
「ああ、うっかりしておったな」
おいおい、さすがに野宿などしたくないぞ。
「安心せい。候補生用の宿舎が校舎内にはある。至急手配させよう」
「ありがとうございます。ばあちゃん」
「こら、校長だと言っておるじゃろうが!」
あ、癖になりかけてるな。

これが数週間前の出来事である。
結局、この時のオレは、この決断がどれほど後で響いてくるかなど考えもしていなっかたのだろうな。
オレの物語は始まったばかりだった。


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