<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.29835の一覧
[0] 学園都市カナン  (鋼殻のレギオス 二次創作  オリ主)[嘘吐き](2011/09/20 02:48)
[1] 1. リカルド・ハイレディン[嘘吐き](2011/12/08 04:21)
[2] 2. レオナウス・アリオン[嘘吐き](2012/03/23 04:20)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[29835] 学園都市カナン  (鋼殻のレギオス 二次創作  オリ主)
Name: 嘘吐き◆e863a685 ID:eb6ba1df 次を表示する
Date: 2011/09/20 02:48

◆ プロローグ




世界は汚染された。
何時? 何故? どのようにして?
それら全てのことは既に人々の記憶に無く、記録は失われて久しい。
確かなのは、世界を覆い尽くした未知の粒子状物質によって、地上は人の住めない場所になったということだ。
大気に充満し、大地へと沁み渡った汚染物質は、生命の尋常なる活動を阻害し、あらゆる命を死へと向かわせる。
結果、地表は赤く乾き、骸は砂風に呑み込まれ、生き残った僅かな植物も毒素を含んだ。

世界は、生命の存在を許さぬ場所となったのだ。
例外はただ一つ。
特殊な生殖機能を持ち、有害な汚染物質を栄養として摂取できるように進化した……この荒廃した世界に適応した新たなる種―――汚染獣。

汚染された世界は、奇怪な生態系を持ち貪欲に生に執着する新たな生物を生み出したのだ。
汚染獣は汚染物質を食み、人を喰らい、さらなる強さと種の繁栄を成し遂げようとする。
毒素に覆われ、無数の天敵に囲まれた、人が生きることは不可能な世界。
しかし、そんな大地にも人類は存在する。


自立型移動都市<レギオス>


新たなる人間の大地。
人類が生きることを許された唯一の箱庭。
自然から排除され、世界から拒絶された人々が暮らすことのできる、すでに失われた技術によって世界を放浪する人工の都市であり、人工の世界。
都市を覆うエアフィルターは汚染物質から人々を守り、無数の機械の脚によって都市そのものが移動を繰り返すことで汚染獣を回避する。
広大な大地に点在するそんな人工の世界で、人々は生まれ育ち死んでいき………そして戦っている。

























人々の悲鳴と怒号が都市中に響き渡り、同時にそこかしこから奇怪な生き物の咆哮が聞こえてくる。
通りに並んだ建物という建物が倒れ、所々では火柱まで上がっていた。
破壊され崩れ落ちていく都市と、その上空を飛びまわる異形の怪物たち。
無数の怪物は逃げ惑う人々を追いかけ回し、その鋭い牙の並んだ顎で捕食しようとしている。
突如現れた外敵に対し戦って撃退しようとしている者もいるが、敵の強さと数の多さの前には為すすべも無く、一人また一人と食い殺されていく。



つい数時間前まで平和だったその都市は、たった今滅びようとしていた。







突如現れた脅威を前に多くの都市民たちが恐怖に包まれる中、少年は崩れ落ちた建物群の間をひた走っていた。
まだ幼い、おそらくは十歳にも届かないであろう子供だ。 背中には体格にやや不釣り合いな大型のリュックを担ぎ、ポケットには手近にあった現金を持てるだけ詰め込んできた。
目指す先は、都市間を移動するための数少ない手段の一つである放浪バスが集まる停留所だ。
たとえそこにあるバスが全て都市を離れてしまっていたとしても、地下にある格納庫にさえたどり着けば、まだバスが残っている可能性はある。

少年の周囲には同じ方向を目指して走る人々が大勢いた。
彼らもまた、今なお滅びゆく都市から放浪バスを使って脱出しようとしているのだ。
誰もかれもが焦りと恐怖の色を顔に浮かべて、ただひたすら生き残ることだけを考えていた。

「汚染獣だ!」

突如、背後から悲鳴のような声が聞こえてくる。
恐怖から咄嗟に振り返った者たちは、そこであまりの恐怖に硬直してしまった。 背後から迫ってきた巨大な異形の怪物たちは、その隙を見逃さず人々に喰らい付く。 貪欲で獰猛な獣の顎は一瞬で数人の命を刈り取った。

背後で苦痛と恐怖の悲鳴が響く中、少年は振り返ることも無く走り続ける。 一歩でもその脅威から遠ざかるために。
しかし怪物は一体ではない。 この一瞬での死を免れた人々に、さらなる怪物たちが立て続けに襲いかかる。

瞬間、少年の背筋に冷たい感覚が走った。

咄嗟にその場から飛び退き、自らを貫こうとした牙を躱す。 餓えに任せて振るわれた牙は虚しく空を噛んだ。
その様を見届けることもなく、少年は素早く立ち上がって再び走り出す。 背後で逃げ切れなかった人たちが、またもや異形の怪物達に食われる音がした。
しかし少年はなおも振り返らない。 ただひたすらにバスを目指す。
少しでも他に気を逸らせば命は無い、即座に食われてしまうということを、少年は本能的に悟っていた。

やがて前方に放浪バスの停留所が見えてきた。 少年はほっと安堵の息を吐きそうになる。
だが次の瞬間、再び背後から迫ってきた怪物が凄まじい勢いで少年に牙を振るった。 
寸前で気配に気づいた少年は咄嗟に前方へ飛び込むようにして転がり回避する。 すぐさま立ち上がろうとするが、怪物の砕いた地面の破片が背中に当たり、思わず転倒してしまった。 
顔を上げると異形の怪物がこちらに向かって飛翔してくる。 眼前に獲物を喰らわんとする獰猛な牙が迫り、思わず少年は目を閉じた。
………が、怪物の牙が少年を貫くことはなかった。

「ここまで一人で逃げて来たのか?」

頭上から声が聞こえる。 低い、大人の男の声だ。

「武芸者か? だとしても大したもんだ。 その歳であいつらから逃げおおせるとはな」

男の声には純粋な感心の念が籠っていた。 
恐る恐る、少年は目を開ける。
そして驚愕した。 

「まあいい、それより怪我はあるか? ねぇなら早いとこバスに乗り込みな。 いい加減、避難しねぇと間に合わなくなっちまう」

目の前に立っていたのは見上げるような長身の男だった。
歳はおそらく二十代の後半。 その全身は鋼のように強靭な筋肉で覆われているが、かといって筋骨隆々というほど肉厚な印象は無い。
鍛え上げられた長い手足は無駄なく引き締まっており、力強さと同時に俊敏さをも感じさせる。
その身に纏う鋭い雰囲気は砥がれた刃を連想させた。

男の右手に握られているのは、鈍色に光る片刃の長剣……刀、と呼ばれる武器だ。 
そしてその男の足元には、先程少年に襲いかかってきた怪物が屍となって転がっていた。
怪物は蛇のように長い体を縦に両断されている。 切断面からは夥しい量の体液と臓物が流れ出ていた。 
男の発する他者を圧倒するような威圧感からも、この男がその怪物を殺したのは確かだろう。  
その男の信じがたいほどの強さに、少年は無意識に唾を飲み込んだ。

「どうした? なに呆けてる? とっとと逃げねぇと死んじまうぞ」

男の言葉に、思わず少年は来た道を振り返った。
機関部で爆発が起こり、さらに火の手が強くなる。 遠くの方で、都市の武芸者たちが怪物と戦っている音がこちらまで届いていた。
いくつもの建築物が崩れ落ちる中、人々がこちらに向かって逃げて来る。 ここまでたどり着いた者たちは我先にと放浪バスに乗り込んでいった。

都市からは未だ悲鳴が聞こえている。 しかし男はその場に悠然と立ったまま少年を見下ろしていた。
助けに行かないのだろうか? ふと、少年は疑問に思う。 あの怖ろしい怪物をいともたやすく殺してのけたこの男ならそれが可能だろうと思ったのだ。
そんな少年の表情の意味に気付いたのか、男はやや苦笑するように言う。

「あいにくと俺が頼まれたのはここでバスを守ることだ。 それ以外は仕事の範囲外。 いくら汚染獣どもを殺したところでバスが無けりゃあ逃げられねぇだろ。 この都市はもう終わりだ。 機関部がやられちまったからな。 俺がここを離れた隙にバスが全滅しちまったら助けられる人間も助けられねぇよ」

少年は無感動にただ男の言い分に納得した。 もともと食い下がるつもりは無い。 
すでに自分の家族と呼べる人たちは死んでしまったのだ。 わざわざ地獄に舞い戻ってまで助けてくれと男に泣いて頼むほど親しい人間もいない。
しかしそれでも少年はそこから動かなかった。 地面に手をついて立ち上がり、感情のこもらない目で男の様子を追う。 男は響いてくる悲鳴も意に介さず、ただ悠然と佇んでいた。

それからさらに何人かの都市民がここまでたどり着き、バスへと乗り込んでいく。
それを横目に見ながら、男は怪物―――汚染獣が来た時に備え、常に臨戦態勢を維持していた。
時間にして十数分ほどたった頃、男は小さく呟いた。

「そろそろ限界か」

いつの間にか都市内からの悲鳴は途絶えていた。 生きている者は、ほぼ全員避難したのだろう。 あるいはまだ残っているのかもしれないが、それを助けに行くほどの余裕は流石に無い。
都市内ではこの都市の武芸者たちが奮戦していたため、汚染獣はすでに全滅したようだが、都市中に上がる火の手はさらに勢いを増し、煙や粉塵が都市中を覆い尽くしている。。
男は踵を返すとバスに向かって歩き出した。 少年がそのあとを追う。
二人が乗り込むと同時にその放浪バスは出発し、炎上する都市から飛び出した。 他の都市民たちの乗ったバスはすでに都市を離れている。 

最後の放浪バスの中に乗り込んだ人間は、少年と男の二人だけだった。
男はバスの運転の仕方がわかるらしく、運転席でしばらく何かしら操作していたが、やがて客席へと戻ってきてシートの一つにどっかりと座りこんだ。バスはどうやら自動運転になっているらしい。
どこを目指しているのかはわからない。 運転と言っても、もともと放浪バスの移動ルートに関しては人間の干渉できる範囲内ではないのだ。
少なくとも、どこか生きた都市を目指して進んでいることは確かだろう。
やがて多足移動による規則的な揺れが少年にも伝わってきた。

その少年は通路を挟んで男の隣の席に座り、無言で窓の外を見ている。
バスの背後では都市の足が折れ、自立型移動都市の台座が沈み込んでいく。 そんな崩壊していく都市の姿も、やがて見えなくなっていった。
少年はわずかに感慨の滲む表情で前に向き直る。
それからしばらく無言の時が流れた。

「ガキ。 お前、名前は?」

唐突に口を開いた男に、少年は虚を突かれたような顔をした。
いつの間にか男が少年の顔をじっと見つめている。 少年は咄嗟に答えようとし………答えられないことに愕然とした。
自分には確かに名前があったはずなのに、それが思い出せなかったのだ。
血は繋がってはいなかったが、育ての父親や母親との記憶は確かにある。 なのに、両親や知り合いが自分を何と呼んでいたのかが思い出せなかった。
黙り込んだ少年に、男は訝しげに訊ねかける。

「なんだ、名前がねぇのか? それとも忘れたのか?」

少年は呆然としたまま頷いた。
しかし男はふぅんと一言呟いただけで、そのことについては特に訊ねようとはしなかった。

「まぁいい。 別に不都合も無いしな。 そんなことより……お前、剄脈があるようだな」

いつの間にか、男の瞳には興味深そうな色が浮かんでいた。 

「見たところ、まだまともな剄の使い方も知らねぇようだったが……無意識のうちにあれだけの活剄を使うとは、末恐ろしい才能だな」

男は真っ直ぐに少年を見据えている。
少年には男の言っていることの意味はよく分からなかった。 
武芸者という存在は知っている。 彼らが戦いを生業としていることも知っている。
だが、その時の少年は、武芸者と普通の人間の根本的な違いがわからなかった。
それでも黙って男の話を聞く。

「お前、家族は? 行く先にどこか当てはあるのか?」

男の質問に、少年は無表情のまま首を振った。
家族と呼べる者は皆死んでしまったし、幼い自分に行く当てなどあるはずもない。
とにかくどこかの都市に落ち延びて、そこで身の振り方を考えるほかないだろう。
そう思っていたのだが……次の男の言葉に一瞬思考が停止した。

「ならどうだ? 俺と来るか?」

少年は不思議な物を見るような目で男の顔を見上げる。

「こんな都市で、こんな時に、これほどの才能と出会ったのも何かの縁だ。 俺と来るなら、俺がお前に力の使い方を……戦い方を教えてやる。 どうだ?」

訊ね、男は少年の顔を窺い見た。
少年はしばらくの間呆けていたが、やがてかすれた声で言葉を紡ぐ。

「あなたと………」

「あん?」

「あなたと一緒にいたら……あなたのように強くなれますか?」

何物からも逃げずに済むくらい。
自分の力だけで生きていけるくらい。

そんな意志のこもった少年の言葉に、男は不敵な笑みを浮かべる。
砥がれた刃のような鋭さを宿した、それでいて猛獣のような獰猛さを湛えた、力強い笑みを。

「さあな。 それはお前次第だ」

少年はほんの僅かの間思考した後……ゆっくりと頷いた。
男の口元により深い笑みが浮かぶ。

「いいだろう、ついて来い。 俺がお前を強くしてやる」

それから僅かに思案し、再び口を開く。

「お前の名前はリカルドだ。 今日からお前はそう名乗れ」

男はやや皮肉げな笑みを浮かべて少年に告げる。
リカルド……少年は小さくその名を呟き、やがて男に向かって頷いた。

「俺はガレオン。 ガレオン・ハイレディンだ」

そして男―――ガレオンは、再び不敵な笑みを浮かべた。


























あとがき (&作品説明)


プロローグというか、いわゆる主人公のバックボーンですね。

以前からレギオスの世界観でオリキャラだけのストーリーを書いてみたいと思っていて、ある程度頭の中でできた分をこうして形にしてみました。 次の更新はいつになるかわかりませんが。

主要キャラや設定は結構決まってるんですけど、肝心のストーリー展開があまり思いつかないので。
大まかな流れはともかく、ディティールを詰めるのが難しいです。
この先の展開のめどは立っていませんが、折角書いたので、書いた分だけでも載せようかなと。
まぁ可能であれば今後も更新していきたいと思います。


内容としては、いちおう鋼殻のレギオスの二次創作、オリ主最強もの……かな?
二次ではありますが、取り入れたのは世界観だけで基本的に原作キャラは登場しません。
オリジナルの学園都市で織りなす、オリキャラだけの物語が描けると良いなと思います。



次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.032819986343384