※原作人物の名前を何人かちょびっとだけ変更したり、オリ設定を付け加えたりすするので、ここで紹介しておきます。【アリグザンダー・ビュコック】同盟軍第5艦隊司令官 わしのことはアルとよんでくれてよいぞ、お若いの。【アレクサンドル・ポルフィーリエヴィチ・ボロディン】同盟軍第12艦隊司令官 キミから「シューラ」呼ばわりされる覚えはない。「ボロディン提督」と呼んでくれたまえ。【ハーフンギーン・チャガーンフー】同盟軍第10艦隊司令官 オリキャラ。ウラーンフーの弟。【ハーフンギーン・ウラーンフー】同盟軍少将。第10艦隊の司令官代理 「ハーフンギーンさん」っていうな。ハーフンガはおれたちの親父の名前だ。ファミリーネームじゃない。ウラーンフーと呼んでくれ。ウランフでもいい。【ハッサン・ビン・アブドゥルラフマーン・アッ・サラーミー】同盟軍第9艦隊司令官 帝国じゃあるまいに、「自由惑星同盟」で記名の方法がE式とW式の二つしかないって、どういうこった。「Al-Salāmī」っていうのは、「ニスバ」であって、ファミリーネームじゃないんだけどね。ウランフは抵抗してるようだが、おれはもういいよ、「アル・サレム中将」で・・・。【フレドリカ・グリーンヒル】 じゃあ、わたしのことも、リッキィって呼んでくださいね、提督♪ 一方的に殴り続けていても、いつか手が痛くなるわ。見ていてごらんなさい。 リキ・ティキ・ティキ・ティキ・ティック!******************************クラインシュタインによるラインハルトの特訓は続き、いよいよ提督として初めての出征をむかえた。。 ※ ※帝国暦485年3月20日、同盟軍との戦いを目前にひかえた帝国軍の旗艦ウィルヘルミナで、将官会議に出席しようとしたラインハルトの華麗な容姿が、宇宙艦隊司令長官グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥の視覚を刺激した。「あの金髪の孺子は何者だ?」副官のツィンマーマン中佐が答えた。「ラインハルト・フォン・ミューゼル准将です」「ほう、例の3一門の秘蔵っ子か、あれがな」「グリューネワルト伯爵夫人のご舎弟でもあります」寵姫の弟たる彼が負傷なり戦死なりしようものなら、皇帝の怒りがどのようにふりかかってくるかわからない。ツィンマーマン中佐は、気をきかせたつもりで元帥に具申した。「ミューゼル准将を戦線のいずれに配置するか、再考なさってはいかがでしょう?」「たかが准将にすぎぬ者をどこに配置するか、宇宙艦隊司令長官たる私が、わざわざ配慮せねばならんのか?そのようなことは、彼を預かるクラインシュタイン中将のほうで考えるであろう」遠雷のとどろきに似た怒声が元帥の上下の歯の間から転がりでて、副官は全身で恐縮してみせた。 ※ ※ 3月21日2時40分。銀河帝国軍と自由惑星同盟軍との間に、最初の砲火が交換された。ヴァンフリート星域の会戦が、その瞬間にはじまったのである。この会戦に参加した兵力は、帝国軍が艦艇3,4000隻、将兵422万9900人。同盟軍が2,8900隻、将兵336万7500人。前年にかわされた戦闘のすべてを凌駕する大規模なものであった。この会戦は、クラインシュタイン艦隊1,4000隻の初陣であり、後にローエングラム元帥府に集う優秀な提督たちのなかでも中心となる者たちが多数、戦隊指揮官として参加した戦いともなった。ちなみにこの会戦において、イザーク・フェルナンド・フォン・トゥルナイゼンは、クラインシュタイン艦隊ではなく、ミュッケンベルガー元帥直率の第44分艦隊に所属する駆逐艦の艦長をつとめ、クラインシュタイン艦隊があげた華々しい戦果になんら貢献しなかった。また、トーマス・フォン・ロットヘルトはオーディンにおいて士官学校候補生としての学業にあけくれ、会戦自体に参加していない。全艦隊での将官会議において、今会戦の戦略的方針や各艦隊の配置が定められたのち、左翼部隊と位置づけられたクラインシュタイン艦隊での作戦会議が、旗艦シュタルネンシュタウプIIの艦上で開かれた。席上でラインハルトは、砲艦部隊を編成し、その高機動運用によって火力不足を補うよう提案した。この会議に参加する幕僚たち、4人の少将、16人の准将のうち、ラインハルトの18才というのが、飛び抜けて若い。26才のミッターマイヤー、27才のロイエンタール両准将がこれに次ぐ。ただし、”寵姫の弟がろくな経験もなく…”という、ラインハルトになじみの視線を向ける者は、ここでは半数に満たない。ラインハルトを含む新任の准将9名は、数年まえからトーマス、イザークらが手分けして勧誘してきた者たちで、着任にあたってトーマスとイザークの私的な訪問を受け、クラインシュタイン艦隊における評価の方式について説明をうけていた。クラインシュタイン艦隊における評価は能力だけに基づく。ラインハルトはとっても優秀で、3宗家が、とりわけロットヘルト家とトゥルナイゼン家で手厚くもてなしてきたが、それは自分たちと幼年学校同期という縁によるもので、艦隊における評価では、いかなる手心も加えられることはなく、皆と同じスタートラインに立たせる。新任の准将たちは、この艦隊のスポンサーである3宗家から、ラインハルトとは当主や嗣子たちと個人的に交際を持っているが、特別扱いはしないという説明を受けており、ラインハルトを”お手並み拝見”という目で見ることとなった。ラインハルトの提案に対する他の新任准将たちの反応は、”うまいことを考えたな”、”おれだってその程度のことは思いついていた”等と別れたが、”寵姫の弟、宗主や嗣子の親友というだけで特別扱いされている”のではない、という点は、この場にいる大部分の者が理解した。ラインハルトの提案は採用され、各戦隊から高速タイプの砲艦875隻が抽出され、新たにラインハルトの指揮下に委ねられた。もともとラインハルトには砲艦・ミサイル艦175隻がゆだねられていたが、これによりクラインシュタイン艦隊の長距離火力の七割が、彼の指揮下におかれることになったのである。責任重大である。 ※ ※同盟軍は星系外縁に凸陣形で布陣、帝国軍は凹陣形でこれに対した。砲火はまず帝国軍の右翼部隊と同盟軍の左翼部隊の間に開かれた。すかさず、クラインシュタイン提督は命令をくだす。「全隊、2時方向に繞回しつつ前進!」クラインシュタイン艦隊の接近に対し、同盟軍右翼部隊は時計回りに回頭し、これに向き合った。帝国軍左翼部隊(クラインシュタイン艦隊)と同盟軍右翼部隊の間でも砲戦が開始された。「敵の攻勢など阻止できる。ここだ、ここに火線を敷けば、わが軍中央部隊との間に、十字砲火網を敷いて、敵をなぎ倒すことができる」戦況データを見ていたラインハルトがそう思った瞬間、命令がくだる。「ミューゼル戦隊、いまだ!」クラインシュタイン提督は、ラインハルトは戦況データをみて、解析して理解するのでなく、直感的に把握できることを確認していた。ロットヘルト家の故若殿(=トーマスの伯父ゲオルク)に似たタイプの天才である。その手並み、いまこそ見せてもらおうではないか。「敵右翼に最大のダメージを与えろ!」曖昧な命令であるが、ラインハルトに大幅な裁量を与えるものである。ラインハルト戦隊は勇んで飛び出した。まずは敵右翼の右方の集団(先頭集団)を狙う。彼らのエネルギー中和磁場、補助艦による対実体弾(ミサイル・レールガン等)弾幕とも、主として帝国軍中央部隊からの攻撃に振り向けられていた。ラインハルト部隊からの横撃により十字砲火網が濃密に形成され、同盟軍右翼の戦闘部隊は数斉射であっけなくなぎ倒され、潰滅していった。先頭集団が潰滅すると、帝国軍中央部隊と左翼部隊(クラインシュタイン艦隊)による十字砲火の標的は、同盟軍右翼部隊の中央集団に移る。ラインハルトは、戦況データより、敵右翼集団の旗艦っぽいものに見当をつけ、靡下にこれをターゲットとして残弾の斉射を命じた。ラインハルトは戦況データをながめていて、これが敵旗艦だ!とか、この辺りに敵旗艦が潜んでいる!とひらめくことが多い。そしてそのひらめきが当たっている確立が非常に高い。ラインハルト戦隊の攻撃が敵右翼中央集団にとどき始めると、一瞬、敵右翼の抵抗が途切れた。ほどなく抵抗は再開するが、混乱し、つい先頃までと比べて非常に微弱となった。のちに判明したことだが、この斉射で、同盟軍右翼部隊の旗艦が爆沈し、司令官が戦死、指揮権の移譲が行われていたのである。 これをみて、クラインシュタイン提督が命じる。「全艦、突撃!」全弾を射出したラインハルト部隊をその場にのこし、クラインシュタイン艦隊は敵との距離を詰める。クラインシュタイン艦隊の攻撃は、敵右翼部隊の残存艦艇をふきとばし、同盟軍の中央部隊にまで届き始めた。同盟軍はほどなくして隊形を解き、バラバラになって星系内部へ逃げ込んでいった。クラインシュタイン艦隊は星系外縁部で追撃を停止したが、散開した敵部隊を追って星系内に侵入した帝国軍右翼部隊の一部が手痛い逆撃をうけた。同盟軍は、潰走したのではなく、司令部の統一的指揮のもと、組織的抵抗を継続するつもりのようだ。この間、ミュッケンベルガー司令長官は、左翼・中央・右翼・直属の各部隊から部隊を抜き取り、8,000隻の別動隊を組織して、同盟軍の側背から奇襲させるため繞回進撃させていたが、同盟軍部隊の散開と星系内への撤退により、別働隊は標的を失った。ミュッケンベルガー司令長官は全体の秩序を再編するため、追撃を中止し、全艦隊の集結を命じた。開戦後、6時間目のことである。 ※ ※星系内に逃げ込んだ同盟軍を追って、帝国軍は無人偵察機を侵入させたり、駆逐艦・巡航艦の小部隊による威力偵察を試みた。敵の本隊は補足できなかったが、通信が途絶える機体、襲撃を受けたと報告して消息を断つ部隊が絶えず、敵がこの星系に拠って交戦する意図ははっきりうかがえた。3月24日、帝国軍は、星系内に潜んだ同盟軍に”誘いの隙”をみせるため、あえて、クラインシュタイン艦隊14,000隻、ミュッケンベルガー直率部隊8,000隻(副司令官グリンメルスハウゼン中将)、メルカッツ部隊12,000隻の3隊にわかれ、星系内の要所に進駐することにした。クラインシュタイン艦隊は、第4惑星の第2衛星(ヴァンフリート4-2)の周回軌道で待機することとなったが、艦隊の航路算定を命じられたラインハルトは、進駐後も敵の通信波の解析を続け、この衛星を指向しているものがあるとの結論に達した。ラインハルトは偵察衛星4機を発信させ、衛星をさらに監視させたところ、ほんの一瞬ながら、この衛星からの、帝国軍のものではない電波の発信を確認したのである。直後の将官会議において、ラインハルトはその旨を報告した。「つまり、すでに衛星地表上には敵部隊がいると?」「はい。規模は不明ですが、南極付近からの電波の発信を確認しました」「よし、無人偵察機を動員して、策敵調査を行う!」調査の結果、大規模な同盟軍の施設が南極の氷雪の下に隠蔽されていることが確認された。「これは、叛乱軍がイゼルローン回廊に侵攻する作戦を行う際の、後方基地として建設されたものと思われる」「叛乱軍は、こいつがあるから、一個艦隊が潰滅したのに、この星系に執着していたんですねぇ……」「制宙権はわれわれにある。このまま一挙に殲滅しますか?」ラインハルトも発言する。「それよりも、あえて地上部隊による攻略に取り組んではどうでしょう。救援のため、敵艦隊が姿をあらわすかもしれません」「うむ、それなら敵艦隊と一挙に決着をつけることができるな」クラインシュタイン提督はラインハルトの提案を採用、さらにミュッケンベルガーにも帝国全部隊で一体となった待ち伏せを行うよう提案した。ミュッケンベルガー総司令官は提案を受け入れ、陽動としての基地攻略作戦にあてるため、全艦隊に配置されていた装甲擲弾兵部隊をすべてヴァンフリート4-2にあつめるよう命じた。オフレッサー大将が指揮をとり、同盟軍基地の攻略作戦を担うこととなった。。ヴァンフリート4-2の軌道上には、上空支援と、敵艦隊に対するおとりを任務とした2個分艦隊(6,000隻)が配置され、クラインシュタイン艦隊・ミュッケンベルガー直属部隊・メルカッツ部隊は、あえてヴァンフリート4-2より離れた位置に身を潜め、同盟軍艦隊の出現を待つこととなった。3月30日、ヴァルキューレ部隊による空襲、ミサイル砲艦による軌道上からの攻撃ののち、地上部隊による攻撃が開始された。同盟軍基地は、宇宙艦隊に救援を求めた。「大規模な宇宙艦隊の上空支援をうけた優勢な帝国軍地上部隊からの攻撃を受けている」この時、同盟軍艦隊は、司令官を失い半数以上が撃沈または大破した第6艦隊を星系から脱出させる一方、アレクサンドル・ボロディン中将麾下の第12艦隊の増援を受け、アリグザンダー・ビュコック中将の第5艦隊、ハーフンギーン・チャガーンフー中将の第9艦隊の3個艦隊で、帝国軍に奇襲をかける機会を狙っていた。しかるに、奇襲にこだわって基地の救援要請を放置すれば、未来のイゼルローン要塞攻略作戦のために蓄積してきた膨大な物資を失ってしまう。ことここに至り、同盟軍のロボス司令官は、速やかに三個艦隊を合流させ、ヴァンフリート4-2の軌道上に展開する帝国軍6,000隻を一挙に駆除する決断をくだした。隠れ家から飛び出し、3方向からヴァンフリート4-2に迫った同盟軍艦隊の3個艦隊は、突然、それぞれが、後背から帝国軍部隊の襲撃を受けた。地表と、宇宙空間とで、血みどろの決戦がはじまった。 ※ ※4月3日、オフレッサー大将のもとに、宇宙艦隊が、潜み隠れていた同盟軍艦隊を引きずり出し、決戦を始めたという連絡がとどいた。この時、帝国軍地上部隊は基地内部の奥深く侵入し、司令部の内部に浸透しつつあった。これで、地上部隊はおとりとしての役割を充分にはたした。今会戦は、たまたま叛乱軍の艦影をこの星系で発見したことからこの星域が戦場となったもので、いまの帝国軍は、叛徒の勢力圏に属するこのような星系を恒久的に奪取し領有するだけの構えを有していない。ミュッケンベルガー司令長官からは、”適当なところで切り上げるように”という指示が下った。オフレッサーは命じた。「この基地は、あとわずかで完全に制圧できる。急げよ!」その時、リューネブルク准将から通信が入った。「叛乱軍の指揮官シンクレア・セレブレッゼなる者を捕獲しました。中将の階級を持ち、この基地の司令官を名乗っております」そろそろ潮時か。「リューネブルク、よくやった。わが軍の完全勝利だ。よし、全軍、撤収せよ!」薔薇の騎士連隊(ローゼンリッター)では、連隊長ヴァーンシャッフェ大佐がこの迎撃戦の中で戦死し、シェーンコップ中佐が指揮を引き継いでいた。「中佐、敵軍が引き上げていきます!」「これは、いまから上空より殲滅攻撃がくるぞ。逃げ出す算段が必要だな」シェーンコップは、他の連隊と連絡をとり、指揮系統の再構築に努めるとともに、連隊の各員に生存者の確認、機密服の着用、基地からの脱出準備などを命令した。帝国軍の地上部隊が撤収して30分後、ワルキューレ部隊と巡航艦2隻が現れ、”降伏か、さもなくば殲滅する”と威嚇しながら基地上空を旋回した。同盟軍の残存部隊は、雪上車や地上装甲車の屋根の上にまで乗り込み、さらには人を満載したソリを牽き、蜘蛛の子を散らすように基地から離れていく。両軍の暗黙の了解として、勝利後に戦場を確保し、整理にとりくむ(=負傷者を救難し、生存者を捕虜とする)意志がない場合には、戦闘力を失って、このように逃げ出す人員は攻撃しないことになっている。脱出者の波が途切れると、ワルキューレ部隊と巡航艦は、地上部隊の攻撃を免れて原型を保っていた施設を集中して攻撃、破壊し、引き上げていった。※クラインシュタイン艦隊は、チャガーンフー中将の第9艦隊の進路左方に現れ、眼前を通過する第9艦隊に猛烈な射撃を浴びせたのち、追跡にかかった。相対速度の違いから、クラインシュタイン艦隊は第9艦隊と次第に距離がひらいてしまう。もし第9艦隊がこのまま星系からの脱出をはかるなら、ここで取り逃がしてしまうところであったが、チャガーンフー中将は決戦を選択、艦隊を反転させ、クラインシュタイン艦隊と向き合う隊形を整えた。真正面からビーム砲を乱射し、ミサイル・レールガン・宙雷などの実体弾をぶつけ合う。クラインシュタイン艦隊はもともと数の上で勝っている上に、奇襲攻撃でダメージも与えているため、このまま力押しの撃ち合いを続けていけば、優勢はさらに拡大するであろう。このような戦況下、艦隊の前衛において実体弾攻撃・対実体弾防御の指揮にいそしんでいたミッターマイヤー准将のもとに、一通の通信がはいった。ラインハルトの名義で、今から10分後、ミッターマイヤー戦隊に、第34回目と第35回目のミサイル斉射について、指定するコースと座標により発射することを要請する内容である。 真正面からの味方弾幕が薄くなるが、艦隊は全体としては優勢なのであり、自分の戦隊の2斉射分がよそへ向かっても問題なかろう。ミューゼル准将が緒戦で敵右翼の旗艦をしとめたのはまぐれではなさそうだ。今回も彼に賭けてみよう。ミッターマイヤーは、”要請受諾”と返信した。指定されたタイミングの直前、後方からの大規模なミサイル3斉射がミッターマイヤー戦隊を追い越していった。一見、てんでバラバラな方向に飛び散っていくようにみえる。「これに合わせるわけだな!」ラインハルトの要請どおりのコース・タイミングで2斉射をおこなった。ミッターマイヤー戦隊のすぐ左どなりで前衛をつとめていたロイエンタール戦隊からも、ほぼ同じタイミングでの2斉射が確認された。3個戦隊分のミサイルの弾幕2斉射は、戦場を迂回し、側面から艦隊の中央部に一斉に襲いかかった。この奇襲に同盟軍第9艦隊は対応できなかった。旗艦ボルテ・チノは大破し、司令官チャガーンフーは負傷、人事不省に陥った。最先任の分艦隊司令ハーフンギーン・ウラーンフー少将(=チャガンフーの兄)が指揮を引き継いだが、クラインシュタイン提督はこのわずかな隙を見逃さず、一挙に攻勢をつよめた。ウラーンフー少将はこれ以上の抗戦を断念、さらに大量の犠牲をはらってクラインシュタイン艦隊との距離をあけると、そのまま星系外に脱出した。ミュッケンベルガー、メルカッツ等の部隊もそれぞれ同盟軍の第5、第12艦隊に大損害をあたえ、星系外に退却させることに成功した。ミュッケンベルガーは「暴戻なる叛徒どもに痛撃を喰らわせ、皇帝陛下の聖徳をあらためて宇内に示すことを得た」として、全軍に引き上げを命じた。