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No.29737の一覧
[0] 試される大地【北海道→異世界】[石達](2012/11/29 01:19)
[54] 序章[石達](2012/11/29 01:05)
[55] 起業編1[石達](2012/11/29 01:06)
[56] 起業編2[石達](2012/11/29 01:07)
[57] 起業編3[石達](2012/11/29 01:08)
[58] 国後編1[石達](2012/11/29 01:08)
[59] 国後編2[石達](2012/11/29 01:09)
[60] 転移と難民集団就職編1[石達](2012/11/29 01:09)
[61] 転移と難民集団就職編2[石達](2012/11/29 01:10)
[62] 礼文騒乱編1[石達](2012/11/29 01:10)
[63] 礼文騒乱編2[石達](2012/11/29 01:11)
[64] 礼文騒乱編3[石達](2012/11/29 01:11)
[65] 礼文騒乱編4[石達](2012/11/29 01:12)
[66] 戦後処理と接触編1[石達](2012/11/29 01:12)
[67] 戦後処理と接触編2[石達](2012/11/29 01:13)
[68] 嵐の前編[石達](2012/11/29 01:14)
[69] 北海道西方沖航空戦[石達](2012/11/29 01:14)
[70] 大陸と調査隊編1[石達](2012/11/29 01:15)
[71] 大陸と調査隊編2[石達](2012/11/29 01:16)
[72] 大陸と調査隊編3[石達](2012/11/29 01:16)
[73] 魔法と盗賊編1[石達](2012/11/29 01:17)
[74] 魔法と盗賊編2[石達](2012/12/08 01:24)
[75] 決戦[石達](2012/12/08 01:20)
[76] 盗賊と人攫い編1[石達](2012/12/31 22:47)
[77] 盗賊と人攫い編2[石達](2013/01/19 21:24)
[78] 盗賊と人攫い編3[石達](2013/01/19 21:23)
[79] 道内情勢(霧の後)1[石達](2013/02/23 15:45)
[80] 道内情勢(霧の後)2[石達](2013/02/23 15:45)
[81] 外伝1 北海道航空産業の産声[石達](2013/02/23 15:46)
[82] 東方世界1[石達](2013/03/21 07:17)
[83] 東方世界2[石達](2013/06/21 07:25)
[84] 東方世界3[石達](2013/06/21 07:26)
[85] 幕間 蠢動する国後[石達](2013/06/21 07:26)
[86] 東方世界4[石達](2013/06/21 07:27)
[87] 東方世界5[石達](2013/06/21 07:27)
[88] 東方世界6[石達](2013/06/21 07:28)
[89] 東方世界7[石達](2013/06/21 07:28)
[90] 世界観設定[石達](2013/06/23 16:49)
[91] 人物設定[石達](2013/06/23 16:57)
[92] 東方世界8[石達](2013/07/15 01:51)
[94] 帝都ティフリス1[石達](2013/08/09 02:02)
[95] 帝都ティフリス2[石達](2013/08/12 00:21)
[96] 帝都大脱走1[石達](2013/09/23 00:16)
[97] 帝都大脱走2[石達](2013/09/22 22:47)
[100] 帝都大脱走3[石達](2014/02/02 03:03)
[101] 対エルフ1[石達](2014/02/02 03:03)
[102] 対エルフ2[石達](2014/02/05 22:45)
[103] 対エルフ3[石達](2014/02/05 22:45)
[104] 対エルフ4[石達](2014/02/05 22:46)
[105] カノエの素性1[石達](2014/02/05 22:46)
[106] カノエの素性2[石達](2014/02/09 13:13)
[107] 別れ、そして託されたモノ1[石達](2014/02/09 13:14)
[108] 別れ、そして託されたモノ2[石達](2014/02/09 13:16)
[109] 決意[石達](2014/02/09 13:42)
[110] 新しい風[石達](2014/04/13 10:41)
[111] 交流拡大、浸透と変化1[石達](2014/04/13 10:41)
[112] 交流拡大、浸透と変化2[石達](2014/06/04 23:46)
[113] 交流拡大、浸透と変化3[石達](2014/06/04 23:47)
[114] 交流拡大、浸透と変化4[石達](2014/06/15 23:55)
[115] 交流拡大、浸透と変化5[石達](2014/06/15 23:55)
[116] 平田、大陸へ行く1[石達](2014/08/16 04:02)
[117] 平田、大陸へ行く2[石達](2014/08/16 04:02)
[118] 対外進出1[石達](2014/09/14 08:19)
[119] 対外進出2[石達](2014/08/16 04:04)
[120] 対外進出3[石達](2014/10/13 01:58)
[121] 回天1[石達](2014/10/13 01:59)
[122] 回天2[石達](2014/10/14 20:24)
[123] 回天3[石達](2015/01/18 08:20)
[124] 回天4[石達](2015/01/18 08:24)
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[29737] 東方世界3
Name: 石達◆48473f24 ID:dd7fbef8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/06/21 07:26


「畜生!
売れないってどういうことだい!」

薄暗い室内に罵声とテーブルを叩く音が響く。
その声の主はメリダの村を襲った盗賊の頭であるニノ。
彼女は今、彼女の罵声を聞いて至極迷惑そうな表情で売り物を磨く男を睨んでいる。

ここはニノの叔父が営む盗品屋。
そして、現在、ニノに睨まれている男の名はアッコイ。
ニノの叔父である。
彼は普段、盗品や教会の影響が及ぶ各国では規制のかかる魔導具、それと攫ってきた人間の奴隷市場への斡旋を行っている。
そして彼の持ち味である例え金を積まれようと盗品の持ち主や攫われてきた人間の入手経路を絶対に割らないというスタンスは、裏稼業の店として悪人からの信頼を集めている。
そんな裏の世界に信頼と実績のある彼だが、今は店先からは見えない店の奥でニノとその手下に囲まれていた。
親族とは言っても、女の方が体格の良いハイエナ族。
当然の如く、アッコイのガタイは小さく、痩せた小男と言った風体である。
だが、それでも長年にわたって裏の稼業で生きていたためか、ニノがいくら凄みをかけても全く堪えない。
それどころかニノに対し、顔をしかめながら悪態をつく。

「ニノ。何度も言ってるだろ。
コイツの一族は、サルカヴェロが血眼になって探してんだ。
もし奴等に見つかってみろ、俺たちまでトバッチリで殺されかねん。
俺としては、さっさと殺して捨ててきて欲しいくらいだ」

迷惑極まりない。
そんな表情でニノを睨むアッコイは、掌で首を切り落とすジェスチャーをする。
面倒事はさっさと処分しろと言っているのだ。
だが、その言葉に対するニノの反応は煮え切らない。

「う~ん……
でもねぇ、素材が良いから性奴隷としては言い値がつきそうなんだけどねぇ……
あぁ、もったいない!」

「ん゛ん゛ん゛~!!」

せっかく金になりそうなのを攫って来たのに、殺して捨てるのは勿体無い。
ニノは諦めが付かないのか、縛られたカノエの胸を力任せに鷲掴みにして揉みしだく。
突然の行為と痛みに、思わずカノエも猿轡越しに声をあげるが、誰も彼女の声など気にしていない。
そんな勿体無いと呟きながら踏ん切りの付かないニノの態度を見て、今度は店の主であるアッコイの方がしびれを切らして彼女に怒鳴る。

「勿体無いじゃねぇよ!命あっての物種だろうが!
それに金なら、他の人間を売っ払えば良いだろう!」

自分の店に、何時までも危険物を置いておきたくない。
そんな偽らぬ本心を彼はニノに向かってぶつけるが、それでも彼女は諦めが悪かった。

「あんな戦奴なんて何人売り払っても大した金にはならないよ。
それに、捕まえた奴等の内、子供の方は遊びすぎて壊しちゃったし……
一番金になりそうな素材はあの青髪なんだけど……って、そうだ!髪を染めて売りに出すってのは?」

ニノは「名案じゃない?」言ってニッコリ笑いながらアッコイを見るが、対するアッコイの表情は全く持って笑っていない。

「そんなセコイ事考えてる暇があったら、さっさと殺して来い!
いくら親戚だからって、仕舞いには追い出すぞ!」

「でもねぇ……」

アッコイは小手先で誤魔化そうとするニノにもう一度怒鳴るが、それでも彼女は諦めがつかない。
何せ彼女の最後の仕事は失敗だった。
死んだ奴等の大半は最近手下にした他部族の奴らばっかりだったと言え、古参の同族も何人か死んだ。
その対価として得られた一番価値のありそうだった戦利品が、買取拒否というのはいささか悲しいものがある。

「でもも糞もねぇ!
ココに来る途中、コイツに袋を被せてたからばれなかったものの、お前がそのまま連れてきてたら、今頃、この店は焼き払われてた所だ。
そんな危ねぇ事をしておいて、まだ言う気か!」

何時まで経っても諦めの付かないニノを見て、アッコイの怒りは頂点に達する。
もうこれ以上グダグダ言うなら追い出そう。
そうアッコイが心に決めて、「出て行け」という言葉を口に出そうとした刹那、店先から聞こえる客の声に彼は口からでかかった罵声を無理やり飲み込んだ。

『すいませーん』

店先から店主を呼ぶ声に、アッコイは舌打ちをして椅子を立つ。
店の裏がどんな状況だろうと、客が来たのならば応対しなければならない。

「チッ、客だ。
ニノ。俺の言ってることが分かったんら、客が帰るまで静かにしてるんだぞ」

「言われなくても分かってるよ」

アッコイはニノの軽い返事を背中で聞きつつ、店に繋がるドアをくぐる。
いくら不機嫌であろうとも、それを商売の場にまで持っていくまいと彼は心を落ち着けると、いつもの笑顔で接客に出た。

「いらっしゃい」

店先に戻った時、店の前には一人の男がいた。
顔つきはここらでは珍しい黄色い人族。
あの民族は今はキィーフ帝国の支配下にあるはずだが、おかしなことに客の男は東方の民族衣装身にまとっている。
なんとも怪しい匂いがプンプンすると彼の直観はそう告げていた。

「すいません。
ちょっと、この店に色々と面白いものがあるって聞いたんですが」

男はアッコイが出て来るなり、笑顔を浮かべて聞いてくる。
不自然ににこやかな男の笑みに、何を薄ら笑みを浮かべているんだと思ったりもしたが、そこは割り切ってアッコイは男の質問に軽く答える。

「この店に並んでる物は全部愉快なシロモノだよ」

生憎、こちらは堅気相手はしていない店。
並んでいるモノがどういう物か分からない奴らは来なくていい。
どこか興味本位のような雰囲気で店の中を眺める男にアッコイは内心馬鹿にしながら話すが、それでも男は質問をつづける。

「いや、自分が欲しいのは、こんな道具類じゃなく。
もっと特殊なナマモノがあると聞いたんですけどね」


何を言っているんだこいつは?
特殊なナマモノ?
とすると、人のことか?
この店は西方世界では御禁制の魔導具で攫われた人間の記憶を改竄し、奴隷市場に出品する斡旋はするが、店での販売はしていない。
もしや、コイツ…… 店の奥に隠している青髪を知っているのか?
……いや、そう考えるのは早計だ。
そもそもコイツの言うナマモノってのは何を指しているんだ?。
アッコイは男の言葉にそう不信感を募らせると、陳列してある商品の埃を落としながらしらばっくれた。

「……何の事かわからんな。
一体、それは誰から聞いたんだ?
そもそも、ウチは一見さんお断りでね。
次は誰かに紹介してもらってきてくれ」

面倒事は御免だ。
アッコイは遠まわしに帰れと男に告げるが、男は「あぁ、そんな事か」とニコニコしながら呟き、帰るそぶりも見せない。

「あぁ それなら大丈夫だ。
タマリって知り合いの娘がいてね
彼女にココの場所を教えてもらったのさ」

「……タマリ?だれだそりゃ?」

男の言葉を聞いてもアッコイはそれが誰を意味しているのか分からなかった。
タマリ?そんな名前でこの店を知っている娘なんて、この町には心当たりが無い。
アッコイは男に更なる疑惑の目を向けると、男はアッコイが分かるように娘の特徴を補足する。

「おっさんと同じハイエナの娘なんだけどね」

ハイエナ族のタマリ……
そこまで言われてアッコイはようやく合点がいった。
同族なら、ニノの娘がそんな名前であったはず。
ここ数年姿を見ていないので、アッコイの中のイメージは、まだ子供だった頃の姿だったために思い至らなかったが、今では年頃を迎えているはずだ。
恐らくはニノの影響により、真っ当に裏稼業を生きているのだろう。

「あぁ ニノの娘だな。
あいつは元気にしてるのかい?
最近、姿を見ないと思ったら、一人立ちでもしたのか?」

今回、ニノの来訪に際して、彼女は自分の娘が居ないことに対し特に何も語らなかった。
アッコイは、それが仕事の最中に死んだか何かしたのだろうと想像し、特に言及もしなかった。
裏稼業で生きていくなら、仲間が死ぬのは日常茶飯事だ。
それ故、男の口から出た親族の一人が生きていると言う言葉に、アッコイは頬を緩ませる。

「まぁ そんな感じかな。
彼女に、ここはヤバい魔導具から攫ってきた人間まで、裏で色々扱ってるって聞いたんだが」

男は、アッコイの表情を見て警戒が少し解けたと思ったのか、彼に対して更なる探りを入れてくる。
だが、アッコイも軽々とソレに答えるわけにはいかない。
店の奥に隠している青髪はサルカヴェロ占領下では一等にヤバいシロモノである。
そんな訳で、アッコイは改めてしらばっくれると心に決めた。

「……どこでそんな与太話になったか知らんが、人間はいない。
魔導具も店に並んでいるモノだけだ。
目当ての品が無いなら、さっさと帰んな」

アッコイは、そう言って素性の良く分からない男にシッシッと手を振って追い払おうとするが
この男もまた、どうにも諦めの悪い部類の人間らしい。

「えぇ?おかしいなぁ。
彼女、ココならあるって言ってたんだけどなぁ」

「お前が言うような物は扱ってないし、無いモノは無い」

「本当に?隠してるんじゃないの?」

男はアッコイの顔を覗き込むように聞いてくるが、アッコイの方も正直に答えるわけにはいかない。
そもそも、タマリの知り合いと言うこの男は何者だ?
何が目的で嗅ぎ回っている。
それ以前に、この男は店の中に攫ってきた人間が居ることを知っているような口ぶりだが、何処でそれを知ったんだ?
そんな疑念がアッコイの心に渦巻き、彼のイライラはどんどん蓄積されていく。
そして、何度目かの男の問いで、遂にアッコイの怒りが爆発した。

「しつこい!何度も無いって言ってるだろうが!」

アッコイは激怒した。
その得体の知れない男のしつこさに。
だが、怒りを向けられたはずの男は、全く堪えたそぶりも見せず笑ってアッコイをなだめる。

「あはは、そう怒んなよ。
わかったよ。今日の所はもう帰ってタマリに確認してみるよ」

「うるせぇ!二度と来るな!!」

そう言って、男はまた来ると言って逃げるように走り去る。
後には起こったアッコイただ一人が残された。
アッコイは大声で怒鳴ったことで、高まった感情を肩で呼吸をしながら沈めつつ男の走り去った方角を睨んでいると
店の中から一部始終を聞いていたニノが、店頭の方にひょいと頭を出した。

「あいつ…… タマリの名を呼んでたね」

「はぁはぁ……
あぁ、ニノか。何だあいつは?
お前の娘の紹介とか言っていたが……
そういえば、タマリは何をしているんだ?
奴はタマリに確認してみると言ってたが、もしかして、奴と一緒に行動してるのか?」

お前の娘の紹介で、とんだ怪しいのが来たぞとアッコイは抗議の視線をニノに向けるが
当のニノは、複雑な顔つきで男の去っていった方角を眺めている。

「タマリは…… 前の仕事でドジって以来、行方不明だよ。
あたしゃてっきり死んだと思ってたけどね」

ニノの言葉を聞き、アッコイは驚いた。
怪しげな男と接点があると思われたタマリは行方不明……
これはあまりにも危険な匂いがする。

「じゃぁ何だ?
あいつ等一体何者だ?」

「分かんないよ。
ただ、タマリの名を出してココまで来たんだ。
もしかしたら、あの村の人間が青髪を取り戻そうとタマリを尋問して追いかけてきたのかもしれない……」

「おい、もしさっきのヤツがサルカヴェロに通じていたらどうする?
俺たちもお仕舞だぞ?!」

「奴がサルカヴェロにチクってるなら、とっくの昔にあたいらはサルカヴェロ兵に捕まってるよ。
あんたの話じゃ、サルカヴェロは青髪を必死に捕まえようとしてるんだろ?
なら、証拠が無くても怪しいって情報があっただけで兵を送ってくるはずさ。
ここは占領地。別に誤認捜査だったって誰も文句は言えないよ。
だが、さっきの奴等はサルカヴェロとは関係ない気がするね…… イラクリ!ちょっとおいで!!」

ニノが店の奥に向かって彼を呼ぶと、ドアの間からヒョコっとイラクリが顔を出す。
彼もまた先ほどのやりとりをドア越しに聞いていたのだ。

「カーチャン…… さっきの話って、もしかして……」」

大好きだった姉が生きているかもしれないという情報に、イラクリは不安げな視線をニノに送る。
そんなイラクリに対し、母であるニノは真剣な表情で彼の目を見据えて言う。

「さっきの男の顔は見たね?
尾行して奴が何者か探ってきな。
もしかしたら、奴らにタマリが捕えられてるかもしれないよ」

「うん!分かった!行ってくる!!」

イラクリは満面の笑みで頷くと、さっそく男の消えた方角へ向かって駆け出した。
例え、姉が先ほどの男に囚われていようと、自分の働き次第で姉が戻ってくるかもしれない。
絶対に失敗してはいけないと言う緊張感と共に、姉と再会できるという喜びが自然と彼の頬を緩ませたのだった。
そんなイラクリが走り去った後。
店に残された二人は彼の走っていった方角を見詰めていたが、アッコイは彼の姿が見えなくなると氷のように冷たい声でニノに言う。

「……こういう商売は慎重じゃなきゃ生きていけない。
俺は厄介事が嫌いだ。
……心の底からな。
お前が一族じゃなきゃ、厄介な青髪ごと纏めて始末してる所だ」

彼はニノを視線を合わせはしないが、顔を見ずともその声に怒りが含まれていることは良くわかった。
お天道様の下を歩けないような商売をしてる身、ニノは彼の気持ちがよく分かる。
だが、ニノの方も引くわけには行かない。
盗賊団の掟では、脱落した者は置いて行くというのが決まりだったが、それはさりとて肉親である。
それも一度は諦めたものが、生きているかもしれないという可能性が出てきたのだ。
出来るならば助け出したい。
そんな思いもあり、不機嫌なアッコイに対し、ニノがかけられる言葉は短い謝罪の一言だけであった。

「すまないね」


・・
・・・


アッコイとニノがそんな遣り取りをしていた頃、店を足早に離れた拓也は、エドワルドと共に細い裏路地を歩いていた。
そこは表通りと違い、人通りが少ないうえに曲がりくねっているため見通しも悪い。
拓也は周りを見渡して、人影が無いことを確認すると、懐から小型の無線機を取り出した。

「どうだ?」

短く問いかける拓也の声に、問いかけられた相手は無線機越しにクリアな音声を送ってくる。

『バッチリ聞こえます。
連中の話によると、カノエは間違いなく中に居ます。
それと、社長に尾行が向かいました。
気を付けてください』

無線の相手はヘルガと共に店の裏に潜んでいるラッツであった。
拓也がカマをかけに行く少々前から、ゴミや廃材に紛れ、乞食の様なボロ布被りながら壁に耳を押し当てている。
(それに同行したヘルガは、兎系の種族特有の単独行動をしていると鬱になるという習性への心のケアを担当している)
そして、流石は武装ピーターラ○ット。
彼の優れた聴力は、店の中の会話を盗聴するのに威力を発揮していたのだった。

「よくやったラッツ。
尾行の方は任せろ。
そっちは盗聴を続行しろ。
だが、やばくなったらすぐに逃げろよ」

そう言って通信を終える拓也に、横で遣り取りを聞いていたエドワルドが表情も変えずに確認する。

「尾行か?」

「あぁ
まぁ警戒して当たり前だろ。
だがこれも予想の範囲内だ。次の手を打とう。
自分はこれから適当に歩くから、エドワルドは計画通りに……」

「あぁ、わかった」

拓也は万事予定通りに進めてくれとエドワルドに目配せすると、エドワルドは静かに拓也と距離を取り、裏路地へと消えていく。
そうしてエドワルドが見えなくなると、拓也は一つ気合を入れて表通りの方へ向けて歩を進めるのであった。

「……さて、エドワルドも行った事だし。
こっちも疑似餌の役割を果たしますか」





・・
・・・




一方その頃、拓也を追っていたイラクリは、焦りの表情を浮かべていた。

「ちくしょー、どこ行ったんだ?」

意気揚々と尾行しようと飛び出したものの、ターゲットの姿を完全に見失っていた。
表通りを歩く人々を注意深く観察してみるが、そのどこにも先ほど店に来た男の姿は無い。
もし、対象が表通りを歩いてくれれば問題なくすぐに見つかるのだが、仮に既に裏通りに入っていたのならば、その捜索は絶望的である。
裏路地は細く曲がりくねり、縦横無尽に入り組んでいるため、見通しが最悪なくらいに悪い。
その上、イラクリ自身もこの町に来て日が浅いため、あまり歩き回ると迷ってしまう恐れもあった。
姉へと繋がる手がかりが失われてしまいそうな状況に、思わず涙が出そうになるイラクリであったが、そのクリクリッとした目が涙に潤むその直前、彼の目が店を訪れた男の姿を捉えた。

「あ、いた!」

幸運にも裏路地から出てきた男の姿にイラクリは思わず喜びの声を上げてしまったが、イラクリは気持ちを切り替えて尾行を続行する。
だが、尾行を再開して暫くすると、イラクリは男の奇妙な行動に気が付いた。
アッコイの店に近い表通りを男一人で行ったり来たり……
それまで見つからなかったのが馬鹿みたいに思えるほど、その男の珍しい外見もあってか目立っていた。
一体、あいつは何をしているんだ?とイラクリは心に思ったが、男は暫く表通りをうろうろすると、突然路地裏に向けて歩き出した。

「あ!あいつ、また路地裏に!」

イラクリは焦った。
また路地裏に入り込まれたら、また見失ってしまう。
イラクリは男を見失わないようにと足早に男を追って路地裏に入る。
対して、追われる男は路地裏に入ると、一体何処を目指しているのか、右に左に路地裏を曲がり奥へ奥へと進んでいく。
そうして暫く歩いていくと、既に随分と路地裏の奥へと入ってきたのか表通りの喧騒は遠く、ここなら何が起きても誰も気付かないだろう。
例えば、イラクリの姉を監禁して酷いことをしていても、誰も気に留めないかもしれない。
悪人のアジトとしてはうってつけの場所だ。

「くっそ、あの野郎……
ねぇちゃんに酷い事してみろ。絶対に許さないぞ」

そうして思わず声に出してしまったイラクリ。
だが、目の前を歩く男に向けられるその怒りは、周囲への警戒を薄めてしまっていた。

「そうか。でも、別に許してくれなくても良いんだぞ?」

突然後ろから掛る声に、イラクリは思わず飛び上がり、耳の先から尻尾の先までタワシのように毛を逆立てながら振り返る。

「えっ!?……  ぐきゃ!!?」

声の主を確認しようと振り返りきるより先に、首筋に急な衝撃と痺れを感じて視界が暗転する。
気を失う前に彼が最後に見たものは、
路地裏に立つ見知らぬ男と
その手に握られた紫電を放つナニカだった。


何者かの攻撃によって意識を手放したイラクリ。
深いまどろみの中では漂っていた意識が、次に感覚を取り戻し始めた時、最初に意識したのは遠く聞こえる人の声と頬に感じる鈍い痛みであった

「おい起きろ」

誰かの声と共に、頬に痛みと衝撃が走る。
意識が途切れたため前後の記憶が曖昧になっていたイラクリは、眠りを醒ます痛みに不満を感じつつも、ゆっくりとそのまぶたを開く

「う…… うぅん…… え?、うわぁ!!」

ゆっくりと目を開けてみれば、目の前に座る見知らぬ男。
イラクリは思わず飛び退こうとするが、彼の意思とは裏腹に体が自由に動かない。
そんな状態にもかかわらず、つい反射で飛び退こうと試みたため、彼は盛大に後頭部を後ろにぶつけてしまった。
鈍い痛みを後頭部に感じつつ、落ち着いて周りを見渡した後、彼はようやく自分の置かれている状況を理解した。
周りは人の住んでた気配の無いボロボロの建物。
恐らくは廃屋か何かなのだろう。
そんな所の柱に後ろ手を縛られて括り付けられている。
それも、手を動かすとジャラリと響く音とその冷たい感触から、金属の拘束具で手を縛られているようだ。

「静かにしろ。痛いのは嫌だろ?」

「うううう……」

そう言って、目の前に座る扁平な顔の男は、表情を変えぬままイラクリの両目を凝視する。

「お前に聞きたい事がある。
聞かれた事だけ答えろ。
あの店の中に、青髪の女の人が捕まっているな?」

「……」

男はそうイラクリに問いかけるが、誰が喋るもんかとイラクリは固く口を噤む。
男の周囲には他にも何人かの人影が彼の方を睨んでいるが、イラクリはそんなの関係ないとダンマリを決め込んだ。
だが、そんな事が許されるはずも無い。
目の前の男はぐいっとイラクリの顔を覗き込むと、脅すように言葉を続ける。

「黙秘か?
それでも構わないが、お前が答えないと仲間のタマリがひどい目に遭うぞ?」

「!? やっぱり、ねぇちゃんは生きてるんだな!?」

男の口から告げられた姉の名前に、思わずイラクリは男の言葉に応えてしまう。
そこで、イラクリはハッとするが、既に遅い。
姉に対する執着の高さをしっかりと見られてしまった。

「ん? そうか、あいつはお前の姉だったのか。
お前の姉は、今は死んではいないけれど……
この先、生きていけるかはお前次第だ。
もう一度聞く、あの店の中に青髪の女の人が捕まっているな?」

そう言って、目の前の男はイラクリの瞳の奥を覗き込むようにじっと見詰める。
そんな男を前にして、イラクリにとっては悔しい限りだが、姉が人質に取られている以上、どうこうする事も出来ない。
仲間の情報を話してしまう事になるが、タマリが酷い目に遭うのはイラクリにとってもっと嫌な事だった。
イラクリは暫く悩んだ末、男の質問にコクンと頷く。

「じゃぁ、もう一つ質問だ。
カノエは無事か?虐待はされていなか?」

「……カノエってのがあの青髪のねぇちゃんの事を意味してるなら、大丈夫だよ。
高そうな売り物に傷をつけるような真似はしなかったよ」

どうやら、あの青髪の女の安否はイラクリを捉えた者達にとっては重要な事らしかった。
イラクリの無事だと言う一言に、目の前の男だけじゃなく仲間の女や兎人達にもホッとしたような笑顔が浮かぶ。

「……そうか。
坊主、ならちょっとお前の仲間に伝言を届けろ。
人質の交換だ。
カノエを無傷でこちらの指定する場所に連れてこい。
そうすればタマリを解放する」

男は「分かったな?」とイラクリに確認すると、イラクリは真剣な顔つきで首を縦に振る。

「……うん。
分かった。伝えるよ」

男の出した条件は別に仲間にとって悪い事ではない。
目玉商品の予定が、今では疫病神と化した青髪の女を一人差し出すだけで、姉のタマリが返ってくるのだ。
ならば、イラクリも取引が纏まるまでは相手の機嫌を損ねない様にしようと、男を睨む視線を和らげる。

「場所は後程こちらから連絡する。
だが、交換までの間にこちらを襲うようなことが有れば、それは即タマリの死につながると思え」

「……わかった」

「わかったなら、さっさと戻って伝えてこい」

男はそう言うと、イラクリを縛っていた手錠を外す。
ガチャリと言う音と共に自由の身になったイラクリは、跡の残った手首を揉みほぐすと、風のような速さで廃屋を飛び出していく。
一刻も早く姉を救い出す為、母の下へ男の伝言を携えて……



そうして、土埃を残してイラクリが去った後には、拓也達4人が残された。

「とりあえずは上手くいってるな」

「カノエも無事みたいだし、アコニー達も喜びそうですね」

そう言って、廃屋の壁にもたれ掛っていたエドワルドとヘルガは、拓也の方へと近寄ってくる。

「そうだね。
あの子供の話ぶりからすると、怪我もしてなさそうだけど、
とりあえず、この事は無線で宿の皆にも伝えてやるか」

そう言って拓也は懐から無線機を取り出すと、周波数を宿との交信用のモノに合わせた。

「こちら偵察チーム。
宿の皆。聞こえるか?」

無線機越しの拓也の呼びかけ。
おそらく、宿の方は持ってきた機材にあった船との交信用の無線機が受信待機になっているはず。
何も問題が無ければ、向こうにも電波は届いている。
そして、その予想はあたり、拓也が2回目のコールを入れるより先に、無線機の向こうから宿に待機しているイワンの声が聞こえる。

『聞こえますよ
何かありましたか?』

「カノエを捉えた盗賊を補足した。
情報によれば、カノエは無事らしい」

この報告で宿に残してきた皆は喜んでいる事だろう。
アコニー辺りはパッキーと踊っているかもしれないと、拓也は宿の様子を想像して微笑む。

『それは良かったです。
我々も手放しで喜びたい……ところなんですが』

だが、てっきり皆が喜んでくれると思っていた拓也に対し、イワンの声は語尾が濁る。

「?
何かあったのか?」

何を言いよどんでいるのか?
拓也は首をひねりながら無線機に向かって問いかけると、無線機の向こうから言い難そうにイワンが説明を始めた。

『はい。
社長が出発された後、無線機を宿に設置して沖合の船と連絡が取れたのですが……』

「何だ?一体どうした?」

『船からの連絡によりますと、副社長と一緒にツィリコ大佐が明後日にはこちらに向けて発つそうです』

「エレナと大佐が?!
何で?
というか、なんで大佐がこっちの場所を知ってる?」

拓也は驚いた。
国後で待っていると言っていたエレナは兎も角、なんでツィリコ大佐まで来るんだ?
そもそも今回の渡航は、行政指導も覚悟の上で、極秘の密航だったのになぜ知っている?
拓也は何処から情報が漏れたんだと、頭を抱えていると、拓也の後ろに立っているエドワルドがポリポリと頬を掛けながら拓也に声を掛けた。

「あぁ…… それについてはな
最近、お前も忘れてるかもしれないが、俺たちの所属は内務省警察だ。
お前がいくら政府に隠し事をしても、内務省警察には筒抜けだからな。
それをどう扱うかは上司次第だが」

「……なるほど。
エドワルド達、ロシア人組はそっちの人たちだったよね。
最近は只の天下り顧問的な存在くらいにしか意識してなかったわ……」

拓也は行動を共にするロシア人達の頼もしさと信頼から自分の仲間の様に扱っていたため忘れていたが、そもそもエドワルドはステパーシンから放たれたお目付け役である。
拓也は何やら少し裏切られたような気分になるとともに、自分の浅はかさに肩を落とす。

「そういう所がお前の抜けてる所だ」

「あぁ うん。反論できない……
まぁ、それで大佐は何がしたいの?
というか、どこまで報告したの?」

拓也は、意気消沈つつも無線機を手に取って大佐の目的をイワンに尋ねる。

『表向きは民間調査隊の視察です。
あと、報告はバトゥーミの現状くらいまでですね。
我々は宿から出てないので、ギンカさんに聞いた情報位しか持ち合わせがありませんが』

「視察ね……
でも、それって現地まで来て大佐のやる事?
仮にも外地なんだから外務省の仕事じゃないの?」

『そこら辺の説明はありませんでした』

「……人選と目的の意図が読めない。
大佐が動くって事はステパーシンのオッサンが裏に居ると見て間違いないと思うけど、彼らは一体なにがしたいの?」

『さぁ?そこまでは何とも……』

おかしい。
質問の度に拓也の中に生まれた疑念は膨れ上がる。
バトゥーミの現状を知っているなら、サルカヴェロとの接触があるかもしれない。
ならば、外務省から正式に役人の派遣があってもいいはずだ。
なぜ大佐なのであろうか?
しかも視察と言う明らかにダミーの建前まで背負って?
考えれば考えるほど、そんな想像が拓也の頭の中を渦巻き始めたのだった。
















一方その頃



サルカヴェロ第5軍
バトゥーミ司令部

それは、占領したバトゥーミの街で、かつてこの町最大の名主が所有していた邸宅だった。
かつては多数の使用人を雇い、贅を尽くした屋敷であったが、現在はサルカヴェロ軍の司令部として接収されている。
そんな邸宅の一室、接収前は名主の部屋として使われていた一室に二人の男が地図を眺めていた。
それはサルカヴェロの基幹民族である巨人族の司令官と小人族の副司令の二人。
背丈にして3倍はありそうな二人だが、身長差や階級差など無いかのように対等に話をしている。
というのもサルカヴェロというのは多民族国家であるが、国家の基幹はこの二つの民族であり
軍団の司令官は軍団中の両民族のトップが交代で務めることになっている。
かつては両頭体制もとられていた時があったと言うが、運用上の問題で今の形になったという訳だ。
そんな彼らが地図を睨みながら今後の侵攻経路について話し合っていると、部屋の入口にある大扉からノックが聞こえた。

「司令。報告がございます」

「入れ」

ノックを聞いて小人族の副指令がドアの向こうにいる兵士に室内に入るように言うと
伝令の兵士は、室内に少し入った所で礼の姿勢を取る。

「どうした?」

「報告です。
市内の制圧は完了しました。
抵抗等は全くありません」

それは予定通りの作業が完了したという報告。
全ては予想の範疇で推移していた。

「それはそうだな。
ココの連中は、後続の部隊を知ってるからな。
サテュマ人の兵団など、奴らにとってみれば悪夢でしかないだろ」

「我らが支配部族となったとはいえ、サテュマ人の好戦性は我々ですら手を焼いたからな。
彼らが恐れるのも無理はない」

副司令の言葉にゼントラディの指令も頷きながらサテュマ人の恐ろしさを思い出す。
彼等を従えたのは数年前。
新式の装備で固めた軍団で彼等と支配地域を争ったのだが、その抵抗は言葉で言い尽くせないほど激しい物だった。
物量、質ともに勝っていたはずなのに、全くもってその戦列が抜けない。
むしろ、古代に滅びた部族の精神と文化を継承したというその人狼共は負け戦であることを感じさせないほどに猛っていた。
包囲殲滅しようとしたはずが、正面突破で此方の本陣に突撃をかけてくること数回。
その後の撤退戦でも、少数の味方自体を罠として使う事で最後まで補足されること無く逃げて行った。
他の部族との戦いでは、圧倒的な勝利を収めていたサルカヴェロ軍であったが予想外の苦戦にサテュマ人の戦闘民族としての真価を知ったのだった。
その後、その国力差から最終的な勝利は無理と判断したサテュマ人は、所領安堵と引き換えに降伏。
今ではサルカヴェロの手で近代化し、その先兵として働いている。
そんな彼らの名声は中々のモノで、バトゥーミ以外にも彼らの名前を聞いただけで降伏した部族は少なくなかった。

「それで?報告はそれだけか?」

「いえ、報告はもう一つあるのです」

「何だ?言ってみろ」

「奴隷市場の商人からのタレこみですが、この町に我々以外にも青髪を探している奴がいると……」

青髪と言う単語を聞いて二人の纏う雰囲気ががらりと変わる。

「なんだと?
詳しい話を聞かせろ」

「いえ、それが人族の男が知り合いを探していると言って、青髪を扱っているかどうか聞いてきたそうです。
どうやらその男は、我々も青髪を追っている事を知らないらしかったのですが、何やら青髪に関係している雰囲気だったそうです」

青髪……
それはサルカヴェロ人なら忘れる事の出来ない忌むべき存在。
軍としてもその動向の把握は、何よりも優先順位の高いものであった。

「それで…… その男は今どこに?
捕縛したのか?」

青髪に繋がる物なら、何が何でも捕えなければならない。
司令は伝令に捕縛したかどうか尋ねるが、それに対して伝令は首を横に振る。

「それが、商人も青髪の名を聞いた途端に追い返したらしく、捕まえてはおりません」

なんでもその商人は、サルカヴェロが青髪の痕跡を追っている事は知っていたが、その重要性を正しく認識していなかったそうだ。
まぁ 制圧したばかりの街で、サルカヴェロの考え方を理解しろと言うのは酷だというものだ。
ならば、今はその青髪に関係あるかもしれないという男の行方を追う事に専念しようと司令は心に決める。

「……その男、何か知ってそうだな。
今すぐに、その男を見たという商人を連れてこい。
詳しい特徴を聞きだし、全市に手配書を回せ。
絶対にこの町から出すなよ」

「は!」

室内に響く短い返答と共に伝令はそのまま部屋から出て行く、そうして二人残った室内で
副指令と司令はテーブルに置かれた酒を一口飲みながら目を合わせる。

「……まだ残っていたか。
もう、全て刈り取ったと思ったのだがな……」

「一体、どこに逃げていたのかは知らんが、是非ともここで捕まえたいものだ」



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