<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.29737の一覧
[0] 試される大地【北海道→異世界】[石達](2012/11/29 01:19)
[54] 序章[石達](2012/11/29 01:05)
[55] 起業編1[石達](2012/11/29 01:06)
[56] 起業編2[石達](2012/11/29 01:07)
[57] 起業編3[石達](2012/11/29 01:08)
[58] 国後編1[石達](2012/11/29 01:08)
[59] 国後編2[石達](2012/11/29 01:09)
[60] 転移と難民集団就職編1[石達](2012/11/29 01:09)
[61] 転移と難民集団就職編2[石達](2012/11/29 01:10)
[62] 礼文騒乱編1[石達](2012/11/29 01:10)
[63] 礼文騒乱編2[石達](2012/11/29 01:11)
[64] 礼文騒乱編3[石達](2012/11/29 01:11)
[65] 礼文騒乱編4[石達](2012/11/29 01:12)
[66] 戦後処理と接触編1[石達](2012/11/29 01:12)
[67] 戦後処理と接触編2[石達](2012/11/29 01:13)
[68] 嵐の前編[石達](2012/11/29 01:14)
[69] 北海道西方沖航空戦[石達](2012/11/29 01:14)
[70] 大陸と調査隊編1[石達](2012/11/29 01:15)
[71] 大陸と調査隊編2[石達](2012/11/29 01:16)
[72] 大陸と調査隊編3[石達](2012/11/29 01:16)
[73] 魔法と盗賊編1[石達](2012/11/29 01:17)
[74] 魔法と盗賊編2[石達](2012/12/08 01:24)
[75] 決戦[石達](2012/12/08 01:20)
[76] 盗賊と人攫い編1[石達](2012/12/31 22:47)
[77] 盗賊と人攫い編2[石達](2013/01/19 21:24)
[78] 盗賊と人攫い編3[石達](2013/01/19 21:23)
[79] 道内情勢(霧の後)1[石達](2013/02/23 15:45)
[80] 道内情勢(霧の後)2[石達](2013/02/23 15:45)
[81] 外伝1 北海道航空産業の産声[石達](2013/02/23 15:46)
[82] 東方世界1[石達](2013/03/21 07:17)
[83] 東方世界2[石達](2013/06/21 07:25)
[84] 東方世界3[石達](2013/06/21 07:26)
[85] 幕間 蠢動する国後[石達](2013/06/21 07:26)
[86] 東方世界4[石達](2013/06/21 07:27)
[87] 東方世界5[石達](2013/06/21 07:27)
[88] 東方世界6[石達](2013/06/21 07:28)
[89] 東方世界7[石達](2013/06/21 07:28)
[90] 世界観設定[石達](2013/06/23 16:49)
[91] 人物設定[石達](2013/06/23 16:57)
[92] 東方世界8[石達](2013/07/15 01:51)
[94] 帝都ティフリス1[石達](2013/08/09 02:02)
[95] 帝都ティフリス2[石達](2013/08/12 00:21)
[96] 帝都大脱走1[石達](2013/09/23 00:16)
[97] 帝都大脱走2[石達](2013/09/22 22:47)
[100] 帝都大脱走3[石達](2014/02/02 03:03)
[101] 対エルフ1[石達](2014/02/02 03:03)
[102] 対エルフ2[石達](2014/02/05 22:45)
[103] 対エルフ3[石達](2014/02/05 22:45)
[104] 対エルフ4[石達](2014/02/05 22:46)
[105] カノエの素性1[石達](2014/02/05 22:46)
[106] カノエの素性2[石達](2014/02/09 13:13)
[107] 別れ、そして託されたモノ1[石達](2014/02/09 13:14)
[108] 別れ、そして託されたモノ2[石達](2014/02/09 13:16)
[109] 決意[石達](2014/02/09 13:42)
[110] 新しい風[石達](2014/04/13 10:41)
[111] 交流拡大、浸透と変化1[石達](2014/04/13 10:41)
[112] 交流拡大、浸透と変化2[石達](2014/06/04 23:46)
[113] 交流拡大、浸透と変化3[石達](2014/06/04 23:47)
[114] 交流拡大、浸透と変化4[石達](2014/06/15 23:55)
[115] 交流拡大、浸透と変化5[石達](2014/06/15 23:55)
[116] 平田、大陸へ行く1[石達](2014/08/16 04:02)
[117] 平田、大陸へ行く2[石達](2014/08/16 04:02)
[118] 対外進出1[石達](2014/09/14 08:19)
[119] 対外進出2[石達](2014/08/16 04:04)
[120] 対外進出3[石達](2014/10/13 01:58)
[121] 回天1[石達](2014/10/13 01:59)
[122] 回天2[石達](2014/10/14 20:24)
[123] 回天3[石達](2015/01/18 08:20)
[124] 回天4[石達](2015/01/18 08:24)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[29737] 盗賊と人攫い編1
Name: 石達◆48473f24 ID:a6acac8b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/12/31 22:47
『こちら第12調査隊。こちらに向かっていた集団は全滅したようだ。
救援に感謝する』

集落に接近しつつあった集団は、炎と銃弾によって徹底的にすり潰された。
そして、その地獄を運よく生残った敵兵は、辺境伯軍の残党狩りによって、これまた徹底的に狩りつくされる。
今ではもうこちらに接近する敵の姿は無い。
そんな様子を見て、救援を送ってくれた軍に拓也は無線で謝意を伝える。

「さて、ひとまず落ち着いたが、これからどうする?」

エドワルドが拓也に質問する。
盗賊に襲われていた村も解放し、当面の危機は去った。
特に何かしなければならないという危急の事象は無い。

「とりあえずメリダ村に戻ろう。
この村の女性達も、急いでメリダ村に逃げさせちゃったから呼び戻さなきゃならないし
それに、ヘルガたちには何度もコールしているけど、まったく応答が無い。
何かあったのか心配だ」

「そうだな。じゃぁ、一度、戻るとするか」

拓也は、敗残兵がこちらに向かっているのを確認した直後、状況を見極めるために残った拓也達のBTRと別れた武装ピックアップに先導させて、女達をメリダ村に避難させていた。
流石に全員はピックアップの荷台に乗らなかった為、徒歩での移動となったが、それでも既に結構な距離を移動しているはずだ。
あまりに息を呑む展開に見とれていた為、おそらく既に彼らとは結構な距離が離れているだろう。
これから追いかけるにしても、オフロードのため速度はあまり出せない。
そんな事を考えながら、拓也達はBTRに乗り込むと来た道を戻る。
途中、特にトラブルは無かったとはいえ彼らと合流できたのは、もうメリダ村から目と鼻の先まで来た地点だった。

「やっと、合流できたけど、ここまで移動させといて戻れって言うのは酷だよね」

追いついた徒歩の一行を見ながら拓也は考える。
徒歩で二時間。
休み無く歩いてやっと目的地かというところで、引き返そうって言ったら皆どう思うだろうか。
脳内で不満をたれる一行をイメージして拓也が苦笑いしていると、兵員室に腰掛けるエドワルドが銃眼から外を見ながら拓也に言う。

「今から引き返したんじゃ、戻るのは日暮れになる。
こりゃ、村長に事情を説明して彼女達を一泊させて貰った方が良いんじゃないか?
どうせ復興するにしても何にしてもメリダ村の協力は必要だろう?」

「そうだね。
まぁ、村はもうすぐだし、とりあえずこのまま行こうか」

そう決めた拓也達の乗るBTRは、集団を先導して道を進む。
村と村との間にある森や林の間をすり抜け、最後の深い木々のカーテンが切れる頃、幾筋もの黒い煙が彼らの目に留まった。

「何だ?あの煙は?」

不安に駆られる一行。
それもそのはず、彼らは先ほどまで"戦場"をその目で見ていたのだ。
嫌なイメージが頭の中で重なる。
拓也は、イワン達の乗るピックアップにはそのまま女達の護衛を続けるように言うと、BTRの速度を上げて先行した。
そして、そこで見た光景に目を見開いた。
何件かの家が燃え尽きつつも煙を吐いている。
そして、あろうことか村に置いていたトラックの運転席付近がブスブスと黒焦げになっていた。

「!!?」

「なんだこりゃ…… 糞、俺達のいない間に襲撃か!?」

村にはアコニー達を護衛にして教授達を残していた。
彼らは果たして無事だろうか……
拓也の脳裏に最悪の事態がよぎる。

「社長!」

不意に呼ばれる聞き覚えのある声。
拓也はハッとその声の方を向く。

「アコニー!皆無事か?!」

近寄ってくる彼女を見て、拓也はBTRの上からひょいと飛び降りると、彼女の肩を掴んでその無事を確認した。

「それが……」

強く肩を握られながら鬼気迫る表情で問われ、アコニーの顔にも涙が浮かぶ。

「どうしたんだ??何があった」

「カノエが!カノエが盗賊に攫われました!
社長達が出発して直ぐに、霧にまぎれて盗賊たちが襲ってきたんです。
教授たちは守り通せたんですが、カノエが……」

目から大粒の涙を零し、アコニーが語る。
拓也は教授達護衛対象が無事なことに少々の安堵を覚えたが、自分達の仲間が攫われたとの報告に沸々と行き場の無い怒りがわいてきた。

「クソ!攫われただと?!どこの糞共の仕業だ!
……しかし、何だって直ぐに連絡しなかった?」

拓也は悪態をつく。
先ほどまで、悪党に捕まった女達の末路は嫌というほど見てきた。
自分の部下がそんな理不尽な目に会うというのは我慢にならなかった。

「それは。襲撃直後は霧が…… それと奴等が逃げる際に彼方こちらに火を放ったんで、無線機が乗ってたトラックが燃やされてしまって……」

そういってアコニーはブスブスと運転席が焦げたトラックを指差す。
連絡が出来なかったのには、それなりの理由があるようだ。
ならばアコニーに対して怒りをぶつけてもしょうがない。
拓也は一つ深呼吸をすると、心を鎮めて状況を整理することにした。

「とりあえず、詳しく説明しろ」

アコニーの肩を握る力を抜き。
ゆっくりとした口調で拓也が言う。
その言葉に、アコニーは淡々と説明を始めたのであった。







拓也達がBTRと武装ピックアップに乗って隣村に向かった後、メリダ村に残されたメンバーは拓也の言いつけを守り宿で待機している。
だが、宿に篭ってばかりでは、外の様子が分らないと、アコニー、ヘルガ、カノエの三人は宿の入り口に椅子やテーブルを並べて陣取っていた。

「あー 暇だねー二人とも」

アコニーがカノエと共に興じていたトランプを片手に、テーブルに突っ伏しながら言う。

「まぁ 霧であまり歩き回れないしね」

それに対し、トランプの相手をしていたカノエもお茶を啜りながら返事をして、手札の一枚をテーブルに投げた。
だが、そんな二人の態度が不満なのか、残る一人はテーブルの傍らに立って呆れている。

「もう、二人ともちゃんとしてよ!一応留守を頼まれたんだから。
護衛対象の教授達は今どうしてるか確認してる?」

「えー、二人とも部屋に篭って"ほうこくしょ"だの何だのを書いてるよ。
それに歩哨なら、さっきパッキーが見回りに行ったから良いじゃないのさ」

「じゃぁ、ますますやる事がないわね」

根が真面目なヘルガが二人に注意するが、アコニーは大丈夫だよぅと聞き耳を持たず。
カノエにいたっては、やることが無いならしょうがないと割り切っていた。

「もう、まぁいいわ。じゃぁ私も、ちょっと見回りに行って来る」

そんな二人の態度が気に入らなかったのか、ヘルガはクルリとテーブルに背を向ける。

「こんな霧の中を?あなたが?」

「大丈夫だよ。変な奴が来たらパッキーの耳と私の鼻で探知出来るし」

濃い霧の中、ヘルガ一人で何の足しになるのか?それ以前に大丈夫なのか?と二人は心配するが、ヘルガはフフンと不適に笑って腰の装備を叩いた。

「こういうのは仕事やってるって姿勢も大事なの。それに、何かあってもコレがあるし大丈夫よ」

「ん~?トカレフ?まぁ気休めにはなるかもしれないけど、ろくに射撃訓練もしてないヘルガじゃ当たらないよ?
まぁ 威嚇にはなるかもしれないけど」

得意顔のヘルガにアコニーは眉を顰めて忠告するが、当のヘルガは「あらそう」と短く呟くと、笑顔をアコニーに向ける。

「じゃぁ 何かあったら撃ちまくるから、その時は助けに来てね」

霧の中でも銃声は聞こえる。
何かあったら飛んできてとヘルガはアコニーに言ってのけた。
自分に対する信頼。それをヘルガの言葉に感じたアコニーは、まぁ大丈夫かと考え、ヘルガを見送ることにした。

「ハイハイ。じゃぁ 見回りに行くんだったら、ついでにトラックからクワス持って来て」

何かあったら、パッキーの耳と私の鼻がある。
どうせ、ヘルガじゃ散歩以上の事にはなるまいとタカをくくったアコニーは、ヘルガに一つお使いを頼む。
クワス。パンから作るロシアのジュース。
味は炭酸とアルコールの抜けた発泡酒に近いが、アコニーはそれがお気に入りだった。

「それじゃ、わたしはリボンナポリン」

そんなアコニーを見て、これまたついでにとカノエもアコニーに注文する。

「もぅ、そんなにだらけて後で怒られても知らないわよ?」

ヘルガは、二人の頼みにしょうがないなぁと言いながら、建物沿いに霧の中へと消えていくのだった。


……

「なかなか帰って来ないわね」

宿の前でトランプに興じていた二人だったが、なかなか戻ってこないヘルガを気にしてカノエが辺りを見回す。
だが、そこにあるのは一面の白い世界であり、ヘルガの姿は窺い知る事は出来ない。

「まぁ 満足したら帰ってくるでしょ。それに何かあったら匂いや気配で……」

心配ないよと言いたげに臭いを嗅ぐアコニーだが、何度か鼻を鳴らしたときにその動きが固まった。
風に流れてくる臭い。村民とも仲間とも違う異質な匂い。なんだこれは?

「ん?どうかした?」

「シィ! ……すんすんすん」

カノエが何かあったのかと聞いてくるが、アコニーは意識を全て臭いに集中させ、その正体を探る。

「臭う……」

臭いは複数。それもかなりの数だ。
それにかすかに混ざる血と鉄の香りに、アコニーの表情は険しくなる。

「コレを持って」

アコニーは状況を説明するより早く、ホルスターから抜いたトカレフをカノエに渡す。

「これって拳銃?」

だが、急に拳銃を渡されたカノエも、突然のことに戸惑いを見せる。

「何か来た。それも大勢の臭い……」

感じた異変をカノエに話そう。
アコニーがそう考えて、説明を始めようとしたそんな時だった。、
霧の中からカチャカチャと金属を擦らせながら走る音が聞こえる。
その音に、アコニーは傍らにあったAKに手を伸ばし、カノエはアコニーの後ろへと隠れる。
そして次の瞬間、ニュッと霧の中から人影が現れた。

「おい!二人とも!賊だ。大勢が集落を包囲しようとしてる」

アコニーが銃口を向ける先から現れたのは、哨戒に出ていた兎人族の同僚。
それが慌てた表情でこちらに駆け寄ってくる。

「パッキー!」

アコニーは彼の姿を確認して銃口を下げるが、パッキーは銃口を向けられていたことなどお構いなしに状況を説明する。

「奴等、まだこちらが気付いていないと思ってるが、時間の問題だ。
すまん。言い訳にしかならんが、奴等、足音を消すのに慣れてる。
包囲の完成する直前まで分らなかった。
だが、とりあえず俺達の仕事はこなさなきゃならん。
こちらの戦闘員は少ないし、守りに徹しよう。ヘルガや教授達を宿の一室に集めてくれ」

パッキーは人数的な劣勢と視界不良での戦闘を加味して防御計画を提案するが、それを聞いていた二人は顔を見合わせる。

「くぅ!こんな時に……」

「一体、どうした?」

苦虫を潰したような表情をするアコニーに、パッキーが尋ねる。

「ついさっき、ヘルガが見回りに出て行っちゃった」

そう言ってアコニーは深い霧を指差すが、事態は刻一刻と進行している。
そして遂にその時が来たのか、霧の中で叫び声があがった。

「きゃぁぁぁぁ!!!」

「どうやら敵がお出ましになったようだ。
アコニー。お前はこの宿に陣取り皆を守れ、俺は村人の援護とヘルガを探しに行く」

「うん」

パッキーはアコニーと役割分担を確認すると、再度霧の中へ駆け出す。
そして、その場にはアコニーとヘルガの二人だけが残された二人は、即座に宿に向かうと宿の主人に敵が来たことを伝えて、そのまま二階へと駆け上がり教授の部屋へと向かう。
アコニー達が二階についてみると悲鳴を聞いた教授と荻沼さんが、何事かと廊下に出てきていた。

「教授。敵襲です。
あたし達がお守りしますので、部屋からは絶対に出ないでください。それと、念の為に窓の鎧戸も閉めておいてください」

そう言ってアコニーは教授の背中を押しながら、「敵襲?!」と驚く教授らを無視して彼らを部屋へと押し込める。

「これで宿を守っている限り、教授達は安全だね」

窓の鎧戸は簡易とはいえ鍵があるため、外からは開かない。
これで部屋に入ろうとするには、現在アコニー達が陣取る廊下を抜けるしかない。
ならば、自分が健在である限り教授達は大丈夫。
アコニーは、自分の任務である教授達の護衛については達成できそうなことに安堵すると、残るもう一つの不安を胸に廊下の窓から外を見る。

「ヘルガ……」

アコニーが心配そうに呟く。

「大丈夫よ。パッキーは耳がいいもん。きっと見つけ出してくれるわ」

ヘルガが何かしらの声を出せば、パッキーが気付いて接触できるはず。
カノエは、心配するアコニーをなんとか元気付けようと彼女に大丈夫と言い聞かせる。

「そうだといいけど……」

カノエの言葉に、アコニーもそう信じようと言い掛けた時だった。

「Whoooooooop……」

村全体に届く轟く唸るような鳴き声があたりに響く。

「これは!?」

「知っているの?」

その声にアコニーは心当たりがあった。
この独特の声色。
その声の主は、亜人の間では有名すぎた。

「ハイエナ野郎だ!根っからの盗賊部族だよ」

そうアコニーが説明した矢先、霧の中から鉈や剣を持った一団が現れる。
見れば、犬族のような耳と尻尾に、特徴的な茶色い毛色と黒いブチ
大陸の亜人の間では有名な盗賊部族の特徴と、霧の中から現れた其れが合致する。

現れた盗賊たちは、宿に押し入るための入り口を探してウロウロしはじめる。
だが、そんな時、外から戻ってきた不運な宿の奉公人は、彼らと鉢合わせしてしまった。

「ひゃぁぁ」

武器を手にした亜人たちを見て、奉公人の女が悲鳴を上げる。
それに対して、盗賊は獲物が向こうから現れたと嬉々として襲い掛かった。
盗賊たちは奉公人を押し倒そうと、彼女を突き飛ばした。

「この!彼女から離れろ!」

それを見ていたアコニーは、咄嗟に二階の廊下の窓から発砲する。
上から降り注ぐ形となった銃弾は、奉公人を傷つけることなく盗賊の体に突き刺さり、3人ほどいた盗賊は次々と地面に倒れていった。

「はぁはぁ……」

奉公人は突然の事に腰を抜かしながら、呆然と血が流れ出る死体を見つめている。

「何してる!早くこっちへ!」

アコニーは、腰を抜かした奉公人を呼ぶ、折角助けたのにそんな所でボーっとされていては、何時また襲われるか分らない。

「あ、はい!」

奉公人はアコニーの言葉に正気に戻ったのか、宿に向かって駆け出した。
彼女は直ぐにアコニーの視界から消えるが、宿の中では、主人が扉の閂を開けて彼女を無事保護することが出来た声が聞こえる。
アコニーはそんな声を聞きながら、未だ戻ってこない一人の友人の事を思っていた。

「うぅ…… ヘルガ…… 一人で行かせるんじゃなかった」

アコニーはそう呟いて窓の外に広がる霧を見つめる。
時折、パッキーのと思しき銃声が聞こえるが、果たして彼はヘルガを見つけることは出来たのであろうか
そんな時だった。

パーン……

今まで聞こえていた銃声とは違う乾いた音が霧の中に響く。

「!? この銃声は?」

パッキーのAKとは違う拳銃らしき銃声。
それでいて、現在、この村で銃を持って外に出ているのは二人しかいない。

「パッキーの銃声とは逆方向……」

カノエが銃声の聞こえた方を見ながら呟く。
その意味するところは、未だパッキーはヘルガに接触できておらず、更にヘルガが銃を使わなければならない状況にあるという事だ。

「ぐぅ…………」

アコニーは悩む。
ヘルガは心配だが、自分がここから離れれば教授達は誰が守るのか。
悔しさと焦りが入り混じり、落ち着くことも出来ない。
そんな彼女を見て、横でその様子を眺めていたカノエが、そっと口を開いた、

「ここは私に任せて、あなたはヘルガを呼び戻してきて」

そう言うと、カノエはアコニーから渡されていたトカレフのスライドを引く。

「でも……」

その間の護衛は?

言葉にしなくても通じるその後の言葉。
だが、カノエもそれは分っている。
だから、カノエは笑って言葉を続けた。

「大事な仲間でしょ?
敵が来たら、私が教授達を守る。
引き金を引くだけで敵を倒せる武器があるんだもの。
ヘルガを見つけて貴方が帰ってくるまでの時間稼ぎくらい出来るわ」

カノエの言葉がアコニーの心に響く。
アコニーは、一拍の間の後にコクンと頷いた。
大事な仲間であり、大事な友人の一人。
絶対に失いたくは無い。

「ごめん!すぐに戻る!」

アコニーは二階の窓からジャンプすると、しなやかに地面に降り立って走り出した。
霧の中での加速の魔術は危険であったが、今はそんな事は些細なことだ。
風を追い越し、銃声の聞こえた方向に向かい、微かに風に漂うヘルガの匂いを辿って走る。
跳躍の度にその臭いは強くなり、集落の端まで到達した時、遂に霧の中から人影が見えた。
飼料小屋の壁を背にして二人の男に囲まれている小柄な金髪の女。
それは、今まさに捕まろうとしている瞬間でもあった。

「もう!一体何なのよ」

ヘルガは震える手で必死に銃を握りながら叫ぶ。
彼女は何度か発砲してみたものの、当たらぬ弾丸に抑止効果は無く、少々の時間稼ぎにしかならない。
最早、ヘルガには嫌々と首を横に振ることしか出来ない状況であった。

「ヘルガ!」

「!?」

ヘルガはハッと盗賊の後ろに視線をやる。
声のした方向。霧の中から現れたのは、何よりも待ち望んだ友だった。
彼女は、霧の中から現れるやいなや、鋭いその爪で盗賊の男の顔を削ぎ落とした後、もう一人の男にきめた回し蹴りで、その頚椎を叩き折った。

「アコニー!」

自分を囲んでいた盗賊が無力化されるのを見て、ヘルガがアコニーに抱きつく。

「無事で良かった」

アコニーが笑いながらヘルガの頭を抱いて落ち着かせるが、ヘルガはその腕の中で顔を上げる。

「あなた!それより教授達は?」

ヘルガの問いに、安堵の表情を浮かべていたアコニーの顔から笑みが消える。
無事を喜んでいられる余裕は無いのだ。

「今、カノエが宿で守ってる。あたし等も直ぐに戻らないと……」

「わかったわ。直ぐに戻りましょう。  ……って、あれ見て!」

すぐに宿に戻ろうとした二人であったが、彼女達は見てしまった。
ヘルガが指差すその方向。
そこには、3人の盗賊達が、奪った食料や盗品を手に笑いながら走っていくところだった。
そして、その中の一人が肩に担いでいるモノ。
ジタバタと動く袋から人間の足が見えている。
そして当の盗賊たちは、霧と彼我の距離が微妙な事もあり、ヘルガたちには気付いていないようだったが、アコニーはそれを見て怒りに燃える。

「奴等、人まで攫っていくのか!許せない!」

咄嗟に銃で撃とうと思ったが、敵と人質が密着しているため、肩に担がれた人間に当たる可能性も捨てきれない。
アコニーはヘルガに小銃を託すと、ナイフを片手に走り出した。
魔法によりブーストされた速度で接近し、無音のまま背後から繰り出した一撃により、盗賊は何が起きたか分らなかっただろう。
瞬く間にアコニーは3人の盗賊を切り裂いた。
首筋を大きく切られた盗賊達はその場に崩れ落ち、アコニーがジタバタと動く袋を確保する。

「大丈夫?!」

アコニーが袋を開け、出てきた人影に後を付いて来たヘルガが声をかける。
中にいたのは容姿の整った村娘。
袋の中に押し込められて息苦しかったのか、肩で大きく息をしている。

「ぷはぁっ!うぅぅ…… ありがとう……」

「お礼はいいからさっさと避難するよ。ついといで」

アコニーはそう言うと、村娘の手を取って立ち上がらせる。
が、さぁ戻ろうというところで、その足が止まる。

「宿に戻ろうと思ったものの…… えーと、宿はどっちだったかな」

ヘルガを助けに行った時、アコニーは銃声と臭いで大体のヘルガの居場所が分ったが、帰るとなると話は別であった。
深い霧の中、アコニーは少々困った顔をする。

「宿ですか?私が案内できますよ」

「本当!?」

「えぇ。自分の村ですもん。霧があったって建物伝いに行けば少々遠回りですが何とでもなります」

その村娘の言葉に、アコニー達は丁度良かったと案内を任すことにした。
霧の中で何とか見える位置にある建物伝いに村娘が走り、アコニー達がそれに続く。
そうして、これでなんとかなりそうだとアコニーが安堵しかけた時、一番恐れていた事が起きてしまった。

パーン……

霧の中に響く発砲音。
音の感じからして拳銃。
そして、ヘルガは発砲していない。
となれば、導かれる答えは一つであった。

「!?」

「銃声?それも拳銃の……」

銃声を聞いてヘルガが呟くが、それとほぼ同時にアコニーが叫んだ。

「急げ!」

アコニー一人であれば、魔法で加速すれば宿まではあっという間であるが、二人を連れているためそれも出来ない。
仮に自分だけ向かって、その間に再度彼女らが襲われては意味が無いのだ。
二人を連れて可能な限り急ぐ。
しかし、鍛錬していない女の足。
いかんせんスピードが足りない。
その為、ようやく宿に辿り付いた時には、宿から戦利品を抱えた一団が出てくるところだった。

「まてぇ!その袋、置いてけぇ!」

アコニーが、人間の足が出た袋を肩に担ぐ盗賊に向かって叫ぶ。
だが、叫ばれた相手は、別段に驚いたようなそぶりも無い。
盗賊は、クルリと首を回してアコニーを見ると、フンと鼻を鳴らしていやらしく笑った。

「おっと、これは可愛い猫ちゃんだね」

その盗賊は女だった。
かなり人種にベースが近いハイエナ族の亜人。
皮の胴当てと粗末な布の服を着込んでいるが、露出している腕や太ももを見る限り、かなり鍛えていそうな風体だった。

「煩い!ハイエナ野郎!いいからよこせ!」

アコニーが一気に詰め寄り、肩に担いだ人間を奪おうとする。

「おっと、そんなノロマじゃ捕まらないよ」

だが、向こうも相当な場数を踏んでいるのが、アコニーの加速した踏み込みを紙一重でかわし、バックステップで距離を取る。

「おほぉ! この村にも中々良い動きの奴がいるとは思わなかったよ。
お前達、ここはあたいが引き受けるから、とっとと行きな」

「うん。了解!ねーちゃん!」

盗賊の女は、ヒュゥ~と口笛を吹きながら、仲間の一人に肩に担いだ袋を渡して剣を抜く。
そして、渡されたほうの仲間は、ガチャガチャと音のする盗品の入った袋と一緒に渡された人間を担ぐと、風の様に走り去る。

「おい!待て」

アコニーが逃げる盗賊の仲間を追おうと手を伸ばすが、足止めを買って出た女盗賊はそれを許さない。
逃げる仲間とアコニーの間に割って入った。

「おっと、あんたの相手はこの私だよ」

ぺロリと舌なめずりして剣を向ける女。
誰かが攫われた以上、早く追わなければならない。
焦るアコニーは、躊躇わず女に小銃の銃口を向け引き金を引いた。

タタタン!

女に向けて放たれた銃弾だが、それは虚しく宙を切る。

「おぉっと、なんだいそりゃ?!」

急に銃口を向けられた女盗賊は、野生の感に従ったのか、アコニーが引き金を引く前に回避行動を取っていた。
弾が外れたことで、アコニーは再び銃口を女盗賊に向けようとするが、彼女はそれを許さない。
懐に飛び込むやいなや、蹴りを放ってAKを弾き飛ばした。
武器を失ったアコニーは、咄嗟に後ろに飛んで距離を取ると、太ももに装備されていたナイフを抜く。

「ぐるるるるる……  ガァア!」

キン!

電光石火で女盗賊の急所を狙ったアコニーのナイフであったが、女盗賊の剣がそれを受ける。
ジリジリと刀身同士が擦れ合い火花が飛ぶ。

「ふふふ…… 流石は猫の一族。速さは流石さね。
でも、こちらのパワーについて来れるかな?」

女盗賊が力任せにアコニーを押し飛ばし、それを追いかけるように横なぎの一撃が迫るが、速さに勝るアコニーは、その軌道を見切り紙一重でよける。
だが、それが不味かった。
横薙ぎに振るわれた剣であったが、女盗賊の手の中にはあるものが仕込まれていた。

「ぐぁ!」

女盗賊の手から放たれた粉末が、紙一重で剣を避けたアコニーの顔面に降り注ぐ。

「はっはっは!誰がまともに勝負するもんか」

「ぐぁぁぁ!!!鼻がぁぁぁ!!」

強烈な刺激物だったのか、アコニーは鼻を抑えて蹲り、目もあけることが出来ない有様だった。
なんとか拭おうと頑張ってみるも、それが余計に塗布範囲を広げて痛みを広げる。
女盗賊はそんなアコニーの姿を見ながらニヤリと笑うと、その顔面を蹴り飛ばした。
地面を土煙を上げながら転がるアコニーであったが、目が開けられなあければ鼻も効かない為、反撃どころか防御も取れない。
女盗賊は、それを見て満足したのか、アコニーに止めをさそうと剣を高らかに上げる。

「じゃぁね!猫ちゃん!」

ドン!

女盗賊が剣を振り下ろそうとしたときだった。
破裂音共に女盗賊の足に激痛が走る。

「!?」

急な出来事に女盗賊は片ひざを付き、激痛の正体を探るように足を見ると、右のふくらはぎに何かがかすったような傷が出来ていた。
傷口から血がドクドクと流れるのを見て、女盗賊は苦痛に顔を歪ませながら後ろを振り向く。
そして、そこにはトカレフを構えたヘルガの姿があった。

「くぅ!一体、なんだってんだ?!」

女盗賊は毒づき、ヘルガの持っていた今まで見たことも無い武器を見る。
そして気付いた。先ほどの猫の武器もこんな音がしていた。
それに何より、この村を襲い始めてから何度か似たような音を聞いている。
未知の武器の威力を知って初めて、女盗賊の中でそれらの事が示すことが一つに繋がった。
想定外の武器で村人が武装している。
霧の中で確認のしようが無いが、他の連中は大丈夫だろうか。
女盗賊はそんな事を思いながらタラリと冷や汗をながしていると、付近で聞こえる音に気が付いた。

スタタン……

先ほどから霧の向こうで何度か聞こえていたこの音……
それが徐々に近寄って来ている?
彼女がハッとその事に気付き、霧の向こうで音の聞こえたほうを向くと、丁度仲間の盗賊が何人か駆けて来た。

「姉さん!この村、なんかおかしいですぜ?!」

こちらの姿を見つけた盗賊の男が、息を切らせて報告する。

「タタタンって音が聞こえたと思ったら、仲間がバタバタ倒れるんだ。
こんな不気味な村、もう嫌だ。姉さん!ここはもう逃げやしょう!」

どうやら、女盗賊の想像は間違ってはいなかったらしい。
彼女は一つ舌打ちをすると、痛みをこらえて立ち上がる。

「チッ…… 分が悪いね。野郎共!引き上げだよ。撤退の雄叫びを上げな!」

「へい!」


女盗賊の言葉と共に、気味の悪い笑い声のような叫びを上げて逃げさる盗賊の男達、彼女もそれに続こうとするが、それは左の足首に伸びてきた手によって阻まれた。

「待てぇ!」

ぐるぁぁぁ!!

アコニーが目を真っ赤に晴らしながら、雄たけびをあげて女盗賊の足を掴む。

「チッ!この、放せ!」

女盗賊は、アコニーに殴打を加えるが、まるでスッポンに噛み付かれたかのごとくアコニーは離れない。

「ヘルガ!今だ。撃て!」

「え?! あ!うん!」

アコニーの叫びに、最初の弾丸が命中してから硬直していたヘルガが、その自我を取り戻し引き金を引く。
だが、いくら引き金を引いても弾は出ない。
アコニーに助けられる前、盗賊に襲われた時に何発か撃ったためか、最後の弾丸を撃った後、トカレフのスライドは引ききったまま止まっている。

「え? あ! 弾切れ?」

「ぐっ! がぁ! ヘル……ガ! 早く!」

女盗賊に殴られつつも、アコニーは必死にその足を離さない。
しかし、対するヘルガは予備の弾装など持ってはいない。
時間は無い。弾も無い。そんな状況になって、ヘルガに残された手段はシンプルなものだった。

「えぇっと、うん。 でりゃぁぁぁぁ!!!!!」

ドワーフの魔法によって強化された腕力に任せ、力いっぱいトカレフを投げる。
大きな石も軽々ともてるパワーから繰り出されたその一投は、アコニーを引き剥がすことで一杯一杯だった女盗賊の頭にクリーンヒットした。

ガン!

「ぐふぅ……」

頭にトカレフの一撃を受けた女盗賊は、糸が切れるようにその場に崩れ落ちる。

「あ、当たった……」

気を失った女盗賊。
そして、その横では満身創痍のアコニーが腰をつく。
とりあえず、障害は片付いた。
アコニーはそう思って、立ち上がろうと足に力を入れると、今更になって一人で行動していたパッキーが霧の中から現れた。
彼はアコニー達に駆け寄ると、鼻血だらけのアコニーに声をかける。

「おい!大丈夫か?」

パッキーは二人を見ながら怪我の程度を確認する。
そんな今更になって現れたパッキーに、アコニーは沸々と不満がわいたが、それも彼の姿を良く見ることで掻き消えた。
見れば、ポーチに入れていたはずの予備弾装はかなり減っていたし、服のあちこちに返り血がある。
兎人族の彼には接近戦は厳しいハズだが、何かやらねばならない事態でもあったのだろう。
彼は彼で戦っていたのだ。それも一人で……

「あたしらより、教授やカノエ達を……
宿の中から誰か攫われた……」

アコニーは、パッキーを責める事はせず、むしろ自分が護衛を離れたために起きた事態を恥じながら現在の状況を話す。
それに対して、パッキーは特に責める様子も無く、淡々と役割分担を提案してきた。

「何!? そうか、じゃぁ俺が逃げるあいつらを追跡するから、お前らはコイツを縛って教授達の安否を確認してくれ」

「分ったわ」

そうしてパッキーが遠ざかる足音を頼りに、また霧の中に姿を消すと、アコニーはベルトで女盗賊を縛った後、宿の部屋へと駆け戻った。

「教授!」

勢いよくドアを開くが、部屋の中には誰もいない。

「いない?!」

「攫われちゃったの?……」

アコニーとヘルガの二人は最悪の事態に顔を青くする。
現実の誰もいない部屋と嘘であってほしいと願う気持ちから、くらくらと眩暈までする。
ヘルガなど、絶望のあまり床にへたり込んでしまった。

「あぁぁ…… 何て報告しよう……」

覇気の無い声でヘルガが呟いたそんな時だった。

ゴト……

「!?」

ベットの下から物音がする。
何事かと思って身構えると、今度はベットの下から声がした。

「わしらは大丈夫だ……」

「教授!」

アコニーとヘルガの二人がベットの下を覗き込むと、なんとそこから教授と荻沼さんの二人がのそのそと這い出してきた。
教授達は埃を払いながら立ち上がると、アコニー達に向かって話し出す。

「わしらは賊が宿に進入したときにカノエ君が咄嗟にベットの下に隠してくれたから助かったよ。だが……」

「だが?」

「カノエさんが連れ去られてしまった……」

ガックリと肩を落として話す教授に、二人は驚愕の声をあげる。

「何だって?!」

「抵抗していたようですが、金目の物と一緒に袋に入れられて……」

荻沼さんが補足するように話すが、それを聞いたアコニーはぺたんと床にしゃがみこんでしまう。

「あぁ…… カノエが……」

頭を押えて呟くアコニー。
そして彼女は思い出した。
宿に戻ってきたとき、盗賊が盗品と一緒に袋を被せた人影を担いでいた。
恐らく、あれがカノエだったのだ。
あの時、何が何でも阻止していれば……
悔やんでも悔やみきれないといった表情を浮かべるアコニー。
そんな彼女に対して、ヘルガはそっと肩に手を置いた。

「……アコニー。大丈夫よ。
今はパッキーが連中の後を追跡してる。
社長達が帰ってきたら捜索隊を出してもらいましょう」

「うぅぅぅぅ……」

自分の鼻が女盗賊によって潰された為、臭いを嗅いで追跡することも出来ない。
アコニーは、現状でパッキーの帰還を待つより他に無いと悟ると、そのまま泣き崩れるしかなかった。



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.028780937194824