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No.29737の一覧
[0] 試される大地【北海道→異世界】[石達](2012/11/29 01:19)
[54] 序章[石達](2012/11/29 01:05)
[55] 起業編1[石達](2012/11/29 01:06)
[56] 起業編2[石達](2012/11/29 01:07)
[57] 起業編3[石達](2012/11/29 01:08)
[58] 国後編1[石達](2012/11/29 01:08)
[59] 国後編2[石達](2012/11/29 01:09)
[60] 転移と難民集団就職編1[石達](2012/11/29 01:09)
[61] 転移と難民集団就職編2[石達](2012/11/29 01:10)
[62] 礼文騒乱編1[石達](2012/11/29 01:10)
[63] 礼文騒乱編2[石達](2012/11/29 01:11)
[64] 礼文騒乱編3[石達](2012/11/29 01:11)
[65] 礼文騒乱編4[石達](2012/11/29 01:12)
[66] 戦後処理と接触編1[石達](2012/11/29 01:12)
[67] 戦後処理と接触編2[石達](2012/11/29 01:13)
[68] 嵐の前編[石達](2012/11/29 01:14)
[69] 北海道西方沖航空戦[石達](2012/11/29 01:14)
[70] 大陸と調査隊編1[石達](2012/11/29 01:15)
[71] 大陸と調査隊編2[石達](2012/11/29 01:16)
[72] 大陸と調査隊編3[石達](2012/11/29 01:16)
[73] 魔法と盗賊編1[石達](2012/11/29 01:17)
[74] 魔法と盗賊編2[石達](2012/12/08 01:24)
[75] 決戦[石達](2012/12/08 01:20)
[76] 盗賊と人攫い編1[石達](2012/12/31 22:47)
[77] 盗賊と人攫い編2[石達](2013/01/19 21:24)
[78] 盗賊と人攫い編3[石達](2013/01/19 21:23)
[79] 道内情勢(霧の後)1[石達](2013/02/23 15:45)
[80] 道内情勢(霧の後)2[石達](2013/02/23 15:45)
[81] 外伝1 北海道航空産業の産声[石達](2013/02/23 15:46)
[82] 東方世界1[石達](2013/03/21 07:17)
[83] 東方世界2[石達](2013/06/21 07:25)
[84] 東方世界3[石達](2013/06/21 07:26)
[85] 幕間 蠢動する国後[石達](2013/06/21 07:26)
[86] 東方世界4[石達](2013/06/21 07:27)
[87] 東方世界5[石達](2013/06/21 07:27)
[88] 東方世界6[石達](2013/06/21 07:28)
[89] 東方世界7[石達](2013/06/21 07:28)
[90] 世界観設定[石達](2013/06/23 16:49)
[91] 人物設定[石達](2013/06/23 16:57)
[92] 東方世界8[石達](2013/07/15 01:51)
[94] 帝都ティフリス1[石達](2013/08/09 02:02)
[95] 帝都ティフリス2[石達](2013/08/12 00:21)
[96] 帝都大脱走1[石達](2013/09/23 00:16)
[97] 帝都大脱走2[石達](2013/09/22 22:47)
[100] 帝都大脱走3[石達](2014/02/02 03:03)
[101] 対エルフ1[石達](2014/02/02 03:03)
[102] 対エルフ2[石達](2014/02/05 22:45)
[103] 対エルフ3[石達](2014/02/05 22:45)
[104] 対エルフ4[石達](2014/02/05 22:46)
[105] カノエの素性1[石達](2014/02/05 22:46)
[106] カノエの素性2[石達](2014/02/09 13:13)
[107] 別れ、そして託されたモノ1[石達](2014/02/09 13:14)
[108] 別れ、そして託されたモノ2[石達](2014/02/09 13:16)
[109] 決意[石達](2014/02/09 13:42)
[110] 新しい風[石達](2014/04/13 10:41)
[111] 交流拡大、浸透と変化1[石達](2014/04/13 10:41)
[112] 交流拡大、浸透と変化2[石達](2014/06/04 23:46)
[113] 交流拡大、浸透と変化3[石達](2014/06/04 23:47)
[114] 交流拡大、浸透と変化4[石達](2014/06/15 23:55)
[115] 交流拡大、浸透と変化5[石達](2014/06/15 23:55)
[116] 平田、大陸へ行く1[石達](2014/08/16 04:02)
[117] 平田、大陸へ行く2[石達](2014/08/16 04:02)
[118] 対外進出1[石達](2014/09/14 08:19)
[119] 対外進出2[石達](2014/08/16 04:04)
[120] 対外進出3[石達](2014/10/13 01:58)
[121] 回天1[石達](2014/10/13 01:59)
[122] 回天2[石達](2014/10/14 20:24)
[123] 回天3[石達](2015/01/18 08:20)
[124] 回天4[石達](2015/01/18 08:24)
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[29737] 大陸と調査隊編2
Name: 石達◆48473f24 ID:a6acac8b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/11/29 01:16
大陸のとある街道。
未だ初夏だと言うのにガンガンと照りつける太陽によって、ジリジリと焼けるような暑さの中
一台の荷馬車がゴトゴトと荷物を揺らして、岩がゴロゴロし草が生い茂る荒地の中を突っ切る道を進んでいる。
御者の席に座る男は行商人という風体で、その横には用心棒らしき、がっちりとした体格の男が座っている。

「しっかし、あちぃな…」

用心棒と思われる男が、汗を拭きながらだれた様に悪態をつく。

「暑いのはこっちも同じですよ。
それでも、最近は戦やら何やらがあったせいで色々と物騒な話も聞くんだから、しっかりしてくださいよ」

行商人も汗を拭きつつ、横目で男を見ながら言う。

「なんだぁ?この俺様の腕が信じられないってか?
俺の剣にかかれば、盗賊の10人や20人あっという間に切り伏せてやるよ!」

どうにも話を盛る傾向にある男の話を聞き流しながら、行商人の男は「はいはい」と相槌を打って手綱を捌くことに集中するが、その顔はどこか不満そうだった。
そもそも、辺境伯の領内は他と比べて治安が良く、あまり盗賊に警戒する必要が無かった。
だが、昨年の亜人の地への遠征後、目に見えて治安が悪化している。
彼が他の商人仲間から聞いた話によれば、本来ならば遠征に投入された兵士が、情勢が安定するまで彼の地にて治安維持にあたる予定だったが、その兵力の大部分が北の帝国との国境線に動かされたそうだ。
その結果、故郷を追われた亜人の一部が盗賊化し、復讐のために領内を荒らしているそうだ。
男はそんな話を思い出しながら、想定外の出費となった用心棒代を恨めしく思い、横に座る男をジト目で見る。
しかし、暑さでダレ始めた用心棒の男は、そんな視線にはお構いなしといった感じで、手拭いで汗を拭いていた。

「お? おい、旦那。前方に変なのがいるぜ?」

「え?どこだって?」

「ほら、あの木陰」

行商人の男は、ダレているようで一応きちんと周囲に気を配っていた男に少々感心したが、意識はすぐさま前方に移す。
男たちは何が起きてもいいように、装備を確認しながらゆっくりと荷馬車で近寄っていく。

「なんだあ?ガキの行き倒れか?」

見れば木陰に、一人の子供が蹲っている。

「なんだってこんな所に… あやしいな…
旦那、どうする?荷馬車じゃこんな岩だらけの所を迂回できねぇし、一旦戻るか?」

人里からこんなに離れた所に子供が一人…
乞食か行き倒れか…それにしては怪しすぎる。
男は、盗賊か何かの罠である可能性を考え、行商人の男にどうするのか問う。

「今から戻って迂回路を探していたら、約束の期限までに商品が届けられない。
どうにか、このまま行けんのですか?商人は信用が第一なんだよ。
それに、あんた言ってたじゃないか。
自分が腕が立つだの何だのと… ありゃ嘘かい?」

「んむ… 嘘じゃねぇ!俺が強いのは本当だ。決してビビってるわけじゃねぇ
俺はどうするか雇い主であるあんたに聞いているだけだ。」

「なら、このままいこう。
一応、いつでも駆け抜けられるようにしたいから、後ろの荷物の固定は確認してくれますか?」

そうして男たちは、警戒しつつも木の陰でうずくまる子供を素通りしようとするが、丁度真横を通過しようとしたところで、行商人の男はその子供とめが合ってしまった。

「たす… け…て…」

商人にしては人の良すぎた彼に、その言葉は良く響いてしまった。
男は子供から少し通り過ぎたところで荷馬車を止め、用心棒の男に言う

「なぁ ちょっと様子を見てやりましょう。
どうにも何か事情がありそうだし、見たところ、そこそこの身なりをしているし乞食とは思えない。
それに盗賊どもの罠なら、もうとっくの間にやられているはず…」

行商人の頼み込む視線と説得に、用心棒の男も嫌そうな顔をしつつも渋々答える。

「えぇ? 俺としては、あんなガキ放っておいて先に進みたいんですがね。
まぁ 雇い主の願いってんなら仕方ない。
だが、俺が様子を見てきますんで、旦那はいつでも逃げれるようにそこを動かないでくださいね」

行商人の男は「すみませんね」と一言言い、用心棒の男も腰の剣に手を当てながら馬車から降りて子供に近寄っていく。

「おい、坊主。一体どうした?」

男は座り込んでいる子供に声をかける。
みれば帽子を深くかぶっている為、男児か女児かの区別はつかないが、そこそこキレイな服装をしている。
そして、男の接近に気付いた子供は、力なく口をパクパク動かして何かを言っているようだが、男の耳まで声が届かなかった。

「あ?なんて言った?
もっと大きい声で言わんと聞こえねーぞ」

男は腰の剣に片手を置いたまま、片膝をついて子供に聞き返す。
そうして男の顔が、子供の手の届く範囲に近づいた。その時だった。

「WHOOOOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEP!!!!」

まるで地獄の底から湧きだしたような不気味な雄叫びがその場に響く。
思わず身が竦んでしまった男は、雄叫びの主を探して振り返るが、そこで男は気づいてしまった。
周りを見渡そうと振り向いた瞬間、目と鼻の先にいた子供の手が素早く動き、そして自らの首から鮮やかな血潮が噴き出した事を。

「おま…ぇ… ゴボッ…」

男は血泡を吹きながら崩れ落ちる。
そして見た、先ほどまで弱っているように見えた子供がナイフを片手にスラリと立ち
立ち上がった股の隙間から茶色のブチが入った尻尾が垂れているのを

「ケケケケケケケケ! ねーちゃん!やったよ!」

そう言って顔に付いた返り血を拭いながら子供は笑いながら叫ぶ

「な!?亜人!」

子供は幼さの残る亜人の少年だった。
人相が分からないくらい深くかぶっていた帽子は、用心棒の首を掻き切った時に飛んでしまい、その頭には茶色く大きな犬のような耳が有る。
亜人の盗賊… 行商人の男がハッと気づき、すぐさま逃げようと手綱を手に前を向くが
そのときには既に全てが遅すぎた。
進路、退路ともいつの間にか現れたナイフや短剣、弓で武装した様々な種族が入り混じった亜人達に囲まれている。
もし、強引に荷馬車で突破を図ろうものなら、忽ち彼らの矢で殺されてしまうだろう。
男の顔色が絶望に染まり、恐怖で体をすくませていると、一人の亜人が男の前に出てくる。

「人族のおっさん。ついてなかったね。
命か荷物、好きな方を選びな。
おっさん個人には恨みは無いが、あたいらは人族のクソ共に十二分に恨みが有るんでね。
仮に荷物を選んだら惨たらしく殺してあげるよ。
まぁ 命を選んでもダークエルフの人買い共に売っぱらうんだけどね。
さぁ?どっちにする?」

そう言って一人のブチの入った茶色い尾と耳のある亜人の女が男に言う。
恐らくこの盗賊どもの頭だろう。実に堂々とした風体だった。
"上手くいった"女はそんな表情で不敵に笑い、それとは対照的に行商人の男は女の言葉を聞き、全てを諦めて捕縛される道を選んだ。

「ねーちゃん。手筈通り用心棒のおっさんを始末したよ!」

行商人の男をふん縛り、荷台に投げ入れたところで、女の元に先ほどの少年がかけてくる。

「おーよしよし。あんたはデキる弟だねぇ」

そう言って女は少年の頭を胸に抱き、そのまま頭をワシャワシャと撫でまわした。

「あはは。ねーちゃん痛いよ」

「あぁ すまなかったね。
しかし、あんたの演技は良かったね。それに仕事の手際もいい。
こりゃ、ちょっとご褒美やらないとね」

「ご褒美!?」

女の言葉に少年は目を輝かせる

「そうだね。次に襲う予定の村で、あんたの気に入ったものが有れば、好きにしていいよ。
やっぱり、ちょっと早いけど綺麗どころの村娘を捕まえて筆卸しといくかい?」

女はニヘラと笑って少年に言うが、対する少年は顔を真っ赤にして首を左右にぶんぶんと振った。

「女の子なんていらないよ!何言っているんだよ。ねーちゃん!」

「おー 照れちゃって。耳まで真っ赤なのが可愛いなぁ」

そういって女は、少年の頭を撫でまくる。
そして心ゆくまで少年を弄った後、周りの亜人達に向かって言った。

「よーし、お前たち。
とりあえず、奪った荷馬車とコイツを連れて、いったん隠れ家に戻るよ。
チビ達とジジババが腹空かして待ってるからね。さぁ しゅっぱーつ!」

そうして亜人達は、身ぐるみを剥いだ用心棒の死体を道の脇に隠すと、奪った荷馬車共々去ってゆく。
辺境領の治安は、目に見えて悪化しているようであった。





一方、そこからさほど遠くない他の街道では…

「教授!やはりラム肉には松雄ジンギスカンのタレですね」

「そうだな。オーストラリア産の羊肉の輸入が無くなってから久しぶりに食べたが、やっぱり野外で肉を食べるのはジンギスカンに限る」

「そんなにがっつかないでください教授~。肉なんて~一頭丸ごと有るんですから~」

拓也達一行は、調査の途中で立ち寄った村で仕入れて羊を使い現地家畜食味調査という名のBBQを行っていた。
この大陸に広く流通している羊は品種改良の進んだ元の世界の品種とは違い、より原種に近い中央アジアに見られるような品種であった。
羊の群れを見ながら拓也が漏らした「あれって、味はどうなんですかね?」の一言と、突然の教授の思い付きにより拓也達一行は街道の脇で急遽大試食会が始まったのだった。

「それにしても、羊も美味しいですが、あのデッカイ鳥も美味いですね」

拓也がそう言って箸の先で地面に横たわる5m近い巨大な鳥を指差す。

「うむ。前の世界のモアに近いようだが、これだけジューシーで美味ければアボリジニに食い尽くされて絶滅したのも頷ける。
アコニー君やヘルガ君達は大陸時代にはこんな美味いものを良く食べていたのかね?」

そういって豪快すぎる山賊焼きを頬張る教授の質問に亜人たちは首をブンブンと左右に振る。

「普通、走り鳥なんて食べないですよ。
足が速い上にでデカくて強いし、狩をするには危険が大きすぎます。
もっと小さくて温和な種だと、今度は移動手段として重宝されますから食べるなんて殆ど無いですよ。
今回私たちが仕留めれたのだって、強力な武器があってこそです」

そう言ってヘルガは串焼きにした鶏肉を持ちつつ巨大モア(仮)の頭を蹴る。
そんなヘルガの蹴りにも動じないほど大きな頭。
だが、その鳥の頭は、嘴から上が無くなっていた。

「社長。それにしても凄いですよ。
BTRの14mmで撃ったら、こんなでっかい走り鳥も一撃ですもん。
これなら、大王馬とかも余裕かも」

アコニーが、ジンギスカン鍋から肉だけ選んで取りながら笑って言う。

「大王馬?」

「でっかい馬ですよ。
肩までの高さが、この走り鳥と同じくらいで、頭まで含めたらもっと大きいです」

「…そんなにデカイ野生動物がいるのか。この大陸には…」

拓也はアコニーの説明に少し唖然となりながらもその話を聞く。
少なく見積もって5m以上の馬。
ファンタジー過ぎる…

「でも、草ばっかり食べてる連中ですから大人しいですよ。
恐ろしい肉食獣は人間の魔術師とかが徹底的に狩っちゃったので、殆どいなくなっちゃったそうだけど。
そうだよね?カノエ」

「えぇ、毛皮や名声目当てに人族がパーティを組んであっちこっちで凶暴な獣を狩りまくった為、今では殆ど姿を見ませんわ
世界の創世から、一体何種類の動物たちが人族に絶滅させられたことか…」

へぇ~と感心しながら拓也は彼女らの言葉を聞く。
どうやら此方の世界にも当然の如く人間によって絶滅させられる動物がいるらしい。
拓也は、どこも同じだなと思いながら聞いていたが、どうやらそうでない人物もいたらしい。

「石津君…」

急に真面目な顔をして教授が拓也のほうを向く。

「こうしてはおれん。まだ見ぬ種が絶滅する前に、調査を再開しよう」

そう言ってそそくさと食器を片付けだす教授に、拓也はえぇ?!と驚く。

「でも、教授。
今から探すったって、片付けしてからじゃすぐに日も暮れちゃいますよ?
それに何が絶滅寸前かも分らないじゃないですか?」

そう言って拓也はチラリと横たわる巨鳥の死体を見る。
自然保護も分るが、目に入った鳥を食っちまおうといい始めたのは教授じゃないか。
もし、カノエ達が何も言わなかったら、絶滅危惧種だろうと胃袋に治まっていた気がする。

「何が絶滅危惧種かわからなくても、目に入る全てを調査すればそれで記録は残る。
分ったらさっさと準備に入りたまえ」

「うええぇ~…」

教授以外の全員が抗議の声をあげる。
まだ肉は沢山あるのに…
だが、その抗議は教授の心には届かない。
顔を見合わせる一同。
日は当に昼を通り過ぎているが、拓也達の調査は、まだまだ始まったばかりだった。









辺境伯領の情勢が悪化の一途をたどる中、辺境伯領の中心都市プラナスに、その渦中の中心となる人物はいた。
領主だったアルドが死んだ今、後継者たるクラウスは正式に家督を継ぐために戻ってきたのだった。
しかし、捕虜だったはずの彼が何故こんなにも簡単に戻ってこれたかと言うと、その答えは彼の引き連れてきた者達であった。
捕虜の仮釈放の監視と言う名目で付いてきた連邦からの顧問団。
その正体は、辺境伯領を完全に北海道側の陣営に組み込むために送られてきた連邦政府の人間だった。
彼等は、軍事、経済、社会システム、様々な分野の専門家であり、未だ封建制の続く辺境伯領を改革するため(顧問団の派遣はクラウスの希望でもあった)に乗り込んできた。
これが平時であれば既得権益との衝突により各方面より反発が起きたのであろうが、辺境伯領を取り巻く情勢がそれを許さなかった。


亜人の居住地の平定も含めると、たて続けに続いた3度の戦役と2人の領主の死、それに王殺しの罪での改易令。
周辺の諸侯が虎視眈々と辺境伯の領地を狙う中、それまで辺境伯家に仕えていた家臣たちは先の見えない自分たちのこれからに嘆き、右往左往するしかなかった。
そんな絶望的な空気が領主の城の中に蔓延する中、見た事も無い巨大で美しい白船に乗ってクラウスは帰還した。
白船には劣るが、それでも大きい灰色の大型船と数隻の小型船に守られてプラナスの港にその船団が現れた時、一時は敵の襲来かと市内全域が大騒ぎになり
その船団から轟音と共に飛んできた未知の飛行物体が城の上に現れた時は、場内はパニックに陥った。
場内にいた家臣達は鎧は何処だと探し回り、女中は何処へ逃げようかとオロオロするばかり。
だが、攻撃なども何事もなく城門前に着陸したソレから人影が城の前に降り立つと、今度は逆に一体何事だと城内の者達が城壁の上や窓から数多の視線が集まった。
出征した時と同じ甲冑に身を包み、ヘリのローターが作り出すダウンウォッシュの中、綺麗にまとめられた後ろ髪をはためかせながら、威風堂々とした態度で城門の前に立つクラウス
凛々しくも美しいその姿を見た城内では、人々の間にざわめきが起った。
敵の捕虜になったと情報だけが伝わっていたクラウスの堂々たる帰還は驚きだった。
それと、飛行体は海から真っ直ぐに城に飛んできたため、場内の者達は飛行体が降り立つまで気付かなかったが、よく見ればクラウスの乗機である事を表す為に大きな辺境伯家の紋章を吊り下げている。
市民はこれでクラウスの帰還を知ることになったであろう。
飛行体はクラウスを降ろすと、轟音と突風を巻き起こしながら飛び去り、今度はプラナスの上空を旋回し始めた。
それに吊り下げられているのはなじみ深い辺境伯家の紋章。
だが、次の瞬間、旗を吊り下げている紐が伸び、もう一枚の旗が現れた。
辺境伯家の上につりさげられた紺地に赤と白の七光星。
誰もが思う、『あれは何処の旗だ?』、『王家じゃないぞ?』
人々がそんな疑問を口々にしたときだった。

『あー テステス… 聞こえてるな?』

城門前のクラウスが喋ると、上空を飛ぶソレからも大音量でクラウスの声が市内全域に響く。

『愛すべき臣民諸君。クラウス・エルヴィスは、今ここにその帰還を告げるものである』

クラウスが帰還したことを改めて伝えるが、城内からは歓迎の声は起きない。
使えるべき領主の帰還、本来は喜ぶべきところだが、改易が決まった領主だという事実が彼らの忠義心に重くのしかかる。

『諸君らも既に知っていると思うが、我が兄の不徳故に此度は王家より改易の沙汰を受けた。
これについては、皆に申し訳なく思う』

重苦しい空気が一層濃くなる。
まるで空気自体が水あめのような粘度を持ったように絡み付き、皆の表情は諦念の色に染まった。

『だがしかし、私はそれを公然と拒否する!』


!!?

クラウスの口から出た予想外の言葉に、皆の表情が変わる
王家の改易令を拒否とは反乱と同義である。
予想外の言葉に驚きが満ちた。


『なぜならば、私には夢が、そして使命がある!
この戦役で私は敗れ、沢山の部下や仲間を失い捕虜となった。
戦火を交えたその相手の名はホッカイドウ。
世界の彼方より現れ、我々の新しい隣人となった国だ。
私は彼らに囚われながらも、彼らについて学び、その高度に発展した技術と、このプラナスや王国の王都を遥かに凌ぐ都市を見た。
悔しいが現状の我々は彼らの足元にも及ばない、だがしかし、私には夢が出来た。
このプラナスを!辺境領を!彼らに並ぶ豊かな土地に変えたいと!
今まで王国は、箱舟オドアケルの軍事力を持って我々から富を収奪してきた。
だが、王国は何をしてくれた?領地の安堵?そう、それだけだ。
しかし、今となっては王国の軍事力も絶対ではない。
ホッカイドウに侵攻した箱舟は、逆に彼らの軍事力によって撃退され、箱舟に乗り込んでいた竜人達は洋上で屍をさらすことになった。
最早、王国を!箱舟を恐れる事は無い!
その古の無敵神話は既に過去のものとなり、新たな秩序がこの世に出現したのだ。
そして、私は、今ここにホッカイドウからの支援を受け入れ、王国からの独立を宣言する!
想像して見て欲しい。
このプラナスが100万の人口を抱える都市に成長し、大地には天を突く摩天楼、人々には豊かな暮らしで笑顔があふれる未来を!
そしてそれは夢物語ではない。私が臣民諸君に約束し、皆で実現させる未来であるのだ!』

突然の独立宣言に静まりかえる場内。
クラウスも突然すぎたかなと一瞬冷や汗をかくが
一瞬の空白の後、城内は大喝采に包まれた。
いや、城内だけではない。
市街全域、クラウスの声を聞いた全市民が熱狂し、彼を名を口々に讃える。
今まで、プラナスは王国の商業の中心として多大な富を生むも、王家に税としてかなりの金を収奪されていた。
それが改易の命令を跳ね返し、独立を成し遂げるというのだ。
市民たちはクラウスの演説に熱狂し、その歓声の大きさは付近の村々にも響き渡たっていった。



そういった騒動があったのが十数日前。
クラウスの連れてきた顧問団は、既に城内で絶大な影響力を持っている。
だが、旧来の家臣は自らの持つ権益が侵されそうになっても不満は口にしなかった。
下手に不満を口にして、市内に吊るされている(これはクラウスが捕縛するより先に市民のリンチで吊るされた)王国から派遣されていた官吏達を同じ道を辿るのは嫌だったし
それよりも、顧問団の各専門家が開く勉強会に参加し、新たな自らの立ち位置を確保しようと躍起になっていた。
そう言った事情もあり、現在城で行われている評定でも、円卓に座る半数が北海道からの顧問団であったが、誰も不満は言わない。


「…以上のような事により、現在、辺境伯領の置かれている状況は思わしくありません。
周辺の諸侯は、我らが領地を狙って兵の動員を行い、未確認ではありますが一部の部隊が国境近くの集落を襲っているとの情報もあります。
それに対して我が方は、先の戦役の代償として兵力の大部分を北の帝国との国境に移動させたため、兵力が不足しております」

文官の一人が、現在の状況を評定で報告する。
これが辺境伯家単独で独立する事態であれば、非常に厳しい事態であったろう。
だが、評定にてクラウスらと同じ円卓に座る12人の内の半分の存在により、悲観的な空気は流れていなかった。

「ふむ…
これは、既に周辺諸侯はヤル気まんまんだと思って良いな。
王国との交渉でも話たが、王家には最早止める力は無いらしい。
ならば、遠慮はいらないな。
国境の兵1万を呼び戻せ。
速度が第一だ、移動の邪魔になる投石器などは破棄してかまわん。」

クラウスは溜息を一つ吐く。
国境から辺境伯領までは結構な距離がある。
恐らくは何度か足止めを食らい、集落のいくつかは敵に食われるだろう。
誰しもがそれを憂慮し、家臣の一人がクラウスに発言する。

「殿下、今から兵を戻しても、救援の間に合わない領地もあるでしょう。
そこでここは一つ、箱舟をも退けたという彼らの力に支援を求めるのは如何でしょうか?」

その言葉に家臣団の全員が頷く
だが、それに対し、評定に参加している顧問団の代表であり北海道からの使者である鈴谷の回頭は彼等の思っているものではなかった。

「あぁ… その軍事支援についてだが、当面は王国との大規模な軍事衝突は避けたい。
今現在、大規模な遠征を行える準備が出来ていないのでね。
だが、辺境伯領上空の制空権の確保は約束しよう。
それと、我々の調査隊が此方で活動している事もあるので、小規模なヘリボーン部隊による支援くらいならば可能だよ」

鈴谷は口には出さなかったものの、これが現在の北海道に出来る限界であった。
先の紛争により、道内のミサイル類は粗方撃ち尽くしてしまったため、生産の目途が立つまでは大規模な行動は出来なかった。
仮に王国側が無理をしてでも箱舟を駆りだしてきた場合、今の北海道にあの強力な魔法防壁を突破できる手段は無い。
ならば取れる手段は只一つ、大規模な衝突は避けつつも此方の軍事力は健全だとブラフにてアピールし、箱舟に対する抑止力を維持する事である。

「そんな!?
敵の軍勢が迫っているのですよ?
我らを後見していただけるなら、その軍事力をもって我らを支援していただきたい」

辺境伯側の家臣一人が嘆願する。
だが、鈴谷を始めとする北海道側は渋い顔をするだけであった。

「こちらにしても事情がある。
遠征の準備についてもそうだが、ついこの間まで民間人に被害まで出して交戦していた相手を守るのに大軍を出すのは世論の同意が得られない。
だが、一切の支援をしないとは言っていない。
重ねて言わせてもらうが、上空の制空権の確保、小規模部隊による支援及び軍事顧問団の派遣にて支援させていただく。」

食ってかかった家臣の一人は未だ何か言いたそうだったが、彼が更に食ってからる前にクラウスがそれを制した。

「まぁ ホッカイドウ側にも事情がある事は理解しなければいけないさ。
まして何より、自分たちの領土を守るのに人に頼り切るのは如何なものか…
まずは、率先して我々が血を流す必要がある。違うか?」

「むぅ… その通りにございます」

そういって家臣の男は引っ込んだ。

「それより、諸国の状況はどうなっている?
我々の独立の動きに反応しているところはあるか?」

クラウスの質問に別の文官が立ち上がって報告する

「それについては、未だ独立宣言から日も浅い事もあり、各国の動きは伝わってきておりません。
文官たちの予測では、各国との貿易額が辺境伯領だけで王国の他の地域を圧倒していることから
表だって敵対することは無いと予測しております。
ですが、一つだけ例外がありまして…」

「なんだそれは?」

クラウスが眉間に皺を寄せて聞く。

「ネウストリア教皇領です。
流石、教会は対応が早いです
教皇庁から『独立が教義に照らして正しいか、観戦司祭を派遣する』と申し入れてきました」

「なんだと!?
う゛ううぅ~ん…
まぁ異端の独立と思われても厄介だし… 仕方ないか。
だがこれで、大々的にホッカイドウへ協力要請は出来なくなってしまった」

「宗教的な制約ですか。それはまた厄介ですね」

元の世界でもそうだったが、宗教が絡んだ戦争は、どちらも引くに引けなくなり泥沼化することが常である。
この独立が宗教戦争の色合いを帯び、それに巻き込まれるのは御免だ。
異教徒が片方に肩入れしているのを見て、こちらの教会とやらは絶対に良い顔はしないであろう。
鈴谷はそんな事を考えながらクラウスの苦悩を察した。

「まぁ 厄介は厄介なんですが、それは向こうにとっても同じこと。
よし、周辺諸侯に使者を出そう。
我々は教皇庁の介入を理由に会戦を行う。
決戦の日時と場所は… そうだな、20日後のプラナスの北西10ミリャ(16km)の平原とする」

「殿下!?
プラナスからたった10ミリャの位置で会戦を行うのですか!?」

クラウスの言葉に家臣たちが驚愕する。

「我らの喉元で決戦を呼びかければ、奴らも会戦の申し出を拒否しまい。
我らの兵が未だに戻っていない現状は彼らに有利。これくらいしなければ例え教会へ工作しても奴らは乗ってこないよ。
だが、悪い事ばかりじゃない。
奴らも会戦の為に戦力を一点に集めなければならないから、略奪などの被害は限定的だ。
特に戦力の損耗を恐れて城壁のある都市への攻撃も控えるだろう。
まぁ 奴らの進軍上にある小さな集落には泣いて貰わなければならないが…」

クラウスは多少の被害は仕方ないと苦い顔をしながら語る。
諸侯がバラバラに侵攻してきて領内を勝手気ままに荒らされるよりは、多少の損害は覚悟し、敵を一点に集めて叩き潰した方が良い
その場の皆もその事を理解したのか、難しい顔をするも誰も反対意見は無い。

「まぁ 諸侯の寄せ集め何ぞに、我らが精鋭が負けるなんてのは有り得ないが、もしもの場合は、ホッカイドウへ亡命するよ。
今、あちらは労働力が不足しているというし、君らも一度はサッポロに行ってみると良い。
私は捕虜だったから護送車の窓からしか見ることは出来なかったが、彼の町は驚きの連続だったよ。
それに向うで食べた『すーぷかれー』や『みそらーめん』は絶品だった。
向うの係員から聞いた『いくらどん』、『じんぎすかん』、『まるせいばたーさんど』は未だ食べた事は無いが、これも美味いそうだ。
うーん…
これらが毎日食べられるなら、亡命もそんなに悪くは…」

「殿下!!」

「あっ あぁ… 冗談だよ。冗談。
食べ物につられて亡命なんて無い。無いよ?…」

忘れ得ぬ味の記憶と、まだ見ぬ夢のグルメに、若干意識がトリップしかけていたクラウス。
言葉では否定しているが、実際はちょっぴり本気だったことは秘密だった。

「まぁ ふざけるのはココまでとして、我々の方針として会戦を行う事に異議は無いな?
鈴谷さん、ホッカイドウ側も宜しいですか?」

「特に問題は無いですよ」

「では、これより我々は会戦へ向けた準備に取り掛かる。
ホッカイドウ側の言葉を借りれば『公国の興廃、この一戦にあり』だ。
独立し、エルヴィス辺境伯領からエルヴィス公国となるか、諸侯の食い物になるかは諸君らの頑張りにかかっている。
皆が皆、己の役割を全うせよ。勝利万歳!」

「「勝利万歳!」」

クラウスの締めの言葉に家臣全員が片手を前に伸ばして唱和する。
彼らにとって長い20日間が始まったのだった。







一方、その頃


プラナスから離れた街路上
一台の商人の荷車が猛スピードで走っている。
顔面蒼白とした商人が鞭を飛ばし、牽引している獣に活を入れる。
どうやら何かから追われているらしい、必死の形相で逃げるがどうやらそれも時間の問題だった。

「ヒャッハァァ!」

そんな世紀末的な叫び声と共に、大きな影が彼の真横に現れる。

「教授!馬の代わりにでっかい鹿が引っ張ってますよ!ヤックルみたいな角してます!」

「うむ、石津君!是非ともデータを取らなくては!」

「了解です!任せてください!
…こんにちわー!すみませーん!あなたの鹿?見せてもらって良いですか~?」

拓也は商人に向かって叫ぶが、一方の商人は謎の集団に追いかけられている恐怖で
拓也の声が全く耳に入っていなかった。

「石津君!全然止まってくれないじゃないか!」

「え~…仕方ない。アコニー!聞こえるか?飛び移って停めさせろ」

「了~解~」

拓也の指示があると同時に、荷馬車を挟む形で拓也の車の反対側にアコニーの乗る装甲車が現れる。

「せい!」

掛け声と共に装甲車の上から荷馬車に乗り移ったアコニーの対応は早かった。
商人から手綱を奪うと、それを引いて急制動をかける。
するとみるみる荷馬車のスピードは落ち、ついには止まってしまった。

「でかしたぞ!アコニー君!
よし、荻沼君、来たまえ!調査だ!」

「はい!」

拓也の運転するハイエースから二人が飛び出す。
そこからはもう、凄い勢いだった。
写真撮影から大きさの計測、DNA採集と言いながら毛の一部を切っている。
そんな急に現れた謎の集団を見て、運悪く捕まった商人は恐怖に震えていた。

「騎獣も荷物もあげますから、どうか命だけは…」

うずくまり、小さくなって祈る様に嘆願するも、彼の言葉を誰も聞いては居なかった。
荷馬車を止めた目的は教授らによる動物の調査であり、商人の事などどうでもよかった。
だが、商人も恐怖の為か周りが見えていない。
蹲りながら命乞いを続けている。

「よし、十分だ。
石津君、彼に謝礼を渡して次に行こう」

「了解です。
おっさん、足止めしちゃって悪かったね。
あんなスピード出してたんだ、急ぎだったんだろ?
何処に行く予定だったんです?」

拓也は商人に優しく語りかけるが、恐慌状態になっている彼には、その笑顔も邪悪な笑みに見えてしまう。

「こっ、この先にあるメリダの村です。
あそこに塩を売って、毛皮と毛織物の買い付けに行くところでした。
どどど…どうか命だけは…」

「毛皮!?毛織物?」

「はっ!はい!」

それを聞いて拓也はにっこりと笑って教授の方を向く

「教授、この先の村で毛皮や毛織物を扱っているそうです。
珍しい動物が居そうな匂いがプンプンしますよ!」

「何!?
よし分かった!すぐに出発しよう」

「了解です!
…って事で、長々と引き留めて悪かったよ。
お詫びにこれあげるから食べて機嫌治してね」

そういって拓也は透明な袋にはいったあるものを手渡した。

「これは地元で名産の『薄荷豆』ってお菓子でさ。うまいんだよ。
道中で摘んで食べてね。
それじゃぁもう行くんで、お世話になりました。」

そういって拓也は手を振りながら車に戻る。
彼らが走り去った後、その場に残された商人は、手に薄荷豆の袋を持って呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
ふと商人が正気に戻り、現状を確認してみる
命はある。
五体満足で、何も盗られてはいない。
それどころか、何やら菓子を貰った。

「一体、なんだったんだ…」

訳が分からぬといった様子で、商人は手に持った袋を見る。

「そういえば、菓子と言ってたな。
どれ、味はどうかな…」

そう言って商人が袋を開けようとして、両手を袋に掛けた時だった。

「ヒャッハァー!」

再度聞こえる世紀末的な叫び声
その声の主を探して商人は周囲を見渡すが誰もいない。
彼は再び怖くなり、急いでこの場を離れようと荷馬車に乗ろうとしたその時だった。

荷馬車に足をかけたと同時に首筋に当たる冷たい感触。

「おっさん。両手を上げな。
護衛も無しに一人で旅とは不用心だね。
厳しい渡世の授業料として、荷物から残りの人生まで全部もらうよ」

いつの間に後ろに接近したのか。
ゆっくりと彼が振り返ると、そこには茶色の犬のような耳をした亜人の女が
彼の首元に短剣を当てていた。
しかもどこから湧いたのか、周囲は亜人達に包囲されていた。

「お?何だいそりゃ」

女は商人の手にあった袋を奪い取る。

「菓子だそうです」

「へぇ… 珍しい袋に入っているね。どれ…」

そういって女は袋を破り、中身を一粒出して口に入れる

「おぉ!これは… なかなか… うん…
おい!おっさん、これをどこで手に入れた?」

「さきほど変な集団に絡まれてもらいました」

「あぁ さっきの変な奴らか。
凄いスピードで走り去るから取り逃がしちまったけどさ…
おっさん、あいつらが何処に行ったか知ってるかい?」

「おそらく、この先のメリダの村です」

商人の言葉を聞いて女は上機嫌になった。

「となると、あまり遠くじゃないね…
よし!決まりだ!みんな良く聞いておくれ!
次の目的地はメリダの村!
ちょっと大きめの村だから、一度アジトに戻ってから他の仲間も集めて襲撃するよ!
覚悟はいいか野郎ども!!」

女の声に他の亜人達も「応ぅ!」と叫ぶ。
辺境伯内の盗賊達は今日も元気いっぱいだった。


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