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No.29737の一覧
[0] 試される大地【北海道→異世界】[石達](2012/11/29 01:19)
[54] 序章[石達](2012/11/29 01:05)
[55] 起業編1[石達](2012/11/29 01:06)
[56] 起業編2[石達](2012/11/29 01:07)
[57] 起業編3[石達](2012/11/29 01:08)
[58] 国後編1[石達](2012/11/29 01:08)
[59] 国後編2[石達](2012/11/29 01:09)
[60] 転移と難民集団就職編1[石達](2012/11/29 01:09)
[61] 転移と難民集団就職編2[石達](2012/11/29 01:10)
[62] 礼文騒乱編1[石達](2012/11/29 01:10)
[63] 礼文騒乱編2[石達](2012/11/29 01:11)
[64] 礼文騒乱編3[石達](2012/11/29 01:11)
[65] 礼文騒乱編4[石達](2012/11/29 01:12)
[66] 戦後処理と接触編1[石達](2012/11/29 01:12)
[67] 戦後処理と接触編2[石達](2012/11/29 01:13)
[68] 嵐の前編[石達](2012/11/29 01:14)
[69] 北海道西方沖航空戦[石達](2012/11/29 01:14)
[70] 大陸と調査隊編1[石達](2012/11/29 01:15)
[71] 大陸と調査隊編2[石達](2012/11/29 01:16)
[72] 大陸と調査隊編3[石達](2012/11/29 01:16)
[73] 魔法と盗賊編1[石達](2012/11/29 01:17)
[74] 魔法と盗賊編2[石達](2012/12/08 01:24)
[75] 決戦[石達](2012/12/08 01:20)
[76] 盗賊と人攫い編1[石達](2012/12/31 22:47)
[77] 盗賊と人攫い編2[石達](2013/01/19 21:24)
[78] 盗賊と人攫い編3[石達](2013/01/19 21:23)
[79] 道内情勢(霧の後)1[石達](2013/02/23 15:45)
[80] 道内情勢(霧の後)2[石達](2013/02/23 15:45)
[81] 外伝1 北海道航空産業の産声[石達](2013/02/23 15:46)
[82] 東方世界1[石達](2013/03/21 07:17)
[83] 東方世界2[石達](2013/06/21 07:25)
[84] 東方世界3[石達](2013/06/21 07:26)
[85] 幕間 蠢動する国後[石達](2013/06/21 07:26)
[86] 東方世界4[石達](2013/06/21 07:27)
[87] 東方世界5[石達](2013/06/21 07:27)
[88] 東方世界6[石達](2013/06/21 07:28)
[89] 東方世界7[石達](2013/06/21 07:28)
[90] 世界観設定[石達](2013/06/23 16:49)
[91] 人物設定[石達](2013/06/23 16:57)
[92] 東方世界8[石達](2013/07/15 01:51)
[94] 帝都ティフリス1[石達](2013/08/09 02:02)
[95] 帝都ティフリス2[石達](2013/08/12 00:21)
[96] 帝都大脱走1[石達](2013/09/23 00:16)
[97] 帝都大脱走2[石達](2013/09/22 22:47)
[100] 帝都大脱走3[石達](2014/02/02 03:03)
[101] 対エルフ1[石達](2014/02/02 03:03)
[102] 対エルフ2[石達](2014/02/05 22:45)
[103] 対エルフ3[石達](2014/02/05 22:45)
[104] 対エルフ4[石達](2014/02/05 22:46)
[105] カノエの素性1[石達](2014/02/05 22:46)
[106] カノエの素性2[石達](2014/02/09 13:13)
[107] 別れ、そして託されたモノ1[石達](2014/02/09 13:14)
[108] 別れ、そして託されたモノ2[石達](2014/02/09 13:16)
[109] 決意[石達](2014/02/09 13:42)
[110] 新しい風[石達](2014/04/13 10:41)
[111] 交流拡大、浸透と変化1[石達](2014/04/13 10:41)
[112] 交流拡大、浸透と変化2[石達](2014/06/04 23:46)
[113] 交流拡大、浸透と変化3[石達](2014/06/04 23:47)
[114] 交流拡大、浸透と変化4[石達](2014/06/15 23:55)
[115] 交流拡大、浸透と変化5[石達](2014/06/15 23:55)
[116] 平田、大陸へ行く1[石達](2014/08/16 04:02)
[117] 平田、大陸へ行く2[石達](2014/08/16 04:02)
[118] 対外進出1[石達](2014/09/14 08:19)
[119] 対外進出2[石達](2014/08/16 04:04)
[120] 対外進出3[石達](2014/10/13 01:58)
[121] 回天1[石達](2014/10/13 01:59)
[122] 回天2[石達](2014/10/14 20:24)
[123] 回天3[石達](2015/01/18 08:20)
[124] 回天4[石達](2015/01/18 08:24)
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[29737] 帝都大脱走3
Name: 石達◆48473f24 ID:bb90e600 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/02/02 03:03
サルカヴェロ帝国
帝都ティフリス地下


「社長……
これは一体……」

眼前に広がる光景を見て、思わずアコニーは息をのむ。

「まさか…… 街の下に地下都市があるとはな。
しかも、地球の都市遺跡か……」

拓也達の前に広がるのは、近代的なヨーロッパの町並み。
伝統的な建物と近代的な社会インフラが共存した都市であった。
恐らく放棄されてから長いのであろう。
道路の彼方此方で遺棄された車両には埃が積もっており、かなりの年月が経過している事が見て取れる。
拓也はこれが何処の都市かを知ろうと都市の中へと歩みを進め、広告として張られていたポスターを見て
その特徴的な言語に気が付いた。

「グルジア語……」

丸みを帯びた特徴的な文字、それは独身時代のバックパッカーとして世界を歩いていた時に見た事があるものだった。

「社長。知ってるんですか?」

「あぁ。旅行中に齧っただけで殆ど読み方は忘れたけど、何個かこの文字の読み方は覚えてるよ。
あぁ…… それで帝都の名前がティフリスか。
納得がいったよ」

拓也はそう言って一人頷くと、更に周囲を見渡して、何かを思い出したかのように一人納得した表情でうんうんと頷く。

「あら、社長はこの都市に来た事が?」

「……昔、一度だけ来たことがある。
といっても、転移前の世界だけどさ。
ティフリス…… これってトビリシの別名だろ?
土産に買った酒の名前がそうだったから、名前の由来は覚えてる。
前に来た時と色々変わってるけど、この場所は覚えてるよ。
このゴルガサリ広場から、シナゴークの脇を抜ける道を抜けて行けば自由広場に出て、更に奥へ行けば旅行中に仲良くなった友達の家がある。
あと、あの建物にあるレストランで食べたヒンカリ(グルジアの水餃子)が旨かったっけ……」

段々と思い出してくる過去の旅行の思い出。
そして、その思い出の町並みは、細部が変わっているものの大筋で眼前に広がっている町並みと一致する。

「多分、社長の想像通りだと思うけど、目的地はこの先だから歩きながら説明しますね」

そう言って彼女が歩みを進めるのは、かつてはゴルガサリ通りと呼ばれた通り。
このまま歩いていけば、街の中心部へと進むコースだ。
カノエはその道を歩きながら、この地下都市の説明をしだした。

「この地下都市は、恐らく出自は社長の来た世界と同じです。
北海道の時とは規模は違いますが、都市ごと転移させられたんでしょう。
しかし、その時も完全な成功とはいかなかったのか、転移場所は地表からズレた地点になってしまった。
それが直接的な原因となり、滅びの道を辿ったのでしょうね」

不完全な転移。
拓也は、ニュースで転移した北海道の地下構造が同じ時代の北海道のものではないと言っていたのを思い出した。
不完全な転移でも、運よく北海道はその程度で助かったが、こっちのトビリシは運が悪かったようだ。

「そりゃぁ いきなり地下に閉じ込められたんじゃ助からないよな。
みんな窒息死か……」

真っ暗な有毒ガス環境。
全くもって人の生きていけるような環境ではない。
拓也は、光の届かない町並みの奥には、死体の山でも積まれているのではと想像してゾっとしてしまう。

「それについてですが、文明の継承こそ出来なかったもの住民は助かったようです。
地下に転移こそしましたが、この地域の地形がまっ平らじゃなかった事と、土地が球形に切り取られて転移したのが幸いしたようです。
転移した所の地下構造……地下鉄って名前でしたっけ?それが偶然にも崖になっていた部分に届き、そこから住民が脱出したそうです。
まぁ ですが、その条件から文明を興すだけの体力は無かったようで、周辺部族に文化を伝えたものの住人自体は歴史の闇に消えました」

「そんな事が……
もしかして、カノエ達はグルジア人の末裔?
色々と詳しいし、こっちの世界の普通の人々とは雰囲気が違うよね。
まぁ その割には髪の色とかが普通じゃないけどさ」

「いや、私達は社長がグルジア人と呼ぶ古代サルカヴェロ人とは関係ないですよ。
この放棄されてた地下遺跡を利用させてもらってはいましたが」

「利用?」

「えぇ。
ほら、あそこ。
誰も入ってこれないのを良い事に、自分達の為の研究施設を作ってたんですのよ」

そう言ってカノエが指差す先にあるのは、丸い大きな建物であった。
それは一目見ただけでも、周りの建築群とは異なる設計思想に基づいて作られたのがハッキリとわかる。
窓一つないノッペリとした黒い円形の外壁は、周りの町並みと比較して強烈な違和感を放っている。
その上、その建物の一番の特徴は、何か巨大な力による破壊の爪痕を残していると言うことだった。

「なんだか酷くボロボロだな」

後から建築された割には、破壊の度合いが一番酷い。
思わず、率直な感想が拓也の口から出た。
そんな拓也の感想に、カノエはしれっとその理由を答える。

「エルフに襲撃されましたから」

「エルフに?」

この世界のエルフと言えば、ガチムチ黒人のダークエルフしか拓也は見たことは無いが、普通のエルフは一体どのような存在なのだろうか。
馴染み深い漫画等のイメージで言えば、耳のとんがった高潔な美男美女の集団か、常にオークや何やらから性処理の対象にされるエロフなイメージがある。
だが、それらのイメージは恐らく何の役にも立たないだろう。
ダークエルフと聞いて拓也がボンテージお姉さんを想像したのに、出てきたのがガチムチのタイソンだった時のように……

「奴等はこの星の抗体みたいなものです。
我々は奴等にマークされてるんですよ。
奴等に見つかる前は細々と生きていた我々ですが、研究の為に空間に溢れているエネルギー……今は"魔力"と呼ばれていますね。
それに大々的に手を出した為に、ここが見つかって襲撃されました」

「え?
でも、この世界って皆自由に魔法とか使ってるんじゃないのか?」

エルヴィスやらゴートルムといった西方諸国は魔術を普通に使ってるし
亜人達も持ち前の精霊魔術を何の気兼ねも無く使っている。
言葉の意味から察するに、魔力とやらは魔術や精霊魔法のエネルギー源なのだろう。
だが、なぜ皆が気兼ねなく使ってるものを使ったのが理由で襲撃されるのだろうか。
拓也の頭に疑問が浮かぶ。

「社長の言うとおり、西方の魔術師や亜人は皆使ってますわ。
でも、私達のは使い方が違ったんです。
空間に溢れる魔力を従来の方法ではなく、機械的かつ大規模に使用しようとしたのがマズかったんですわ」

「機械的に使うのが問題?
消費するエネルギーが増えるからとか?」

「いえ、魔力のキャパシティ自体は何ら問題はありません。
膨大すぎて使い切るのは不可能と言って良いでしょう。
問題は別の所です。
社長に分かりやすいように説明すると、電力会社と契約している世帯の電気を、未契約の家が勝手に電線繋いで盗電してたら怒られますよね?
それと同じです。
盗電自体も細々とやればバレなかったのです。
例えば、北海道で時々私が薬を作りましたけど、あれは実はこの星の魔力を盗用して元素を造換してただけです。
それくらいならバレなかったんですけどね。
バレた原因は、魔力の使用を大規模に、しかも未契約者がって所がキモです」

「そりゃぁ…… 怒られても仕方ない。
でも、それにしたってこんな手酷く破壊しなくたっていいじゃないか」

違反行為をしてたって、最初に警告くらいしてきても良さそうなのに、カノエの話をよくよく聞くと警告なしにイキナリ実力行使されたようである。
好戦的な集団の多いこの世界には、話し合いという概念は無いのだろうか?と拓也は思う。

「まぁ 過ぎたことなんで今更言っても仕方ないですわ。
それに、大規模に魔力を使用しようとした理由は、今のサルカヴェロ人に起こされた反乱を鎮圧するためだったので
どちらにしろ、私達の一族は詰んでいたのかもしれません」

「……そうか」

あまりにもあっさりと自分の一族の滅びを語るカノエ。
その言葉には一切の未練も感じさせず、ただ全てを受け入れているようであった。

「ま、そんな暗い話は兎も角。
これから怖~いエルフが襲ってくるので、それに備えましょう。
流石に対抗手段も無く逃げるのは自殺行為です」

「?!
カノエが言ってた危険な奴等ってエルフの事だったのか?!

……いやいやいや。
こんな建物を完全に潰すような奴等相手じゃ時間稼ぎもキツ過ぎるし」

今の装備は拳銃2丁とマグが数本。
他の装備といえば、イラクリが彼と他二名用に持ち込んだ短剣が3本。
こんな装備でどうやってビルをも破壊する連中と渡り合えばいいのだ?
旧軍宜しく精神力で戦力差をカバーしなければならないのだろうか?
その様な想定をすればするほど、気分的には対戦車肉弾戦を覚悟しなければならないような気分に拓也はなる。

「じゃぁ 社長達は別で逃げます?
まぁ エルフからマークされてるのは私だけですし。
皆の安全を考えれば、私はそれでも良いですけど……」

「うううう……」

カノエはそう言うが、この期に及んでカノエを見捨てて逃げ帰ったとなれば、本当に何をしに来たのか分からない。
後味が壮絶に悪くなるのもさることながら、配下社員達からも失望の目で見られるだろう。
だが、行く手に待ち受けると予想される危険はあまりに大きい。
拓也はしゃがみ込み、うんうんと唸りながら考える。

「社長?」

カノエは頭を抱えてしまった拓也を心配し、拓也の顔を覗き込もうとするが、
その瞬間、拓也は意を決したようにガバッと立ち上がった。

「わかったよ!
皆で一緒に逃げる!
お前も一緒に帰らないと何のためにココまで来たのか分からないからな!
言っとくが、俺は人付き合いにおいて損切りのヘタな男だ。
だが、それでも俺はお前達の雇い主でもある。
社長オーダーだ。全てに優先する命令として全員で一緒に逃げるぞ。
拒否はさせないからな!」

拓也はようやく決心したのか、アコニーやその他の面々に対して怒鳴るかのように宣言する。
一度やると決めた拓也の顔には、最早迷いは微塵も無い。

「いや、あたいらは別にあんたの手下じゃ……」

キッ!

拓也の決心に水を差す無粋なニノの言葉を拓也は視線で制する。
その気迫に押されてか、ニノも最後まで言葉を発せない。

「ふふ……。そうくると思ってましたよわ
じゃぁ 逃げる準備をしましょうか。
流石にその装備でエルフを相手にすると、足止めにもならないですしね」

「……やっぱり、拳銃じゃ足止めにもならないか。
だとしたら、準備って何をするんだ?」

「それはこれから説明しますわ。
とりあえず、私の後に付いてきてください。

そう言って、カノエは半ば崩れた建物の方へと歩き出す。
少しずつ近づいてみると、思った以上にその建物の状況は酷かった。
外見上ですぐに分かる建物の崩落部以外の箇所も、よく見れば火災の後がある。
建物の色自体が黒いため、すす汚れが遠目からは分かりにくかったが、近づいてみれば中々の大火災が起きていたようだ。

「これから中に入りますけど、所々に焼死体がありますので気をつけてくださいね」

カノエはそう言ってライトを持って奥へと進んでいくが、彼女の言葉通り、所々に真っ黒に焦げた人型が転がっている。
中には完全に炭化していないモノも多々あったが、低酸素環境のためかあまり腐敗は進まず、焦げたミイラとなっている。
そんな死体や瓦礫の間を縫うように奥へ奥へと入っていくと、ある程度建物の下層階へと下った所で火の手が及んでいないエリアが現れた。
破壊から免れただけあってそのフロアの状態は良い。
飾りっ気は一切無いものの、コンクリートと思しき廊下が続いている。
そんな廊下を暫く歩くと、カノエはある一つの扉のところで足を止めた。

「ここが研究室ですわ。
不幸中の幸いにして、過去のエルフの襲撃は一族の抹殺がメインでした。
なので、当時中に居た者達を殺しつくし後に彼らはさっさと引き上げていき、ここは潰れずにすみましたの」

カノエは拓也達にそう説明すると、古びた鉄製のドアをギィ……と開ける。
開け広げられた扉の奥、中を確認しようとライトを向けられた先にあったのは、所狭しと棚に置かれた物の数々であった。

「すごいな。
色々なものがある」

所狭しと並べられた物品の数々。
一目で用途が分かるのも有れば、さっぱり不明なものもごっちゃになって置いてあった。

「ここは研究品を保管する所ですから、色々なものがありますよ。
古代サルカヴェロ人の電子記録から私達の作ったものまで色々ね。
特にこの星の魔力は未だに供給源やら何やらは謎ばっかりだったので、魔導具の研究が沢山あるはずですわ」

魔導具も気になるが、それ以上に拓也が気になるのは、カノエの言う古代サルカヴェロ人の電子記録だった。
分かりやすくいえばグルジア人たちの残したデータなのだろう。

「うわ。
凄いな。
タブレットからゲーム機まで色々あるよ。
えっと、ドリー○キャスト2?聞いた事がないゲーム機だな。
ゲーム業界の覇権を握りそうな格好いいデザインだけど……
見かけは動きそうだけど、やっぱり起動は無理?」

「中の樹脂系部品は死んでますから。
転移から約1000年は経過してるので、データは殆ど飛んでます。
特殊な方法で一部のデータは吸い出しましたが、単体では動きませんよ」

「そうか。
ここは1000年前にこちらの世界に来たのか……
一体、何時ごろの時代の地球から来たんだろうな」

そう言いながら、拓也は目の前にあったゲーム機を手に取ると、じっくりと回しながら見てみることにした。

「お、このゲーム機、製造年月日が打ってある。
どれどれ……2050年…… 俺達が飛ばされてから25年以上後から来たのか……」

転移したのが刻印された製造日からどのくらい後なのかは分からないが、日本製と思われるゲーム機が出てきたのだ
少なくとも2050年まではトビリシは地球にあったのだろう。
1000年も過去の遺物から出てきた未来の地球に繋がるソレは、拓也に様々な思いを抱かせる。

「北海道が転移してから元の世界はどうなったのかなぁ……」

北海道が丸ごと消えてしまったとなれば、色々と混乱もあるだろう。
転移前に約1ヶ月の準備期間があったとはいえ、その影響は計り知れないはず。
拓也は、北海道が無くなれば、青森県に流氷が着たりするのかなぁ等と想像してみた。

「社長。
感傷に浸るのも良いですけど、まずは装備を整えましょう」

「あぁ、そうだった。
で、何を持てばいいんだ?」

拓也はハッとして、カノエの方を見る。
今はエルフの襲撃に備えて装備を整える時。
とはいえ、ここに何が積まれているのかはカノエしか把握していない。
拓也は何かおススメはないかとカノエに聞いた。

「そうですね……
これなんかどうです?」

そう言ってカノエが取り出したのは、何本ものコードが垂れ下がった筒だった。

「なんかコードが一杯出てる筒っぽいけど、コレは何なの?」

「研究用の標的射出装置ですわ」

カノエは結構威力はありますわよと言いながら、その筒を拓也に渡す。

「標的射出装置?
武器じゃないんの?」

「元々は武器じゃないですけど、相手に向けて作動させたら武器にもなりますわ。
電磁石の力で金属球を超高速で射出する装置ですもの。
でも、手に持って運用する事は考えられていないので持ちにくいのは許してくださいな」

「電磁力って…… レールガンみたいなものか。
電力供給とかどうなってるんだろうな……」

「エネルギー供給は魔力ですが、そこらへんは今話してもしょうがないことなので、また今度。
そして次にアコニーはこれ」

「これは?」

「魔力ペレット投射器。
カプセルに封入した液化魔力を射出する装置よ。
威力が強いから気をつけてね。
弾体が命中すれば半径3mは一瞬で蒸発するから」

「……」

カノエは平然とそんな事を言いつつ、アコニーに釘打ち機のような装置を渡す。
先ほどのレールガンとは違い、一応はハンドリングが考慮されているようだが、本当に彼女の言うような威力なら
撃つ方も相当注意しなければ危険すぎるシロモノであった。

「あたし達には何か無いのかい?」

「え、貴方達の分?
社長が貴方達が一緒に行動するのに何もいわなかったからココまで連れてきたけど
そもそも貴方達は盗賊で、味方と言うわけじゃないでしょう?」

当然のように自分達の分を要求してくるニノに、カノエはきっぱりと言い放つ。
カノエが合流した時に、ニノ達が一緒に居るところを見て拓也と敵対していないようだと言うのは察していたが、
人質交換しようとして捕まった時点から現在までの経緯を知らないカノエにとって、ニノたちは依然として悪人一味。
彼女らが付いてくることに対して拓也が何も言わなかったため、ココまで一緒に連れては来たものの、武器まで渡すのは躊躇われた。
もしかしたら、攫われている最中に色々と恨まれる様な出来事があったのかもしれないが、カノエはその辺の事情は何も語らずニノ達に対して冷たい態度を取る。

「けっ!
なんだい。ちょっと攫ったくらいで根に持ちやがって。
ふん!あんたの指図が無くたって、あたいらで勝手に漁らせてもらうさ」

そう言うと、ニノは机の上に無造作に置かれていた握りこぶし大の琥珀のような塊を手に取った。

「な!?」

「おっと、なんだいこりゃ?
宝石かい?いいもん見つけたね」

「そ、それは駄目よ!」

カノエは慌てた様子でニノから謎の物体を取り返そうとするが、頭一つ分大きいニノが頭上にそれを掲げれば
カノエがいくら手を伸ばしても、身長差から取り返すのは難しい。

「ケチケチするんじゃないよ。
どうせ埃を被ってるだけなら、あたいらが頂戴して……」

「それは取り扱いを間違えると、この地下遺跡の半分は木っ端微塵に吹き飛ぶのよ」

「……」

さらりととんでもない事を説明するカノエ。
その言葉を聞いて、ニノは一瞬氷付いた後、黙ってソレをカノエに渡した。

「そんな危ないものなら、こんな所に置いとくんじゃないよ!!」

少々青ざめながらニノはカノエに抗議する。
カノエの言う事が本当なら、何かの拍子に全員爆死していた事になる。
そんな危険なものなら、もっと大事にしまっておくべきだと、カノエを除くその場の全員がニノの言葉に同意する。

「研究の途中で襲撃されたから仕方ないのよ。
あっ…… でも、よくみたらコレは未完成品だったから大丈夫だわ。
爆発はしないわ」

カノエは心配して損したとばかりに、その物体を棚の奥へと投げ入れた。
木っ端微塵に吹き飛ぶと言った後に、それをぞんざいに扱うカノエ。
色々とツッコミどころは満載だが、拓也は顔を引きつかせながら謎の物体の正体を聞いた。

「み、未完成?
というか、あれは何なんだ?」

「あれは、今社長たちが持っている装置のエネルギー触媒を作る装置ですわ。
分かりやすくいうと、空間に漂う魔力を液体燃料に変換する為の触媒物質を生成するんだけど
その触媒自体は魔力を固体化させたものです。
だから、操作を誤ると固形化されたエネルギーが解放されて大変なことになるんだけど
あれは大丈夫みたいね。
試作品の製作中だったみたい。
生成量をコントロールする機構が付いてないから、中身は空っぽだわ」

「なんだかよく分からんけど、コントロール機構が無いとか大丈夫なの?」

「ある一定の周波数の振動と電圧をかければ垂れ流しみたいになっちゃうけど、今の状態であれば大丈夫よ」

「そうか。
まぁ、その話は置いといて、出来れば彼女らにも強力過ぎない武器は無いか?
追われている以上、何かしらの準備はしておきたい」

「社長がそこまで言うなら仕方ないですね。
そうですね…… じゃぁ これなんかどうです?」

「これは?」

「魔力発動妨害装置」

「妨害装置?
なんだかショボいな」

「いや、そんな事はないですよ。
私たちですら完全には解明できてない魔法の発動を妨害できるんですから
まぁ 原理は簡単で、魔導具によりハイパワーのエネルギー吸収魔法発動させて範囲内のエネルギーの全てを奪い、相手の魔法を妨害します」

「へぇ~
よくわからないけど凄いもんなのか」

「でも、欠点があるんですよ」

「欠点?」

「研究中だったので遠隔操作も時限操作もできません。
そして有効範囲は訳10mくらいですね。
放出される魔力の強さからして確実に生身の使用者は死にます。
何せ脳内の電気信号から体温まで全てのエネルギーを奪われますから」

「……おい」

「あ、でも死体は綺麗ですわよ?氷漬けですから。
女なら綺麗に死にたいですよね。
それに使い方も簡単。紐を引くだけで発動します」

そう言ってカノエはニノに向かってニコリと笑う。
だが、そんな物を渡されたニノは怒りに肩を震わせていた。

「ふ、ふ、ふざけるな!バカヤロー!
何考えてんだ!!」

殺す気かと怒鳴るニノ。
それに対してカノエは、頬を膨らませながら違う道具を取り出した。

「ふん、仕方ないですね。
じゃぁ、コレで我慢してください」

「これは…… 弓矢?」

「そう。
弓の方は只の変哲もない弓。
でも、矢が特別性なのよ。
元々、一般兵用に作った奴だし」

「ふん。
で、この矢は同特別なんだい?
また自殺専用とかじゃないだろうね?」

「いいえ。
ただ矢尻に爆発物を付けただけよ。
だけど、放たれた瞬間に魔力の膜に包まれて空気抵抗と重力を無効化するから、慣性に従ってどこまでも飛ぶわ。
まぁ 放物線を描かない矢なんて失敗作の何物でもなかったけど、個人で使う分には問題ないでしょ。
三人にはコレをあげるわ」

「そのカンセイとかはよく分からないが、どこまでも飛ぶ矢ってのは凄いな。
よし、タマリ、イラクリ。
あたいらはこれにするよ」

「本当なら、他に誘導機能も欲しかったんだけど…… チッ」

と、そこまで説明した所で、カノエが何かを感じ取ったかのように斜め上の天井を見詰める。
天井をつき抜け、地上も通り越した上空から感じる何かの気配。
それに気が付いたその瞬間から、カノエの表情に余裕が消えた。

「社長。
おいでになったようです。
お話したとおりに逃げましょう」

「え?わかるのか?!」

拓也達にとっては未知の感覚で知覚しているのだろう。
カノエ以外の誰もが何も感じない中、明らかにカノエは何かを敏感に感じ取っている。

「そろそろエルフの反応が王城あたりに到達します。
向こうも、エレベーターが動いた時の魔力反応は感知しているでしょうから、もう時間は無さそうですわ。
さっさと荷物を纏め、この帝都から離れましょう」


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