前書き
キャラありきの文章なので、
最初にキャラ説明を見ないとわかりにくいと思います。
よければどうぞ。
ピクシブillust_id=19142038
シロの職業病にみんなが奮闘する話。
1.
羽郵便にはある絶対にしてはいけない決まりがある。
それは、
「手紙の心に触れすぎてはいけないことです。」
わかってますよねシロ?
とマスタがシロに話しかけていた。
「うぅ・・・わかってるけど・・・。」
「まったく、触れすぎたから今そうなってるんでしょうに・・・。懲りないですね。」
羽郵便の配達員は、感情の塊である、手紙を運ぶ際に、少なからず手紙の感情に触れてしまう。
その為、宛先等必要最低限の情報しか読み取らないように訓練されている。
しかし、元々感情を読むのが得意な上、羽郵便の新米であるシロはそのコントロールがうまくいかないようだ。
現に今も手紙の感情に当たりへたっている。
「だからマスタのとこで珈琲飲んでるんだよー。」
発言通りシロは、マスタのカフェで、珈琲を飲んでいた。マスタは、シロの叔父であり羽郵便のOBであり、先輩だ。
マスタが煎れる珈琲は気持ちを落ち着かせる効果があるのか、
飲むと、落ち込んでいたり、怒っていたりしてもなぜか平常心に戻れる。
「でも、マスタはすごいよね。いくらベテランとはいえ、たくさんの手紙を普通に扱える上、紅茶にしちゃうんだもん」
マスタのカフェは、手紙の集配所になっている。羽郵便のOBが善意で集配所を兼ねるのはよくあることで、
マスタはカフェを経営している為、差出人の許可を貰った手紙のみ羽の部分を頂いてそれを紅茶にしているのだ。
羽の紅茶はマスタの調合により、元気を出したい用や、落ち着きたい用など、それぞれの用途に合わせて調合してある。
調合せず、そのまま飲めるのは、差出人だけだが、それはまた別のお話。
「当たり前です。シロより、ずっと手紙に触れてきましたからね。」
「だよねー・・・うーんなんか眠くなってきた・・・。マスタなんか混ぜた?」
シロはボーっとする頭で話した。
「えぇ、時がくれば起こします。そのままお休みなさい。」
「ん、わかった。」
シロはマスタの言葉で素直に眠り始めた。
と、同時にカフェの二階から誰かが降りてくる音がし、毛布をもった、クロが顔をのぞかせた。
「クロ、シロはもう寝ましたよ」
「そうですか。」
そういって、カウンターにつっぷしたシロに毛布を掛けるクロ。
「心配ですか?」
「うーん・・・。おつかれさんって感じです。」
「今は正念場です。新米の羽郵便はここを乗り切れるかどうかで、その後が決まるかどうかって感じですからねぇ。」
「わかってるつもりです。今回は、何を混ぜたんですか?」
「私が混ぜたのは、気持ちを落ち着かせる茶葉だったんですが・・・、疲れていたのでしょうね。」
苦笑いしたマスタと、少し悲しそうなクロは、マスタへの視線をシロにうつしながら尋ねた。
「最近、飲んでは寝てますね・・・。いくら仕事とはいえ心配です。」
マスタはクロの発言をいつもの笑顔に戻して流し、口を開いた。
「それが羽郵便の仕事です。」
「・・・。」
「クロ」
諭すようなマスタの声
「シロが今、素直に寝ていられるのは、クロあなたがいるということもあるのを忘れないで下さいね。」
「え?」
「シロは自分が寝た後、あなたが毛布を掛けてくれるとわかっているから、そのままカウンターに突っ伏しているんです。」
「・・・。マスタ俺は・・・。」
その時、シロが少し動いたのに気づいてクロは言葉を止めた。
シロは、動いた後起きる様子はなく眠ったままだが口元は笑って居る。
「夢の中でも、茶葉は効果を発揮してくれているようです。」
「マスタ、シロはどんな夢を見ているんだと思いますか?」
「見てみますか?」
「え?」
「実は見れるんですよ。シロはまだ問題ありませんが、もっと重度になってしまう職員も居ますので、
そういう時だけ特別に見ることを許可されているんです。」
「はぁ・・・しかし、今は無理なのでしょう?」
「えぇ、元職員である私がそれをやると規律を破ることになりますので、無理ですね。見る方法は意外と簡単なんですけどね。」
クロはきょとんとした顔をしながらマスタの話を聞いている。
「クロ、夢見草という花を知っていますか?」
「名前だけは知っていますが、本当にあるものなんですか?」
「えぇありますよ。すごく身近に。」
「・・・俺なら問題ないんですか?」
「えぇ、問題ありません。ただ・・・。」
「ただ・・・?」
「もし、見るならちゃんと声を聞いてあげて下さいね。」
「え・・・?」
マスタはそう意味ありげに呟き、クロに、ピンク色の花が咲いた木の枝を渡した。
「これは、桜ですか?」
「えぇ・・・夢見草とは桜の事ですよ。それじゃいってらっしゃい。」
「マスタ何を・・・」
言いながらクロは、自分の意識が遠のいていくのを感じた。
「クロよろしくお願いしますよ。」
あぁまたこの人は・・・。そう思いながらもクロはおとなしく意識を手放していた。
2.
「・・・はぁ、またやっちゃったかぁ。うまくいかないなぁ。」
夢の中のシロは、誰もいないマスタのカフェのカウンターでのんびりと珈琲を飲んでいた。
シロの目の前の映像には絶えず、今まであった楽しかった事、嬉しかった事の記憶が流れている。
「どうせ、その内マスタが起こしてくれるし、自分の心の栄養補給しないとねぇ」
シロには、今見ている物が全て夢だということがわかっていた。
でも確かに過去にあった大切な思い出だから、笑みだって漏れる。
「それなら、そんなにまずそうに珈琲飲むなよ。」
だからクロがカウンターの内側に出てきても特に何も思わなかった。
「しょうがないじゃん、疲れてるんだよ。」
「シロ」
「なにさ?」
ちょっとイライラしながら答えるシロ。そして同時に違和感も覚える。
「何かあったら相談に乗るから、一人で抱え込むなよ?」
「・・・。」
シロは怪訝そうな顔をする。
おかしい確かにクロは心配性だが、何かおかしいと、だんだん違和感の正体がわかりつつあるようなそうでないような。
反対にクロはいつもの心配そうな顔でシロを見つめている。
そういつも過ぎる・・・。当たり前なやりとりでも、とても大切なやりとり。
結果的に一つの結論にたどり着く。
「・・・馬鹿だなぁクロ、こんなとこまでこなくても僕は大丈夫だよ。」
「別に俺だって、半分は来たくて来たわけじゃないような・・・。」
「あ、でも半分は心配してくれてたんだ。」
「そうだよ、悪い?」
そういうクロのどこか怒ったような真っ直ぐな瞳。シロはそれを直に受け止める。
マスタならこういう時、この視線のうまい対処方を知っていそうだが、
今のシロには直に受け止める以外できない。
シロにはその瞳が真っ直ぐ過ぎるのだ。
「心配っていう意味では半分とかじゃない。毎度毎度、珈琲飲んで寝てたら心配だよ・・・。」
「いつも毛布かけてくれてありがとう」
怒っているように見えたクロが、だんだん弱気な声に変わっていく。
それにシロが応じる。
シロも少し寂しげで何かを思案していた。
「うん・・・。僕はまだまだ羽郵便としては半人前だし、まだまだ迷惑掛けると思う。」
「・・・。」
それを黙って聞くクロ。
「でもやっぱこの職業好きなの。」
「わかってる。」
とクロ。
「だから、僕自分なりにやってみるからさ、クロ××××ね。」
「え、何?」
クロはシロの言葉の語尾が良く聞こえなかったようだが、シロは気にせず笑っていた。
「さぁ、もう起きる時間だよクロ。」
「えっ・・・だから・・・なんていったんだっ・・・・て・・・・」
クロの意識がまた揺らいでいく。
3.
「シロ、クロ起きて下さい。」
マスタに揺さぶられて、シロとクロが起きた。シロはボーっとした頭でおはようとかいっている。
反対にクロは手の中にマスタから手渡されたはずの桜の枝が無いのを気にして探しているが、
目の前にあるのは飲みかけの珈琲。
「マスタ、桜の枝はどこに?」
「・・・桜?クロ何をいっているんですか?」
「えっ、だって、桜は夢見草で、それで相手の夢を見ることができるって」
きょとんとするマスタ。
「・・・シロは何か知っていますか?」
「うーん、夢見草っていうのは知ってるけど、それって桜だったの?」
「・・・夢だったのか?」
当惑するクロに、補足を付け足すマスタ。
「えぇ、シロもクロもよく寝ていましたよ。クロも疲れていたんですね。二人とも珈琲を飲んで寝てしまいましたよ。」
「よくわからないけど、でもなんかすごく良い夢だった!よくわからないけど元気でた!」
よくわからないと連発するもののシロだけやたら元気だ。
「それじゃいってくる!」
シロはそういって困惑するクロといつも通りのマスタを残して、
カランカランとカフェの扉のベルを勢いよく鳴らし、集配に出掛けていった。
「クロ、どんな夢を見たのですか?」
マスタの問いかけにクロは、丁寧に答えていく。
記憶はところどころぼけているものの夢というわりにはしっかりしている。
「そんな夢を見たのですか。
もしかしたら本当に、桜にイタズラされたのかもしれませんね。心なしか、あなたからは桜の匂いがしますよ。」
「・・・桜の匂いですか?」
クロは桜の記憶をたどっていくが、特に思い当たる節がない・・・。
「うーん・・・わからないです。」
「ま、そういう時もありますよ。シロも元気になったようですし、結果的には丸く収まってますよ。」
「・・・そうですね。」
まだ腑に落ちない顔のクロだが、いつもよりも元気なシロの後ろ姿を見送ったからか、しぶしぶ納得しようとしている。
「今日はお客様も少ないようですし、クロもお疲れでしょう。先にあがって貰ってかまいませんよ。」
「うーん・・・確かに眠いです。お言葉に甘えさせて頂きます。忙しくなったらいつでも呼んで下さいね。」
そういってクロは、二階の部屋にあがっていった。
一階のカフェのブースに独りになったマスタはのんびりと珈琲を飲みながら、呟いた。
「夢見草ですか・・・やはり、この方法が一番良かったようですね。」
誰に聞こえるでもない呟きが、珈琲を飲む音に消されていった。
FIN
あとがき
はてさて、シロの為か、クロの為か、マスタの為か・・・
いったい誰の為の香りだったんでしょうねぇ。
最後まで呼んで頂きありがとうございました。
天真爛漫無邪気なシロですが、周りを巻き込んでもやりたいことをやるので、
人によっては、わがままだと捉えてしまうような強い意志を持っています。
反対に、クロはいつでもおどおどして、常に周りに気を使ってこそいますが、
言いたいことは、シロ以上に真っ直ぐいいます。
マスタは、そんな二人の成長を楽しく見守るお守り役
基本的に3人+αで、自分の世界観を表現していて、
イラストメインですけど、SSとか書くのも結構好きです。
ただ、SSになるとすごく大人向けな内容になっている気がするので、
そこらへんがどうかなぁって思っているところです。
何はともあれここまでお付き合い頂きありがとうございました。
追記
文章に関してご指摘して頂いた方にこの場でも感謝を致します。
私は、文章に関しては初心者の位置にもたってないだろうと改めて思いました。
しかし、文章を書くのはやはり好きです。
今後書く際は、指摘して頂いた点を考慮させて頂きます。
どうもありがとうございました。