- AD2006 - 自分が食べたことのない味を思い出して無性に食べたくなる。という衝動は、葛城ミサトであった時にもよく経験した。 ミサトさんの時はUCCオリジナルだったり本場ドイツのビールだったりしたが、母さんの場合それは、ひろうすらしい。 ひろうすと云うのは、こちらで云うところのがんもどきと同じ料理だ。飛龍頭と書き、ポルトガルの揚げ菓子が起源だとか。京都生まれ、京都育ちの母さんは、ギンナン入りのひろうすが大好物だったらしい。秋になると大阪の親戚の家に泊まりに行って、御堂筋に落ちてる公孫樹の実を拾ったりしていたようだ。 母さんのプロフィールを読んで慌てたのは、京都出身だということを知って、京言葉を話すべきではなかったか? ということだった。落ち着いて母さんの記憶を浚ってみて、母さんがごく普通に標準語を使っていたことを確認して安堵したが。 これは旧首都圏に暮らしていた人には意外かも知れないが、地方出身者はけっこう上手に標準語を使う。学校教育やテレビの普及で、違和感なく身に馴染んでいるのだ。 これは近年に限ったことではなく、近世江戸時代でも謡曲や浄瑠璃言葉が共通語として機能していたらしい。…母さんの記憶の、受け売りだけど。 それはそれとして、いきなりひろうすが食べたいなんて感じられても、対処のしようがない。常夏の日本、特に復興期の今は、おでん屋さんなどというものはないのだから。 とりあえず、帰り道を変える。図書館にならレシピが載った本が置いてあるかもしれない。 終劇2007.10.18 DISTRIBUTED ボツ事由 碇ユイの人物像を肉付けするために出身地を設定するも、ユイが京大で京言葉を話してなかったので、不採用。