- AD2007 -すなのやま、くずしちゃった。だって……さいきん、ぼくに いもおとが できたんだちっちゃいちっちゃい。おにんぎょうさんのように ちっちゃい いもおとぼくよりずっとずーっと ちっちゃいのに、ぼくよりずっとずーっと おかあちゃんのそばにいるきっと、ぼくは おかあちゃんのほんとーのこどもじゃ なかったんだほんもののあかちゃんがきたから、ぼくはもう いらないこになっちゃったんだ「……シンジ」おとおさんだった。ながくてくろいくるまのなかに、おとおさんがいた「……乗れ」「ぼく、すなだらけだよ」「問題ない」「おとおさん、なぜ きたの?」「おまえの考えている通りだ」「おしごと、いそがしいんじゃないの?」「必要だから寄ったまでだ」「もうすぐ、おゆうぎのじかんだよ」「乗るなら早くしろ。でなければ、乗せる」おとおさんがそういうと、くるまのまえのほうから くろいふくをきたおじさんたちがおりてきたつかまるのは とてもとてもこわそうだったので、くるまにのった「……」「……」おっきいおっきい。おとおさんは おっきい。きっと、おかあちゃんの ばいはおっきいおっきくて、おとおさんは、こわい「……トマトは好きか?」「えっ?」「トマトは、好きか?」おっきいトマトは、やっぱりきらい。でもちっちゃいトマトなら「うん」「そうか」くるまがカーブをまがって、ちょっとたおれそうになったら、てをのばして おとおさんがささえてくれた「……おまえは、私より毅い男になるだろう」「ぼくが?」ああ。とメガネをなおしたおとおさんが、おそとをみる「私には、護るべきものがずっとなかった。 トマトの旨さを教えてくれるものも居なかった」くるまがとまる「おまえは、私より毅い男になるだろう」この おっきなおとおさんより、ぼくが?「時間だ。保育所にもどれ、シンジ」あけられたドアのそとが、まぶしかった おわりボツ事由 ありえたかもしれないゲンドウとシンジの交流を描くも、視点を増やして安易に心の裡を見せることはこのシリーズの主題を否定しかねないため不採用。