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No.29582の一覧
[0] 【習作】リンクライン【現実→ゲーム世界】[伊月](2012/04/04 05:54)
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[12] 12[伊月](2012/04/04 05:53)
[13] 13(プロットのみ)[伊月](2012/04/05 18:38)
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[29582] 13(プロットのみ)
Name: 伊月◆ad05b155 ID:8176fa62 前を表示する
Date: 2012/04/05 18:38
 街全体が吉報に騒ぐ中、独り、ひたすらに人気のない方へと歩いてゆく男の姿があった。
 体の各所に巻かれた包帯とそこに滲む赤色、対照的に真っ青な顔色、どう見ても治療が不十分な状態でベッドから抜け出してきた姿。長い髪を乱したまま、その彼は夢遊病者のように虚ろな目をしてふらふらと足を動かしていた。

 喜色で溢れる表通りから、街の人々の笑い声から、できる限り遠ざかろうとする。
 体が痛むのか時折躓き倒れそうな場面もあったが、それでも足は止めない。路地を奥へ奥へと進み、やがて虫の鳴き声以外は何も聞こえない場所に行き着いた。
 月明かりの下で、男――ウェスリーは静かに拳を握りしめる。

「くそ……くそ、くそ、くそおおおおおっ…………!」

 怨嗟の声。
 表情は怒りと憎悪に染まっており、唇を血が滲むほど強く噛んでいる。

「何が英雄だ、何が勇者だ!」

 思い出すのは街の住人たちによる称賛だった。よくやってくれたと、流石だと、そんな、普段ならば自尊心を大いに満たし気を良くさせるはずの言葉は――しかし今の彼にとっては憎しみの元にしかならない。
 街に迫っていた脅威を見事打ち払った冒険者?
 激戦の末、止めの一撃を放った若き英雄ウェスリー?
 運び込まれた病室のベッドで目を覚まし、初めてその話を聞いたとき、ウェスリーは激昂した。ふざけるなと、怒りに任せて叫び散らした。

 ……彼は、全て覚えていたのだ。

 あの黒い巨人と遭遇し、戦い、最高の技を放ち、そして打ち負けた。
 最強の代名詞であったはずの剣技は巨人の肉を割くことに成功したが、内臓に達する手前でいとも簡単に止められた。その後鬱陶しそうに、それこそ纏わりつく虫を払うかのようなぞんざいな動きで彼は吹き飛ばされた。

《あの巨人を倒したのは自分ではない》。

 ウェスリーはその事実を正しく認識している。

「あのガキ……ユト……あれが倒した……このオレが倒せなかったモンスターを……」

 ユト。
 初めて会ったときから何故か癇に障る、黒髪黒目をした異国の少年。それがギリギリのところで駆けつけ、あっという間に巨人を屠った姿をウェスリーははっきりと覚えていた。
 殴り飛ばされ、地面を跳ねながら転がった彼だが、フィオナの推測に反しその時点ではまだ意識があったのである。

 自身が敗北したモンスターに格下と見ていた者が勝利する、それは彼のプライドを傷つけるには十分過ぎた。また、その成果を挙げたのが自分となっていることも。
 訝しみ、様子を見に訪れたギリアムに食って掛かると、返ってきたのはとても納得できるものではない答え。曰く、あの二人には事情があり、目立つことは避けさせたい。そのため全てはウェスリーによって成されたものとする、と。

 愕然とした。数秒の間喉から言葉が出て来ずに口の開け閉めを繰り返した。
 ギリアムは瞑目し、ただ静かに、これがギルド長の決定であることを告げた。無論、本来ならば功績を譲るなどということはできない。表沙汰にできない密約の類であることは察せられたが、だからといって一介の冒険者がそれに逆らえはしない。
 他国との交易が盛んながら、辺境の土地として国の手の入りが少ないハイムズでは、ギルドの影響力がかなり強いのだ。

 仮にウェスリーが真実を公表したとして――つまりそれは、彼が自分の負けを宣言することに繋がるため心理的な面からしてもあり得ないことであるが――人知れず《消される》のが関の山だろう。
 将来の有望株として期待されている彼だが、このような理不尽を押し付けられている時点で組織がどちらを優先させるかは明らかだった。

 その事実が理解できてしまったために、ウェスリーは屈辱に顔を歪め、感情のぶつけ場を求めて幽鬼のように彷徨っていた。
















 転移にあたって引き継いだアバターのステータス。平均レベル帯がゲームよりもかなり低いこの世界では、もはや人外の域に達していると表しても過言ではない力。それが誰かの意図によるものなのか、それとも偶発的な出来事の結果なのかは置いておくとして、俺はずっとその価値について悩んでいた。

 努力もなく、労力を費やしたわけでもなく。
 何か特別な試練を乗り越えたわけでもなく得た力の価値。

「努力も、苦労もしないで……?」

 俺の言葉にフィオナは戸惑ったような表情を浮かべた。
 当然だろう。いくらレベルやスキルと言った概念があるこの世界でも――いや、モンスターを倒して経験値を得、気の遠くなるほど長い時間訓練を重ねて技の熟練度を上げて強くなっていくシステムが土台にあるからこそ、降って湧いた偶然で強くなるなどということは理解できないはずだ。

 ただそれでも、ゲームにはいわゆる《ステータス強化アイテム》が極少数ながらも実装されていた。
 それを例えに出せば分かりやすいかもしれないと、俺は彼女にそういった物の存在を知っているかと尋ねた。

「……話に聞いたことだけはあるわ。かなり希少なもので、貴族ですらそう簡単には手を出せないって」
「そっか。なら、俺たちはそれを使って強くなったと考えてくれ」

 フィオナはまだ何かを――おそらくはそのアイテムを使ったにしろここまでレベルを上げることは不可能だというようなことを――言いたそうにしていたが、無視して話を進める。
 それはある意味で懺悔のようなものだった。
 他の冒険者が死の危険を冒して得た強さ、レベルを、何もせずに手に入れたという負い目。剣を振るう度に、そしてその結果を感謝される度に湧き上がる自己嫌悪。それらすべてを明かして楽になりたいという、自分勝手な罪の告白。

 正直、事情を知らない人間にとっては全くもって意味の分からぬ話だったろう。
 怒るか呆れるかして立ち去ってしまっても不思議ではない。いやむしろ、そうしないでここに留まる選択をしたフィオナの方が少数派だろう。
 もちろん、あくまで留まって話を聞いてくれただけであり、馬鹿正直に信じてくれた訳ではないが。
 懐疑の表情をはっきりと浮かべながらも会話を成り立たせてくれる彼女は父親に似てお人好しだ。

「そこまでの力を得られる量のアイテムを集めようとすると、国家予算を数十年単位で費やしても不可能だと思うけど……」

 そう前置きしながら彼女は言った。

「あなたは力を手に入れたことを後悔しているの?」
「いいや、それはない。ここに来てから俺は何度もそれに助けられたんだ。感謝こそすれなければいいなんて思ったことはない」

 特別な能力のない、元の世界に居た頃の自分がそのままこちら側に来たとして、おそらく最初の戦いで死んでいただろう。動物園にいるようなゴリラですら四、五〇〇キロの握力を持っているのだ。それよりも二回りは巨大なクリムゾンフィストには勝てるどころか手傷を負わせられるイメージすら湧かない。
 また、その場は何とか上手くやり過ごせたとして、今度は日常生活をどうするかと言う問題が出てくる。今のようなモンスター討伐で金を稼ぐような真似はできないから他の方法を見つけなければならない。

 素のままの俺にできる事などせいぜい家事程度だ。
 現代日本と違ってここでは普通の平民は学校に通わないから、もしかすると計算ができるのは強みになるかもしれない。しかしだからといってそうすんなりと職に就けるかというと疑問が残る。

 ついでに、これは直接自分の生死に関わっていた訳ではないが、以前あった決闘騒ぎ。
 今は亡きシーフとの一悶着の原因は相手の挑発に俺が乗ってしまったことだが、そもそも剣を交えられる能力がなければさすがにあのような発言はしなかっただろう。力がなければたぶん、怒りは覚えても歯向かうような真似はしなかったはずだ。
 恩人を貶した相手を叩きのめせた点においても、俺はこの力に感謝している。

「なら…………」
「ただ、時々考えてしまうんだ」

 掛けられた声を遮るようにして俺は内心を吐露した。

「代償なく力を得た俺の存在は、それそのものが悪なんじゃないかって。本当に努力をしている人たちに対する、酷い侮辱なんじゃないかってさ」

 自分で事情をぼかしている以上理解してくれと言うのは無理な話で、理不尽だと分かっていたが、溢れ出す感情に流されるようにして口は動いた。途中からそれがフィオナではなく自分に言い聞かせるようになっていたことに気が付き、そこでようやく一方的な言葉の押しつけを止める。

「……すまない、話が脱線しすぎたな。つまり俺たちはかなり特殊なケースでフィオナの参考にもならないってことだよ」

 溜息を吐き、かぶりを振る。少々深いところまで話し過ぎた。
 もっともこの世界の住人にとってはまるで意味不明な妄言でしかないだろう。俺は強引に話を打ち切ると誤魔化し笑いをしながら顔を上げ――彼女が思いのほか真剣な表情を浮かべていることに気が付いた。

「――――冒険者に求められるのは常に結果であり、その過程ではない」
「え……?」

 突然投げかけられた言葉に眉を顰める。
 フィオナは笑いながら、父に教わった冒険者としての心構えの一つだと言う。

「過程よりも結果……逆じゃないのか?」
「いいえ、これであってるわ。例えば、そうね、モンスターの襲撃を受けている小さな村があるとする。住人たちは皆でお金を出し合い、冒険者に討伐依頼を出すことにした――――」

 この世界では実際によくある事例を彼女は口にする。
 依頼を受けようとした冒険者は二人。片方は努力を惜しまず日々鍛錬に明け暮れているが、まだ職に就いてからの年数が短く未熟。片方は反対に怠惰な生活を送っているが、その実力自体は一流と言って差し支えない。

「村の経済状況は貧しく、雇えるのはどちらか一人だけ。あなたならどちらを雇うかしら?」

 問いに、しばらく迷ったが「後者だな」と答える。

「……人間としては新人の方が信用できそうだけど、肝心のモンスターが倒せるかどうか分からない奴に依頼はできない」

 一息。
 じっと紺碧の瞳を見つめて返す。

「俺の悩みも、その話と同じだと……?」
「そういうこと、なんじゃないかしら」

 自分と同年代でありながら、自分よりも遥かな高みに位置する相手。
 嫉妬もある、妬みもするとフィオナははっきりと己の心情を明かした。しかし同時に、そのような葛藤は世間的には全く無意味なものなのだとも語る。

 完全に納得がいった訳ではないが今までとは全く異なる考え方を知り、また悩む。

「俺は――――」









 ――――――――――――――――――――
 以下、完全にプロット。
 ――――――――――――――――――――





 彷徨い続けて、どれだけの時間が経っただろう。
 定められた目的地がある訳ではなく、ただ人目を避けて動くウェスリーの歩みは唐突に止まった。彼の進行方向を塞ぐようにして一人の男が立っていた。

 苛立っているウェスリーは剣呑な視線を向ける。
 敵意を越えて殺意すら篭ったそれを受け、しかし男は一切怯んだ様子を見せない。それどころか楽しげに笑みさえ浮かべて小さく呟く。

「ああ、君はなかなか良さそうだね」
「良さそう……?」

 意味が分からずに顔を顰めたものの、すぐに取るに足らないことだと切り捨てる。
 顔見知りでもない相手と会話を交わす必要はない。再度そこを退くように言い男を無視するようにして進むが、しかしやはり男は微動だにしない。
 細い路地の中央に陣取られては回り込むこともできないためウェスリーの感情はさらに高ぶり、ついに手が出る。

「どけ!」

 殴るまではいかないがかなり強めの力を込めて押しのける。
 怪我人であるとはいえ、前衛剣士として高い筋力パラメータを持つウェスリーの腕に男は抵抗なく跳ねのけられ無様に地べたへ腰をつける――はずだった。

 だが、実際に起こったことは真逆。
 ウェスリーの拳は硬い岩石にぶつけたような痛みと衝撃が残り、男の位置は一センチたりとも動いていない。

 男、戸惑うウェスリーを一顧だにせず一方的に言葉を投げかけてくる。
 歪みが足りない、一帯のモンスターを贄にしてみたが駄目だった、境界を崩すにはより大きな痛みが必要だ……意味は分からないが不気味さを感じる。静かに狂っている。何もできずに固まっていると男は話が逸れたことを謝る。

 君には関係ない話だったねと言い、ウェスリーに声を掛けた理由を話す。力を欲しがっていたから。手伝いができるといって黒い玉を差し出してくる。完全な円ではなく卵のような形。
 最初は何の変哲もない物体に見えたが、内側から殻を破るようにして罅が入ると同時、その内に秘められた力の大きさを知る。
 呑まれ、立ち尽くすウェスリーに向け男は説明。

「これは力の塊。この周辺にいたモンスターの魂を分解、圧縮したものと言って通じるかな?」

 この世界では生物を殺したとき、その生物が持っていた力の一部を吸収できる。
 ゲームで言う経験値。卵はそれを男が無理矢理集めて固めたもの。取り込めば確実に強くなれる、まさに君の求めていたものだとウェスリーに渡す。

 反射的に受け取り、ぼんやりと卵を見つめる。
 見つめている間に罅は大きくなり、やがて中が覗けるほどの亀裂が入る。奇妙な男に対する警戒心、戸惑いと、目の前にある力の大きさへの喜びが複雑に混じり合う。

「まあもっとも――――」

 男、ウェスリーを楽しげに見つめながら呟く。

「――――自分よりも巨大な力を一息に取り込んだところで、自分もその一部になってしまうだけなのだがね」

 その言葉の意味を尋ねる前に卵が完全に割れる。
 中から闇が噴出しウェスリーは取り込まれる。海に砂糖を一匙入れたところで全体の味が変わる訳がない。卵の中に込められていた莫大な力はウェスリー一人で抗えるものではなかった。

 一瞬の後、ウェスリーは完全に消滅。
 代わりに森で遭遇した黒色の巨人と同質の、しかし体長は十数倍となったモンスターが出現する。

 男、嬉しそうに笑う。
 魔物の肉体に魔物の魂ではあまり歪みは生じず多少強力な個体ができるだけだった。器を人間に変えたことでより大きな「世界にとって自然でない」状態が発生。世界の形がゆがむ。

「さあ、存分に暴れてくれたまえ。それだけ世界は歪み――《こちら側》と《あちら側》の境界は薄まる」

 ユトたちが暮らしていた世界と、こちら側の世界の境界を崩すことが男こと三船時貞の目的。










 またシーンが戻って、ユトとフィオナの会話。

「俺は――――」

 何かを言い掛けたそのとき、遠くで爆発音。
 尋常ではない様子に会話は中断。何が起こったのだと音のした方向を見ると、そこにはウェスリーの変化した巨大なモンスターが。

 状況確認のため急いでギルドへ。
 祭りの雰囲気は消し飛び、混乱している。いつかのように怒号が飛び交う中ギリアムを探し出す。モンスターの出現原因は不明。とにかく人を集めようと言ったところで化け物が吠え、暴れ出す。ギリアム、一般人の避難誘導をするよう周りの人間に指示。ユト、フィオナと別れて行動する。

 


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