初投稿です。よろしくお願いします。
プロローグ。
──眼が合った。
両目と両眼。荒れ果てた野に横たわるそれが、まるで生きているように驚いて、目を見開いた。
それは、いきなり現れた闖入者に目を丸くするだけで、未だ反応は見せない。しかし、闖入者たる人間も状況は飲み込めていないようだ。
広がるのはどこまでも彩りが無い殺風景。
曇天と、舞う火山灰と、赤茶けた大地だけの世界。
この地に特別は無い。ただ野生の秩序が端の端まで行き届いているだけ。
その獣とも神話とも付かない存在は、賢くも人間より先に事態を整理したのか、ゆっくりと首をもたげて目を細める。
喉が鳴る。
殺気が漏れる。
その瞳は一寸たりとも乱れず、交わったままだった両者の視線は張り詰めた糸のように繋がっている。
しかし、黒い瞳を持つ方──小さな人間の方が、恐怖からか焦りからか困惑からかほんの僅かに視線を逃がした。
それは間違いなく弱者の行為で、弱者の愚かさで、ならば、弱者の末路が存在した。
その弱さを皮切りに、この場の弱者と強者とが線引きされる。
鱗が散りばめられた翼を広げて強者としての己を示すは、血の様に鮮やかな真紅の瞳と大きく拡げられた破壊の大顎。