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No.29540の一覧
[0] シンジのシンジによるシンジのための補完【完結済】[dragonfly](2023/06/22 23:47)
[1] シンジのシンジによるシンジのための補完 第壱話[dragonfly](2012/01/17 23:30)
[2] シンジのシンジによるシンジのための補完 第弐話[dragonfly](2012/01/17 23:31)
[3] シンジのシンジによるシンジのための補完 第参話[dragonfly](2012/01/17 23:32)
[4] シンジのシンジによるシンジのための補完 第四話[dragonfly](2012/01/17 23:33)
[5] シンジのシンジによるシンジのための補完 第伍話[dragonfly](2021/12/03 15:41)
[6] シンジのシンジによるシンジのための補完 第六話[dragonfly](2012/01/17 23:35)
[7] シンジのシンジによるシンジのための補完 第七話[dragonfly](2012/01/17 23:36)
[8] シンジのシンジによるシンジのための補完 第八話[dragonfly](2012/01/17 23:37)
[9] シンジのシンジによるシンジのための 補間 #1[dragonfly](2012/01/17 23:38)
[11] シンジのシンジによるシンジのための補完 第九話[dragonfly](2012/01/17 23:40)
[12] シンジのシンジによるシンジのための 補間 #EX2[dragonfly](2012/01/17 23:41)
[13] シンジのシンジによるシンジのための補完 第拾話[dragonfly](2012/01/17 23:42)
[14] シンジのシンジによるシンジのための 補間 #EX1[dragonfly](2012/01/17 23:42)
[15] [IF]シンジのシンジによるシンジのための 補間 #EX9[dragonfly](2011/10/12 09:51)
[16] シンジのシンジによるシンジのための補完 第拾壱話[dragonfly](2021/10/16 19:42)
[17] シンジのシンジによるシンジのための補完 第拾弐話[dragonfly](2012/01/17 23:44)
[18] シンジのシンジによるシンジのための 補間 #2[dragonfly](2021/08/02 22:03)
[19] シンジのシンジによるシンジのための補完 第拾参話[dragonfly](2021/08/03 12:39)
[20] シンジのシンジによるシンジのための 補間 #4[dragonfly](2012/01/17 23:48)
[21] シンジのシンジによるシンジのための補完 第拾四話[dragonfly](2012/01/17 23:48)
[22] シンジのシンジによるシンジのための 補間 #5[dragonfly](2012/01/17 23:49)
[23] シンジのシンジによるシンジのための 補間 #EX4[dragonfly](2012/01/17 23:50)
[24] シンジのシンジによるシンジのための補完 第拾伍話[dragonfly](2012/01/17 23:51)
[25] シンジのシンジによるシンジのための 補間 #6[dragonfly](2012/01/17 23:51)
[26] シンジのシンジによるシンジのための補完 第拾六話[dragonfly](2012/01/17 23:53)
[27] シンジのシンジによるシンジのための 補間 #7[dragonfly](2012/01/17 23:53)
[28] シンジのシンジによるシンジのための 補間 #EX3[dragonfly](2012/01/17 23:54)
[29] シンジのシンジによるシンジのための補完 第拾七話[dragonfly](2012/01/17 23:54)
[30] シンジのシンジによるシンジのための 補間 #8[dragonfly](2012/01/17 23:55)
[31] シンジのシンジによるシンジのための補完 最終話[dragonfly](2012/01/17 23:55)
[32] シンジのシンジによるシンジのための補完 カーテンコール[dragonfly](2021/04/30 01:28)
[33] シンジのシンジによるシンジのための 保管 ライナーノーツ [dragonfly](2021/12/21 20:24)
[34] シンジのシンジによるシンジのための 補間 #EX7[dragonfly](2012/01/18 00:00)
[35] [IF]シンジのシンジによるシンジのための 補間 #EX8[dragonfly](2012/01/18 00:05)
[36] シンジのシンジによるシンジのための補完 オルタナティブ[dragonfly](2012/01/18 00:05)
[37] ミサトのミサトによるミサトのための 補間 #EX10[dragonfly](2012/01/18 00:09)
[40] シンジ×3 テキストコメンタリー1[dragonfly](2020/11/15 22:01)
[41] シンジ×3 テキストコメンタリー2[dragonfly](2021/12/03 15:42)
[42] シンジ×3 テキストコメンタリー3[dragonfly](2021/04/16 23:40)
[43] シンジ×3 テキストコメンタリー4[dragonfly](2022/06/05 05:21)
[44] シンジ×3 テキストコメンタリー5[dragonfly](2021/09/16 17:33)
[45] シンジ×3 テキストコメンタリー6[dragonfly](2022/11/09 14:23)
[46] シンジのシンジによるシンジのための補完 幕間[dragonfly](2022/07/10 00:12)
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[29540] シンジのシンジによるシンジのための 補間 #EX7
Name: dragonfly◆23bee39b ID:7b9a7441 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/01/18 00:00




「赤の豚!?赤の豚ってドコよ!」

赤色もない。豚もいない。それはこれ。

取ろうとしたカードを、潰さんばかりにアスカが引っぱたく。

「…アスカ。ずるい」

「早いモン勝ちに決まってんでしょ」

折角見つけても、気配を察したアスカが先に取ってしまうことが多い。

「なによ。文句があるなら言いなさいよ」

文句はない。早い者勝ちがルールだもの。…でも。

「ああもう!そんな目で見ない。解かったわよ、これは返したげる。でも、文句があるならキチンと口にだして言いなさい。誰もがアンタの気持ちを察してくれるワケじゃないのよ」

差し出されたカードを受け取る。

アスカは優しい。…とっても。



Solch Stroiche!は、ミサトさんが教えてくれたゲーム。ドイツ勤務時代に見つけたと言っていた。

25枚の問題カードには犬・猫・馬・牛・豚のうちいずれか1種類が、赤・青・緑・黄・紫のうちいずれか1色で描かれている。

25枚の回答カードには犬・猫・馬・牛・豚のうちいずれか4種類が、赤・青・緑・黄・紫のうちいずれか4色で塗り分けられている。

伏せられて山積みにされた問題カードをめくり、そこに描かれた動物と色のない回答カードを、開いてばら撒いた中から見つけ出すの。



カードを取った人が、次の問題カードをめくる。

私がめくると、緑色の犬のカード。だから緑色も、犬も居ないカードを探す。



「これっ!」

アスカが、取ったカードを差し出す。正しいかどうか、皆で確認する。

赤い猫、紫の馬、黄色い牛、青い豚。犬が居ない。緑色もない。

頷く。

「今度は文句、ナイわね?」

頷く。



『4人くらい居ないと面白くないのよね』

そう言ってミサトさんがこのゲームを取り出してきたのは、アスカが初めてミサトさんの家に泊まった夜のこと。

『今晩はアスカ…ちゃんの歓迎会だから』と、たくさんのドイツ料理と、同じくらいの日本料理がテーブルに所狭しと並んだ。

『これは何?』と日本料理を訊くアスカに、ミサトさんが嬉しそうに応えていた。

『…これは何?』とドイツ料理を訊く私に応えたアスカの顔。その時は不機嫌だと感じたけれど、今ならそうではなかったと解かる。

食事が終わり、いつもならきちんと後片付けをするはずのミサトさんが、食器を下げるのもそこそこに皆をリビングに呼んだ。

テーブルの上に、小さな箱が載っていた。その時の光景を、なによりミサトさんの笑顔を良く憶えている。



「青い馬!?」

自分でめくっておいて、誰かに尋ねるようにアスカ。

前に訊いたら、『皆に教えてあげてんのよ』と言っていた。問題をアナウンスするルールは無かったはずとルールブックを読んでいたら、『アスカ…ちゃんは自分に言い聞かせてるのよ』とミサトさんが教えてくれた。


「それは… これだね」

碇君が青色も馬も居ないカードを押さえた。

碇君は、けっこう侮れない。下手な素振りを見せるとアスカに横取りされるからと、目当てのカードを見ずに取ったりする。

碇君の戦績は安定していて、大体2位か3位。前に訊いたら、『いくつかは予め問題を逆算しておくんだ。そうすれば一定数は必ず取れるから』と言っていた。やってみたら、確かに成績が上がったような気がする。



碇君が取ったカードを確認するために顔を上げると、ミサトさんの顔が視界に入った。

意思の力を持たない瞳はただのガラス球のようで、見ると心が痛い。…この気持ち知ってる。寂しいという感情。



『ミサトさんは賑やかなのが好きだから』と碇君は言う。確かに、自ら騒ぐ人ではないけれど、賑やかな場を好んでいた様に思える。

だから、オーバーテーブルを余分に借りてきて2台並べ、ベッドの上、ミサトさんの目の前でこのゲームをしていた。疲れるのも厭わず、立ったままで。



「次は…」

「紫の猫~!?どこよ~!」

アスカの瞳がせわしなく動いてる。


…ぺたし

誰も注目してなかった片隅のカードに、掌が乗せられていた。

『銃を握るうちに大きくなった』と言っていたその掌は、この4人の中で一番大きい。

所々にタコがあってちょっと硬いけれど、その掌でなでられると嬉しくなる。

辿るように見上げたその瞳に、まだ意志の力は見えない。けれど唇が何かを紡いでた。

聞こえなかったけれど、なにを言ったのか知っている。

『全体を俯瞰して見るのがコツなのよ』

カードを取った時、必ずそう言っていたから。


「なっ?なんや!?何の騒ぎや?」

特徴的な言葉遣いは、鈴原君。私たちがここに来る時は着いてきて、相田君の体力作りに付き添うことが多い。

「あ!?もしかして…」

続いて戸口から顔を出したのは相田君。勢い込んで入室しようとして、あやうく転ぶところだった。彼が手にしてる松葉杖も、もうすぐ不要になるはず。

「病室で騒…?えっ、なに?」

このところ洞木さんは、いつも鈴原君と一緒みたい。

「ミサト姐やん。目ぇ覚ますんか?」

ナツミちゃん…。ヒトをちゃん付けで呼ぶのはまだ慣れないけど、さん付けで呼ぶと他人行儀だとたしなめられる。特徴的な言葉遣いで。


アスカがナースコールを連打していた。

碇君が懸命に呼びかけてる。

私は、ミサトさんのその手をそっと掴んだ。


ミサトさん。貴女の目覚めを、みんなが待ってます。


                                          終劇
2007.9.18 DISTRIBUTED


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