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No.29359の一覧
[0] 紅いセカイ(いろとりどりのセカイ・一話完結)[黒いメロン](2011/08/19 14:56)
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[29359] 紅いセカイ(いろとりどりのセカイ・一話完結)
Name: 黒いメロン◆0d68d2f7 ID:b0281bad
Date: 2011/08/19 14:56
ずっとずっと、一人だった、――人の生死を見つめ、人生を想い、新たな門出を見送る。

人の永遠の輪廻を見つめながら、その枠の外で『神様』のような席に座りながら一人ぼっち、遠い遠い昔、人であった頃の記憶は永遠に等しい時間に上塗りされて消えてしまった。

いつの頃からだろう?――恋を知りたいと思った、愛を知りたいと思った、普通の人間としてもう一度…………その願いは転機を迎え加速する。

俺の我儘、『神様』のような席にずっと座っていた俺の幼い心が引き起こした間違い、世界は滅び始め、"セカイ"はいろとりどりな悲劇を繰り返し、約束された終わりの中へ……。

本物のセカイ、偽物のセカイ――その両方に悲しみがあり、涙があった、そうだ、全ては俺のせいだ、俺が『恋』を知りたいと望んだから―――――――真紅を求めてしまった……。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、自身を苛む声、神の座にあった俺は誰に許しを請えば良い?――きっとそれは、俺の生み出した世界の命に、ああ、セカイ。

『ここで誰かの幸せを願うのなら、まずは自分が十分以上に幸せじゃないとダメだよ』

真っ白な空間、そこで聞いた言葉――真紅と同じようで、まったく違う個性を持ったその子、でもやっぱり根っ子の部分は同じで――許されても良いのかと勘違いをしてしまう。

すっとずっとあの場所に閉じ込められて命の管理をして来た、孤独のまま死を迎えた短い人生、そして管理者になってからの永遠に等しい孤独な時間……俺は、何が欲しかった?

恋。

愛。

約束。

孤独を消してくれる存在。

俺に優しいセカイ?

映像が幾つも浮かんでは消える、多くはあの場所での光景、多くの本で埋め尽くされた光景……しかし、それ以外にも幾つか違う光景が過る、それは大事な人の笑顔――あの寮のみんなの顔。

ああ、あの寮での偽りの日々が大切だったように……あの『神様の場所』での孤独な日々も俺にとっては大切だったんだ……少しだけ、ほんの少しだけ、寂しいと素直に思える。

全てのセカイ、全ての経験、全ての日々が俺を形作っていると理解出来る――真紅、その全てを捧げても良いと思ったんだ、真紅の為になら、真紅の為にこそ、俺が真紅の為に犯した罪を清算しようと。

『寂しかったっ』

『……ずっとずっとひとりで寂しかったんだよ悠馬っ』

『もういいの?もう、私たち、また一緒になっても、好きになっても…いいの?』

幼い声、いつも近くにあった声――俺が世界を放棄してでも求めた存在、真紅の問い掛けに俺は頷く、風が優しく吹き抜けて頬を撫でる――俺の願いを叶える、真紅の願いを叶える。

きっとこれは夢だ、幸せの結末の儚い夢……夢(偽り)――でも、そこでしか真紅と幸せになれないのなら、それを本物にするだけだ、そう、それを新しい神様も見守ってくれているのだから。






ベッドの上で二人で裸になって横になる、まだ気恥ずかしい、私は自分の体型に自信が無い……人の成長と言うのは不平等だ、不満を訴えても神様は朗らかに笑って無視をするだろうけど。

まだ時刻は深夜のソレ、カーテンから差し込む淡い蒼い光が慣れ親しんだ部屋を優しく染め上げる、目の前には瞳を閉じて安らかな寝息をたてる男が一人――自身の半身、いつも近くにあった存在。

一度は失われたけど、今確かに目の前にいる、何だか少し不安になって頬に手を伸ばす、やや幼さを残した青年の寝顔、頬をツンツンと突くと眉を寄せて軽く唸る、それが少しだけおかしくて、ついクスクスと笑ってしまう。

体を捩じらせて笑いを堪えると白いシーツの上に幾つもシワが広がる。

「――悠馬」

永遠の半身、神様だった青年、自分の生徒、弟のような息子のような存在、たまに生意気なやつ、それ以上に可愛いやつ――何より大切な存在。

初めて出会った日を思い出す、ふわりふわり、羽根が舞う誰もいなくなった街で少年は一人で立っていた、子供らしい感情を一切感じない無機質な表情。

何処か疲れたような声音、凄惨な終わりを迎えようとしているセカイで『純粋』で『無垢』で『真っ白』で、まるで雲の無い広い青空をイメージさせるような不思議な少年。

きっと空から舞い降りた天使はこんな風なのだと柄にでも無い事を思った……『何だかお前は面白い子だ、うん、気に入ったよ』……既にこの時に、私はお前に捕らわれていたんだ。

まさかそれが天使では無くて"神様"だったとは……全てを知って……憎しみより愛しさを覚えた、永遠の孤独の中にいたお前の無垢さが少しだけ羨ましかった、そして『恋』をした。

あの頃から既に恋が始まっていたとなると私は立派な『ショタコン』なわけで、駄目だ駄目だ、か、考えすぎちゃダメだ、寧ろ、何百年、何千年も神様をしていた悠馬の方がロリコンなわけだ!よし、上手に自己防衛が出来たぞ。

「んー、しんく……まだ夜中だろ?」

「ああ、そうだよ、ゆっくりお眠り」

モゴモゴと口を動かして瞳を閉じたまま問いかける悠馬、いつまでも手のかかる子だなと苦笑して質問に答えてあげる―――こうやって肌が触れ合う距離で寝ているのが少し不思議。

恋をする、改めて考えると悠馬には多くの選択肢が存在している、対して、私には最初から"その"一択のみだ、あらゆる観点や論点から考えても一つだけの選択肢、成程、べた惚れと言う奴だ。

姉妹の血は争えないと言う事なのかな?それが仕組まれた事とは言え同じ名前の男を好きになったのだから……。

「"ぼく"は――」

「ん?」

「"俺"は…………真紅が好き、愛してる」

「そ、そうか」

薄っすらと開いた瞳が私を捉える、流れるように言葉が紡がれて私は無様にも赤面してしまう、薄っすらと笑った表情……むぅ、駄目だ………最初から勝負にならない。

顔を近づかせると私の金色の髪が悠馬の頬に優しく流れる、くすぐったいのか顔をぷいっと横に向ける、何とも寂しい気持ちになる――眠いのだから仕方が無いと言えばそれまでだけど。

一年も耐えたんだ、もっと触れ合いたいと望むのは仕方のない事だろ?……だ、だって私たちは将来を約束した仲なのだし、その、えーと、理由が無いと行動に移れないのが研究者の弱みだなぁ。

私の返答に満足したのか悠馬はまた眠りの世界へと旅立って行く、何度幸せを願ってお前の寝顔を見ただろう………『今日より明日がお前にとって幸せであるように願っているよ』

何度も何度も幼い悠馬に語りかけた言葉、偽りのセカイでお前の幸せをいつも願っていた、それが夢だとしても悠馬が笑ってくれると私は幸せだったんだ――。

「私もお前を愛しているよ、悠馬」

お前と生きる日々が私にとっての唯一のセカイなのだから。


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