第十四話 ナデシコ発進その3
ブリッジ
<ブリッジ、聞こえるか?俺も出て、敵を殲滅する!!>
サウンドオンリーでアキラの声がブリッジに響いた
「はい?・・・って、ちょ、ちょっと待ってください!
あなたは誰ですか?殲滅って・・・」
「艦長、通信切られてます!」
「通信士さん、通信繋いで!!」
「むりです!通信切られました!」
ユリカとメグミのやり取りじっと黙って聞いていたプロス
そんなプロスにユリカが
「プロスさん、どういうことです?今の人は何者ですか!?」
「今の方は・・・」
「・・・アキラ・・・」
プロスが言い切る前に先に答えたラピス
そんなラピスの視線の先にはアキラのエステがエレベーターに乗っているのを表すモニターがある
「はいそうです。今の方はこのナデシコのクルーでパイロットをやってもらう事になっております」
「テンカワ機、被弾」
プロスがラピスに続き、答えたとき、ルリの事務的な声がした
それを聞きユリカが
「え、アキトが!?アキト~!あなたのユリカが直ぐに行くからまっててね~!!」
「バカ・・・」
言うまでも無く、ルリの突込みである
サセボドック・地上
「来るなー!来るなよ、畜生ぉぉぉぉ!!」
少し遡ってエレベーターから出て間もないアキト。懸命にローラーダッシュで逃げ回っている。その後ろについてくるジョロの大群、さらに上からバッタの大群が・・・。全部合わせて200は下らないであろう
<作戦時間は10分、健闘を祈る・・・>
ゴートの事務的な声がする。励ましでさえ事務的であった
「10分!?なげぇって!長すぎるって!!」
閉じられたモニターのあった先に怒鳴りつけるアキト。当然返事など返ってこない
そのとき、空からやってきたバッタの群れから大量のミサイルがアキトのピンクのエステに向かって飛んできた。そして被弾。例えディストーション・フィールドを張っていても爆発の衝撃まで防ぎきれなかったエステは前のめりに吹き飛ばされた
「いたたた・・・チクショ、一体何が・・・?」
言いながら頭をおさえ、エステの前方を移すモニターに目を向けた
「・・・っああ、うああぁぁ、あ・・・」
エステ、アキトの視線の先にはバッタとジョロが群れていた
「あああぁぁぁぁ、ううぅあああぁぁぁぁ、あああ・・・」
アキトの頭の中ではまた火星の惨劇を映していた。守れなかった小さな女の子。アイの嬉しそうにみかんを持つ笑顔を思い出すだけでアキトは涙を流してしまった
(俺は無力だ、何も出来ない・・・今だってそうだ。逃げ回るだけで何もしちゃぁいない)
無力感を感じ首から下げているアイのペンダントを握り締めながら目をつぶるアキト。しかし何も起きない。爆発の音などはするがエステ自体には何の衝撃もない。恐る恐る目を開けるアキト。そこには真っ黒なエステバリスがバッタとジョロを難なくと倒していた
ブリッジ
黒いエステがアキトを助ける少し前
ユリカが散々アキトに対するわけありな台詞をいい終わり、ブリッジクルーが呆然としているとき突然ブリッジの扉が開き誰かが入ってくる
「おいおいおい!何なんだぁ、この揺れはよぉ!」
ダイゴウジ・ガイことヤマダ・ジロウであった。足にギプスをつけ歩きにくそうにしながらブリッジの最下層に行くヤマダ。周りから冷たい視線を向けられながらもそれに気付かず堂々とした態度で皆の横を通り過ぎる。因みに何故ヤマダが冷たい視線を向けられているかというと、パイロットであることを示す赤い制服を着ているにも拘らず出撃していないからだ。素人のアキトがエステで戦闘に出ているというのにこのパイロットは何をすることも無くブリッジに来たからだ
「ん?あーーーーー!!!あれは俺のエステーーーーー!!!!!」
ヤマダがモニターに目を向けるとそこには吹っ飛ばされたエステが映し出されていた
「誰だーーーー!!!おぉれぃのぉエェェステに乗ってやがるのはぁぁーーーー!!」
ヤマダが叫んだその時、黒いエステバリスが戦場を駆けた
サセボドック・地上
黒いエステバリスは地上に出ると同時にバーニアを吹かし低空飛行でピンクのエステバリスの元へと向かった
「間に合えよ!」
パイロットのアキラはそう呟き、さらにスロットルを上げた。そして、アキトの元に付くと同時にアキラは近くからアキトのエステを攻撃するバッタたちをライフルで穿ち、ある程度数が減ったところでアキトのエステにサウンドオンリーで通信を繋げながる
「おい、そこのパイロット!邪魔だ!とっとと逃げろ!!」
そう言いながらアキトのために近くのバッタに瞬く間に吸着地雷を取り付け未だに無人兵器の群れているところに投げつける。そして爆煙が引くまでにアキトの左側に居る無人兵器に向かってライフルで的確にその装甲を穿つ
「おい!聞こえてるんだろう!今俺が道を作ったからそこからとっとと海に向かえ!!」
その言葉を聴きアキトが動き出す。アキラはアキトが海に向かうのを見るとイミディエット・ナイフを取り出し、無人兵器の群れに向かって突入した
サセボドック・上空
「少し早くないか?ユリカ・・・」
少し余裕を取り戻したか、ナデシコの上に乗ったエステバリスの中で呼吸を整えてからユリカに聞くアキト
「あなたのために急いできたの!」
そんなアキトの疑問にそう答えるユリカ。ブリッジクルーの大半が(あんたが急いだ訳じゃないでしょうが・・・)などと思っていた
「あの~、艦長?早いとこアキラのとこに行かなくてはならないのでは・・・」
ヒスイがおどおどしながらユリカに聞く。その隣ではラピスも頷いていた
「そうですね、それでは操舵士さん!早いとこ行っちゃいましょう!」
「りょ~かい」
「オペレ-ターさん、残存敵数は?」
ユリカはミナトに命じた後、ルリに聞く
「残り3機です。2、1、全滅しました・・・」
「「「「「「・・・え?」」」」」」
ルリの言葉にユリカたちが聞き返す
「ですから、敵が‘全滅’しました」
あとがき
久々の更新!誰も楽しみにしちゃ居てくれて無いかもしれませんが私自身が嬉しい限りです
アキトが情けないですね。ガイなんかボケにすらなりきれて居ないし・・・。やっぱりまだまだ文章を書くのが下手糞です。お許しください
さて、次回はムネタケの叛乱まで行かないと思います。それでも呆れないでください。見捨てないでください。
それでは、また今度お会いしましょう!