いらっしゃいませ――
はじめまして、くらげと申します。
一本道で完結していて、連載ものではないのですが
もし良ければ最後までお付き合いくだされば幸いです。
それでは、本編へ。
ただ、どこまでも広い花畑に居た。
どうして、こんな所に来てしまったんだろう。
特に用も無いのに、当ても無く歩いたら――いつの間にか、こんな所に来てしまった。
風が暖かい。冷たい冬の空気に当たる穏やかな春の風が、ふと、耳の横を通り過ぎて行った。
どうしてだろう。
何かの音楽に聞こえた。それは、柔らかな歌声のような。
心地よい音色は、後ろから流れてきた。そのまま俺の両脇を通り過ぎて――やがて、ただの風の音となる。
ふと、その音色の先を知りたくなって振り返った。
ここだ、聞こえる。
この花から、音楽が聞こえる。
この花の名前を知っている。スズランという花だ。
どうして音楽が聞こえてくるのだろう。
でも、不思議とその花は輝いているように見えた。
真っ白い鈴のようなその花が、何故だか輝いているように見えて――そっと、手を伸ばした。
すると白い花は、まるで初めからそこには無かったかのように――春の陽光に混ざり、光の一部となって――
そっと、消えてしまった。
~Maylily~