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No.29266の一覧
[0] クララ一直線・セカンド (レギオス 再構成) 【完結】[武芸者](2013/07/10 16:04)
[1] プロローグ 始まり[武芸者](2012/11/01 08:50)
[2] 第1話 学園生活[武芸者](2011/08/11 09:04)
[3] 第2話 入学式[武芸者](2012/05/22 07:12)
[4] 外伝 とある夜[武芸者](2011/09/30 10:15)
[5] 第3話 第十八小隊[武芸者](2011/08/11 09:17)
[6] 第4話 眩しい日常[武芸者](2011/08/11 09:07)
[7] 第5話 第十八小隊の初陣[武芸者](2011/08/11 09:08)
[8] 第6話 汚染獣[武芸者](2011/08/11 09:16)
[9] 第7話 波乱の後に……[武芸者](2012/05/22 07:10)
[10] 第8話 セカンド[武芸者](2011/08/11 22:19)
[11] 第9話 都市警[武芸者](2011/09/30 13:50)
[12] 第10話 一蹴[武芸者](2011/09/30 13:26)
[13] 第11話 一時の平穏[武芸者](2011/11/06 21:28)
[14] 第12話 廃都[武芸者](2012/02/02 09:21)
[15] 第13話 ガハルド[武芸者](2012/05/23 20:58)
[16] 第14話 けじめ[武芸者](2012/06/12 06:49)
[17] 第十五話 目覚めぬ姫[武芸者](2012/11/01 08:21)
[18] 第十六話 病[武芸者](2013/01/19 00:22)
[19] 第十七話 狂気[武芸者](2013/02/17 08:02)
[20] 第十八話 天剣授受者と姫 (完結)[武芸者](2013/07/11 10:07)
[21] クララ一直線・サード!?[武芸者](2015/08/04 17:25)
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[29266] 第14話 けじめ
Name: 武芸者◆8a2ce1c4 ID:d980e6b9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/06/12 06:49
「お前がいたから……」

ガハルドの右腕がまたも飛ぶ。レイフォンは振り向きもせずに天剣を一閃させ、ガハルドの右腕を切り飛ばした。

「ガハルド・バレーン、お前がいたから!!」

もしもガハルドがいなければ?
ガハルドがレイフォンを闇試合のことで脅し、不正で天剣を手に入れようとしなければ?
ガハルドが自身の右腕を切り落としたクラリーベルのことを告発しなければ?
そうすればクラリーベルはグレンダンを出る必要はなかった。このようにクラリーベルが傷つく必要はなかった。
ガハルドがいたからクラリーベルは傷ついた。そう考えたが、レイフォンは内心で首を振ってそれを否定する。

「お前は僕が殺すべきだったんだ。あの時、あの場所で! そうすればクララが罪を背負う必要なんてなかった!! クララが傷つく必要もなかった!!」

殺すべきだった。ガハルド・バレーンを。クラリーベルがガハルドと遭遇する前に、レイフォンの手で始末するべきだった。
そうすれば、このように彼女が傷つく必要などなかったのだから。

「がるる……」

「死ねよ」

獣のような唸りを上げるガハルドに向け、レイフォンは再び天剣を一閃させた。その一撃はガハルドの上半身と下半身を分断させる。

「うぐお! ぐおが!!」

臓物をまき散らし、体液を吹き出すガハルド。だが、ガハルドはそれでも生きており、這うようにしてレイフォンに迫ってきた。

「なまじ生命力が強いから余計な苦痛を受ける。好都合だね。もがき苦しんでから、最終的に死ね」

「ぐ、ぐおお……」

天剣の剣身が鋼糸へと変化する。鋼糸はガハルドの体に体中に突き刺さり、動きを封じた。

「うぐっ、あぐああ、おぐおうああああ!!」

加熱。レイフォンは鋼糸から剄による熱を放出し、ガハルドを内部から焼いた。
これは昨日の夕飯、豚の丸焼きを作った時の応用だ。表面はクラリーベルが化錬剄で焼いたが、内部はレイフォンの手によってしっかりと焼かれていた。体中のいたるところに鋼糸を通し、そこから熱を出して全体を焼く。
ガハルドの肉が内から焦げ、体液が沸騰していく。レイフォンの宣言通りもがき苦しむガハルドだったが、全身を鋼糸で押さえつけられているためにのた打ち回ることさえできない。

「ぐるがぶ、はぶべ……」

鋼糸から放たれる熱はさらに高くなり、最終的には発火した。ガハルドは全身を炎に包まれて燃えていく。あれならばどれほどの生命力を持っていても、再生能力を有していようと、間違いなく死んだだろう。

「クララ!」

それよりもレイフォンが気になるのはクラリーベルの方だった。既にガハルドのことなど眼中にはなかった。

「クララ……」

傷ついたクラリーベルを今一度見て、レイフォンの表情が真っ青になる。
深い傷口。腹部と背中を貫通し、そこからは大量に血が流れて衣服は真っ赤に染まっていた。
まだかすかに呼吸はしているようだが、このままなら間違いなく死んでしまう。

「勝手なことばかり言って……いつも自分勝手で、こっちの苦労を知ろうともしない。無茶をしないでくださいって、言ったじゃないですか」

そんなことは許せない。許せるわけがない。こんなところでクラリーベルを死なせるわけにはいかなかった。

「死なせませんよ、絶対に」

ガハルドに回していた鋼糸の先端を髪よりも細くし、それで傷口を縫う。同時に剄の熱で傷口を焼き、止血も行う。
何も鋼糸は戦闘だけに使うものではない。使い方によって移動や探索の手助けになったり、このように少々荒っぽいが治療など、応急処置を施すことが出来る。
レイフォンの師であるリンテンスは、人の体内に入った異物を鋼糸で取り除いたとの話だ。

「ぐおお」

「大人しくしていろ」

「ぐげっ!?」

死んだと思った。くたばったと思った。なのにガハルドは全身が焼けただれ、上半身しかないにもかかわらずレイフォンに襲い掛かってくる。だが、レイフォンはクラリーベルの治療をしながらも冷静に対処する。
幾多もの鋼糸を新たに生み出し、針のように伸ばして、昆虫採集に用いられる虫のようにガハルドを串刺しにして背後の壁に拘束した。これならばいくら再生しようと、身動きをとることができない。

「ぐっ……」

クラリーベルの治療をしつつ、ガハルドを鋼糸で拘束する。その力加減、剄量の強弱についてレイフォンは細心の注意を払った。治療の際に用いる剄が多ければクラリーベルに苦痛を与えてしまう。だからと言って拘束に用いる剄を減らせばガハルドは抜け出し、レイフォンの邪魔をすることだろう。
剄の配分をしつつ、尚且つ鋼糸で傷口を縫うという細かい作業にレイフォンは全神経を集中させた。これがリンテンスならば鼻歌交じりで済ませてしまうかもしれない。だが、レイフォンにはそこまでの技量はない。

「あぐっ……」

頭痛が走った。神経が焼けついたように痛い。それでも中断することなどできやしない。
頭を押さえつつも、細心の注意を払ってクラリーベルの治療とガハルドの拘束を続けていく。

「うぐっ、あ……」

奥歯を噛み締める。高熱に襲われたように頭がくらくらする。眩暈がし、視界が一瞬だけ真っ暗になった。
それでも、それでもレイフォンはクラリーベルの治療をやり遂げた。傷口を完全に塞ぎ、思わず安堵の息が漏れる。

「ふぅ……」

多少跡が残ってしまったが、この程度ならば現代の医療技術をもってすれば傷跡など残さずに完治するだろう。とはいえ、それは治療が間に合えばの話だ。
傷口は塞いだが、それでもクラリーベルは多くの血を流しすぎた。内臓にも損傷を負っているはずだ。一刻も早く医者に見せ、治療を施さなければならない。
だが、ここはツェルニではなく廃都市。こんな場所に医者がいるわけがなく、ましてや病院などあるはずがない。病院があったとしても、それは廃墟と化している。

「いたっ!?」

さらに状況は悪くなる。レイフォンは顔に痛みを感じ、そこに触れた。
裂傷が走っている。これは汚染物質によるものだ。どうやら先ほどクラリーベルが起こした爆発でエア・フィルターに穴が開き、そこから汚染物質が侵入してきたのだろう。ならば、この機関部にいるのは危ない。さらなる爆発の可能性もあるので、クラリーベルを連れてすぐさま脱出するべきだ。

「うぐおおおお!!」

レイフォンの気が緩み、様々な思考で気が削がれたためか、ガハルドが抜け出しまたもレイフォンに襲い掛かってくる。

[いい加減、しつこいんだよ!!」

再生するなら、それが出来ないように消滅させる。天剣にこれでもかと言うほど剄を注ぎ込み、衝剄と共に一閃させる。
それに名前はない。技ではないただの一閃。けれど注がれた剄とレイフォンの研ぎ澄まされた剣技が揃えばまさに必殺。この一撃によって、ガハルドの体は肉の一欠けらも残さずに消滅した。

「汝、力を持つものか?」

「はあ!?」

不意に、声が聞こえた。今まで気配を感じることはなく、レイフォンの背後から唐突に声がかけられる。
これまでの出来事で憤怒が募ったレイフォンは荒々しい言葉を発し、声のしたほうへと振り向く。
するとそこには、黄金に輝く牡山羊がいた。

「お前は……なんだ?」

牡山羊を見て、レイフォンの頭が急速に冷える。いきなり現れたもの。正体不明の存在。それから放たれる言いようのないプレッシャーのようなもの。
一体、どこから現れた? その上、この牡山羊は言葉を発した。明らかにただの牡山羊ではない。
様々な思考を巡らせながらもレイフォンは、クラリーベルを護るように牡山羊との間に陣取る。

「良い目をしている」

「……………」

牡山羊の低い声が空気を震わせる。それでも、レイフォンはまったく揺らがなかった。クラリーベルの前から微動だにせず、犬歯を剥き出しそうなほどに鋭い表情で牡山羊を睨み続けていた。
その際に、ふと思う。この時になってこの廃都市でクラリーベルが言っていたことを思い出した。もしかしたらこれが、この牡山羊こそが廃貴族なのかもしれないと。
だが、もし廃貴族だったとしてもレイフォンのやることは変わらない。クラリーベルの障害になるもの、危害を加えるものだった場合は容赦なく潰す。それだけは確かだった。

「その者は我を持つ器たりえなかった。故に我は望む、代わりの器を。汝、我を求めよ。我を受け止めよ」

「な……に?」

そして、この牡山羊は今、なんと言った?
その者とはクラリーベルのことか? それが使い物にならず、今度はレイフォンを求めようとしている。
同時に思い出す。クラリーベルの錬金鋼が爆散していたことに。本来なら、クラリーベルにはそれほどの剄は存在しない。だが、もし本当に廃貴族が武芸者に力を与えるなら?
それも、天剣並みに強大な剄を与えるのだとしたら?
だとすれば、クラリーベルが負傷した一端はこの廃貴族にある。

「お前が……」

「汝……」

「お前がああああああっ!!」

怒りに身を任せ、レイフォンは力の限りに天剣を振るった。先ほどガハルドを屠った時とは比べ物にならないほどの威力。
あの時はこの機関部を破壊しないためにある程度手加減していたが、今度ばかりはそういう余裕はなかった。荒れ狂う衝剄がパイプに直撃し、引火する。爆発が起き、崩壊の音が辺りから聞こえる。
レイフォンはクラリーベルを抱え、すぐにその場から脱出を図った。
そんなレイフォンの背中を、牡山羊は満足そうに見詰めていた。レイフォンの一撃を受けても、この爆発に巻き込まれても、牡山羊は変わらずにそこに存在し続けていた。

「時を見、再び合間見えよう。その時は……」

そう言い残し、そこにあった存在感、牡山羊は姿を消していく。まるで空気に溶けるかのように、最初からそこに存在しなかったかのように、静かに消えていった。

†††


「クララ……」

「……………」

廃都市での一件は終わった。あれから数日が経ち、現在、レイフォンは病院の一室にいた。
そこでは静かにクラリーベルが眠り続ける。当然、彼女はレイフォンの呟きに答えてはくれない。一命は取り留めたが、それでも予断が許されない状況だった。

あの後、機関部から脱出したレイフォンはフェリに頼んでツェルニと連絡を取り、すぐさまクラリーベルの治療を行える環境を作ってもらった。
カリアンが尽力してくれたこともあり、それ自体はスムーズに進む。だが問題もあり、ツェルニがこの地を、廃都市の近くの鉱山に来るのはおそらく夕方ごろ。それでは間に合わない。
なのでレイフォンは都市外スーツを纏い、クラリーベルを抱えた状態で直接ツェルニへと向かった。ラウンドローラーを使うことも考えたが、あの時は一刻も時間が惜しかった。レイフォンならば人を抱えた状態でもラウンドローラーより早く走ることが出来る。鋼糸を移動の補助に使えばなおさらだ。
幸い、クラリーベルは武芸者だ。傷口もしっかり塞いだし、多少乱暴に運んだところで問題はないだろう。それでもできるだけ、慎重に運びはしたが。
そんな経緯があって、クラリーベルはツェルニで最高の治療を受けることが出来、今こうして眠っている。そのこと自体にレイフォンは安堵の息を吐くが、それと共に深いため息も漏れてしまった。
クラリーベルは未だに目を覚まさない。それほどに傷が深く、多くの血を失い、内蔵を損傷させたのも原因だろう。だが、一番の原因は彼女を蝕んだ汚染物質。
あの時、機関部に入ってきた汚染物質がクラリーベルの傷口から侵入し、それが原因で身体に大きなダメージを負った。
また、戦闘の際に普段使わないような膨大な剄を使ったためか、剄脈も疲労を起こしているらしい。それについてはたいしたことがなかったとの話だが、今は傷ついて抵抗力の落ちているクラリーベルでは致命的になりかねない。
医師の話では治療はうまくいき、体内の汚染物質も除去したとのことだが、それでもいつ目を覚ますかはわからないとのことだった。

「クララ……」

「……………」

レイフォンはまたもクラリーベルに声を投げかける。けれど、クラリーベルは何も答えてはくれない。
それでも構わずに、レイフォンは言葉を続けた。

「あなたには言いたいことがたくさんあります。伝えたいことがたくさんあります。ですから、早く目を覚ましてください」

レイフォンは眠り続けるクラリーベルの頬に触れ、囁くように呟く。絶対に護ると誓った。なのに護れなかった。
ならば今度こそ護る。この人を、愛しい人を。自分のために泥を被った、とても優しい少女。
彼女とこれまで過ごしてきた日々は、大変だったがレイフォンも楽しかった。
クラリーベルはレイフォンに自分のことを認めてほしかったといっていたが、当にレイフォンはクラリーベルのことを認めていた。だからこそ言う。

「僕もあなたのことが大好きです、クララ」

勇気を振り絞った、レイフォンの告白。けれど、その告白に対しても、クラリーベルは答えを返してはくれなかった。



















あとがき
前回、四巻編までいくとか言ってた気がしますが、行かなかった!!
短かったですが、切りが良かったので今回はこの辺で。四巻編やハイア登場は次回、じっくりやりたいと思います。
それにしても前回亡くなった第五小隊の面々。今回はまったく触れられませんでした。じ、次回は……
そういえばどうでもいい話ですが、このガハルドってサヴァリスと戦った時より強化されてるんですよね。具体的に再生力。まぁ、それだけですが。
これに関してはグレンダンを出て、死体をあさってる間に脱皮してさらに特異な変化をしたってことで片付けてください。そもそも汚染獣って、十四巻で出たカリバーンだったかな? まぁ、あれはマザー的存在でしたが、再生力がハンパないですからね。


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