「ヘイ、半蔵! どうしたんだ、元気が無いじゃないか」
「TOYAMA。拙者、エデンに行く事になったのでござる。でも、一人じゃ寂しいでござる」
「オイオイ、俺達親友だろ? もちろん俺も行くさ!」
「本当でござるか、TOYAMA!」
―機械との友好を深め……。
「べ、別に貴方なんて好きじゃないんだから! ただ、エデンに行きたいから……」
「TOYAMA、私を助けに来てくれたの……?」
「TOYAMA! 私も戦うわ!」
―美人動物学者と出会い……。
「貴方はモルモットなのよ」
「さあ、これを食べなさい。何なら、私が食べさせてあげてもいいわよ?」
「命令よ。生き延びなさい!」
―謎の女医と知り合い……。
「来たぞ、恐竜もどきだ!」
「TOYAMA、助けてくれ!」
「うわぁぁぁ、人間大の木の実が襲ってくる!」
―襲い来る恐竜や、ベアラズベリーと忍法を駆使して戦い……。
「おらは農場を作るだよ」
「TOYAMA,ここらで飯でもくわねぇか?」
「こらーっ鶏泥棒!」
―田中と友情を育み……。
―TOYAMAは今日もエデンで生きていく。
「くくく……あははははははははは!」
哄笑する謎の科学者、真老の企みとは? 絡み行く各国の思惑の行方は?
エデン~偽りの楽園~乞うご期待!
「……まあ、それで楽しんでるなら構わんがね」
「凄く楽しいです!」
「そうかね」
予告編を皆に見せてはしゃいでいる監督の言葉に、真老は重々しく頷き、他のテーブルへと向かった。
合同結婚式の披露宴である。場所はエデン。
神父がいたり牧師がいたり神主がいたり、白無垢や様々なウェディングドレス姿の女性が闊歩していてカオスである。
真老は、次にロビンの所に向かった。
「義足の具合はどうかね」
「はい、大分いいです。ドクター、今日はいい日ですね」
ロビンは少し顔を赤くして、笑顔で答えた。その横には美しい女性がロビンに酌をしている。ロビンに春が来るのはいいことだ。身元調査は必須だが。
「神楽社長!」
ウェディングドレスの赤城が、遠山と共に真老を呼びとめる。
「赤城君。今はもう、遠山君か。この度は結婚、おめでとう。よく似合う。遠山博君、君は期待以上の事を成し遂げてくれたな。君の申請が最も優れていたから、まあ予想できたことだが。義足の調子はどうかね?」
「あの。ありがとうございます、真老様。歩きやすくて、びっくりしました」
「それは良かった」
「あ、あの、真老様。半蔵と出かけて、こんな物を見つけたんですが」
勇気を出して取り出した緑の石に、真老は目を見開いた。
「これは……まさか緑薪石か?」
遠山小枝子の言葉に、真老はその石を弄びながら言った。
「エネルギー燃料だ。緑薪石という。過去の……そうだな、石炭のような物だ。一瞬これが主流になった事もあったが、枯渇してね。他の燃料に切り替えられた。私も写真でしか見た事がない。そう……そうだな。確かにエデンは緑薪石の産地だった」
「そうですか、過去の……」
がっくりと肩を落とす博の肩を小突き、小枝子は微笑む。
「博、真老様にとっては過去でも、私達にとっては未来よ。これから主流となる鉱石なんだわ。そうでしょ、真老様」
真老は苦笑して頷く。
「これは比較的低い技術でも扱えるのがメリットでね。さすがに詳しい使い方までは覚えていないが、すぐに再発見できるだろう。量に関しても、惑星三つ分ならすぐに枯渇する事はあるまいよ。ここは他の燃料も取れるが、緑薪石には及ばない。後でロビンに連絡をしておく。武美くんも喜ぶ。そうか、緑薪石の産地だったか……。君は本当に期待以上の結果を出すね、遠山くん。半蔵も褒めておこう」
「あ、ありがとうございます」
「構わんよ」
「ドクター、緑薪石と聞こえましたが……」
ウェディングドレスの武美が、少し息を切らせていていた。
「ああ、これだ。まだ検査をしていないから何とも言えないが……」
「これが科学者の夢とまで言われた緑薪石ですか。何か、感動です」
「そ、そんなに凄いものなんですか?」
「これ一個で航行が一回出来るはずだ」
博の質問に答え、真老が名残惜しげにそれを返そうとすると、博はそれを押し返した。
「あ、あの。それ、差し上げます」
「そうかね。礼を言っておこう。採掘等の手続き、権利書の手続きに関してはロビンに聞くといい」
真老はそれを武美に渡し、武美が顔を輝かせた。
「ドクター。私達、今日からお酒の飲める年ですし、こんな良い日にお酒を飲まないなんて嘘ですわ。お酌します」
「いい考えだ」
そして楽しい夜は更けて行くのだ。