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No.28951の一覧
[0] ドラえもん のび太の聖杯戦争奮闘記 (Fate/stay night×ドラえもん)[青空の木陰](2016/07/16 01:09)
[1] のび太ステータス+α ※ネタバレ注意!![青空の木陰](2016/12/11 16:37)
[2] 第一話[青空の木陰](2014/09/29 01:16)
[3] 第二話[青空の木陰](2014/09/29 01:18)
[4] 第三話[青空の木陰](2014/09/29 01:28)
[5] 第四話[青空の木陰](2014/09/29 01:46)
[6] 第五話[青空の木陰](2014/09/29 01:54)
[7] 第六話[青空の木陰](2014/09/29 14:45)
[8] 第六話 (another ver.)[青空の木陰](2014/09/29 14:45)
[9] 第七話[青空の木陰](2014/09/29 15:02)
[10] 第八話[青空の木陰](2014/09/29 15:29)
[11] 第九話[青空の木陰](2014/09/29 15:19)
[12] 第十話[青空の木陰](2014/09/29 15:43)
[14] 第十一話[青空の木陰](2015/02/13 16:27)
[15] 第十二話[青空の木陰](2015/02/13 16:28)
[16] 第十三話[青空の木陰](2015/02/13 16:30)
[17] 第十四話[青空の木陰](2015/02/13 16:31)
[18] 閑話1[青空の木陰](2015/02/13 16:32)
[19] 第十五話[青空の木陰](2015/02/13 16:33)
[20] 第十六話[青空の木陰](2016/01/31 00:24)
[21] 第十七話[青空の木陰](2016/01/31 00:34)
[22] 第十八話 ※キャラ崩壊があります、注意!![青空の木陰](2016/01/31 00:33)
[23] 第十九話[青空の木陰](2011/10/02 17:07)
[24] 第二十話[青空の木陰](2011/10/11 00:01)
[25] 第二十一話 (Aパート)[青空の木陰](2012/03/31 12:16)
[26] 第二十一話 (Bパート)[青空の木陰](2012/03/31 12:49)
[27] 第二十二話[青空の木陰](2011/11/13 22:34)
[28] 第二十三話[青空の木陰](2011/11/27 00:00)
[29] 第二十四話[青空の木陰](2011/12/31 00:48)
[30] 第二十五話[青空の木陰](2012/01/01 02:02)
[31] 第二十六話[青空の木陰](2012/01/23 01:30)
[32] 第二十七話[青空の木陰](2012/02/20 02:00)
[33] 第二十八話[青空の木陰](2012/03/31 23:51)
[34] 第二十九話[青空の木陰](2012/04/26 01:45)
[35] 第三十話[青空の木陰](2012/05/31 11:51)
[36] 第三十一話[青空の木陰](2012/06/21 21:08)
[37] 第三十二話[青空の木陰](2012/09/02 00:30)
[38] 第三十三話[青空の木陰](2012/09/23 00:46)
[39] 第三十四話[青空の木陰](2012/10/30 12:07)
[40] 第三十五話[青空の木陰](2012/12/10 00:52)
[41] 第三十六話[青空の木陰](2013/01/01 18:56)
[42] 第三十七話[青空の木陰](2013/02/18 17:05)
[43] 第三十八話[青空の木陰](2013/03/01 20:00)
[44] 第三十九話[青空の木陰](2013/04/13 11:48)
[45] 第四十話[青空の木陰](2013/05/22 20:15)
[46] 閑話2[青空の木陰](2013/06/08 00:15)
[47] 第四十一話[青空の木陰](2013/07/12 21:15)
[48] 第四十二話[青空の木陰](2013/08/11 00:05)
[49] 第四十三話[青空の木陰](2013/09/13 18:35)
[50] 第四十四話[青空の木陰](2013/10/18 22:35)
[51] 第四十五話[青空の木陰](2013/11/30 14:02)
[52] 第四十六話[青空の木陰](2014/02/23 13:34)
[53] 第四十七話[青空の木陰](2014/03/21 00:28)
[54] 第四十八話[青空の木陰](2014/04/26 00:37)
[55] 第四十九話[青空の木陰](2014/05/28 00:04)
[56] 第五十話[青空の木陰](2014/06/07 21:21)
[57] 第五十一話[青空の木陰](2016/01/16 19:49)
[58] 第五十二話[青空の木陰](2016/03/13 15:11)
[59] 第五十三話[青空の木陰](2016/06/05 00:01)
[60] 第五十四話[青空の木陰](2016/07/16 01:08)
[61] 第五十五話[青空の木陰](2016/10/01 00:10)
[62] 第五十六話[青空の木陰](2016/12/11 16:33)
[63] 第五十七話[青空の木陰](2017/02/20 00:19)
[64] 第五十八話[青空の木陰](2017/06/04 00:03)
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[28951] 第三十話
Name: 青空の木陰◆c9254621 ID:90f856d7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/31 11:51





「ドララ、ドララ~!!」


「え、ミニドラ? どうしたの?」


衛宮邸の一室、宝石に自らの血を垂らして魔力を込める作業に没頭していた凛は、突如部屋に駆け込んできたミニドラ・レッドに振り返る。
先を見据え、完成間近の宝石を使えるようにしておこうと思い立ったが故の行動なのだが、注射器片手に自らの血液を採取する光景というのは、素人目には異様としか映らないであろう。


「ド、ドラッ!?」


ミニドラ・レッドも流石にビビったのか、一瞬ビクッ、と身を竦ませていた。


「ああ、これ? 気にしないで。で、どうかしたの?」


注射器を机の上に置き、凛は何があったのかをミニドラへ問いかける。
気を取り直したミニドラ・レッドは、身振り手振りと「ドララ、ドララ」というミニドラ語で、説明を始めた。


「学校に変化? そう、解ったわ」


はじめこそ、姿から言葉から色々とブッ飛んでいるミニドラ三人組に面食らったものの、今では慣れたものだ。
いや、慣れざるを得なかった、と言うべきなのかもしれない。
そうでなければ、この先保たないような気がしたからだ……主に自分の常識が。
魔道に浸りきり、非日常を日常として過ごしているものの、それでも最低限の常識は持ち合わせているのだし、キレるレッドラインだって存在しているのだから。
凛とミニドラ・レッドは、離れのとある部屋へと、急ぎ足で向かった。


「ドララ、ドララ!」


「どら~!」


部屋のドアを開けると、そこにはアーチャー、イリヤスフィールら、衛宮邸に残る凛以外の全員が既に集合していた。
皆、一様に険しい表情を浮かべている。
部屋の奥には、“どこでもドア”が一つ、ポツンと設置され、そのせいか、洋装の室内に妙なミスマッチ感が漂っていた。
さらに、床の上にはモニターが複数鎮座しており、それぞれ画面に映像を投射している。
そして、残るミニドラ・イエロー、ミニドラ・グリーンの二人が何やら、モニター周りに置かれた大型の機械と計器を必死にいじっていた。


「状況は!?」


「聞くより見た方が早かろう」


そう言って、眼前のモニターを顎で指し示すアーチャー。
凛が目を移したモニターには、紅い鉄格子のような線でドーム状に覆われた、穂群原の校舎が映し出されていた。
“タイムテレビ”と、あらかじめ放っておいた“スパイ衛星”からのリアルタイムでの映像だ。
血のような紅い空気。普段では起こり得ない、超常現象じみた光景。ここまでくれば何が起こったのか、一目瞭然。


「ライダーの結界……か。慎二のヤツ、ついにやったのね」


「そうみたいね。でもリン、これ明らかに出来損ないよ。この結界、即効性なんでしょ? にも拘らず、映像で見る限りまだ誰一人として、魔力に昇華されてないもの」


「どうやら、未完成のまま強制発動したようですね。この分ですと、すべての人間を昇華するには時間がかかるでしょう」


もっとも、それも数分程度でしょうが、というセラの補足に凛は眉を顰める。
自分が基点を破壊しまくったのが功を奏したか、瞬時に蒸発という最悪の事態は避けられた。
しかし、早く結界を無効化しなければ、それも水泡に帰してしまう。
行きがけに、結界の基点の位置はあらかじめ士郎に伝えてはあるものの、へっぽこ士郎では、一度発動したものを破壊する事は困難だろう。
ましてや、これは英霊謹製のシロモノだ。さながら、ペーパーナイフでチタン合金を斬るような、ルナティッククラスの難易度である事は想像に難くない。
それほどの所業など、士郎に望むべくもない。
……だが。


「――――あっ!」


「む? これは……」


「結界が……」


向こうには、ペーパーナイフでチタン合金を斬れる……いや、斬れるようにする事が出来る人間がいる。
画面中、学校を取り囲む紅い格子の中で一番太い紅の柱が、いきなり明滅したかと思うと、スウッと煙のように消え失せた。
それと同時に、紅い空気がうっすら淡いものへと変化する。


「これ……は、弱まった、のかしら?」


「……だろうな。おそらく、中枢をやられたのだろう」


「毒性が激減してる。ただでさえ急ごしらえの結界なのに、早々と中枢を破壊されちゃったんだから、ほどんど徒労で終わっちゃうかも。あ~あ、ライダー涙目ね」


クスクスと笑うイリヤスフィール。
彼女の覗き込んでいる別のモニター画面を見てみると、結界内の士郎達の様子がはっきりと映し出されていた。





『あ……消え、た?』



『ふぅ……っ、よ、よかったぁ』



『…………』





脂汗を浮かべ、若干気分が悪そうにしているが、三人とも無事のようだ。
そして、三人の位置関係から鑑みるに、士郎に随伴させた万一のための『保険』が、きっちり仕事をやってくれた事が読み取れた。
凛の伝授した手法で。


「……毎度毎度、やらかしてくれる子ね。しかもわたしでも見つけられなかった、ピンポイントの場所にドンピシャって……」


苦笑しながら、安堵の吐息を漏らす凛。
しかし、むしろ本題はここからだ。
意識を切り替えて、凛はさらに別のモニター画面を覗き込んでいるリーゼリットに振り返った。


「そっちに動きはあった?」


「……消えた」


「え? 消えた、って?」


リーゼリットの前にあるモニター画面を見てみると、そこには人っ子一人いない、無人の廊下が映し出されていた。


「誰もいない……消えたのって、いつ?」


「たった今。結界が発動してすぐ、黒いのに包まれてた」


「黒いの?」


こーんなの、と身振りで表そうとするリーゼリット。
当然、そんなもので解る訳がないので、凛はミニドラ・イエローに画面内の時間を巻き戻すよう指示した。










……傍らで不安そうにしていた、オレンジの頭を優しく撫でつつ。




















「があ……っ、あああぁぁあああああ!!」


身体から急速に力が抜けていく感覚に、のび太は箸を取り落してその場に倒れ伏した。
熱が一斉に退いていき、ついで全身が瘧のように震えはじめる。
脂汗が滝のように溢れて、眩暈と不快感が意識を蝕んでいく。


「ま、まさか、結界……か!? し、慎二のヤ……ッ!? っこ、こいつは!」


朦朧とする意識を無理矢理引っ張り上げながら、顔を上げた士郎。
だが、パッと視界に映ったそれに、思考の全てが奪われた。


「――――――ここにも、基点が!?」


いつの間にか道場の床の間に浮かび上がっていた、禍々しく、複雑怪奇な紋様。
しかし、前に“タイムテレビ”で確認した時のような、小さなものではない。
壁一面に、まるで壁画のようにデカデカと、異様な大きさで描き散らされている。
事前に凛から渡されたメモには、ここに基点があるという事は記されていなかった。
おそらく、巧妙に隠蔽されていた……それだけ、この基点は他のもの比べて重要なのだろう。
それで、理解した。
なぜ、弓道部の欠席者が異様に多かったのかを。


(……ここが、結界の、中心点……だった、のか!!)


通常の物より、何倍も大きい基点。
当然、それだけ魔力の簒奪効率も跳ね上がる。
なんたる迂闊。士郎は盛大に表情を歪め、歯噛みする。
考えてみれば、弓道場は弓道部員である慎二のテリトリーだ。
嗅覚がマヒしていたとはいえ、何かとんでもない仕掛けがある可能性を、最初から疑ってかかるべきだったのだ。


「……っぐ、ぅう……とっ、『同調・開始(トレース・オン)』ッ!!」


身体に残るすべての活力を振り絞り、士郎はイメージで頭に撃鉄を落とす。
瞬時に魔術回路が起動。身体に魔力が循環し始め、枯れかけていた体力がどうにか復調を果たした。
手を握り締めたり、開いたりして、身体が問題ない事を確認すると、片膝立ちで立ち上がる。


「…………ッ!」


と、ふいに視界の隅に光を感じ、士郎がそちらを振り返ると、フー子の身体が淡く発光していた。
のび太と自分の“竜の因子”を共鳴、活性化させて魔力を底上げし、結界を無力化しているのだ。
そうして気付けをするように頭をプルプルと震わせ、そのまますっくと立ち上がる。
どうやら、まったく問題ないようだ。


「う……ぁ、あああぁぁぁあ……く」


「ちょ、の、のび太君、大丈夫かっ!?」


だが、のび太だけは、依然として苦しんでいるままだった。
僅かに身体が発光している事から、“竜の因子”が働いているのは間違いないようだ。
にも拘らず、のび太の身体から魔力が枯渇しそうになっている。
なぜか。
簡単に言えば、のび太の魔力キャパシティと『他者封印・鮮血神殿(ブラッドフォート・アンドロメダ)』が吸い上げる魔力量の差がありすぎるためだ。
のび太の魔力を十とするなら、結界は二十を吸い上げ続ける、と言い換えると、もっと解りやすいか。
“竜の因子”の共鳴反応で、たしかに奪われたのび太の魔力も回復はする。
ただし、それはのび太の限界魔力保有量分のみであって、限界を超えた余剰魔力はすべてラインを通じて、共鳴相手であるフー子の方へ流れていってしまうのだ。
器がおちょこ並であるのび太が、キャパシティ以上の魔力を保有するのは自殺行為。それを今日、凛から指摘されたばかりである。
故に、一時的に限界を超えて魔力を保持しておく事を、無意識のうちに拒んでいる。それが、この状況の直接の原因となっていだ。
加えて、魔術ないしは神秘を発現する素養がなく、士郎やフー子のように結界の影響を弾き返せないので、結果として魔力と生命力を根こそぎ奪われ続けるという、悪循環に陥ってしまっていた。


「く……そっ、どうする!?」


逡巡するも、答えは出ない。
こんな事態の対処法など、士郎の知識にはない。


「…………くっ、だ、め!」


フー子が“竜の因子”を更に活性化させるも、やはり徒労に終わる。
そもそもそんな事をしても、のび太の魔力キャパシティが増える訳ではないので、焼け石に水にもなりはしない。
魔力回復スピードこそ上がりはするが、結局回復した端から体力と一緒に、空になるまで簒奪されるだけである。


(……うぅ、ど、どうにか……しな、きゃ! 死ぬ、このままじゃ、僕は、死んじゃう!!)


しかし、諦めるのはまだ早い。
徐々に暗くなっていく意識を叱咤し、苦しみに悶えながらも、のび太はなけなしの力を総動員して打開策を模索していた。


(まる、で、怪物の、胃、の中に突き……落とされた、みたい、だ、なぁ)


紅い霧状の消化液で、自分の身体がじわじわと溶かされていく。
この学校にいる人間全員が、そんな感じなんだろうか。
のび太は、そんな益体もない事を考えつつ、必死な表情を浮かべる二人をゆるゆる見やって。


(……あれ、まて、よ?)


なにかが、頭の隅にパチン、とはまりこんだ。
じゃあ、どうして目の前の二人は、こんな環境の中で平然としていられるのだろうか、と。
魔術が関わっている、というのは解る。
そう言う意味では、二人には才能や特性があるのだし、対する自分にはない。


(魔術の……ち、から、で、これに耐えて、る……って、こ、とか、な。それ、って、つまり、この環境に、魔術の、力、で、『適応』して、るって……ッ!?)


脳に紫電が走る。
切れ切れだった思考が、一本の線につながった。


(――――あれ、だ、あれしか、ない! もう……何回も、使ってる、あの、道具っ! なんで、忘れ、てたん、だよ、僕の……馬鹿ッ!)


のび太はその直感に従い、震える手でポケットに手を突っ込むと、中から“スペアポケット”を取り出した。


「…………ッ、ぁう!?」


汗で手が滑り、ポケットを取り落しそうになるが、そんな事でコケてはいられない。
なんせ、文字通り命がかかっているのだ。


「……ぅぐ、く、くぅ……!」


なんとか引きずり出した“スペアポケット”に手を差し入れ、目当ての物を探る。
一秒が一時間にも感じられ、脳髄が捻じ切れるほどにもどかしい。
噴き出す汗が服を容赦なく湿らせていき、その不快極まる感触が、さらに体力を奪い去っていく。
やがて切れかけの電球のように意識が明滅を始め、意志とは裏腹に瞼が痙攣を起こして、強制的に閉じられる。
そのままブツンと落ちてしまいそうな恐怖感が、どっと襲い掛かってきた。
もうダメか、と思ったその時、目当てのブツに手が届いた事が掌に伝わってきた。





「……ぐぅ、こぉぉぉおおのおおおっ!!」





大喝一斉、のび太は最後の力を総動員して、ポケットからピストル状の機械を引き抜くと、まるで自殺でもするかのように、ゴリッと自らのこめかみに当てた。


「ちょ、お、おい!?」


慌てて士郎が制止しようとするが、きっぱりと無視。
右手に力を込め、トリガーを引いた。


「ああぁあっ!? ……って、あれ?」


一瞬、顔を背けた士郎だったが、思ったよりも反応がない。
てっきり、血飛沫とか脳漿とかが、そこら中に飛び散るものだとばかり思っていた。
そうならないのも当然だ。それはピストルなどではないのだから。


「――――――はあっ、はあっ……、ふぅうううっ、危なかったあああ……。よかったぁ、ちゃんと効いてくれて」


士郎がおそるおそる顔を上げると、そこには安堵の吐息を漏らしながら立ち上がる、のび太の姿があった。
頭がふらつくのだろう。額を押さえ、やや血色の悪い顔色ではあるが、結界に苛まれている様子は、もはやない。


「え、の、のび太君?」


突然平気な表情となったのび太に、士郎は唖然となる。
さっきまであんなに苦しんでたのに、いったいなにが起こった?
あれか、さっきポケットから引き抜いた、あの道具の力なのか? あれはいったいなんなんだ?
疑問がグルグルと渦を巻くも、言葉には出てこない。
口と声帯が、発声の役目を放棄してしまっている。
ただただ、死にかけの魚のようにパクパクと唇が動くばかりだ。


「へ? 士郎さん、どうし……って、ああ、もう大丈夫ですよ。ほら」


両腕をパッと広げて、なにも問題ない事をアピールするのび太。
しかし士郎の目は、彼の右手に握られたピストルに釘づけのままだ。
のび太は、その視線の意味に気がついた。


「あ、これですか? これは……っは、え!? ちょ、し、士郎さん、あれ、あれって!?」


だが、その説明の前に、何よりのび太の目を引いたものがあった。
それは丁度士郎の後方、床の間にべったりと張り付いた、あの気味の悪い巨大な紋様だった。


「あ、ああ、あれは……たぶん、このバカげた結界の中心点だ。弓道部の部員が大量に休んだのは、これが原因らしい。これだけ大きけりゃあ、な」


「そ、そうですか……これが」


のび太はそれだけ言うと、“スペアポケット”に再び右手を突っ込み、ピストル型の機械をしまうと、そのまま紋様の方へ歩を進める。
右手はいまだ“スペアポケット”の中だ。


「お、おい、どうする気だ?」


「どう、って……消します」


「け、消す? 出来るのか?」


出来る。
既に凛から、アドバイスを貰っている。
“あの”ひみつ道具にかかれば、問答無用でこの結界を、『なかった事』にする事が出来る。
この世に存在するもの全てに等しく訪れるもの。
それを操れる、あの道具で。





「――――――てぇい!」





“スペアポケット”から抜き放たれた右手が、紋様のド真ん中に、“それ”を勢いよく押し付けた。
身体が陰になり、士郎からは、のび太が何を押し付けているのかが見えない。
だが、効果はすぐに目に見える形で表れる。
時間にして、きっかり三秒が経過したその途端。


「あ……」


紋様が霞のように消失し、同時に部屋の空気が、毒々しい紅色からうっすらとした淡紅色へと変質した。


「消え、た?」


「ふぅ……っ、よ、よかったぁ」


「…………」


額の汗を拭い、のび太は壁から手を降ろして、完全に紋様が消え去ったのを確認する。
数秒ほど壁を凝視するが、再び浮き出る気配はない。


「完璧に……消えてるな」


「みたい、ですね……」


そうして二人してほうっ、と大きく息を吐く。
急場の難をどうにか退けられた事に、思わず洩れた安堵の吐息であった。


「やれやれ、一時はどうなる事かと思ったけど……あ、そういえば」


「はい?」


「いや、さっきピストルみたいな道具をこめかみに押しつけてたけどさ、あれってなんなんだ? それと、あの紋様を消したそれって……」


「ああ……」


のび太は納得したように頷きを返すと、“スペアポケット”から、ピストル状のひみつ道具を再度取り出して差し出し、同時に紋様に被せた布状のひみつ道具も士郎に手渡した。


「これは……ピストルじゃあ、ないな。それにこっちの布は、確か……」


「ええ、“タイムふろしき”です。家を出る前に、凛さんに言われたんですよ。いざとなったら、これで時間を巻き戻して“基点が作られる前の状態”に戻せって」


「成る、程、なぁ……」


物の時間を巻き戻したり進めたり出来る“タイムふろしき”にかかれば、強制的に白紙状態まで持っていく事が可能。
しかも解除工程の一切をすっ飛ばして、被せてものの数秒でカタが付くというド反則だ。
カウンターとして、まさにうってつけと言えるシロモノである。


「じゃあ、この機械は……?」


「あ、それは“テキオー灯”って言うんです」


「“テキオー灯”?」


首を傾げる士郎にのび太は効果を説明するが、はっきり言って士郎には、何かの冗談としか思えないようなものであった。


“テキオー灯”


このひみつ道具から発せられる光線を浴びた者は、あらゆる環境に適応出来るようになる。
それこそ真空で超高温ないし超低温、放射線と音速の塵が飛び交う宇宙空間から、一千気圧の水圧が襲い来る深度一万メートルの深海まで。
防護装備も特殊機材も必要とせず、あまつさえ、空気のない環境下でも呼吸が可能になるという謎仕様。
のび太はこれを使って、『他者封印・鮮血神殿(ブラットフォート・アンドロメダ)』という、中にいるだけで魔力を吸われ続ける“環境”に適応したのだ。


「某宇宙局が血涙流して欲しがりそうだな……っぐぁ! く、ぁぁ……バラしても、既存の機械と構造も原理もまるで違うから、さっぱりだろうけど、な。ふぅ……これも遠坂からの入れ知恵?」


なんとなく“タイムふろしき”と一緒に『解析』を試みたところ、そのシステムと概念の難解さに圧し負け脳が悲鳴を上げた。
鉋で脳を削られるような頭痛に顔を顰めつつ、何気なくのび太にそう問うと、


「いえ、咄嗟に思いついて、それで」


ある意味、予想外の答えが返ってきて、ヒクッと士郎の口元が、頭痛とは別の意味で引きつった。
どうも、結界発動に対するカウンターは思いついたが、結界の力に耐えられないのび太への配慮は見落としていたらしい。
“竜の因子”があるので、大丈夫だと踏んでいたとも考えられるが、実際に“竜の因子”が役に立たなかった事を鑑みると、やはり手落ち感が否めない。


「案外、抜けてるんだなぁ、遠坂。これがなかったら、どうするつもりだったんだよ……」


「あ、あははは……」


“テキオー灯”をガンマンのように縦に回して弄びつつ、士郎は本人が聞けば笑顔でガンドをぶっ放してきそうな感想を漏らす。
のび太は、苦笑いを浮かべるしかなかった。
……だが、忘れてはいけない。
毒性こそ大幅に減少したとはいえ、結界はまだ発動中なのだ。


「――――っと、こんなゆっくりしてる場合じゃないな。早く結界を破壊しないと。行くぞ、のび太君!」


『解析』し終えた“テキオー灯”と“タイムふろしき”をのび太に返し、士郎は弓道場の玄関へ向かって走り出す。


「あ、そ、そうですね。ゴメン、行こう!」


「……ん!」


ジッとのび太を見上げていたフー子の手を握り、のび太は士郎と一緒に弓道場から飛び出した。




















「のび太君、そこに一つ!」


「はいっ……これですね! えいっ!」


「――――っよし、消えた! 次っ!」


大黒柱がへし折られても、残りの支柱の危ういバランスでどうにか倒壊を免れている、というのが『他者封印・鮮血神殿(ブラットフォート・アンドロメダ)』の現状だ。
故に、やる事は一つ。
基点の位置を記したメモを頼りに、士郎が嗅覚を駆使して基点を探しだし、のび太が“タイムふろしき”で基点を消し去っていく。
まずは弓道場からほど近い林の中、次に校舎の裏手、その次に駐輪場の隅、といった風に、位置的に手近な外から攻めていっている。
可能な限り走り回って、既に消去した基点の数は、メモにある設置数の半分近くに上る。
そして校舎外の基点はほぼ始末したので、残りは校舎内だ。


「だいぶ紅いのが薄くなってる……もうちょっとか! 次は――――校舎二階廊下の突き当り! 急ごう!」


「あっ、ちょ、まっ、待って……っ!? はあっ、ひぃ、はっ、はあっ……!!」


気が急いているのか、士郎はのび太を置き去りにしそうなくらいのスピードで、校内に駆け込んでいく。
昼食もそこそこにあちこち駆けずり回っていたおかげで、ただでさえ疲労気味だったのび太のなけなしの体力は、容赦なく削られていくのだが、それでも何とか遅れまいと、息も絶え絶えに、必死に足を動かしていた。
その後ろを、フー子が心配そうな表情で見上げながら、後に続く。
こちらは特に疲労も何もないようだ。
そもそもモノからして、のび太とは雲泥の差があるのだから、当たり前かもしれないが。


「し、士郎、さん……! はっ、はっ、ぜぃ、はっひぃい……」


どうにかこうにか追いすがり、のび太も校内へと侵入する。
ちなみに全員、土足のままだ。
非常事態なのだし、それどころではない。


「ひっ、はぁ、ひぃ……はっ、はぁっ……か、はあっ」


咽喉からヒューヒューと妙な音が鳴っており、これまで相当走り回っていた事が窺い知れる。
器官が焼けつくような痛みに耐えつつ、階段を駆け上がる。
ヘロヘロになりながらも、どうにか二階へ辿り着くと、士郎の背中を探して視線を周囲に彷徨わせる。
……だが、それがまずかった。





「――――――ひいぃぁっ!!?」





結界が破壊し尽くされ、ほぼ影響がなくなっているとはいえ、ほんの数分前までは結界の脅威に晒されていたのだ。
それはつまり、結界から魔力を根こそぎ簒奪された犠牲者が、まだ校内にいるという事。
図らずも、のび太は直視してしまったのだ。
彼にとっては凄惨とも言える、被害者の姿を。


「あ、あ、あああ、ああぁあ……!!!」


ペタン、と糸の切れた人形のように尻餅をつき、じりじりと力の入らぬ手足で後退りする。
廊下の壁に背中が着くが、両の腕と足は後退する事を止めようとしない。
表情は蒼白。顎が小刻みに震え、上と下の歯がカチカチと触れ合い、音が鳴る。
そしてその視線は、眼前にある一つの教室にガッチリと固定されていた。


「おーい、のび太君……ん? どうし……ッ!?」


「……? ……ぁ」


と、そこへ、先行し過ぎていた事に気づき引き返してきた士郎と、階段を上り切ったフー子が合流する。
二人は、のび太の様子がおかしい事に気づくと、のび太の視線の先を辿り、そして揃って眉を顰めた。


「しまった……」


呻くような苦い声、士郎は己の失策を悟る。
気が急いていたから、などとは言い訳にもならない。
血塗れのキャスターを見て奇声を上げていたのび太にとって、この光景は決して堪えられるモノではない。
年上である彼が、こうなる前にきちんと配慮せねばならなかったのだ。


「し、士郎さん……士郎、さ」


「落ち着いて! もういい、見なくていい。いいから」


教室の中には、床の上にくずおれた教師と生徒の姿があった。
全員が死体のような顔色で、輝きを失った虚ろな目を虚空に投げかけている。
結界が未完成で、かつ発動して二分と経たずに半壊したため、皮膚の融解などは見られないが、生気というものがすっかり抜けきってしまっている。
その様は、まるで気味が悪いほど精巧に造られた蝋人形のようだ。
そして、無造作に打ち捨てられた骸のごみ溜めのような教室の惨状は、のび太でなくとも根源的恐怖を煽られるだろう。


「ごめん、俺がもう少し気を付けていたら……」


縋るようにしがみついてくるのび太をどうにか落ち着かせながら、士郎は、謝罪の言葉を口にする。
こういう光景を見慣れている自分ならいざ知らず、のび太には見せてはいけない事を理解していた筈なのに。
戦力としては頼もしく、時に大人顔負けの勇敢さも示すのだが、それでも、やはりまだ年端のいかない子供なのだ。
その辺りのフォローは、年長の自分達の役目であるという事は、凛共々理解し、常に意識している。
その筈なのに、この体たらく。


(……何やってんだ、俺は! こんなんじゃ、兄貴分失格だぞ!)


出会ってからこっち、のび太を自分の弟のように思っている士郎。
脳内で自分を力の限りぶん殴り、しっかりしろと叱咤する。
……と、そこへ。










「――――――よーぉ、衛宮。何やってるんだ、こんなところで?」










聞き覚えのある、やたら調子のいい声が耳朶を打つ。
士郎の神経が、逆立つようにざわめいた。




















「慎二……!」


「なんだい、衛宮? 怖い顔して」


キッと睨みつけるも、なんら堪えた風もなく慎二はヘラヘラと笑っている。
そのあまりの軽薄さに、士郎はふつふつと怒りの感情が湧くのを感じた。


「お前……、自分が何をやったか、解ってるのか!?」


「え、なに? 言ってる意味がわからないんだけど?」


「とぼけるな! お前が自分のサーヴァントに命じて、この結界を張らせたんだろうが! さっさと結界を解除しろ!」


「サーヴァント……、って?」


「まだシラを切るか! お前は騎乗兵の英霊、ライダーのマスターだろう! 何日も前からこの『他者封印・鮮血神殿(ブラットフォート・アンドロメダ)』を仕掛けていた事は知ってるぞ!」


ここまで言うと、慎二は意外そうに軽く目を見開いたが、すぐにニタリ、と気味の悪い笑みを浮かべた。


「……なぁんだ、知ってたのか。なんでそこまで知ってるのかは知らないけど、それなら話は早いな」


そう言うと、慎二は懐から一冊の本を取り出した。
メモ帳程度の、紅い表紙で誂えられたその本からは、一種独特の魔力が立ち上っている。


「衛宮、お前も聖杯戦争のマスターだって事は見当がついてる。昨日今日の欠席と、なによりその手に巻かれた不自然な包帯でね。……だったら、解るよな?」


「……っち!?」


即座にのび太とフー子を後ろに庇い、士郎は慎二に対して臨戦態勢を取る。
士郎は理解したのだ。
こいつは、俺を殺す気で来ているのだ、と。
慎二の、殺気の色濃く滲んだ酷薄な笑みが、その何よりの証拠。


「……のび太君」


「は、はい!?」


ギリ、と歯を鳴らしながら、士郎はのび太に小声で声を掛ける。
これから告げる事は、のび太にとって酷な事だと解っている。
だが、他に手がない事も事実だ。
自分の力と、先見性のなさを情けなく思いながらも、士郎は唸るように口を開いた。


「ここからは……君と彼女の二人だけで、この結界を破壊するんだ」


「え、ええっ!?」


のび太の動揺した声に振り返る事もなく、士郎は上着のポケットに右手を突っ込むと、中に入れていた“スペアポケット”にそのまま手を滑り込ませる。


「慎二は俺を狙ってる。という事は、俺が相手をすれば少なくとも慎二は抑えられるんだ。それに、アイツは一発ブン殴ってやらなきゃ気が済まないしな」


「で、でも……」


目当てのブツを手がしっかり握り込んだのを確認した後、士郎は左手のメモをのび太の方へ後ろ手に渡した。


「これに結界の基点の場所が書かれてる。ここから近いのは三階にある二つだ。たぶん、あと二、三個壊せば結界はなくなると思う。頼む!」


「士郎さん……」


士郎の肩が、小刻みに震えている。
一筋の汗が頬を伝い、きつく結ばれた唇からは、赤い血が流れ落ちていた。
友人と闘う事への動揺もさることながら、のび太に重責を背負わせてしまう事への怒りとやるせなさを堪えているのだ。
だがそれは、裏を返せばのび太ならきっとやってくれるという、信頼の証でもある。
いまだ教室の惨状のショックが抜けきっていないのび太であったが、士郎のその尋常ならざる様子にグッと唾を呑み込むと、


「――――――わかり、ました!」


肚を決めた。
はっきりとした返事に士郎の口元が、僅かに緩む。
だが、そんな自分に嫌悪を感じ、即座に表情を引き締め直すと、慎二に本格対峙すべく腰を落として叫んだ。


「走れっ!」


「はい! 行くよっ!」


「ん!」


傍らのフー子と共に、のび太は先程登ってきた階段目掛けて駆け出した。
……が。





「――――行かせないよ。ライダー!」



「ぅわっ!?」





突如、人影がのび太達の前に立ち塞がり、強制的に足を止められた。


「お、お前は!?」


紫の長髪に、露出過多の刺激的な衣装。
異様な雰囲気を醸し出している紫の眼帯。
両の手には、鎖付きの釘のような物が握られている。
幻想的なほどに秀麗な容姿も、にわかに滲み出る威圧感で見惚れるどころか、金縛りにでも掛かってしまいそうなプレッシャーしか感じさせない。
いつか画面越しに見た騎乗兵のサーヴァント、ライダーがのび太の目の前にいた。


「おいおい、僕がライダーのマスターだって解ってたんだろ? だったらライダーがいるって事も計算に入れてなきゃ。たとえ、姿が見えてなくともね」


「くっ、霊体化……させていたのか!」


なんたる迂闊。
やはり自分には先を読む力がないのか。
慎二の嘲笑に士郎は歯噛みするも、この状況に邪魔な苛立ちだけはどうにか封殺した。


「衛宮の弟と妹、って訳じゃなさそうだけど、何をする気だったのかな? ま、でも、この場にいる以上は殺されても文句は言えないよ。可哀相だけど。やれ、ライダー!」


号令一下、ライダーの右手がジャラジャラと耳障りなと共に持ち上がる。
それと同時に、仄暗い殺気がのび太達に向けて叩き付けられた。


「ひっ?!」


心臓を鷲掴みされたかのような感覚が、のび太に襲い掛かる。
必殺の気配などに、のび太は慣れていない。
似たような状況下におかれた事は何度かあるが、それで慣れるかと問われれば答えはNoだ。
冷や汗がどっと噴き出す。
咽喉が、瞬く間に渇いていく。
そして足が、どうしようもなく震え出し始めた。


「ちぃっ……――――頼む!」


舌打ちしつつも、慎二から目を離さぬまま。
のび太のピンチに、士郎は言葉を投げかける。


「なに? 今さら命乞い?」


それに対し、慎二はやはり嘲り笑いを浮かべるだけであった。




















『なんたる迂闊』


その言葉は士郎だけではなく、この場の慎二にも当てはまる。
慎二は自らの口でこう言った。


『お前も聖杯戦争のマスターだって事は見当がついてる』……と。


――――ならば。




















「――――――変身を解いて、のび太君を護れ! “セイバー”!」




















姿はなくとも、士郎の傍にもサーヴァントがいるという可能性も、計算に入れておかなければならなかったのだ。




















瞬間、のび太の手前でボムッ、という音と共に白い煙がもうもうと立ち上る。
そして、その煙に一瞬たじろぎながらも振り下ろされたライダーの釘剣が、硬質な音を立てて勢いよく弾き飛ばされた。




「……っは?」



「む――――っ、これは……」




呆気に取られる、騎兵の主従。
だがそれも束の間。ライダーは白煙の向こうに突如、強い気配が現れた事を感じ取ると、すぐさま跳び退り、距離を取る。
そして両の釘剣を構え、油断なく煙の向こう側へ向けて怜悧な視線を叩き付けた。





「――――――了解しました。マスター・シロウ」





凛とした声が響いたかと思うと、次の瞬間、漂っていた白煙が一斉に吹き散らされた。
発生した突風がライダーの顔を叩き、髪をなびかせるが彼女は微動だにしない。
暗幕同然の障害がさっぱりと消え失せ、声の主の全貌がライダーの前に曝け出された。





「これより、我が身はマスターの敵を屠る剣となり、そして、ノビタを守護する盾となります」





砂金をこぼしたような金色の髪。
強い意志を秘めたエメラルドグリーンの瞳。
青いドレスと、銀の重厚な鎧に身を包み、見えない剣を、その手に確と構えている。





「剣の英霊……セイバー、ですか。まさか、子どもに化けていたとは」





燐光を身体から溢れさせ、その身でのび太を護るように佇むその様は、まさに騎士。
のび太の傍でフー子に身をやつしていたセイバーが、主命により己が擬態を解き放ち、紅の戦場へとその姿を現した。











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