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No.28794の一覧
[0] IS 幼年期の終わり  [のりを](2013/09/12 00:14)
[1] NGS549672の陽のもとに[のりを](2011/09/07 04:10)
[2] 彷徨える一夏/ vs銅[のりを](2011/12/26 09:53)
[3] 学園の異常な校風 Mr.strength love[のりを](2011/10/03 22:14)
[4] 織斑一夏はアイエスの夢を見るのか?[のりを](2012/03/27 00:49)
[5] 英国の戦士 / VSセシリア(2/10)[のりを](2011/12/26 09:55)
[6] Take Me[のりを](2011/12/14 21:03)
[7] ASIAN DREAMER / vs箒[のりを](2011/09/19 21:11)
[8] FIGHT MAN / ときめき セシリアVS箒[のりを](2011/12/26 09:57)
[9] La Femme Chinoise ラファールVS甲龍[のりを](2011/12/26 09:56)
[10] BREEZE and YOU  とあるアメリカ製ISの一日[のりを](2012/01/10 17:39)
[11] domino line[のりを](2012/06/03 19:19)
[12] Omens of love(前)[のりを](2012/03/31 16:34)
[13] 【番外編】 GALACTIC FUNK[のりを](2011/12/14 21:04)
[14] 【設定集】ファウンデーション [のりを](2011/12/27 10:33)
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[28794] 学園の異常な校風 Mr.strength love
Name: のりを◆ccc51dd9 ID:583e2cf9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/10/03 22:14
一夏は、腹をそっと制服の上から右から左へとさする。
一夏の着る白亜の制服は特殊なガラス状の繊維で編みこまれており、これは普段は布と変わらない柔軟性を示すが、強い応力を受けると急激に硬化するという代物である。
また硬化した領域の周囲は、強靭なゴムのように変質する。
そのため銃弾やナイフでの刺突を受けても、接触部は硬化し凶器を通さず、その周囲の弾性変形が運動エネルギーを吸収する優れた防弾防刃作用を誇る。
さらに、通気性、着心地も優れ、表面には特殊な化学皮膜が張られており、汚れず肌触りもよい。
IS技術が応用された次世代機能服であり、完全オーダーメイドで価格は一着優に50万円を超える。

そのシルクのような滑らかな肌触りを指で感じ、そして、自らの腹を通過したモノの軌跡をなぞる。

一夏は回想する。
あの後、意識を取り戻した自分は医務室にいた―――――――――――
病室で無いと分かったのは、薬品が充実した棚があり、様々な機器と、医者が使うような机が置いてあったからだ。
その機器のいくつかは自分の頭や手首にコードでつながっており、心電図と脳波を計測しているように見えた。
そこで、それまでの事を思い出し、思わず服をめくる。その拍子に手首に付けられたクリップが外れた。

そこには、青と赤のまだらに痛々しく変色しただけの、たって“普通”の割れた腹筋のみがあった。
たまらず“そこ”をなぞる。たしかに感じた。そこの内側を通過したものを。
夢だったのか?
そう頭を過った時、医務室の扉が開かれ女性が入ってくる。
黒いショートの髪。鋭く芯の強そうな意思のの灯る瞳。歩き方だけでわかるしなやかに鍛え抜かれた肉体。
あの時はなんの価値もない情報として脳に留められていた画像情報が、表層に浮かび上がってくる。

「夢じゃなくて悪かったな。織斑一夏。そう私だ。「銅」だよ」

なぜ?なにがどうなっている?腹は?

「競技モードで助かったな。絶対防御の中和による搭乗者の致命的損壊相当……バイタルロスト判定での敗北だ。あれは打鉄の見せた幻覚だ。」

痛みは?

「あれは、直前に私が打ち付けたものだ。敗北状態になった打鉄が痛覚の遮断を止めたのが原因だ。今は痛み止めが効いている。」

……俺はこの人を殺そうとしたのか

「ああ、危うく殺されるところだったな。お前のように」

いや、けれどあのときはどうかしていて……ごめんなさい

「あの闘いを“どうかしていて”などと言うな謝るな。あれはいい試合だった。そうやって汚してくれるな」

あれ?俺喋って

「いない。お前の脳波は別室のISで全て解析されている私はそれを中継されておっとバンドを外すな。また傷めつけたくはない」
「非合法はお互い様だ。」

「さて、お前の名前は?家族は?どうしてここに来た?……フムン。」
「IS      さあ何を思い浮かべる」
「……こいつは。クリシュナ、どうだ?おい!クリシュナ!……!」

「これは想像以上に厄介なことに巻き込まれたな。私も。お前も。」

「すまんがしばらくねむっていてもらう」


気がつくと俺は自宅のベッドで寝ていて傍らには―――――――――――



「IS学園学長、神園公子より一言」

思考に潜行していた一夏をよく通る声が引き揚げる。
それまで素通りしていた視覚が、その役割を取り戻す。

今はIS学園の入学式だった。体育館に並べられたたパイプ椅子に座り、その式の開始を待っていたのだ。
そして周囲の状況を努めて遮断するために思考に没頭していたのだ。

浮上した一夏の意識は、年を召した女性が、壁に掲揚された国連章と学園章へ一礼し壇上に上り、こちらを、それぞれの組にまとまった新入生たちのほうを向くのを見た。
ピリとした儀礼服の着こなし、上品に当てられたパーマ、やや濃い化粧に栄える口紅もまったく淑やかだった。
目の周りと口元に皺をたたえているものの、その瞳には鷹のような眼光をそなえている。

新入生たちに一礼。実るほど 頭を垂れる 稲穂かな を体現する見事な礼であった。これには一夏も背筋を伸ばさずにいられない。

その眼光が一瞬一夏を捉える。しかしそれは急速に焦点を広げ、新入生全体へとむけられたものになる。

凛とした声が響く
「では、手短に。皆さん。まずは合格おめでとうございます。
しかし皆さんはただスタートラインに立ったにすぎません。ISは戦いを忘れた人々の剣であって、盾であります。
そして人類の行く先を照らす、広大な宇宙にともった奇跡の灯火です。
吹き消されぬ強靱さを身につけ、その力の正しい奮い方を学ぶ3年間であることを切に願って、これを学長からの挨拶とさせていただきます」
再び礼。

それだけであったが、新入生たちは万雷の拍手で応えた。
IS学園を統括する学長。並の人物で務まるものではない。新入生の間を気迫とも言うべきオーラがすり抜けた。

「では続いて校歌斉唱。全員、起立」

会場の隅に待機していた軍楽隊に準じる技術を持つIS学園音楽団がその重厚なオーケストレーションで書かれた伴奏を演奏し、校歌を歌いあげる―――――――――――


学長講話、校歌斉唱、主席への入学証書授与、それだけの入学式はあっと言う間に終わる。
「以上で入学式を閉式とします。続いて、生活指導員のほうから話があります。藤原ほのか先生、お願いします。」

促された彼女は壇上にあがる。
「みなさん!こんにちは!」

彼女についてひとつ付け加えるとしたら、一夏はこんなにでかい女性をみたのは初めてだった。
彼女はマイクも必要とせず新入生に話をする。

「はい!紹介もありましたが私は生活指導員の、藤原ほのかです!みなさんよろしくお願いします。」

身長190センチ以上、体重100キロオーバーの見事な体格。赤茶けた肌。スーツの上からでもわかる隆起した筋肉。どこがほのかであろうか?
声色は実に女性的だが、その腹から出される声は音の遠近感をどうにも麻痺させた。

「守るべき規則、風紀はこの!冊子に書いてあります!皆さん、よく読んで健康で健全な学園生活にしましょう!」
そうやって青い冊子を掲げる。一夏も持っているA4の冊子だが、あんなに小さかっただろうか?

「この学園では自主性を大事にしています!あまり細かいことをいうつもりはありません、が!あまりに目にあまる場合には!!
我々生徒指導部が修正することになります!」


「まあ、それだけではなんですので大切な事を言っておきましょう。
あなた方に渡された学生証ですが、構内においてはセキュリティーカード、成績証明書、電子財布、構外でも身分証明書、などなど様々な役割があります。決してなくさないように。」

「それと、冊子に書かれていないことですが、学園には不文律があります。すなわち『生徒は常にその心と理性に基づいて行動せよ』です。これはいかなるときも守る必要があります。」
「しかしそれを守るとどうしても、人は時としてわだかまりを生みますね」
にっこりと笑って
「決闘の作法については68ページに書かれています。IS乗りが主張の正当性というものは力により成されるものです。」
凄惨な笑みだった。これもまた、不文律――――――――――



さて、式はいよいよ解散となり、先生に先導され一夏たち一組の生徒たちはその教室へと収まる。各々机に張られた番号と学生証を見比べて、自分の机に座る。
一夏は中央最前列だった。

全員着席を終えると、先導していた先生は教壇に登り
「はい皆さん、初めまして。この一組の副担任の山田真耶です。これからよろしくお願いします!」
しかし無言。この異様な緊張感こそ一夏が努めて環境を無視する原因だった。

「ええっと、とりあえず自己紹介!自己紹介をしましょう。で、では「あ」の、アリア・テリジアさん!」
あわあわと慌てる彼女、山田は一夏の初めて出会うタイプのIS乗りだった。スーツもややサイズが大きめだろうか?
わずかながら一夏は心が休まった。そんな気がした――――――――――


自己紹介は淡々と続く。パチパチとまばらな拍手。
名前、出身(県or国)、特技。それだけ。
その理由は一夏には明白だった。

「じゃ、じゃあ、織斑一夏君……」
背中に圧力を浴びて教壇へ。そして振り向く。

目、目、目
少なくとも同じ人間をみる目ではない。そう一夏は感じた。
そしてそれは正しかった。同級生は一夏を“一般的な”IS乗りと同視はできない。かといって一般男性とも見なせない。無論女性でも無い。
では何という選択肢が残るか?扱い方のわからない珍獣か、興味深い観察対象か、宇宙からの新生物か。あるいは社会の生み出した“特異現象”とみる者もいた。
実際の所、同級生の 学園の生徒の ひいては社会の認識も、ほぼそれに準ずるものだったといっていい。一夏は二月のあの日以来、それを肌で感じていた。
それが無害であるか有害であるかの判断を早急にしたいというほぼ全員の考えがその緊張感のもとだった。

それを一身に浴びて、一夏の気が良くなるわけがない。
しかし一夏にはそれも理解できる。自分は、大混乱を経てやっと安定化しはじめた社会に投げ込まれた、再び混乱をもたらすかもしれない異物なのだ。
これで社会が何の抗体反応も示さなければその社会は実に免疫不全といえるとも思えた。自分は、異物なのだ。

「織斑一夏、K県Y市出身です。趣味と特技は剣道です。」
「……この学園では、自分がどう振る舞うべきか、というのを見つけていって。そして、みんなと仲良くしていきたいです。よろしくお願いします。」

とりあえず今はそれだけ言って席に戻る。拍手は無い。
一夏は自分の声が実に情けなく聞こえた。直接に受ける抗体反応は、一夏の想像以上に消耗させていた。
しかしその庇護を乞うような様は、幾人かの溜飲をさげ、警戒をわずかに解くことに成功したかもしれない、感心を薄められたかもしれない。
質問が無いことにほっとした後、そのような自分の考えを自覚してなんと情けないことかとさらに気落ちする。

一夏が終えてしまえば、緊張感はほとんど散霧してしまい、あっと言う間にすべての自己紹介は進む。
陰惨とした自己嫌悪の中で一夏の記憶にわずかに残ったのは首席入学をし、新入生代表を務め檀上にのぼったイギリス人の彼女だけだった。どうやら彼女はイギリスの代表候補でもあるらしい。
そしてもう一つ、聞き覚えのある名前が――――――――――

自己紹介を終えるとほぼ同時に、教室の扉をあけて女性が入ってくる。
「すまない、山田先生遅くなってしまって。」
「いえ、ちょうどいいタイミングでした。今自己紹介が終わったところです。」
黒いスーツにタイトスカート、黒く艶やかな長い髪。教壇中央まで歩く、ただそれだけでも絵になる。
なによりその姿勢が抜群に良い。そして流水のごとき足運び。すなわち筋肉の付き方が理想的であり、常々武道の奥義ともいえる脱力を心がけなければできない、無駄のない動き。

その動きに、あるいはその人物の歴史のために、教室はもう彼女に呑まれていた。
「諸君ら一組の担任、織斑千冬だ。」
教室に彼女の言葉が響く。そして一夏をちらりとみて
「全員知っていると思うが、私はこの織斑一夏の姉だ。かといって織斑を贔屓するつもりは無い。それだけは言っておこう。」
それは報道で周知の事実だった。そんなセンセーショナルな話題を放置するマスメディアは居ない。
「さて、私はISというものは、心で創り、心で振るう
剣だと考えている。」
「私は諸君の剣を研ぐこともできる、振り方も教えられる。お望みとあればその刀に宝石と装飾をほどこしてやろう」
「しかし、その前に諸君にはすることがある。それは芯鉄をその刀に入れ込むことだ」
「自分なりの通すべき筋、無い心は、いくら硬くとも容易に折れる剣しか生み出さない。まずは各々なりの筋、IS哲学をみつけてほしい。」
「もう一つ。心を振るうためにはしっかりと踏ん張る地面がなければならない。私はそれを正義と呼ぶ。そしてそれは私が用意するものでは無い。」
「その筋と正義を己の心に問うことをやめないかぎりIS乗りは成長する……私はそう考えている。以上だ」

返事は無い。よくわからないと思う者、なるほどと思う者、興味深いと思うもの、感銘を受ける者。
千冬はその反応で良いと思った。万人に当てはまる話ではないし、今の言葉で完璧に理解されても困る。しかし今蒔いた種は生徒に何らかを得させることはできるだろう、と。
そして千冬はなによりも一夏のことを想っていた。そして弟のために次の話題を切り出す。

しかし、姉の想いなど関係なく、一夏はその凄然とした姉の声に、口調に、あの自宅で目を覚ました時のことを思い出す。傍らにいた姉と交わした会話を。


一夏、ISがはじめて現れたとき、社会はそれをみとめたか?

「さて、早速だが、クラス代表というのを選出しなければならない。」

ISはそれはそれは社会に混乱をもたらしたな

「その主な役割は5月のクラス代表戦に出場すること、生徒会への出向、だ。」

でだ、最後に残ったものは何だ?

「誰か立候補はいないか?推薦でもかまわないぞ。」

なにがISを社会に認めさせたんだ?


「はい、織斑君が良いと思います」
思考に埋没する一夏を無視して発せられたそれは打算に満ちた提案だった。
クラスメイトたちには一夏の戦闘力を早急に知る必要性があった。
かといって、それを測ろうと彼に直接決闘を挑んだとして、もしも彼に負けてしまったらどうなるだろうか?
それは「男」に負けた初のIS乗りとして後世に語り継がれるだろう。
誰がそんな役を引き受けるというのか。
ならばその役割をほかのクラスの誰かにおしつけてしまおう、というのが彼女の提案の真意だった。
そして雑用も引き受けさせる。まさに一石二鳥だった。
クラスメイトはその意図を掴み、一夏の反応を待つ。

しかし一夏の返答よりも先に手を挙げ発言するものがいた

「納得がいきませんわ」
「クラス代表というものは、クラスでもっとも強い者が慣例だそうですわね。では彼を選んでしまってはその慣例が壊されてしまいますわ」
そう声をあげるのは、イギリス代表候補、セシリア・オルコット
「Mr.織斑。代表は辞退していただけませんか?あなたにはあまりに荷が勝ちすぎるかと。」
呼ばれた一夏は、虚ろな目で機械的にセシリアを振り向く。
「死んだ魚のような目をして……あなたにはISに乗ることはもちろんコートに立つ資格はございませんわ」
コートとはIS競技場の英国流の呼び方である。
「古今東西のIS乗りはコートでこう主張してきましたわ。ISに貴賤も出身も人種も思想も無く、ただ勝敗のみがあると。」
「あなたはそこに性別も、と差し込む気概がありまして?無いのでしたら早急に出て行ってくださいまし。そのしみったれた顔は視界に入るだけで不愉快ですので」

すわとクラス中が色めきだつ。
これは公衆の面前での挑発である。それも真正面からの。
挑発した者とされた者、双方がIS乗りであるならば、その後のシナリオはたった二通り。
それを知るクラスメイトは、熱を持ってその双方を見る。

ここにきて一夏は、周囲から視線の変質に気がつく。それまでのドロドロとしたものが薄れただ純粋にその推移を見届ける視線。
それはセシリアにも注がれているものと同質であると気がついた。
その時、空回りしていたような自分の内なる歯車が、噛み合ったような感触がした。
一夏は理解した。ISを通じてその存在の正当性を主張しうる唯一つの方法を、この世界の普遍的法則を

「決闘だ。セシリア・オルコット。」

一夏の顔を見て、セシリアは笑った。一夏も、笑う。それはそれは凄味を帯びた――――――――――



















学園の異常な校風/ または一夏は如何にして悩むのを止めて修羅になったか


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