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No.28698の一覧
[0] リミットブレイク・オンライン(現実→MMO)[ミケ](2012/04/08 21:22)
[1] 2話[ミケ](2012/04/08 21:23)
[2] 3話[ミケ](2012/04/08 21:24)
[3] 4話[ミケ](2012/04/08 21:25)
[4] 5話[ミケ](2012/04/08 21:25)
[5] 6話[ミケ](2012/04/08 21:26)
[6] 7話[ミケ](2012/04/10 21:18)
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[28698] 5話
Name: ミケ◆8e2b4481 ID:9a8f54f5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/08 21:25
 朝、サクラの装備屋で装備の整理をしていると、鍛冶ギルドの人がやってきた。

「どうかされましたか?」

「どうかじゃないよ、困るよ、あんな良質の装備をたたき売られちゃ」

「駄目なんですか?」

 小首を傾げると、鍛冶ギルドの人はため息をつく。

「まあ、あんたは山奥で暮らしていたって言うからね。困るんだよ、ああいう事をされちゃ。装備は適正値で売ってくれ。あんたは元手が0だからいいだろうがね。こっちは高い金払って仕入れているんだ。ああいう商売で客を取られちゃ困るんだよ」

「ごめんなさい……あっでも! 投げ売りしていたのは数点だけですし、おじいちゃんの装備、全部売れちゃったから大丈夫です」

「どこが大丈夫なのかね……。まあいい。今度から気をつけてくれないと、除名だよ」

「はい……。あっ、お金を全部素材に変えちゃいたいので、素材買ってもいいですか?」

「……本当に反省しているのかね」

「ごめんなさい」

 頭を下げる。失敗しちゃったなぁ。
 さて、気を取り直して装備を作りますか。
 ここで、職業について説明せねばならないだろう。
 職業に就くと、レベルに応じた職業ポイントが配布される。この職業ポイントを消費すると、その職業に適したステータス加算がされ、それに応じたスキルツリーが出現する。
 これを、レベルアップと転生で得られるスキルポイントを消費して習得するのだ。
 更に、手に入れたスキルを何度も使うと、次のスキルが出現する。
 スキルポイント自体は転生を繰り返すたびに大量に加算されていくので問題はない。
 一度手に入れたスキルは、スキルツリーの順序さえ守ればいつでも、格安で再習得できるしね。
 そして、実は鍛冶スキル、裁縫スキル、木工スキル等は、職業には関係ない。が。プレイヤーが作った職業、鍛冶師、裁縫師、木工師、建築士、技術者などの職業はあるのである。
 私はそれらを全てカンストさせてあるので、どんな装備も思いのままである。
 神化までの道全てを内職系職業につぎ込み、あげく二キャラに訓練士入れないと言った時は阿呆かと言われたものだが……いいじゃない! いいじゃない! 完全な色分けって素敵!
 私は鍛冶スキルと裁縫スキル、木工スキルを発動させると、ナイフとフォーク、肉球、扇、お盆、モップ、手裏剣。他様々な面白武器と、面白武器に見合う服や鎧を作りあげて行った。
 一週間かけて商品を補充する。値段は少し高め。
 その一週間、予想通りと言うかなんというか、お客さんは来てもお買い上げは無かった。
 まあ良い。ここから私の伝説が始まる……っ
 なんて事はなく。
 閑古鳥が鳴く中、ラークスが苦笑して教えてくれた。その手には、私が頼んだ職業についての本がある。

「珍しい流派を知っているね。けど、それらは人気が無いんだ」

「なんで!?」

「使い勝手が悪くてね。メイド職とか執事職は、一般人の中には使っている人もいるけど、戦闘には使わないね。……そういえば、君は鍛冶と裁縫、木工をしているみたいだけど……」

「ええ。それがどうかしましたか?」

「3つ同時だと、育てるのも大変だし、極められないよ? 職業だって、鍛冶師や裁縫師、木工師じゃないんだろう?」

「んー。極められる人なんて、いるんでしょうか?」

 レベル二十でどうこう言っている人達である。いっちゃ悪いが、無理なんじゃないか?

「まあ、それはそうなんだけど」

 一度覚えた職業は切り替え可能なのである。ただ、覚えたスキルをリセット出来るわけではない為、普通ならスキルポイントが足りなくて行き詰るのは確かだ。

「あー。極めるつもりはないですし」

 私は適当にごまかしつつ、職業についての本を開く。
 それを見て、泣いた。
 
「くぅっなんて悲劇的ストーリー!」

「教科書なんだけどね……」

「メイドさんや執事さんや訓練士さん、忍者さん、お姫様、幼女、妖精さん、サムライの迫害のストーリー……悲しすぎる!」

 ラークスが苦笑いする。そう、それらプレイヤーの考案した素晴らしい職業や武具や装備の数々は、ことごとくこれはやめとけと書いてあったのだ。
 というか全滅じゃない。クスノキの職業全滅じゃない。9回もの転生人生を否定するというのっっ!?
 信じられない。私達が血と汗と涙を流して手に入れた至高の職業及び装備が、こちらではゴミ扱い。ありえない。私のキャラ、サクラとクスノキは全部プレイヤー職業で埋めてあるんだぞ。ヤナギはメーカー職で固めてあるけど。
 剣士の何がそんなに偉いのか。使えるの剣だけのへぼい職業じゃない。
 訓練士ほど人気ある職業はないんだぞ。リミットブレイク・オンラインの頂点なんだぞ。なによ、一瞬転職だけするのが良いって。レベルスカウターが偵察に使われるだけって。

「おじいちゃん言っていたもん。この世で最も素晴らしい職は、訓練士だって……」
 
 プレイヤーの作った職業とはいえ、それはゲームの顔であった。
 
「訓練士って、訳の分からないスキルばかりじゃないか?」

「そんな!」

 何故この猛るリビドーがわからないのか。
 酷い、酷過ぎるよー!
 いや、本当ですよ? これらのメンバーでエリアボス倒しに行った事もあるんですよ?
 メーカー職業で作ったヤナギより、クスノキのほうが強いんですよ?
私は落ち込んでしまった。
 酷過ぎるよ、いと高き運命の壁が私に立ちはだかるよ……。
 私はがっくりと肩を落とす。
 あーあ。あーあーあーあ。
 がっかりする私を慰めてくれるラークス。
 そんな風に和やかに談笑していると、ラークスは他の騎士に呼ばれて行った。
 
「どうしたの?」

「最近、狼が多く出ているんだ。サクラなら大丈夫かと思うが、決して町の外に出ないでくれ」

 私は頷いた。危険な事なんか、ごめんだ。
 けれど、危険な事は向こうから近付いてくるのだ。
 更に一週間後。街中が、騒がしくなった。
 なんなのかな、と不審に思って外に出たら、目の前を王都のエリアボスである王狼が駆け抜けた。
 え。なんなの。あれ、王狼、だよね。
 信じられない思いで固まる私の目の前を、騎士達が追いかけて行く。
 ……ありえない。町の中になんてもの入れてるの。
 私はその場でぺたりと座りこみ、少しして我に返った。
 あいつを追い出さなきゃ。
 エリアボスの中じゃあ最弱の部類だけど、それでも適正値六十レベルである。
 確か騎士達は二十レベル付近だったはずだ。数を頼みにしているとはいえ、三倍だ。
 ……クスノキ。クスノキになれば。
 私はよろりとよろめいて、魔法のドアノブを使った。
 足が震えるほど怖かったけど、死にたくはなかった。
 クスノキに変わり、私は思い切り頬を叩いた。

「大丈夫、私は鬼教官のクスノキ! 相手はたったの六十レベル、いける!」

 そして私は店の外へと出た。
 執事スキル、「お出迎えの準備」により、周囲の敵の位置と名前、レベルを把握する。
 装備は今回は、ショタ執事猫セットだ。強さ、愛らしさ共に最強と呼ばれるセットである。
 位置とレベル、名前を把握した後は、お姫様スキル「ワタクシが呼んでいてよ」を使う。
 これは、位置、レベル、名前を把握した敵を呼びよせる術だ。
 実際の判定は、名前をキーボードで打つ事、レベルが格下な事、モンスターをマウスでクリックする事だ。発動するかは不安だったが、問題なく出来た。
 目の前に現れた王狼に、私はごくりと唾を飲み込んだが、妖精スキルの「お花畑」を作動させる。
 周囲に花が咲き、王狼がかく乱される。幻影を見せて大人しくさせる術だ。
 そして、訓練士のスキル「俺はモンスターでも食っちまうんだぜ」で敵をロックオン。
 後は倒すだけで、魔物が捕獲できる。
 私は、きっと王狼を睨んだ。大丈夫、私なら行けるって!
 私は震えながらも、メイドスキル「おもてなしのこころ」で敵のステータスを解析と同時に、弱点の部位を把握。
 更に、サムライの「俺が考えた格好良い戦い方」でもっとも高い熟練度を持つ武器……すなわち肉球の攻撃力を50%アップして、幼女スキルの「うわようじょつよい」を放った。
 私は瞬時にちいちゃくなり、凄まじい速さで肉球グローブを振り抜く。
 狼はぶっ飛ばされ、消えた。ちなみに、ドロップアイテムはない。捕獲しただけだから。
 「お出迎えの準備」→「ワタクシが呼んでいてよ」→「お花畑」→「俺はモンスターでも食っちまうんだぜ」→「おもてなしのこころ」→「俺が考えた格好良い戦い方」→「うわようじょつよい」のコンボに加えて、忍者スキルの「忍びより」はモンスター捕獲やボス攻略に非常に有用とされる。更にプレイヤー職業、結界師の「結界」が揃うと、もれなくネタ廃人と呼ばれる。もちろん、私は廃人ではないので、全部揃えてはいない。だって結界師はサクラが取ってるしね!
 ふう、とため息をつき、家に隠れた人々が顔を出さない内に私も部屋へと戻り、サクラに戻った。
 そして、今更ながらに背筋が走る。
 王狼は、王狼ですら、六十レベル基準なのだ。
 なのに、騎士が導き装備を得てなお二十レベル平均? 嘘でしょ?
 今まで、どうやって身を守ってきたのよ。冒険者がよほど強いのだろうか?
 いや、ラークスに聞いている。ここは王都だから、80レベルに及ぶ冒険者も滞在しているのだと、自慢げに。
 八十レベル? 足りない。絶対に足りない。
 魔物にはもっと凶悪な物が沢山いる。
 王狼と戦った時、足がすくんだ。怖かった。でも、あんなのは序の口だと知っている。
 ……だから。だから。
 守りを固めよう。その為に、仲間を。訓練士を。
 私の頭は保身のため、目まぐるしく計算していた。
 大丈夫。私はサクラとクスノキ、ヤナギと三人いる。変装スキルもある。
 ――指名手配されても、大丈夫。



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