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No.28685の一覧
[0] ACE?[ヨシヒロ](2011/07/04 23:48)
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[28685] ACE?
Name: ヨシヒロ◆d6a600d4 ID:78d02854
Date: 2011/07/04 23:48
~ 2010年 9月23日 オーシア連邦 セレス海沖 サンド島空軍基地 ~


 十機にも及ぶ機体が整備を受けている格納庫。その整備中の一機から、油まみれのツナギを着た男が出てきた。
 彼はそのまま格納庫から出て、強張った体を解すように動かす。ゴキッ、と首からいい音が鳴った。

 「ふぅ…」

 額から流れた汗を拭う。空を見上げれば、容赦無く照りつけてくる恵みの太陽。海が近いだけあってその陽射しは殺人級である。

 「おい、ヘンリー!終わって手ぇ休めてる暇があるなら五番機に回れ!実機訓練まで後二時間もないんだぞ!?」
 「わかってますよ、おやじさん!…ったく、人使いが荒いなぁ〜」

 そして、一人ノルマをこなして休んでいたらこれだ。これ以上雷が落ちるのも嫌なので、言われた通り五番機…F−5E/F(タイガーⅡ)に近づいていく。ま、これで最後だしがんばりますか!





 「あの…バートレット大尉?もう一度聞きますけど、俺って今は戦闘機の整備士訓練行程の真っ最中ですよ?なのになんで飛行訓練に出されるんですか!?」
 『なぁ~に、気にするな。俺達三人だとどうしても穴ができちまう。なのに手が空いている奴を臨時の監視役にして問題があるか?後で酒でも奢ってやるから機嫌直せ!』
 「……問題大ありですよ。あと、今の言葉は面倒を押しつける、ともいうんですよ」

 ああ、整備中に気付くべきだった。どうしておやじさんが員数外の五番機まで整備させたのか…。全ては大尉の陰謀だったのだ!!

 『それにお前だって、たまには飛びたいだろう?』
 「……まあ、否定はしません。でも本当に良かったんですか?基地指令がそこんところ厳しそうでしたけど…」
 『気にするこたぁない!ちょっと報告書を改竄すれば良いだけの話だ!』

 通信機越しから聞こえてくる豪快な笑い声に、乾いた笑い声で返しながら訓練生達の機体を見る。
 全員俺が乗っているのと同じF-5E/F(タイガーⅡ)。教官達はF-4Gだ。こっちの機体は員数外の予備機ということであまり使われていないくらいしか違いがない。
 訓練生の中にはふらついている奴もいるが、大尉が選んだんだから大丈夫でしょう。

 『全機、聞こえているな?これより飛行訓練を開始する。A小隊は…』

 バートレット大尉がそう言った瞬間、機体からレッドアラートが響き渡った。





 突然の襲撃。管制塔のミスのせいで、国籍不明機と真っ正面からぶつかることになった訓練生達は一人を除き六人全員死亡。教官の一名が不明機のミサイルを喰らって死亡、更にもう一人の教官は基地の着陸に失敗してクラッシュ。教官勢もバートレット大尉しか生き残っていなかった。

 「ふぅ…」

 かく言う俺も、久しぶりの搭乗のせいか腕が鈍っていたようで銃撃を一発もらっている。そこまで深刻なダメージではなかったものの、おやじさん達整備士仲間に殺される未来が見えているので憂鬱だ。…それだけが原因じゃないけど。

 「よおヘンリー!ちっと動きが鈍かったが、相変わらずの腕だったな」
 「大尉…。俺は無事でしたけど、訓練生を守れませんでした。申し訳ありませんでした!!」
 「…気にするな、とまでは言えんが、あれは管制塔のミスだ。お前のせいじゃない。俺たちが駆けつけるまでに三機も墜としたんだ。十分すぎる」

 バートレット大尉のお陰で、少しは心が軽くなった。…と言っても、あの時の俺は、生き残ることで頭がいっぱいだった。もしかしたら、俺が敵機に突っ込む振りをするだけで後何人か救えたかもしれない…。

 「バ、バートレット大尉…少し待って……ウェェ~」

 と、大尉が乗っていたF-4Gからカメラを持った男が機体から降り、その途端に地面に蹲った。…機体で吐かなかったことには感謝する。アレって臭い取りとか電子機器類のチェックが重なってすごく面倒になるんだよな。それより、

 「……誰ですか?というか大尉、後ろに民間人乗せて戦闘してたんですか!?」
 「おうよ。そいつがタフで助かったぜ!」

 あ、改めてこの人の化け物(エース)級の腕前の凄さがわかった。訓練を一切受けていない民間人が戦闘機動に耐えられたことも驚きだが、それはバートレット大尉が機体の加減速を調整していたからに他ならない。…あの乱戦でそこまで出来るとは…。

 「じ、自分はアルベール・ジュネット、フリーのカメラマン…です…。取材のために…バートレット大尉の機体に…乗って……いまし…」
 「あ、いや、無理に話さなくて良いですよ!?」

 また顔を青くしたジュネットの背をさする。今度は吐かなかったみたいだけど、もう吐く物が無いんだろう。感謝されつつ、再び大尉と向き合うと、大尉は俺の後ろを見ていた。誰かいるのか?

 「おい、ナガセ!今のお前さんの飛び方だと、いつか落ちるぞ!?」

 いた。訓練生達の中で唯一生き残り、尚かつ敵機に対して反撃まで行った訓練生…ケイ・ナガセだ。彼女はタイガーに背を預けていたが、大尉の言葉に反応して気体から背を離す。

 「死にません。私は」

 それだけ言い、彼女は基地の中に姿を消した。

 「……はぁ。彼女、才能はありますよ?けど、経験が足りていませんね」
 「だな。あのまま実戦に出すのは危険だが……この状況だとそうも言ってられん。多分お前にも辞令が来るはずた。訓練生止めてパイロットに戻れ…ってな」
 「……また、キナ臭くなってきましたね」
 「……だな」

 男二人で黄昏ながら、滑走路を後にするのだった。


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