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No.28479の一覧
[0] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 【完結】[一兵卒](2011/09/10 21:09)
[1] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 ep1[一兵卒](2011/06/21 23:58)
[2] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 ep2[一兵卒](2011/06/25 23:58)
[3] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 ep3[一兵卒](2011/07/02 23:33)
[4] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 ep4[一兵卒](2011/07/09 22:50)
[5] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 ep5[一兵卒](2011/07/15 23:56)
[6] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 ep6[一兵卒](2011/07/22 23:19)
[7] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 ep7[一兵卒](2011/07/29 23:11)
[8] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 ep8[一兵卒](2011/08/05 22:40)
[9] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 ep9[一兵卒](2011/08/12 23:19)
[10] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 ep10[一兵卒](2011/08/19 22:29)
[11] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 ep11[一兵卒](2011/08/27 01:33)
[12] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 ep12[一兵卒](2011/09/03 00:40)
[13] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 最終話[一兵卒](2011/09/10 21:05)
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[28479] 学園黙示録×CANAAN 彷徨う剣士 ep2
Name: 一兵卒◆86bee364 ID:e2f64ede 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/25 23:58



Side キャミィ

12月24日
米軍横須賀基地


『……新しい情報が入ってきました、渋谷駅周辺で大規模な暴動が発生しました。まだ詳細は不明ですが、多数の死傷者が出ているという情報もあります。付近の方々は落ちついて現場から避難してください。警視庁は、まだ情報については未確認としていますが……』

 テレビを見ていた、黒いコートに身を包み赤いベレー帽をかぶった、1人の金髪の女。その女の前にと現れ、敬礼をするスーツを着た米軍人。彼女もまた、席を立ち、敬礼を返す。彼女……英国特殊部隊所属キャミィは、米軍の将軍とともに歩き出す。あたりは、様々な人間が慌ただしく行ききしている。それは混乱の様相を映し出していた。

「少しばかり遅かったようだ。先ほど、東京都の渋谷駅地下鉄構内で爆発が起きた」
「……爆発」
「その数時間前に、テロ組織『蛇』と名乗る者たちが地下鉄コントロールセンターを占拠。人質数人を射殺したが、爆発のすぐ前に日本警察に取り押さえられ、今は警視庁に身柄を移送中だ」
「爆発規模は?」
「規模は問題ではない」
「?」

 何か物が歯に挟まったような言い方に、キャミィは司令官のほうを見る。司令官は、困惑した表情で、言葉を続ける。

「我々の情報では、現在日本警察と交戦しているものは、既に息絶えたはずの人間だと、そう情報が届いている」
「……生きた屍と?」
「まったくもって映画の世界のような話だが、実際に事実として、起きてしまっている。奴らに噛まれたものは、同じように奴らとなり、人間を襲い、食し、数を増やす」
「渋谷駅にはまだ多くの人間がいる……」
「我々にはどうすることもできない。一刻も早く、アルファルドを拘束する必要がある」
「しかし、日本警察に拘束された以上、問題はないはずでは?」

 司令官は足を止める。

「アルファルドは、かつて二度捕まっている。だが、そのどれもが脱出している。どれも部下の手で。敵は残念ながら、政府内にも潜伏し、だれも信用できない状態となっている」
「……わかりました。司令官の信用を裏切らないためにも、現地に向かいます」
「すぐに特殊部隊を派遣する」

 キャミィは司令官に敬礼をすると、足早に、その場から去る。

 横須賀基地では、既に臨戦体制が整えられており、多くの兵士が、銃を握り辺りを走り、位置についている。キャミィはその中、待機しているヘリにと向かう。米国の都市で出会った、大沢マリアの母国。願わくば、彼女がこの地に戻ってきていないことを……。キャミィは目を閉じそう唱える。ヘリの扉が閉まり、闇の中、飛び立つ。




学園黙示録×CANAAN

Episode2 蛇×蜘蛛




Side アルファルド


同日
東京都千代田区警視庁……。


 武装した警官隊によって、警視庁内にと連行されていくアルファルド、そしてカナン。警視庁内では、連行してきた警官隊とは別のヘルメットをかぶった警官隊が二人を護衛するかのように、防弾盾などで守りながら歩いていく。警視庁内では、既に、東京都内で発生した大規模な暴動での報告を受け、既に夜も更けているが、あちこちで声が聞こえ、緊急の放送が鳴り響く混乱した状態が続いている。カナンは、何が起きたのか……その状況がまだわかってはいない。だが、アルファルドの抵抗をしないまま、捕まったことが、彼女には何か裏があると、共感覚ではなく、何度も彼女と戦った経験と勘で察していた。

「待て、待ってくれ!」

 連行する警官隊にと走ってやってくる男。

 大柄な警官隊の隙間から、アルファルドは、その男を見る。彼女は、その男が見たことがあった。確か……渋谷での一件でいた、日本の警察だった。男は、アルファルドとカナンたちを取り囲む警官隊の指揮官に話をする。男は、その際に視線をこちらとカナンにと向けた。

「待て、こっちはテロリストじゃない!俺が保証する!」

 カナンに向けて、男は強く言い放ち、解放を求める。アルファルドは、取り囲まれながらも立ち止まったその状況で、周りにと視線をやる。警視庁の玄関内にまでは、やってこれた……。本当ならば、もう少し中を案内してほしかったが、我儘もいえないだろう。

「……舞台の幕は上がった」
「!?」

 カナンがアルファルドの言葉に、周りからの気配の変化……共感覚で咄嗟に反応し、その身を周りの男にと思いっきりぶつけ、押し倒す。それと同時に、警視庁玄関前で銃声が響きわたる。警官隊が咄嗟に銃を握り、撃ってきたテロリストにと構えようとするが、その警官隊は、真横からの強烈な膝蹴りで、身を宙に浮かせ、床にと倒れる。突然の銃撃と、至近距離からの攻撃で、アルファルドを取り囲んでいた警官隊は、一気に総崩れとなる。警官隊の仲間であるヘルメットで顔を覆った一人が、膝を宙に浮かせ、その膝をピンクの気に染めながら、アルファルドを囲む警官隊を、蹴り上げていく。アルファルドは、自由になった片腕で倒れている警官隊の銃を握り、こちらにと狙いを定めようとする警官を撃つ。

「アルファルド!!」

 アルファルドの視線の先には、カナンがいた。彼女もまた咄嗟に倒れている警官の銃を握り、手錠でつながれている腕で、アルファルドにと狙いを定め放つ。その銃弾は確かにアルファルドにとめがけまっすぐと飛んでいく。だが、その銃弾はアルファルドに命中する前に、床にと落ちる。アルファルドの前にと立つヘルメットをかぶった警官は、そのヘツメットを脱ぎ捨て、その顔を晒した。

「は~い。残念だったねぇ?カナンちゃん?」

 バイバイと手を振り、黒く長い髪の毛を振りながら、片目を輝かせる女……アルファルドの配下であるハン・ジュリがそこにはいた。彼女は、警官が撃つ銃を、彼女の体から発するピンク色のオーラで、彼女の体を貫く前に、勢いをなくし、地面にと落とす。アルファルドは、笑みを浮かべ、カナン目掛け銃を放つ。カナンは、身を反らし、アルファルドの銃弾をかわす。それはジュリにとっても驚きの光景である。

「へ~、あいつ面白ぇじゃん、遊んでいってもいいよなぁ?」
「好きにしろ」
「フフフフ、ひひひひひ……これだから、あんたと一緒にいるのはやめられねぇ」

 アルファルドは、ジュリを置いて数人の部下とともにエレベーターにと乗り込む。カナンは、エレベーターにと乗り込んだアルファルドにと銃を向け、アルファルドと視線を交錯させ、銃を撃つ。だが、その銃は、ピンクのオーラにより、消されてしまい、そのまま扉は閉まってしまっていた。残されたジュリ、そしてカナン。たかが数分の出来事……警視庁の玄関前は、血まみれとかしている。カナンの手錠を外す一人の男。

「すまない、俺がもう少し早くついていれば……」
「貴方は?」
「俺は、加納慎治……日本警察だ。お前のことは大沢マリアから聞いている」
「マリアから?」

 マリアは久し振りに聞いた彼女の名前に、その表情が変わる。加納は、混沌とする警視庁内を眺める。あちこちで銃声が響きわたり、悲鳴が聞こえる。そして、その中……エレベーター前では、腕まわし、準備運動をしながら、警視庁の特殊部隊用の防弾チョッキなどを脱ぎ捨てる女……ジュリの姿。ジュリは、立ち上がるカナンを獲物を見るような視線で眺める。髪の毛をまとめ上げ、上半身は胸だけを覆い、後はその肌を露出させている。白い歯を見せながら、ジュリは、カナンを見定める。

「準備はいいか?カナンちゃん?ぶち殺される準備はぁ?」

 カナンは目を赤く灯しながら、一歩前にと出る。



 エレベーター内ではアルファルドが、手錠を外し、片腕にしっかりと血を通しながら、銃を握り動きを確認していた。そして視線をエレベーターの回にと移す。音が鳴り、エレベーターがゆっくりと開く。場所は、警視庁の心臓部、地下中央指令室。警視庁が東京都23区内で起きた事件等を集め、指示を出している場所である。最新設備が施され、その場所は、核シェルターもついている場所だ。アルファルドは、夜勤体制で、警察職員が少人数になっているその場所に足を踏み入れる。警備員が、慌てて部外者を追いだそうと走ってくる。

「お、おい、君、ここは……」
「……」

 銃声が、場内に響き渡り、男は壊れた人形のように崩れ落ちる。周りからは突然の銃声に言葉を失い、何人かの警官が銃を抜こうとする。だが、一般市民を守る警官と、対軍のために訓練さてたテロリストではその腕も、経験も違う。警官の銃もまた。テロリストが持つMp5では、歯が立たず、再度、銃声が鳴り響き、その場にいた抵抗勢力を一掃する。

「死体を片づけろ。掌握を開始」

 アルファルドの指示のもと、銃をぶら下げながらテロリストたちは、死体の足を握り引きずりながら、施設のコンピューターにと手をかける。アルファルドは、前にある画面を見る。そこに映し出されるのは、現在の警視庁内の様子である。銃を持つテロリストにより、警察職員は、武器を確保しようと銃などの武器庫にと向かっている。扉を開けようとした所で、その場面を映し出している画像が乱れて消える。アルファルドは、無言で状況を確認しながら、携帯を繋げる。

「時間通りに……」

 アルファルドは、携帯でそう一言だけ告げると、切る。そして画面を新たに切り替える。そこには、エレベーター、警視庁玄関前の映像が映し出されていた。ハン・ジュリ……、かつては国際テロ組織に所属していた彼女。だが、そんな彼女の凶暴性は、その彼女が所属していたテロ組織では抑えられなかった。だから、アルファルドは引き抜いた。ジュリの凶暴性を生かせる場所、利用できる場所を与えてやる。計画に支障をきたさなければ、幾らでも使い道はあるものだ。映像の中のカナンは、銃弾も効かないような相手に対して、その片手にナイフを握りながら、対峙している。

「フフフ……化け物同士、どちらが勝ち残れるかな?」

 アルファルドは、片方しかない腕でなくなった腕を抱き4告げる。その目は、まるで遊んでいる子供のように無邪気かつ、子供にはない凶悪な殺意が込められた眼であった。




Side 毒島冴子


同時刻……。
渋谷駅100m範囲、ビル建物内


「……暫くはここで潜んでいたほうがよさそうだな」

 冴子は、その手に警棒を手にして、窓の外を眺める。窓の外では走りながら逃げるものたちと、それを追いかける者たちで大混乱と化している。

 渋谷駅周辺での悲鳴後、目の前の会社員が血まみれの女子高生に噛みつかれ、血を噴き出し、倒れた。助けに行った男性は、倒れた会社員男性に噛まれ、大量出血。それを警官が発砲し、二人の頭部を貫通、殺害する。だが、撃った警官も飛びかかってきた数人の女子高生に襲われた。一発目の銃声で、渋谷駅前は、大混乱になった。孝たちとともに移動しようとした、冴子は、駅から逃げる多くの人たちに巻き込まれはぐれてしまった。彼女は、孝たちを捜そうとしたが、まずは武器を見つけることを優先し、落ちていた警棒を拾い、混乱する道を避け、一旦、建物内に避難したのであった。

「どちらにしろ、あまり長居はできないだろうがな」

 毒島は、警棒を手にし、そのスカートの端を破く。彼女の綺麗な太腿が、晒されるが、彼女は気にも留めない。スカートで戦うのは邪魔であるし、動きがとりずらい。こういうときは身を軽くするのが一番である。後は、警棒……正直これでは殺傷能力に欠ける。出来るならば、木刀などの類がほしいが。

「フ……何を私は言っているんだ」

 そこで冴子は、壁にもたれながら、自分に笑った。
 自分は、この状況下で戦うことを考えているのだ。そう、普通の人間であれば、逃げ出すことしか考えないだろう。友人を捜しに行ったとしてもそれは、自衛のためであり、自分のように進んで戦うことを考えはしない。

「やはり、私はおかしいのかもしれないな……」

 自分の額を窓ガラスに押し付けながら、冴子は、つぶやいた。

「だれか、いますか?」

 振り返った先、冴子は警棒を握り、声を出したものを見る。それは、茶髪の髪の毛の少女、彼女は警棒を握り、構える。だが、その少女は、どこかで見たことのある顔であった。それは、そう……孝達と出会う前にあった双子の姉妹の一人。

「あ!貴女は!!えーっと……」
「毒島冴子だよ、大沢マリア……だったかな?」

 笑顔で答える冴子は、その目を一瞬で変え、警棒を彼女の背後にと突きつける。警棒は、背後にいた生きた屍の口の中を貫いた。だが、それでも動こうとする<奴ら>に、大沢マリアは慌ててその場から離れる。冴子は、警棒を引き抜くと同時に、前にと蹴る。<奴ら>は、そのまま、バランスを崩し、後ろにと倒れ、階段を転げ落ちていく。やはり、ここも安全ではないようだ。一度、体勢を立て直すために、古着などの入っていた棚を、扉を閉め、<奴ら>が入ってこれないようにバリケードにして設置する。

「すいません……あ、ありがとうございます」
「かまわないさ、これも何かの縁だよ。ところで……姉妹は?」
「妹とは……途中ではぐれてしまって」

 同じ……自分と一緒ということか。
 どちらにしろ、そうなれば、ここで助けを待っているわけにはいかないだろう。この状況が日本全国で起きていれば、助けの望みは薄い。

「……状況としては、私たちは、噛めば感染し、同じ<奴ら>になってしまう状況にある。ここにいれば襲われる心配はないだろう。だが、姉妹は捜せない。君はどちらをとる」
「……決まってます、妹を捜します!ひとみだって……私を捜しているはずだから」
「双子の姉妹というのは、絆も人一倍なのかもしれないな」

 自分には、自分を理解してくれるものはないない。
 冴子は、マリアを羨ましがりながら、閉ざしていた扉を開ける。

「私から離れるな、君を安全なところまで連れていく、約束だ。」
「はい!」

 冴子は、扉を開け、建物の階段を下りていく。その際も、足音をたてないようにしながら、静かに下りていく。階段を下りてき、一階にと降りていく。外と建物を隔てるガラスの扉の前、大きな道路には、何人かの<奴ら>が歩いている。だが、ここを突破しなければ、孝や、マリアの妹の元にはたどり着かないだろう。この建物の中で、<奴ら>の動きを見ていたが、<奴ら>は音に反応するものである可能性が高い。よって、相手が大量にいようと、その音を殺していけば、ある程度の脅威をを減らすことはできる。とはいっても、力は普通の人間以上にある。彼らの距離に入ってしまい、掴まれてしまえば、逃げ出すことは容易ではない。

「問題は、どこに目的の人物がいるかどうかだ。何か思い当たる場所は?」
「ひとみのいる場所……おそらく、KOFの場所じゃないかな」
「わかるなら、其処に案内してもらえればいい」
「わかりました」

 冴子は、頷くと、外にと足を踏み出した。周りは、無数の<奴ら>がさまようように歩いている。冴子は、警棒を握り、マリアを背後に置きながら、歩き出す。どちらにしろ、この武装では、戦うことはできない。無駄な戦闘は避けて進むしかない。

「案内は任せる」
「は、はい!」

 冴子は、周りの建物を眺めながら、歩き出す。
 彼女の手前、進行方向、こちらのほうに顔を向ける<奴ら>、冴子は警棒を伸ばし、片手を伸ばして、奴らの頭を突く。バランスを失い、後ろに倒れる。その間に、二人は、進んでいく。、<奴ら>はその動きは並みの人間以下。よって、音とその距離間を誤らなければ、問題はない。

「……だが、これでは心もとない。もっと、もっと強い武器があれば」

 冴子は、警棒を握りしめながら、つぶやいた。
 その手にある感触……木刀、いや、刀……。それで、思う存分に、邪魔立てする目の前の『敵』を無力化する。冴子は、飢えを感じながら、ただ歩き続ける。



Side カナン



「退屈してたんだよ、よわっちぃ奴ばかりで。だから、お前みたいな奴見ちまったら、フフフフ……疼いちゃうんだよね、私の左目がさぁ」

 ジュリの片目が輝くと、彼女の周りに強い気が集まっていく。カナンもまた赤く眼を灯しながら、彼女の動きを探る。ジュリは、左足に気を溜めこみ、カナン目掛け足を蹴りあげる。カナンはそれを避ける。彼女の足はコンクリートの床を打ち砕き、その破片と共に、彼女のピンク色の気がカナンを襲う。カナンは彼女の攻撃を避けたが、その気の残骸による、弾き飛ばされる。

「あ~~あ~~わりぃ、わりぃ、ちょっと本気だしちまったかなぁ?」

 ジュリは、謝る仕草を見せて、倒れているカナンを見る。カナンは動かない。その様子を呆然と眺めている加納。ジュリは、首をかしげた。

「もしかして殺しちまったか?ったく、なんだよ。折角楽しめると思ったのに期待外れかよ?」

 ジュリは、カナンから振り返り、エレベーターにと向かう。残念と肩を落としながら、だが、その背後では既に立ち上がっていたカナンがいる。

「憎悪」
「あん?」

 振り返ったジュリは、カナンが何を言っているのかわからない。カナンは、白髪の髪の隙間から、その赤く灯った瞳でジュリを見つめる。ジュリはその視線が自分のすべてを見透かすようなそんな瞳。

「哀しみ、怒り、苦しみ、それらの様々な人に抱いている感情が、すべて憎悪になっている。だから貴女は誰を憎んでいるのかわからない。ただすべてが憎い……」
「ふ、フフフフ、ひゃははははは。お前は、なんだ?心理カウンセラーかよぉ?それがお前の能力だとしたら随分とお粗末だな?ああ?」

 カナンは、片手に銃を握り、片手にナイフを握り、ジュリにと近づく。ジュリは、目を細め、この命知らずを殺すことだけを考える。片方の脚を、背中につくのではないかというほどに下げ、一気に蹴りだす。ピンク色の気と共に、まっすぐカナン目掛け、床を削り、空気を吹き飛ばす。

「カナン!!」

 思わず声を上げる加納。

「……わかりやすくて、助かるよ。感情をそこまで露わにして」

 ジュリは、その声のほうを見る。カナンは、銃を向けジュリにと告げた。ジュリは、確かにカナンに狙いを定めたはずだ。なぜ?ジュリは、舌打ちをしながら、宙にと飛び上がる。目が輝き、彼女の足がピンク色にと輝く。

「何が何だかわからねぇーが、避けれねーように全部吹っ飛ばしてやらぁ!!」

 カナンは目を見開く。

 彼女はまっすぐこちらにと突っ込んでくる。銃を放ち、動きを止めようとするが、銃弾は彼女には効かない。カナンは咄嗟にその場から床を蹴り上げ離れる。ジュリの蹴りが、床を抉り。それは先ほどの蹴りの比ではない。床を削った先ほどの気ではなく、今度のは、壁を貫くような蹴り。コンクリートがまるでまるで木の板のように、粉々になり、宙に巻きあがらせる。ジュリは、コンクリートをぶち抜きながら、その視線はカナンを追っている。宙にと浮きながら、カナンは銃をジュリにと向けていた。放たれる銃弾。ジュリの目が輝き、ジュリは片手を銃弾にと向ける。それは、弾かれ消される。

「何度やっても同じだっつー…!?」

 ジュリが、伸ばした腕を引くと、目の前にはカナンの姿。

「こいつ……吹き飛ばしたコンクリートを足場にして私に突っ込んできたのかよ!?」
「銃がだめなら、至近距離で!!」

 ナイフを握った腕を伸ばす……切った感覚はあった。だが、それは浅いもの。ジュリは、目を細め、痛みに耐えながら、飛び込んできたカナンを膝打ちする。カナンの体は宙にと舞って、コンクリートの床にと叩きつけられる。

「くはあっ……」

 思いっきり、吐きながら、カナンは四つん這いになり、大きく息を吐く。

「てめぇ……やってくれたじゃねぇーかよ!」

 ジュリは、腰回りを切りつけられ、そこから流れる血を手でぬぐいながら、カナンを睨みつける。カナンは、虚ろな意識の中で、ジュリが再度ピンク色のオーラで身を包む様を見る。

「粉々にしてぶっ殺してやる!」

 ジュリは、再度、飛び上がり、その足に気を集中させる。今度こそはずしはしない。その体の骨と肉が滅茶苦茶に砕け散るのを思い浮かべ、一気にカナンごと床を抉ろうと狙いを定める。だが、そのジュリの真横から、現れた影……。

「キャノンスパイク!!」
「!?」

 ジュリは攻撃を止められ、その長い脚の蹴りを、まともな防御も出来ずに受けてしまう。彼女は、そのまま、壁にと叩きつけられ、崩れ落ちる。その露出の高い軍服を身にまとった女……キャミィは、ジュリが、倒れている間に、カナンのもとにと駆け寄る。

「大丈夫か?」
「……あ、あぁ」
「あんな化け物相手に一人で戦う勇気は認めるが……。とにかく、一度、ここから引くぞ」

 キャミィは、カナンにと告げる。カナンは、なんとか立ち上がる。キャミィは、ジュリに警戒するように銃を向けている男にも目をやる。

「そっちの男もだ」
「わ、わかった……」

 キャミィはカナンと加納を連れて、警視庁玄関から外にと出ていく。キャミィは、やはり、こうなってしまったかと強く、拳を握りしめる。長官が告げていた通りの結果。アルファルドは、自ら、この警視庁という場所を私物化するために、わざと捕まった。そして、彼女の駒にはジュリ。元SIN構成員がいるということ。厄介な奴が敵に加わった。

「くっ……うぅ……」

 カナンは、そのまま意識を失ってしまう。



Side 大沢ひとみ



「姉さん……姉さん……」

 すがるような声で、周りを見渡すひとみ。彼女は、姉であり大沢マリアとはぐれてしまい、途方に暮れていた。渋谷では、それこそ突如現れた<奴ら>により、多くの人間が、襲われ、そして<奴ら>として、再び人を襲う……その悪循環が繰り返されていた。ひとみは、姉であるマリアが仲間になっていないことをただ願いながら、必死に探していた。折角の、クリスマスなのに……。

「私が、私が……呼びだしたりしなければ、こんなことには」

 ひとみは、マリアの休みの日を利用して、こうして出かけてしまった……そのせいで、巻き込んでしまったことに、罪悪感を感じずには居られなかった。マリアに何かあれば、それは自分のせいだ……ひとみは、そう強く思いながら、逃げ回る人の流れの中で、必死に姉の名前を叫びながら、捜そうとしていた。だが、彼女の正面からは雄たけびと共に、<奴ら>が迫っていた。

「!?」

 血まみれの<奴ら>は、逃げ惑う人間対に襲いかかり、皮膚を、腕を、足を、体を食いちぎり、引きちぎっている。それは、とても現実の光景とは思えない。ひとみは、震えながら、立ちつくす。

「何やってるんだ!逃げろ!」

 ひとみの腕を掴んだのは、黒髪の男子。ひとみは、恐怖におびえながら頷くだけだった。

「孝!人助けなんかしてる場合じゃない!」

 彼の名前は、孝というらしい。彼の名前を呼んだ女の子は、怒鳴り散らすように言いながら、その手には、掃除用具の箒が握られている。それを手にして、迫りくる<奴ら>の武器にしようとしているのか。

「どっちにしろ、地下鉄沿線から奴らが出てくるようじゃ、東京都の渋谷区内は危険ね。この場合、考えられる安全な場所は……東京都の主要政府機関が存在している、千代田区内、皇居、警視庁ね」

 眼鏡をかけていた女の子が、そう告げる。

「ちっ……冴子さんの行方も分からないまま、逃げるしかないのか」
「孝!この状況じゃ、捜すなんてできない!!今は、逃げることを考えるしかないわ!」

 捜す状況じゃない……。
 その言葉は、姉であるマリアを捜していたひとみにとっても、胸に残る言葉だった。周りからは悲鳴が響き続ける。ひとみは、意を決して、その屍の中にと向かおうとする。諦めるわけにはいかない。それは、もう十分知った。教えられた、あの渋谷の事件の時に。だから、諦めない。どんなことがあっても。

「おい!どこにいくんだ!!」

 孝が、ひとみの手を握り、離さない。

「私は、姉さんを捜す!!」
「……俺も、大切な人を捜している」

 孝は、ひとみを掴んだまま、うつむきながらつぶやき、ゆっくりと顔をあげた。

「君の姉さんのことを教えてくれ。一緒に探しだそう」
「……」

 ひとみは、自分の気持ちをわかってくれた彼の言葉が嬉しかった。



12月24日時刻は、21時15分。

血まみれのクリスマスイブは、いまだに終わらない。









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