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No.28229の一覧
[0] 【完結】めくるめくパラソル (恋愛)[烏口泣鳴](2011/08/23 09:34)
[1] 駅前で待ち合わせ![烏口泣鳴](2011/06/06 23:01)
[2] どんな映画を見るんだろう[烏口泣鳴](2011/06/06 23:02)
[3] さあ、飯だ飯だ![烏口泣鳴](2011/06/06 23:03)
[4] 子供は何人欲しい?[烏口泣鳴](2011/06/06 23:03)
[5] 呆れた?[烏口泣鳴](2011/06/06 23:04)
[6] ちょっと休憩 化粧直し[烏口泣鳴](2011/06/07 22:50)
[7] 一方、彼氏の方は[烏口泣鳴](2011/08/16 21:00)
[8] カッコいい所を見せよう![烏口泣鳴](2011/06/16 22:20)
[9] 恋の駆け引き ROUND1[烏口泣鳴](2011/06/26 10:28)
[10] 恋の駆け引き ROUND2[烏口泣鳴](2011/07/30 23:09)
[11] 最終決戦マイナス1[烏口泣鳴](2011/08/11 21:54)
[12] 入口を塞ぐ番人達[烏口泣鳴](2011/08/16 10:24)
[13] 花開く夜空[烏口泣鳴](2011/08/16 23:09)
[14] エピトーク[烏口泣鳴](2011/08/23 09:34)
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[28229] さあ、飯だ飯だ!
Name: 烏口泣鳴◆db25df9d ID:41696623 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/06 23:03
「自分で決めちゃえばいいんじゃねえの? ささっと食える様な所に。そこら辺のファーストフードでさ」
「でも陽菜ちゃんの相手はお金持ちなんでしょ?」
「お坊ちゃんじゃ体に悪い物とか食べなそうだよね?」
「むしろ食べられない? 食べたら死んじゃう?」
「そうそう!」
「なら嫌がらせに入っちまえばいいんじゃね?」
「考えとくかぁ」
「陽菜、真面目にね」
「めんどいよぉ」

   ○ ○ ○

 映画館を出ると、陽菜が尋ねた。

「昼は何処で食べる?」

 それに文光が黙った。見れば、何か酷く考え込んでいる。何処で食べようか思案しているのだろうか。適当で良いのでそんな真剣に考えられても困るけど。
 見ていると何か決心した様子で文光は陽菜を見た。

「俺……僕は……」

 そこで言葉が止まった。

「何? あたしは食べられない物は無いから何処でも良いよ」

 陽菜が言っても、文光は陽菜を見つめ続けたまま、口を開けたり閉じたりしている。陽菜が幾ら待っても続きの文句は──現れない。

「特に何処かってのは決まってないのか?」
「あ、ああ」
「そうか。じゃあ、あそこのファーストフードで良いか?」

 微かに先程の映画の意趣返しが含まれている。加えてとにかく疲れたのでさっさと何処かに座りたいという気持ちもあった。陽菜の指差した先を見て、文光が黙り込んだ。やっぱりお坊ちゃんだからファーストフードは無理なのかな。

「もしもジャンクフードが食べられないなら別の所を探すけど」
「構わない」

 そこで一拍置いて、

「陽菜が嫌でないのなら」

そう言った。陽菜としても異論は無い。そもそも自分で提案したのだから。
 ファストフードに向かう途中、文光が小さな声で、「すまん、みんな」と言ったのが聞こえた。それがどういう意味なのか陽菜には分からない。まさかジャンクフードは金輪際食べないなんていう誓いを誰かとしていたのか。あるいは家訓で禁止されてたとか。そう考えると若干の罪悪感が湧いた。それからもしも変な宗教にはまってる奴だったらどうしようという不安も。

 もしかしたら買い方とか分からないんじゃと危惧して、文光には席を取って置いてもらって、陽菜が注文をしに行った。適当に頼んで、商品を受け取り、さあ行くかと振り返ると、文光の座る席が見えた。その前に女子高生が座っている。
 新しい彼女? 乗り換えられたのだろうか。なんだあたしはもう飽きられたのか? 怒りや悲しみも多少湧いたが、それ以上に面倒な事になったなという気持ちが強かった。映画館に続いて二度目の帰りたいだ。
 とにかく事情だけは把握しておこうと近付いてみると、何やら口論をしている様だった。喧嘩をする程の知り合いだったのか? 女子高生の方が一方的に怒っている様にも見える。文光は、どうやら女子高生の事を完全に無視している。いきり立つ女子高生の前で文光はじっと陽菜の事を凝視していた。

「だからさあ、何でさっきから無視する訳?」

 女子高生が多分何度目かになるのだろう台詞を吐くと、文光はそこで陽菜を迎え入れる態勢に入った。そのまま視線を陽菜に向けたまま、女子高生に向けて、

「悪いが」

 文光が静かに言った。そこで言葉が途切れた。女子高生も次の言葉を聞く為に黙った。見れば周りの聞き耳を立てている人々も黙っていた。長い沈黙があった。文光は何か悩んでいる様だが、陽菜にその心境は推し量れない。しばらくしてようやく文光の口が開いた。

「妻が来たからその席を空けてくれ」

 何処かから、おおという小さな歓声が漏れた。女子高生は慌てて振り返って、恐ろしい顔を陽菜に晒したが、陽菜を目に止めた瞬間、青い顔をしてこそこそという音が良く似合う動きで、その場を離れて何処かへ消えた。そんなに怖い顔をしていたのだろうか。まあ、何でも良いかと文光の前の、若干温かくなっている席に坐った。

「言うね」

 文光が少しだけ顔を歪めた。

「まずかったか?」
「いや、まずくはないよ。うん、まあ、嬉しかったかな」
「そうか」

 そこで言葉を切って文光は顔を逸らしたが、すぐに慌てた様子で財布を取り出して中を確認した。

「幾らだ?」
「ん? いらないよ。さっき映画はそっちが出しただろ?」
「そういう訳には」
「行くんだよ。あんまり堅苦しく考えるな。適当で良いんだよ、適当で」

 そこで陽菜はにやりと笑った。

「あたしはあんたの妻なんだろ?」

 文光がそっぽを向いた。顔が若干赤くなっている。月歩に比べれば大分分かり易い。顔の割に可愛いなと思いつつ、陽菜は買ってきた商品を文光の方へ寄せた。

「まあ食べてくれ。お坊ちゃんの口に合うかは分からないけど」
「陽菜がくれたものならどんなものでも美味しい」

 そこまではっきり言われると、陽菜も恥ずかしくなった。

「せめてそれは食べてから言えよ」
「そうだな」

 文光があっさりと言ってポテトを見つめ始めた。急に変な事を言う奴だ。もしかして仕返しされたのかなと思いつつ、そうだったら中々歯ごたえがありそうだと愉快になった。

   ○ ○ ○

「俺、サークル行ってくるわ」
「おーっす」
「俺も飯食ってくる」
「ここで食ってきゃ良いじゃん」
「嫌だよ。学食まずいから」
「で、だ。相手がどんな店を選ぶか分からないが、店に入ったらトークだトーク」
「どんな会話をすれば良い?」
「あ、悪い。ちょっと席外す」
「俺も飽きたからどっか行ってくるわ。後は頑張って」
「一気に人減ったな」
「まあ、仕方ないだろ。俺もそろそろ飽きてきたし」
「悪い」
「別に良いけどさ。で、何だっけ?」
「だから昼に何を話すかだよ」
「そんな事まで決めんの? 適当で良いんじゃね?」
「つか、映画の後だろ? なら基本映画の話?」
「そうだな、確かに。じゃあ、そんな感じで」
「分かった。映画の話だな」

   ○ ○ ○

「結局ここか」
「まあ、良いんじゃない? 陽菜ちゃんらしいって言えば陽菜ちゃんらしいし」
「ねえ。許婚君、主体性薄そうだし、最初からここになると思ってたよ」
「てか、月歩の奴、なんか爺さんと一緒に居るんだけど」
「まさか!」
「まさか!」
「売春……とか?」
「えー、それは無いよ」
「多分あの許婚君の執事だよ」
「普通だったらそっちの方が可能性低いと思うんだけどなぁ」
「あ!」
「許婚君の所に間女が!」
「その表現もどうよ」

   ○ ○ ○

「おーっと、あの馬鹿に別の女が寄って来てますよ、隊長。若い子ですよ、隊長」
「修羅場だな」
「まあ、誘われたところで文光がおいそれ付いていくとは思えないけど」
「そうだな。てーか、完全に無視してるな」
「何か怒り出してるぞ」
「それでも無視してるな」
「あはは、やっぱおもしれえわ。あいつ」
「あ、彼女が来ましたよ、隊長」
「あ、若いツバメがどっか行った」
「いや、ツバメじゃおかしいよ」
「終始無視だったな。やっぱすげえわ、あいつ」
「どうでも良いけど、源次郎さんが綺麗な子と座ってるんだけど」
「孫かなんかじゃね? 何処?」
「源爺さん、買春容疑?」
「あー、あれか。あれは……」
「あれは……」
「幽霊?」
「源爺さん、召されちゃった?」
「シャレになってねえ」


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