「お疲れ様ー、それじゃあねー」「はいはい、お疲れ様。今度もお願いしますねー」「いや待った。何でコイツを普通に帰す流れになってるのよ」「用事もないのに居座り続ける正義の味方って、色々と問題あると思いません?」「なら仮面を外して、その上で話を聞けば良いでしょう」「正義の味方に仮面を外せとか、キミは鬼ですか!」「まったくだ。鬼かアンタは!!」「……これ、突っ込んだら私の負けになるのかしら」「シランガナ」「まーまー落ち着きなって。その内私も、仮面無しで挨拶に行くつもりだからさ」「その時に、今回の目的も明らかにするって事?」「え、何だ参加理由が聞きたかったの? それは単に、ヒーローごっこが面白そうだったからだけど?」「それもだけど、私が気になっているのは貴女がコイツの事を色々知っていたその理由で――」「やれやれ、人形使いは細かいねぇ」「天性のツッコミ気質が為せる技ですよね。毎度毎度、彼女にはお世話になります」「――あーもうどーでも良くなったわ。困るのはそっちなんだから、好きなだけソイツと意気投合してれば良いじゃないの」「拗ねた?」「拗ねましたね」「スネンナヨナー」「拗ねてないわよ!!」幻想郷覚書 地霊の章・弍拾陸「終日遅遅/思い出をありがとう」「……諸々あったが、何とかダークスカーレット・エンパイアを退ける事が出来たな」「せんせー何もしてないけどね」 お前が別途料金を請求しなければ、少しは何か出来たかもしれないがな。 縛られたせいで出来た縄の跡を摩りながら、私は恨みがましい視線を込めててゐを睨みつける。 分かってはいるのだ。華蝶仮面らがいる限り、ダークスカーレット・エンパイアに人間達を害する事は出来ないと。 だが、人里に害を及ぼすと明言している相手を放って置く事も出来ん。……やはり、私は頭が固いのかなぁ。 「慧音先生、大丈夫ですか?」「もう、ダメだよ先生。華蝶仮面の邪魔をしちゃ」「ははは、そうも言ってられないのが人里の守護者なのだよ」 先程まで皆と一緒に華蝶仮面の応援をしていたフランとメディスンが、私を心配して歩み寄ってくる。 彼女らも相応以上の実力を持っているのだから、奴らの討伐を手伝って貰えるとありがたいのだが――いや、それは違うか。 この場合、間違っているのは無粋にも正義と悪の対決に無策で介入した私の方だ。 素直に皆の防衛に専念し、エンパイア討伐を華蝶仮面達に任せれば私も悲惨な目に遭う事は無いのだろう。 いやしかし、完全に任せるというのはやはり人里の守護者としてどうかと。 いやいやしかし……。「あれ、慧音先生固まっちゃったよ?」「真面目っ子な先生に、大人しく観客やってろっていうのはやっぱ無理な話なのかねー。……てゐちゃん的にはバッチこいだけど」「……? てゐ、そのカメラなんなの?」「ちょっとした小遣い稼ぎかな。華蝶仮面の戦いは結構売れるんだよ……主に下衆い意味で」「???」「ああうん、無垢なちびっこは気にしなくていいよー」「おーい、みんなぁー!」「お、ワザとらしく居なくなっていた二人だ」 解散していく皆の流れに逆らう形で、晶とマーガトロイドの二人がやってきた。 元気一杯と言った具合の晶の姿に反比例して、疲れきったマーガトロイドの様子が若干気になる。 確か晶は、トイレに行くと言ってどこかに消えたのだったな。……何かあったのだろうか。 「し、しかしその……随分と長かったな。は、腹具合でも悪かったのか?」「ほへ? ――あ、ああ! いや違うんですよ!! 実はその後、念波で人に呼ばれてしまいまして!」「……その言い訳は、本気でどうなのよ」「そうか、君も大変だな」「あっさり信じた!?」 他の人間ならまだしも、晶なら十二分に有り得る事だ。本当に、彼も苦労しているのだなぁ。 しかし、一緒にマーガトロイドも居なくなったのはどういう事なのだろうか。 色々尋ねたいのだが、尋ねると泣かれる気がする。何故か。 まぁ、彼女にも色々と事情があるのだろうさ。人里の危機に頼っていい相手でも無いし、あまり追求はするまい。 それにしても毎度毎度、二人共計ったように居合わせ計ったように居なくなるものだ。 まるで、華蝶仮面と同時に居る事が出来ないかの様な……はっ!? まさか晶達は――華蝶仮面と、意外と仲が悪いのか!?「うにゃ? どうしたのさアリス」「今、何かツッコミを入れる出来事があった気がする」「アリっさん……もうそれ完全に病気っしょ」「うぐっ!?」「うわぁ! アリスが未だかつてないほどダメージを受けている!?」「ツッコミビョウオツ」 いや、考え過ぎか。 それよりもこんな所でいつまでも悩みすぎていたら、皆に要らん不安を与えてしまう。気を引き締めないと。 私は自分の額を軽く叩いて気持ちを切り替え、何故か先程よりも落ち込んでいるマーガトロイドを慰めていた四人に話しかけた。「さて、皆はこの後も新聞の記事作りをするのだろう? どうだ、ついでに夕飯でも食べていかないか?」「遠慮なく頂きマス!」「てゐちゃん、タダ飯って言葉大好き! それよりも丸儲けって言葉が好きだけど!!」「わーい、ごはんごはーん!」「そこのバカ二人は少し自重って言葉を学びなさい、わりと全力で」「聞きましたか晶さん。今、露骨にメディちんだけ除外しましたよこの魔法使い」「聞きましたともよてゐさん。この子ってば、人形にはとにかく甘いのよね。本当に嫌になっちゃうわもー」「―――上海、殺りなさい」「ティロ・フィナーレ(ブツリ)!!」「そして僕にだけ特別厳しがふぅっ!」 錐揉み回転しながら吹っ飛ぶ晶の姿に、最早驚きの感情が湧いてこないのは正直どうなのだろうか。 と言うか、あれだけに派手に吹っ飛ばされておきながら何故あっさりと着地出来る。どうして完全に無傷なんだ。 平然と軽妙な仕草で肩を竦める晶の姿に、この子はどこまで行くのだろうと不安な気持ちになってくる。 しかも三人の話題は、すでに今晩の夕飯が何かに移り始めているではないか。テンポが早すぎてノリについていけないぞ。 と、マイペースな三人に対して一人、フランだけが少し困った顔をして私を見つめている。「どうした? 何か問題があるのか?」「うん、晩御飯はおウチで食べるって言っちゃったから……どうしよう」 そうか、彼女の場合己の一存で決める事は出来ないのだな。 しかし帰りたがっているワケでも無い様だし。ふむ、では紅魔館に行って私が許可を……。「あ、そう言う事なら構いませんよ。ウチも今日は多分呑気に夕飯食べてる余裕ないんで」「帰ったら反省会は確実ね……むきゅぅ」「――何故、中華小娘と七曜の魔法使いがここに居る?」「うん、まぁ気にしない方が良いと思うよ。てゐちゃん的にも見なかった事にしたいし」 しかも何だあの自転車は、三人乗りの自転車なんぞ初めて見たぞ。 そして何故、晶は晴れ晴れとした顔で二人に親指を立てた。今の彼女らの姿にどこか賞賛すべき所があったのか。 良く分からないが、一気に疲れが湧いて出た気がする。 私は追求として出すべき言葉を全て飲み込み、代わりに吐き出す様にして提案の言葉を零した。「とにかくこれから夕飯を作るから、手伝ってくれ。――マーガトロイドだけ」「分かったわ。百人分でも余裕で働くから、私以外に手助けは要らないと思いなさい」「え、僕も手伝うけ――」「お兄ちゃん! お兄ちゃんは私達のお話作りを手伝って欲しいな!!」「てゐちゃんの魂もそうしろと囁いているからそうすべき。絶対にそうすべき」「――何これ」「私も分からないけど、こういう時は大概晶が悪いって思うの」「……ふむ、反論の余地が見当たりませんな」「ナットクスルンカイ」 やれやれ、今日一日でやたら疲れた気がするよ。 納得できない様子で首を捻る晶に出来るだけ視線を合わせない様にして、私達は寺子屋へと戻るのだった。 ……それにしても、まさかこんな形でここを使う事になるとはなぁ。 寺子屋らしからぬ生活感の溢れた部屋で料理をしながら、私は何が役に立つかわからない物だと肩を竦めた。 この部屋は、表向きこの寺子屋で一夜を過ごすための仮眠室だ。 もっとも実際の所は、公に泊めれぬ人間を泊める避難所の様な物なのだが――幸か不幸か建設以降、その目的でこの部屋が使われた事はない。 思えばコレも、積み重なった未練による行動なのかもしれん。 私も、つくづくお節介が過ぎるというか面倒な性格していると言うか……やれやれ。「いかんな、最近少し自虐が過ぎる」 色々と及ばない事が重なったせいで、少しばかりナイーブになっているのかもしれない。 そういえば、この部屋を作ろうと思った一番の切っ掛けは久遠殿の件があったからだったな……。 あの時も、私は彼に何もしてやれなかった。「……はぁ」「落ち込むのは構わないけど、油の管理はしっかりしなさいよ」「あ、あぁスマン。これで終わりだ」「こっちも終わりっと。全員運ぶのを手伝ってー」「はーい!」 マーガトロイドに指摘され正気に戻った私は、最後の揚げ物を油切り網に乗せた。 うぅむ、結局ほとんどの料理を彼女に任せてしまったな。 おかげで主菜に専念する事が出来たが、後で何かしら礼をせんといかんだろう。「ところで慧音せんせー、この丸っこい揚げ物って何? メンチカツ?」「いや、コロッケだ。芋の代わりに米を使っているがな」「アランチーニ……確かイタリア料理だったかしら。幻想郷では珍しいコロッケよね」 いや、単純にジャガイモの代わりに米を使っただけの話なのだがな。 昔ほどでは無いにせよ、今まで馴染みの無かった食材はやはり手に入り難い。 そこで比較的手に入りやすいモノを代わりにしようと考えた結果、米という食材に辿りついたのである。 だからマーガトロイドの言ったアランチーニとは、少しだけレシピが違う。言わば私独自の米コロッケである。 まぁ、わざわざ名前を付けるほど大袈裟なモノでも無いのだがな。――む? 各々が感想を言い合っている中、一人晶だけが複雑そうな顔で私のコロッケを睨みつけていた。 はて、どうしたのだろうか? 「どうした晶。ひょっとして、コロッケは嫌いだったか?」「いや、そういうワケでは無いんですが……ライスコロッケには色々と因縁が」「ふーん。コロッケで食あたりでも起こしたの?」「んー……今思い返して見たけど、僕食べ物関係で体調崩した事無いかも」「何故かしら。もっのすごい納得したわ今」「どーでも良いから食べようよー。てゐちゃんもだけど、ちみっこ二人がわりと限界っぽいよ?」「そうだな。とりあえず食べようか」 晶の態度は気になるが、嫌いで無いのなら構わないだろう。 私達は配膳を終えると其々席に着き、一斉にいただきますの言葉を口にした。 そして同時に、神速の箸捌きで米コロッケを口に運ぶ晶。かなり行儀が悪いぞソレは。「もぐもぐ――――――も」 難しい顔のまま咀嚼していた晶が、突然何かに気付いたかの様に硬直した。 そのまま、残った米コロッケを一気に掻き込み。晶は天啓を得たかの様にして立ち上がり叫んだ。「こ、これだぁぁぁぁぁ! これだよお爺ちゃぁぁぁぁああん!!」「……いきなり何よ」「上白沢先生! このコロッケ、以前ウチの爺ちゃんに食べさせてたりしてますか!?」「う、うむ。詫びも兼ねて、妹紅の所に持っていったが……」「やっぱりそうか。なるほどなるほど」「このコロッケがどうかしたの? お兄ちゃん」「いぇす、あったのですよ」 感慨深げに頷きながら、二個目のコロッケに手を出す晶。 どういうワケかと他の全員と共に戸惑っていると、早々に二つ目を食べ終えた晶が訥々と語り始めた。 ……ところで今、二個目を食べる意味はあったのか? 「実は爺ちゃんの所でさ、月に二、三度ほどあったんですよ。コロッケタイムと言う奴がね」「何それ、びみょーに回数多くない? つーかどういう時間よソレ」「一言で言うなら、爺ちゃんによる思い出の味試作の日ってヤツかなぁ。……わりと進展はありませんでしたが」「美味しくなかったの?」「と言うより、毎回毎回一味足りなかったんだよね。爺ちゃんも自覚してたから、毎度渋い顔で食べてたワケですよ」「……貴方が味を理解した上で物を食べていたと言う事実に、私少しばかり驚愕しているのだけど」「アリスさん心の底から酷くない? 僕結構、味覚には自信あるんですよ」「魔理沙に「明日借りた物全部返す」って言われると、こんな気分になるのね。良く分かったわ」「はい、気持ちは分かるけど混ぜっ返さない。それでその一味足りてないコロッケの完成系が、多分けーねせんせーのコロッケだと?」「僕の舌はそう判断しました!」 ……そういえば久遠殿、差し入れの時にやたら黙々と食べていたな。 今までずっと、コロッケが気に入らないから黙っていたのだと思っていたのだが……そーか、アレは味を覚えていたのか。 何というか、嬉しさと同時に気恥かしさが湧いて出てくる。 いやはや参ったな、そんなに美味かったのか。作り方くらいは教えておくべきだったかなぁ。「わー、慧音先生うれしそー」「わはははは、そんな事無いぞ。――もっと食べるか? ん?」「けーねせんせーは露骨に浮かれてるけどさ、実際の所はどうなん? 良い話系で纏まりそうならてゐちゃん飯食うのに専念するんだけど」「良い話系じゃ無いかなー。多くは語ってくれなかったけど、爺ちゃんわりと楽しそうに作ったし。失敗してたけど」「なんだツマンネ。単にコロッケが好きなだけじゃないのか」「……私は、それでも構わないがな」 幻想郷で得た経験の全てが、私達と居た時間の全てが、彼にとって無駄でなかったと言うのなら。 何か一つでも彼の中に大切だと思える物が出来てくれたのならば、それは私にとってこの上ない救いなのだ。 私は米コロッケを一口齧ると、数少ない彼との思い出に浸るのだった。 ――今度こいつを肴に妹紅と一杯やるかな。ああ、美味い酒が飲めそうだ。◆白黒はっきりつけますか?◆ →はい いいえ(このまま引き返してください)【教えろっ! 山田さんっ!! りべんじっ!!!】山田「どうも、皆のアイドル山田です。今回はいきなりですけど謝罪から」 Q:各人との靈異面の相性はどうなっていますか?実力差を無視した単純な相性と、実際に戦った場合の勝率で、 それぞれベストワースト5人ずつ、計20人くらいで教えてください、山田さん。山田「この質問なのですが、上手い形での返答を思いつきませんでしたので無効とさせて頂きます。申し訳ありません」死神A「そんなに無茶な質問でも無いと思うんですが……あ、どうも死神Aです」山田「正直、相性とか勝率とかは勝負する時に明らかにしたいんですよ」山田「事前に決めちゃうと作者もそれに縛られてしまうので、雑把で無い実力関係の決定は今後も避けていきますのでよろしく」死神A「あれ? でも前に、現時点の晶君に勝てる人一覧とかやってましたよね?」山田「晶君自身はアメコミ並に強さがふわふわしてるから、そういうの決めてもさほど困らないんですよ。勝てる相手に余裕で負けますし」死神A「そういうモノですか」山田「そういうものです。ああ、けれど勝率ワースト一位は言えますよ。稗田さん家の阿求さんです」死神A「そもそも非戦闘員じゃ無いですか……」 Q:晶君や水晶華蝶を支持している十代の方々は男性が多いんですか?女性が多いんですか?山田「晶君は圧倒的に男性です。男の娘であると分かっていても、健康的な色気のあるミニスカメイドには勝てないんですよ」死神A「色んな意味で終わってますね、人里」山田「大丈夫です、三割のファンは男だと気づいてません」死神A「七割男だと分かった上で引っかかってるじゃないですかやだー!」山田「まぁ、そもそも晶君の人気って結構コアなんですけどね。基本的に恐怖の対象ですから」死神A「じゃあ水晶華蝶は?」山田「大人気ですよ、やっぱり圧倒的に男性から。まぁこっちは性別不定なんでまだ救いがありますけどね」死神A「救い……あるのかなぁ」 Q:晶君の生涯の友認定されたレミリアと萃香ですけど、他に彼ら戦隊モノのノリについていける人って誰がいるんでしょうか?山田「ただノリについていくだけなら、結構該当者が居ますね」死神A「そうなんですか?」山田「妖怪の山に居る輩全般、隙間妖怪、白玉楼の亡霊、永遠亭の姫君、プリズムリバー三姉妹、不良天人、地獄烏に火車、もう一人の鬼なんかが該当します」死神A「多いですねぇ……」山田「ただ、ブラッディレミリアの様に特撮知識も無しに‘らしい’悪役が出来る輩は居ないでしょうね。それ故の生涯の友認定ですから」死神A「一応は伊吹萃香も友認定されてましたけどね」山田「実はアレ、予め八雲紫から色々話を聞いてたが為の完全対応だったりします。最終的に趣向はぴったり合った様ですが」死神A「言っちゃっていいんですか、その裏話」山田「どうせ本編中で言う機会とか無いですからね。ああ、それと」死神A「何か?」山田「質問者もそうですけど、気をつけてくださいね。朱点華蝶やブラッディレミリアと萃香やレミリアは何も関係無いので」死神A「ああ、そのスタンスこのコーナーでも健在なんですね」山田「死神Aボーナス無しで」死神A「ええっ、いつもより罰が重い!?」 とぅーびぃーこんてぃにゅーど